TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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21日目:余ったーノはどっち

 ダンジョンの外に出られない。と言うのは何とも辛い所だ。

 唯一、外界とのつながりはアパートの自室位で、まだネット回線やテレビやらは生きているが、支払いが滞ったりしたらどうなるんだろうか?

 

「そうなるまでにはケリも着くやろ」

「問題は誰が来るか。なんですよねぇ」

「ウム。世界中から高ランク探索者が来るとは。テンションが上がるではないか」

 

 スキュさん、ミツバちゃん、バフォー、私の4人でちゃぶ台を囲っている。高ランクダンジョンが解放されたので、スキュさん達は人間態の姿を取っている。

 

「バフォー的にはクリアしてくれるから良いかもしれないけれど、今回ばかりは助力は期待できない。と思っても良いかい?」

「ウム。龍華や豹華はあくまで、初心者・中級ダンジョンに挑むべきではない探索者達だったから対応しただけで、高ランクダンジョンならば受け入れるべき存在だ。その場合、妨害するのは貴様の役目だ」

 

 私にできるだろうか? 今まで、高ランク探索者の侵入を阻止できたのは、バフォーが片を付けてくれたからであり、私が何かを成し遂げた覚えはない。

 

「心配するな。お前ひとりでやる訳じゃない。私も助言位ならしてやるし、ミツバやスキュラ。それに、ダンジョンで共に過ごして来た奴らがいるだろう」

「3週間ほどの付き合いやけどなー」

「ハピやんは向こうに付いてしまいましたがね」

 

 この3人とも3週間ほどの付き合いになる訳か。後、1週間ほどしたらダンジョンがどうなるにせよ、彼女達とは別れざるを得ないと思うとなんだか寂しい気持ちになる。

 

「バフォー。ダンジョンが消滅したら、ミツバちゃんや皆との記憶は?」

「分からん。そもそも、モンスターと懇意になる奴が居るとは思わなかったからな」

「どうなるんやろうなぁ? ウチら他のダンジョンのことを憶えてへんって言うか」

「憶えているほどのこともないですよね。直ぐに無くなりますから」

 

 そもそも、ダンジョンは出現しては攻略されての繰り返しなのだから、住民である彼女達も記憶に残る程のエピソードも無いのだろう。

 

「なら、コレが最後になるかもしれんな。アラクネの奴も含めて、今まで世話になったアマッターノ達のことも見に行こうか」

「このダンジョンが端材ダンジョンたる所以だねぇ」

 

 とは言え、高ランクにもなればアマッターノと言われていたモンスター達も上位種に進化して、ミツバちゃん達みたいに人間態になるハズだ。

 そもそも、中級ダンジョンの時点で結構人間態っぽかったし、ケンタウロス、ナーガ、セイレーンみたいに。眉目秀麗なモンスター娘ばかりになるんだろうか。

 

「とりあえず。見に行くか」

 

 バフォーに引き連れられ、いつも通り押し入れの奥から高ランクダンジョン帯へと向かった。アマッターノ達の珍妙な姿が見られなくなるのも寂しくはあるが、もう余ったもの。なんて言われない位に、彼らが進化したことを喜ぼう。

 

――

 

「って。思うじゃん?」

 

 高ランクダンジョン帯に足を踏み入れた私達が見たのは、眉目秀麗なモンスター娘達が蔓延る光景ではなかった。

 アマッターノ達は正当に進化をしていた。徐々に人間の部分を増やし、端材ことモンスター部分を減らして言っていたのだが。

 

「ひひーん」

 

 馬みたいな鳴き声を上げて頭を振っているのは、人間の上半身と馬の下半身を持つ『ケンタウロス』……ではなかった。

 何故か頭の部分だけが人間の物(美少女)に置き換わった馬がいた。逆・アマッターノとでも言いたくなるような珍妙で冒涜的な生物だった。

 

「バフォー。説明しろ」

「ちょっと、創造主に連絡してくる」

 

 カポカポと蹄を鳴らしてご機嫌にダンジョンを散歩しているので、笑いを堪えるのに必死だった。もしやと思い、もう少し探してみれば。

 

