TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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25日目:第二陣 その3

 アメリカチームは準備を怠っていた訳ではない。パワーアーマーは物理的な防御力だけではなく、異常状態に対する耐性も大量に付与している。

 唄う者が間断なく錯乱系の呪文を撒き散らしている中で行動できていることからも、彼らの装備の高性能ぶりが見て取れた。

 

『(リーダー。マナBB達の動きが変わった)』

 

 ドローンも含めてフロアを俯瞰していた科学兵から通信が入る。

 先程まではマナBB達が闇雲に攻撃して来るばかりだったが、皆がピタリと動きを止めた。次の瞬間。

 

『ヌゥン! ヘッ!ヘッ!ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛↑ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛!!!!』

 

 フロア内を満たしていた歌声を吹っ飛ばす程の咆哮が響いた。

 ウジャウジャいるマナBB達が一斉に叫ぶのだから声量の暴力。劈くという表現がしっくり来る一撃だった。仮にでもマナで編まれたモンスター達が同時に放つのだからダメージが入らない訳がない。

 

『ギャアアアアアア!!』

 

 先程まで洗脳されていて、イヤーフィルターを下ろしていなかったアタッカーが正気に戻ると同時に床を転げ回っていた。

 

『リーダー! フィルターが!!』

『突っ込め!!』

 

 今まで、大立ち回りしていた彼らが急遽攻勢に転じたのはチャンスを掴み取ったからではない。そうせざるを得ない状況に追い込まれたからだ。

 リーダーが道を切り開き、科学兵が周囲の敵を蹴散らし、撃ち漏らした物を狙撃手が片付けて行く。アタッカーも辛うじて立ち上がろうとしていたが、平衡感覚がイカれているのか立つことができないでいた。

 

『畜生! なんで、立てねぇんだ!!』

「あらあら。そんなに慌てたら、上手くいきませんよ。唄でも聞いて落ち着きましょうよ」

 

 再びフロアを音色が満たす。イヤーフィルターが破壊された以上、コレを食らったらチームが同士討ちをして潰れる未来しかない。アタッカーが声を上げた。

 

『リーダー! 俺を使え!』

『……了解!!』

 

 リーダーの体からマナが溢れ、湧き上がった力を持ってしてアタッカーを唄う者の方へと投げつけた。パワーアーマーを加味した質量はそれなりの物であるが、一撃となる程の物ではなかった。

 

「ははーん。まさか、私を巻き込んで自爆しようとしています? 私はミツバさんの様に油断はしませんよ」

 

 すると、どうだろうか。組み付いて来たアタッカーをまるで保護する様に、唄う者の肌から溢れ出て来た泡が彼を包み込んでいた。

 

『テメェ……!』

「じっくり、溺死させて――」

 

 事前に同僚の失敗を目の当たりにしていたこと、相手の目論見に即座に対処できたこと。故に、スキュラは油断していないと思っていた。

 後は、この歌声で彼らを狂わせて同士討ちを誘うだけ。と思っていた彼に、いつの間にか飛ばされていたドローンが接近して来た。

 

「ッシャァ!」

 

 触手を振るってドローン達を叩き落した。危なかった。まさか、追加で来たドローンで起爆させるつもりだったのか。油断した所の一撃に感嘆の溜息を漏らした。なんと執念深いのだろうと。

 

「ここで終わりですね!」

『お前がな』

 

 弾いたはずのドローンの後方から飛来する人間が1人。狙撃手だ。

 一体、何処にいたのかと言う思考には意味は無いが、視界の端に移ったドローンから垂れ下がっているワイヤーに気付いた。

 それと同時に狙撃手がアタッカーを包んでいる泡をライフルで吹っ飛ばし、彼のパワーアーマーに近付き、通常ではまず分からない様な所にあるパネルを開いてコードを入力していた。

 

「き、貴様ァ!!」

 

 直ぐに湧き上がった泡が2人を包み込もうとするが、狙撃手も同じ様に自らのパワーアーマーのパネルにコードを打ち込んでいた。

 2人の全身に取り付けられていたアーティファクトがオーバーロードし、マナが暴走して臨界点に達した時。唄う者の至近距離で大爆発を引き起こした。

 

――

 

「ようこそ。最深部へ」

 

 最深部へと辿り着いたアメリカチームのメンバーは2人だけだった。スキュさんの尽力ぶりには称賛を送りたい。

 

『確認するぞ。お前を倒せれば、誘致できるという認識で良いな?』

「相違ない。それじゃあ、やろうか!」

 

