TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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25日目:第二陣 その2

 ミツバちゃんが巨大化して暴れ回っているが、アメリカチームに焦りはない。恐らく、デカブツの相手にも慣れているのだろう。

 リーダー格と思しき男性が脚部を集中的に攻撃しつつ、ドローンに吊り下げられている狙撃手が執拗に頭部への射撃を繰り返している。

 

『あだだだ! さっきから頭ばっか撃つなや!』

 

 巨大化ミツバちゃんは想像通りと言うか。デカい図体のせいで動きが鈍く、頭部の装甲は薄いので有効な攻撃と言えた。

 反面、地面と接する部分の脚部周りの装甲は分厚く、リーダー、アタッカー、科学兵の酸攻撃でもびくともしていなかった。

 

『無駄や! 無駄! コレだけ分厚い装甲に、アンタらの豆鉄砲が効く訳ないやろ! BB共! やったり!』

『やんほぬ』

 

 非常に聞き取り辛い鳴き声を上げながらマナBB達が殺到している。質量と物量で圧し潰そうとしている様子は伝わって来るが。

 

「ミツバさん。思いっきり噛ませ犬みたいなセリフを言っていますが」

「私も思っていた」

 

 巨大化、力を手に入れての増長、三下アトモスフィア。ダンジョンと言う挑戦者達が試される場においては、あまりに完璧だった。

 

「一体、アメリカチームはどの様に打破するのだろうな!」

 

 バフォーも腕組みをしながら挑戦者達の奮闘を期待しているが、そもそも攻略されては駄目だということを忘れていないだろうか? 今の所、科学兵以外がスキルを見せていないのも気になる。

 マナBB達が暴れているが高ランク探索者達が撃破される様子は見られない。ミツバちゃんの脚部装甲に攻撃を加えているが、影響がある様に見えない。と思っていた。事態が動いた。

 

――

 

『行けます!!』

 

 科学兵からの合図を切っ掛けに、リーダーが動いた。マナが迸る。スキルの発動に呼応するように、彼のパワーアーマーが赤光を放っていた。

 立ち塞がるマナBBを跳ね飛ばしながら、ミツバの足下にしがみ付く。多数の銃撃と科学兵による酸の攻撃により脆くなっていた。

 

「アホが! 振り払ったらぁ!」

『うぉおおおおお!!』

 

 もしも、この事態を俯瞰している者が居たら、あるいは録画された記録を見る者が居たら目を疑っていただろう。そして、当事者であるミツバは実感せざるを得なかっただろう。

 

『Mighty Power!!』

 

 リーダーが背中から取り出したスレッジハンマーで装甲を粉砕し、表れた素肌部分を何度もぶん殴った。人間で言う所の脛をぶん殴られまくっている状態である。

 コレには堪らず動きを止めた一瞬、科学兵が酸をぶっ掛けて来た。いよいよ、立っているのが難しくなって来た彼女に、リーダーが最後の一押しをした。

 

『うぉおおお!』

「嘘やろ!?」

 

 彼女のもう片方の足に向かって走り、踵を掴んで……リフトアップをした。負傷している足では立っていることができず、倒れた。

 すかさず待機していたアタッカーが駆ける。彼のパワーアーマーは黄金色の光を放っていた。

 

『ハチの巣にしてやるぜ! お嬢ちゃん!!』

 

 倒れたミツバの上を走りながら、彼女の体目掛けて射撃を放っていたが、先程までと違っている点があった。

 

「(装甲貫通付与か!!)」

 

 防御無視のスキルは珍しい物ではなく、短時間に大量に攻撃を放つことのできる銃火器とも相性がいいが、まさかこの分厚い装甲すらも全貫通できる程のレベルだとは思っていなかった。

 

『終わりだ』

 

 トドメと言わんばかりに狙撃兵が放った一撃がミツバの心臓部分に着弾したかと思えば、体内で跳ね回っていた。マナで構築された臓器を食い散らしながら、暴れ回られては耐えられる訳もない。

 

「嘘や。こんな、こんなはずが……アンタらも道連れや!!」

 

 最後の力を振り絞って、彼女の全身からまばゆい光が漏れたかと思えば、瞬間。フロア内で大爆発が起きていた。轟音と衝撃が収まった後、脱落している者は……誰もいなかった。

 

『行くぞ』

 

 大した喜びも無く、周囲に散らばる戦利品を集めた後、彼らは次のフロアへと進んでいた。

 

~~

 

「やっぱり。王道を正面からやられると気持ちが良いな!」

 

