TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

4 / 46
7~8日目:シャワー浴びて―

「お前、このダンジョン作ったんだろ? 特定の場所までワープできるトランスポーター的な物はないのか?」

「ある訳ないだろ。ダンジョンと外の世界は切り離されているんだ。それに、誰かの自宅に繋がったりしたら、不法侵入し放題になるだろ」

 

 相変わらず、悪魔の癖に倫理観がまともな奴だ。とは言え、そんなに都合の良い可能性が無いこと位は察していた。なので、本命を述べる。

 

「じゃあ、管理された入り口以外からの出口はあるのか?」

「別の出口なんか考えとらんからな。ちょっと確認してみるか」

 

 そもそも、正規の入り口/出口以外から出る必要が無いからな。攻略や調査以外の目的でダンジョンに入ることは国からも禁じられているし、俺の方がイレギュラーなのだ。

 バフォーが嫌々調べてくれている間、俺にできることは無いのでメカムスメちゃんにコミュを取ろうとしたが、ヌメっとした感触が肩に掛った。

 

「ふんぐるい」

「あら、どうも。スキュさん」

 

 アマッターノ達の中では頭部以外の造詣がほぼ人間なので、却って不気味だし、俺もビクッとした。

 今までコボルトやゴブリンみたいな亜人タイプは見て来たが、ここまで人間に近しい奴はあんまり見たことが無い。

 

「いあいあ!」

「ふぅん、ふぅん。なるほどね」

 

 ノリで返事をしているが、スキュさんが何を話しているかはサッパリだ。何かの詠唱をしているという訳でもないのは、マナの動きで分かる。

 ただ、いきなり殴って来たりしない所を見るに同胞とは認識されているのだろうか? 試しに話してみよう。

 

「俺、このダンジョンから帰ってシャワー浴びたいんだけれど。スキュさん何かいい案ない?」

「そこになければ無いですね」

「うわぁあああ! 急にしゃべるな!!」

「いあ! いあ!」

 

 普通に喋れるじゃねーか! もしかして、面倒臭いから喋らないだけなんだろうか。どちらにせよ知らなさそうだし、他の返事をしてくれなくなったので別の奴に当たることにしよう。メカムスメちゃん一択だが。

 

「そんで、ウチの所に来たん?」

「他に話せる奴いないからね。仕方ないね」

「そうは言うても、お姉さんにも友達とかおるんちゃうん?」

「どうせネット上の友人しかいないしなぁ。リアルの友人は疎遠だし」

 

 探索者と言えば、きらびやかな世界を想像するかもしれないが、社会保障も少なければ稼ぎも安定していない水商売みたいな物で、マトモに生きている人間なら距離を置きたがる職種ではある。

 人類と世界の発展に貢献して来た部分があるのも事実だが、それは積み重なった多数の落伍者の上に成り立っている物だ。

 

「なんで、そこまでして探索者になったん?」

「社会に出るのが嫌だから~!」

「そういう人が多いから、探索者に偏見の目が向けられるんちゃうん?」

「はい。その通りです」

 

 煩雑な人間関係とかそういうのが嫌で探索者を始めたが、幸か不幸か俺にはそれなりに適性があったので、割と続けられて来た。……のだが。

 

「でも、お姉さん。そこそこ上手くやれてたんやろ? なんで、急にネットの玩具になったん?」

「は、配信チャレンジをして小遣いを稼ごうと思って……」

「まるでダメな典型的なパターンやん」

 

 メカムスメちゃんの言う通り、配信は1つも受けなかった。……いや、正確に言うと違う。再生数はかなり伸びたのだ。ネットの玩具発生源として。

 

「『声キモッ』とか『考えてから喋れ』とか。ありとあらゆる痛罵を向けられ、反論したら更に痛罵を吐かれ、しまいには玩具行き。こんな狂った社会を許して良いのか!!?」

「でも、お姉さんの性根を見ていると遅かれ早かれって感じやけど」

「炎上から逃れられない!! 俺は変なことをしていなかったのに!」

 

 ダンジョン配信の中では過激な物もある。

 例えば、女性型モンスターにスケベなことをしてみたり、モンスターを嬲り殺すスナッフフィルムなど。……後者はしばしば視聴したりもしているが。

 普通の動画でも挑発的な物言いや炎上狙いの物も多々ある中、どうして喋り方が多少キモく、顔が昔のネットミームで多用されている男優に似ている。と言うだけで、玩具にされなければならなかったのか。

 

「何時だって不幸は人を選ばんねんな」

「だったら、俺も前途有望な連中を不幸な目に遭わせてやる。俺の痛みを背負わせて、ついでにTSして生まれ変わる! 一挙両得ってワケ!」

 

