TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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20日目:残す所10日。 その5

「本当にコレしか手段は無かったの?」

 

 龍華が心配そうに尋ねて来た。羽生に一通りの事情説明を終えた私達は、このダンジョンの最奥部を目指していた。まさか、高ランクダンジョンに足を踏み入れる日が来るなんて夢にも思っていなかった。

 

「このままじゃ、私や関係者の皆が日常を送れなくなるかもしれないからね。ならば、正々堂々とした方法を用意した方が向こうの手段も限定させられる」

 

 なんでもアリ。なら、私の想像を遥かに超える手段やノウハウを持っている連中が相手なんだから立ち向かえる訳が無い。やるなら、こちらの土俵に引き上げないと、話にならない。

 

「でも、鈴子さんの妨害ありきなら10日間位は耐えられるんじゃないんですかぁ? 自負する訳じゃないですけれど、私達を退けた高ランクダンジョンなんて本当に数える位しか無いんですよ?」

「だから、迎えに来てくれる可能性に掛けているんだけどね」

 

 だからと言って、手心を加えるつもりはないが。……最奥部に辿り着いた。

 中級ダンジョンの最奥部は広い空間が広がっているだけだったが、ここは明らかに造詣が凝っていた。お誂え向きに玉座まで用意されている。バフォーが腰を下ろして、溜息を吐いた。

 

「まさか、初心者ダンジョンを担当するだけだと思っていたが、こんなことになるとは思いもしなかった」

「それを言うなら私もだねぇ」

 

 てっきり、探索者に嫌がらせをするだけで良いと思っていたのだが、どうにもそうではなかった。何かしらの陰謀に巻き込まれているが、自分の所業からして、自業自得の4文字が思い浮かぶばかりである。

 

「ダンジョンクリエイターとして。貴様の働きを認め、このフロアのマスターであることを認めよう」

 

 奇妙な話だが、私は探索者としては碌に認められていなかったが、ダンジョンに蔓延る障害。としての働きは、クリエイターからも直々に認められる物があったらしい。……最も。

 

「高ランク探索者を撃破して来たのは、殆どがバフォーだけどね」

「高ランク探索者を招き入れたのは貴様だ。貸与を行う。傅け」

 

 傅く。バフォーが握り拳を作ると手首から赤い雫が垂れて、いつの間にか出現していた銀の盃を満たしていた。中身を飲み干した。

 

「っぅぷ」

 

 体内で暴れるとでも言うのだろうか? 最初は不快感として全身を駆け巡るが、徐々に快感に変わっていく。自分が作り替えられている。

 

「鈴子さん!?」

 

 公平君が駆け寄って来たが、手で制した。暫くすると、痛みも快感も無くなった。代りに新しい感覚が生えていた。

 バフォーが手鏡を渡してくれたので覗き込んで見れば、頭頂部には2本の巻き角。背中には対の黒翼。

 

「デビル鈴子ね」

「ネーミングがダサすぎる」

 

 龍華がシレっと言ったので頷きそうになったが、そんなネーミングで呼ばれるのは嫌だ。

 

「コレで、貴様はダンジョンがクリアされるまで外に出ることはできなくなった」

「しばらく、外の世界ともお別れか」

 

 あるいは、コレが今生の別れになるかもしれない。公平君達が心配そうにしている。気休めの言葉を掛けても良いが……。肩を叩く。

 

「公平君。私を迎えに来て欲しい」

「分かりました! 絶対に! 迎えに行きます!!」

 

 きっと、この言葉は気休めなんかじゃない。私は静かに頷き、バフォーを見た。

 

「暫くは、お別れだ。例のアパートから入ることも禁ずる。と言うか、近づけんとは思うが」

「分かった。アンタ達こそ、簡単に攻略されないでね!」

 

 最奥部なので行使できる力の範囲も広いのか。バフォーが呪文を唱え終えると、龍華達の姿は消えていた。何処かに転送されたのだろう。

 

「さて、私達はもう一仕事だな。バフォー。頼めるか?」

「ウム。では、喧伝してやろうか。もう、こうなったらいける所まで行ってやる」

 

 ダンジョンは基本的に待ち待ち構える物で、こちらから広報する。なんてことは前代未聞であるらしい。今まで配信されまくっていたダンジョンだが、今回は私達から配信していくことにしよう。

 

――

 

 放送が配信されたのは、各国のダンジョンを取りまとめる機関や省庁など。極一部のヵ所に限られていた。いずれも高ランク探索者を通じてのことである。

 

『諸君らは極東の国にあるとあるダンジョンのことを知っているだろう。そう、初心者ダンジョンから高ランクダンジョンまで成長した例のダンジョンだ』

 

 映像には黒ヤギの頭に黒翼を生やした異形が映し出されていた。放送地域によっては、映すことすらも冒涜的な造詣をしている。

 

『君達からすれば、この現象は垂涎物だろう。高ランクダンジョンで見つかる品々はいずれも人智と常識を超える物ばかり。もはや、初心者、中級ダンジョンの品物で心が揺らぐこともあるまい』

 

 ダンジョンが出現してから、それなりの年数が経っている。中級ダンジョン以下のアイテムも需要が無い訳ではないが、目新しさはなくなっている。

 ダンジョンを意図的に発生させる手段は無い上、高ランクダンジョンの出現率はかなり低い。……が、人為的に作り上げる方法があるとすれば。

 

『そこで。私は探索者を使って、ダンジョンを育て上げる。と言う方法を考えた。幾ら高ランクダンジョンとは言え定番品ばかりでは飽きるだろうからな。デモンストレーションはお気に召した様に思える。ただ、ダンジョン外での粗相は行儀が悪いと言わざるを得ない』

 

 視聴できている者達は固唾を吞んでいた。この怪異はダンジョンに居ながらも外の様子を把握しているのだと。この配信は警告か? にしては、あまりに挑発的すぎる様に思えた。

 

『なので、私は改めて宣言しに来た。ここにいる眷属、名を鈴子と言う』

 

 現れたのは巻き角と黒翼を生やした眉目秀麗な女性。傍らにいる悪魔のような存在も相まって、とある女性を彷彿とさせた者もいた。

 

『彼女がダンジョンの成長を促進させて来た存在だ。元の名は奪っている。つまり、この眷属は私の物である』

 

『そして、私はダンジョンに挑む勇者が好きだ。いや、仰々しく言うのは止めよう。例のダンジョンを制覇した者に、鈴子を譲り渡そう!! 国家、人種は問わない! 実力が全てだ!』

 

『ただし。条件がある。試行回数で挑まれると運営に支障が出るからな。この配信を視聴している国家ごとに各4名まで。それ以上の探索者は認めない』

 

『ちなみに、この事態に備えて探索者の国籍を偽造するなど姑息なことをするなよ。私は見ている。……最も、高ランクダンジョンに挑めるような探索者のプロフィールを書き換えるだけの権力があるとも思えんがね。では、諸君らの挑戦を待っているよ。ちなみに、君らが失敗すればするほどダンジョンがどうなるかは。まぁ、知ることになるだろうな』

 

 と。不穏な言葉を残して、配信は終えた。視聴していた者達は多少騒めいていたが、彼らは冷静だった。そして、迅速だった。

 直ぐに高ランク探索者のリストをまとめて、次々と連絡や交渉を入れて行く。同時に高ランク探索者同士でも情報のやり取りが起きる為、ダンジョン界隈において歴史上類を見ない程に勢力が揺れ動いた日となった。

 

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