TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する 作:ゼフィガルド
ダンジョンから帰還した公平達は、中国チームが攻略に失敗したことを知り、彼らが記録した動画を視聴していた。
中級ダンジョン部分までは彼らも知っての通りだが、4階では植物人間達を媒介にして高ランクモンスターが出現したり、ボスフロアのモンスターが強化されているなどの違いはあった。
「でも、出現するモンスターや構造自体に大きな違いはありませんねぇ」
「正攻法以外での攻略をするとオシオキのペナルティは増えているけれどね」
豹華を諭すように龍華が言った。ダンジョンの壁を這って、天井を掘り進んで突破する様な真似をしていたことを思い出し、公平も苦笑いしていた。
「根本はやっぱりバフォーさんのスタンスが採用されているみたいですね」
「そうね。だから、しっかりと私達はこの情報を活かす必要がある」
自分達と違って、中国チームが直接入ったのは初めてだったはずだ。
不意打ちに近い形で1名の欠員を出しながらもリーダー格と思しき女性に先導されて、高ランクダンジョン部分を次々とクリアしていく様子に公平は息を飲んでいた。
「(ここから先の事前情報は何も無かったハズなのに)」
例えば、高ランクダンジョン部分では見たこともないモンスターが未知の攻撃方法を繰り出しているが、それに難なく対応している。こんな初見殺しも良い所のギミックに即座に対応できるのは驚嘆に値する。
別の階層では、公平も見たことがあるミツバやスキュラが上位態で戦っていたが、終始圧倒されていた。
『お姉ちゃんが手も足もでぇへんって』
「蚩尤さんは個人が持つ技量とかそう言う面では世界中でも1,2位レベルの探索者ですからね」
豹華が淡々と言ったのは事実だったからだろう。強化されたアラクネを3人で撃破した先にいたのは、眷属と化した鈴子だった。
眷属らしくスキルも変容しているのか、フロアいっぱいに大量にBBを出現させていた。高ランク探索者と交戦できるレベルになっているのは、それだけ彼女が強化されたということなのだろうが。
「見た目的に不快になるだけであんまり強くはないですね」
豹華の言う通り、BB達は簡単に蹴散らされていた。爆弾の様に使ったりもしているが、蚩尤達をどうにかできる訳がなく順当に追い詰められていく。
やがて、彼女の動きが重力呪文で縛られ、決着が着くと思っていたが、雰囲気が一変した。立ち回りが獰猛になり、瞬く間に2人を仕留めた後、蚩尤と一騎打ちになっていた。
「途中で立ち回りが変わっている。多分、中身が入れ替わったんじゃない? 黒槍の使い方とか、バフォーと似ているし」
ゲーム的な感覚で言えば、プレイヤーを交代したといった具合だろうか。
12刀流と言う信じられない技巧にダンジョンが生み出した暴虐が衝突する様は生のアクション映画を見ている様だった。
やがて、勝負にも終わりが見えた。互いの腕が宙を舞い、鈴子の首が刎ねられた。……が、切り離された頭部を槍で縫い留め、押し付けて、口腔から槍を生やして蚩尤を貫いていた。
「うっ」
公平が戦慄する中、豹華と龍華は動画に見入っている。コレが自分達の倒すべき相手であり、同時に助けに行くべき相手でもある。
「正直、第一陣がここまで食らいつくことには驚いたわ。でも、この情報は他のチームにも伝わっているハズ。もしかしたら、私達の番は回って来ないかもしれない」
龍華の呟きに公平は口をつぐんでしまった。初見でコレだけの成果を叩き出したのだ。情報を入手できたのなら、もっと攻略できる可能性は高まる。そうしたら、鈴子はどうなるだろうか。
「だとしても、私達ができるのは期日まで経験を積み上げることだけですよぉ。焦らず、虎視眈々と。装備も経験も積み重ねて行きましょうね」