 こうして、不幸のバトンは連綿と受け継がれていくのだ。メカムスメちゃんはドン引きしている中、バフォーが寄って来た。

 

「見つかったぞ。しかも、すごい偶然があった」

「なんだ?」

「この出口の先はな。お前が住んでいるアパートの押し入れなんだよ」

「都合良過ぎだろ。いや、良くねーわ。下手したら、自宅凸食らうじゃねーか」

「私が出そうと思わなければ、出せない様に普段は閉じる様にはするが」

 

 それでも偶然とか何やらは起きる訳で。意図せぬ挙動をしてデバッグモードに入るゲームなんて数知れず。ダンジョンだって同じ様なことはありうるかもしれないのだが、背に腹は代えられない。

 

「仕方がない。本当は滅茶苦茶不安だけど。シャワーを浴びられるなら」

「綺麗にしてきやー。折角、可愛いのに勿体ないで」

「そんなことを言う君がいちばん可愛い」

「きも」

 

 バフォーから率直な暴言を吐き捨てられたが、コイツのおかげで自室に戻れるので、頑張って怒りを堪えた。奴に案内されて、件のゲートを潜った。

 

――

 

「じゃあ、シャワー浴びてサッサと戻るか」

「未練なさ過ぎだろ」

 

 自室は休む場所でしかない。久しぶりに電気を付けて、着ていた衣服はもはや臭気を振りまく兵器と化しているので、ゴミ袋に入れた。

 シャワーを浴びる為に全裸になったことで、改めて自身の体に起きている異常を再確認した。実際問題、自分がこのまま生きていくとしたらどうするべきだろうか? 

 

「お? 恐怖を抱いたか? そうだろう。人々から忘れ去られるなんて苦痛でしかない。お前を愛した者にさえ忘れ去られるのは辛いハズだ。もしも、そうなったらお前は戸籍無き人間として……」

「そん時はニンベンシでも頼るか」

「極自然に犯罪者を頼るな。と言うか、伝手はあるのか」

「探索者をやっていたら色々とあるんだ」

 

 頭も洗ったし、身体に着いた垢も取った。ドライヤーで髪を乾かして、必要な道具の補充をして戻ろうとした所で、スマホが目に付いた。電源は落してあるが。

 

「何か来ているのか、見なくて良いのか?」

「面倒くせぇなぁ……」

 

 一応探索者協会みたいなのにも所属はしているが、向こうから連絡が来ることは殆ど無い。お呼びが掛かる程の実力者でも無ければ、問題を起こしまくる様な素行不良者でもない。

 

「これまた御冗談を」

「生まれ変わったから好き勝手にしているだけだが?」

 

 前の俺はネットで玩具にされている以外は普通の探索者だった。

 スマホを立ち上げてみれば、通知だけはアホみたいに溜まっていた。家族からの連絡は特に無し。他にもチャットアプリでメンションが飛んできている位か。それらはテキトーに返しつつ、リアルの方はと言えば。気になるのが1件。

 

「うわ。羽生からだ……」

「誰だ?」

「ちょっとした知り合いでお偉いさんだよ。内容は『初心者用ダンジョンがクソ塗れになっていたんだけれど、貴方。何か知らない?』か。……やばい」

「名探偵だな」

 

どうして、推理の過程をぶっ飛ばして俺に辿り着くのか。

しかも、内容が『無視するな』『何があった』『調べに行くからな』とか付いている。そして、タイミングを見計らった様にガンガンと扉が揺れた。

 

「電気が付いたのを見たぞ。いるんだな? 中にいるんだな!」

「ヒェ……」

 

 つまり、アイツはずっと見張っていたということだろうか。幾らなんでも怖すぎる。バフォーも耳打ちをして来た。

 

「ヤバそうだし、さっさと戻った方が……」

「それは駄目だ。そうしたら、俺が忽然と消えたことになって怪しまれる。連鎖的に初心者用ダンジョンで起きていることがバレるかもしれない」

「だが、今のお前を見て分かるのか?」

 

 そうだった! 女体化しているんだった!! 妹で押し通す。のは無理だな。ウッカリ電気を付けてしまったのがトラップになっているなんて分かる訳ないだろう。とか思っていると、解錠された。押し入られた。目が遭った。

 

「ど、どちら様ですかぁ!?」

「誤魔化せると思っているのか! この異臭は間違いな……うぷっ」

 

 7日間熟成臭気に耐え切れず、羽生は盛大にゲロをぶちまけた。早速、帰って来た瞬間にトラブルに巻き込まれるんだから堪ったモンじゃなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。