 突破されたというのにバフォーは嬉しそうにしていた。一方、私はと言えばそこまで残念だとは思っておらず、スキュさんも似たような物だった。

 

「アレだけフラグ立てていたら、そりゃそうもなりますよね」

「だよね。次はスキュさんの番だけれど、行けそう?」

「やるからには全滅を目指しますんで」

 

 大体、高ランク探索者達が来るときは当て馬にされがちな彼ではあるけれど、決して弱い訳ではない。そんな彼がボスモンスターに相応しい力を持った時、どれだけの活躍をしてくれるかは未知数だ。

 映像内では馬ちゃんや魚ちゃん達をものともせずに進んでいた。やはり、真っ向からの攻撃は殆ど通用しないらしい。……かくいう私もどうするべきか考えていた。

 

「バフォー。あのパワーアーマー。何か指を差しいれる隙間とかは?」

「無いぞ」

 

――

 

 先と同じ様に慎重に扉を開いた。不意に彼らの耳に入って来たのは歌声だった。何かのキャロルの様に思えたが、科学兵が叫んでいた。

 

『状態異常付与! 『Panic』? いや。この強力さは『insanity』です!』

 

 直ぐにリーダーはフィルターを掛けたが、アタッカーは間に合わなかったのか。手にした重機関銃を味方に向けて放っていた。

 

「いらっしゃいませ。お帰り下さい」

 

 部屋内に現れたのは大型になったスキュラだった。女性の上半身にタコの様な下半身。分析で手に入れた情報であるが、どうにも様子がおかしい。

 全身がボゴボゴと泡立ち、コウモリの様な巨大な翼が生え、人型のシルエットを取って行く。全身は緑色に泡立ち、頭部は髭の様な触手が生えたタコ状の物になっていた。

 

『まさか。『異界』レベルのモンスターか? 聞いてないぞ。』

 

 リーダーが多少の動揺を見せたが、状況は待ってくれない。

 アタッカーは引き続き味方に攻撃するし、周囲に現れたマナBB達も襲い掛かって来る上、スキュラ改め『唄う者』も攻撃の合間に発狂攻撃を仕掛けて来るので、これにはアメリカチームも苦戦を強いられていた。

 

『リーダー。アミュレットの耐性程度では貫通して来ます。今はイヤーフィルターでカットしていますが、マナBB共の動きが』

 

 29階までに見て来たマナBB達は雑な攻撃を仕掛けて来る程度だったが、今は明確に顔面。特に耳付近目掛けての攻撃が多い。イヤーフィルターを破壊しようとして来ているのは明白だった。

 雑魚を蹴散らしつつ、3人は反撃を試みていた。唄う者に銃撃を加えるが、表面の泡だった肌が弾けるばかりで、明らかに本体に届いていない。

 

『リーダー。あの肌、ディアクティブアーマーみたいになっている』

 

 狙撃手が淡々と告げていた。幾ら銃撃しようとも泡だった肌に阻まれるので攻撃が届かない。打開する手段があるとすればと、科学兵の方を向いた。

 

『道は俺が開く』

『了解』

 

 リーダーが走り出すのと同時に科学兵も走り出し、周りのマナBB達は狙撃兵がサイドアームズのサブマシンガンで追い払っていた。

だが、操られているアタッカーはそうはいかない。狙撃手を攻撃しようとするが、纏わりついているマナBB達に阻まれて通らない。

 

「~~♪」

 

 咆哮、命令、銃撃音に混じってフロア内には唄う者の音色が響いていた。

 

――

 

「先の中国チームと違ってチームプレイが強いな」

 

 バフォーの意見に頷く。中国チームは蚩尤の動きに皆が合わせると言った具合だったが、アメリカチームはリーダーが皆に動きを合わせているといった感じだ。だからこそ、アタッカーを洗脳できたのはデカい。

 

「なら、私もスキュさんとのコンビでこの状況を打破してやりたいね」

「マナBB共をどうするつもりで……」

 

 と言った所で、バフォーも察していた。BBと言うのはネット上のミームになる上で作られる素材みたいな物だが、そこは人に嫌がらせをすることにかけては余念がないネット民共の創作物。

 

「音割れポッターとか。ウォーリーを探さないで。とか知っているか?」

「なんてしょうもないことを考えているんだ……」

 

 まともな力で勝てないなら、マトモじゃない方法で勝つまで。なんだか、初期の頃の空気みたいになっていて、心なしか自分でもワクワクしていることに気付いた。私はマナBB達にとある挙動をするように命令を掛けた。

 

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