逸る公平を見かねたのか、豹華がゆったりとした口調で言った。
彼女の言うことは分かるし、攻略を阻害したりすることはできない。……そもそも、自分達が今度は妨害される側なのだが。
「乱太郎―? ご飯よー」
「ですって。じゃあ、今日もちゃんと休みましょうか」
「うっす」
焦らない。早まらない。と、脳で理解していても感情と言うのが邪魔して来ることを実感せずにはいられなかった。
――
「バフォー!!?」
「イヤァ。やっぱり、これぞダンジョン攻略の大トロ部分。血が滾り過ぎて、少し無茶苦茶をしてしまったが」
「少しってレベルじゃねーぞ!!」
ずっと、バフォーが操っている自分を見ていたが、腕が飛んだり首が飛んだりと、常識に喧嘩を売る様な真似ばっかりされていたので、私も混乱している。今でも、本当に首や腕が繋がっているのかと擦ってしまう。
「お前はモンスターなんだから問題ない。キチンと再生しているだろう」
「じゃあ、私はどうしたら撃破されたという扱いになるんだ?」
もしかして、心臓が大丈夫だったら無事とか。あるいは体内にコア的な物があって、それを潰されなければ大丈夫。と言うことなら、もっと大胆に立ち回れるのだが。
「首を刎ねられたり、頭部を潰されたり、心臓を破壊されたりだな」
「おい!! 首刎ねられていたぞ! なんで、大丈夫だったんだ!?」
「大丈夫な訳がないだろう。最後のアレが対処されていたら、このダンジョンは攻略されていたぞ」
「人の体でなんてことを!」
つまり、アレは眷属としての異質さを見せつけていた訳じゃなくて、本当にギリギリで勝ったという状況だったのか。一発目から攻略された。なんてなれば、シャレにならない。
「だが、今回の戦いで学んだこともあるだろう。武器を出したりぶつけたりするだけでは初歩的すぎる。黒槍(アレ)は身体の一部だと思え。作るのではなく、生やす。と言った感覚だ」
「最近、作れるようになったばっかりだからあまりそこまでは馴染んでいないかな……」
「できる物だと思うのだ。あの女とて、12本の腕を使いこなしていただろう。アレは12本の腕を感覚的に把握しているからできるんだ」
あまり人間の常識から外れた視点でばかり語られても飲み込み辛い。
そもそも、今のコイツは強敵との戦いに興奮して無茶苦茶言ってそうな雰囲気もあるので、他の奴から話を聞こうと思って、ミツバちゃん達の方を見てみるが。
「……」
「ミツバちゃん。滅茶苦茶不機嫌だけれど」
「だって、ウチ。一方的にボコられたんやで? このままじゃ、毎回噛ませ犬ポジになるやん! なんか、強化フォームとか無いん!?」
確かに。言ってはなんだが、今回はミツバちゃんとスキュさんはあまり障害として機能していなかった。
何故なら、挑戦者たちは高ランクダンジョンの探索を何度も行っている奴らばかりだから、当然の如くミツバちゃん達みたいなモンスターの対応は慣れている。言い方はアレだが……彼女達は普通だった。
「バフォー。そう言うのは?」
「クモ男にやってみたいにバフを掛ける位しかないが」
「アカンで。もっと根本的な改造をせな! せや。鈴子さん、なんかスキルで強化みたいな真似でけへんの? ロボBBみたいな」
「やってみるか。ネットの玩具とロボットは相性がいいからな」
バフォーが『なんで?』と言いたげそうな顔をしていたが、ロボットは玩具の王様なのだから新和性が高いのは当然だ。
防衛戦の疲れも言えないまま、私達は次の防衛に向けての準備を進めていた。果たして、後3回の攻略を防げるのだろうか? 次は一体、どんな探索者達が来るのだろうか?
達成感よりも心労と不安ばかりが募って行くが、今一度バフォーの言ったことを思い出して、背負いこみ過ぎない様にと自分に言い聞かせていた。