「しゃー」

 

 まだら模様の髪をだらりと下げた、眠たそうな顔をした美少女が長い舌をチロチロと出しながら威嚇していた。当然の如く、頭部より下は蛇のニョロニョロとした胴体が付いている。やはり冒涜的だ。

 

「なるほどね。パターンが分かって来たよ」

「ウチの場合は、顔だけ美少女で胴体が機械でも全然いけるからな」

 

 メカ娘ってずるい。と思ったけれど、ミツバちゃんの状態は頭部が美少女で胴体部分が機械なので、実質的には一緒なのだ。

 

「私は?」

 

 一方、スキュさんはちゃんと頭部から上半身までが女性の物になっていて、下半身はタコの様に触手状になっている。やはり違うというのか。

 で。残す所はセイレーンだけになるのだが、パターン通りに行くと頭部だけが美少女になっていて胴体が魚。と言う、よく分からん状態になっていると思うのだが、答えはどうかと探し回ったとき。

 

「……」

 

 居た。頭、胴体、尾びれ。魚種は分からないが、クソでかい魚の背びれ部分に人間の頭部がぽつんと置かれ、下びれの所に華奢な足が2本。魚の着ぐるみを着ていた少女にしか見えない。

 

「もしかして、それ脱げたりする?」

「しない」

 

 デッデッデ。と、胴体に当たる魚部分をぶるぶると揺らしながら、セイレーンっぽい美少女は去って行った。アマッターノ達の変わり果てた姿を確認し終えた頃に、バフォーが現れた。

 

「ちょっと、創造主に確認して来たけれど『何それ、知らん』って言われた。どうやら、このダンジョン独自の進化であるらしい」

「アマッターノ部分が本来の美少女部分を呑み込んで、美少女部分が余ったものっぽくなっているよ?」

「みたいだな。アマッターノの余った部分が主導権を握る。と言うのが、進化の結論だったのかもしれんな」

「お前は何を言っているんだ?」

 

 バフォーが感慨深そうにしているが、私にはサッパリ理解できない領域だった。この際、端材部分と本体部分の比率は置いとくにしても問題があるとすれば。

 

「この子ら。高ランクダンジョンでやって行けるほどに強いんかなぁ?」

 

 ミツバちゃんの心配は最もだ。見た目的には強そうな要素が無いというか、ネタ方面が強調され過ぎている。

 

「バフォー。戦闘能力とかに関しては?」

「それは問題ない。ステータスやマナ含有量的に高ランク帯に相応しい物を誇る。とは言え、モンスター同士で手合わせと言う訳にもいかんからな」

 

 ……つまり、ぶっつけ本番で彼らと一緒に撃退をしなければいけないのか。不安しかない。

 

「ブルルスァ」

 

 頭美少女ケンタウロスがピスーと鼻息を鳴らしながら、バフォーの顔をペロペロと舐めていた。馬が人の顔を舐めるときは塩分を摂取する為とかだっけ。

 ナーガではなく、頭美少女蛇はとぐろを巻いてからはびくともしない。唯一、セイレーンっぽい何かだけは真顔で佇んでいるが、直立不動なので却って怖い。

 

「なぁ。アラクネに来てもらうことはできないのか?」

「アイツは29階に待機している。高ランクダンジョンは30階まであるのでな」

「ここは16階やから。……まだまだ、先に頼りになるモンスターはおるやろ。気を強く持って行こうや」

 

 ミツバちゃんに励まされたが、残り15階の間に私が安心できるだけのモンスターがいるんだろうか。こんな冒涜的なモンスターばかりだったら、私も困り果ててしまう。

 だが、見ないという選択肢はない。残された時間がどれだけあるかは分からないのだが、本格的に攻略が始まる前に、私はダンジョンの把握に努めなければならない。

 

「今の私は、クリエイターの眷属なのだからな」

「板に付いて来たじゃないか」

 

 いつも困ったり慌てたりしているバフォーが、何時になくクールに決めていたのがちょっと腹立たしかった。引き続き、私は高ランクダンジョン帯の階層の調査を続けることにした。

 

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