 契約の確認を済ませた後は2対1の戦いだ。黒槍で貫こうにも、あの装甲に阻まれるのは目に見えている。なので、戦い方を変えることにする。

 広げた翼を持って飛翔する。もしも、狙撃手やアタッカーまで生存していたら蜂の巣にされそうだが、2人の射撃程度ならどうにでもできる。

 

「(貫くのは無理。接近するのも難しい。と、なったら)」

 

 前回の戦いで大量のマナが手に入ったので、ミツバちゃんやスキュさんもやっていたようなことをしようと思う。ツーマンセルで動いているので、まとまっているのは非常に助かる。

 手に黒槍を出現させ、大量のマナを送り込む。槍は急速に大きく、質量を増していく。そして、できたモノを彼らに向かって落とす。

 

『うぉおおおお!』

 

 リーダーがスキルを使って、落した物を受け止めていた。科学兵を守る為だろう。投げ返そうとしていたが、動きを止めた相手にやることは1つ。

 

「バン」

 

 如何にパワーアーマーが堅牢だとしても、その下にある肉体に直接攻撃をすれば関係のない話だ。幸いにして、相手側の魔力抵抗(レジスト)もぶち抜いたのか、リーダーの体がガクンと崩れ落ちた。

 

『なん、だと?』

「昨日の中国チームはもっと歯ごたえがあったけれどねぇ」

 

 と言っても、モンスターもボスも強化されて疲弊していたのだから仕方がない。こうも簡単に倒せるとは私さえも思っていなかった。

 この調子で行けば、案外。他のチームも簡単に倒せるんじゃないんだろうか? 残ったのは科学兵。小回りが利く相手だが、順当に勝負すれば1対1で負ける相手ではないだろう。同じ様に超大型黒槍で圧し潰そうとしていると、彼のタンクに大量の噴出口が現れた。

 

『嘗めるなよ』

 

 大量のガスがフロアを覆う。毒ガスだとしても私には問題ないがどうにも嫌な予感がする。何をするつもりだろうとか考えた次の瞬間。視界が光に覆われた。次に大量の熱が襲い掛かって来た。

 

「(ま、まさか! コイツ!?)」

『燃えろ!』

 

 何のガスかは知らないが可燃性の物だったのだろう。フロアが燃え盛る。

 私がモンスターだとして。一酸化炭素中毒などになることがないにしても気管支や全身を襲う熱に対して完璧な耐性がある訳ではない。

 向うも無事で済むとは思わないが、パワーアーマーの防御力で無理矢理行動している。手にはリーダーが使っていたと思しきライフルが握られており、こっちに向けてぶっ放して来る。

 

「(ダメだ。こんな状況で飛翔なんてできない)」

 

 炎は上へと向かっていく。こんな状況で飛翔なんて自殺行為だ。故に、私は目の前の相手に地上戦を強いられている。

 射撃と投擲の応酬が繰り広げられるけれど、向こうの攻撃は通るのに、私の攻撃は通らない。かと言って、近付けば化学兵器の餌食になる。どうしたものかと考える。……そもそも、どうして相手の攻撃が通るのかと考えていたら、私には盾がないからだと思い当たった。即席で黒槍を何本も束ねたのを作り上げて、シールド代わりに使った。

 

「(いや。待てよ?)」

 

 そもそも、黒槍を生やせる物だとしたら。こんな風にシールドみたいな形を取る必要はない。もっと適した使い方があるハズだ。

 相手は変わらず引き金を引き続ける中。私はお手本を倣って、自身の想像を確かめてみることにした。

 

『!!』

 

 身体の表面に黒槍を浮かす様な感じ。かなりグロテスクな見た目になっているが防御力は問題ないと判断して、一気に接近する。

 相手も銃火器をマウントしてスレッジハンマーを取り出していた。振り上げた槌が私の頭を砕くか、それとも全身に生やした黒槍が相手を貫くかと言う一瞬が交差する。

 科学兵が振り下ろしたスレッジハンマーが頭部を覆い黒槍ごと私の頭骨を砕く。それより先に突き出した拳がパワーアーマーの表面に弾かれて。

 でも、相手の体に触れることができた。堅牢な鎧の下にある生身の肉体に向けて、掌から黒槍を生やす。心臓を串刺しにする。

 

「ぐっ……」

 

 だが、スレッジハンマーはミリミリと私の頭を潰す。あと少し、力が入ったら完全に頭部が粉砕されるか否かと言う所で、だらりと力が抜けて。相手が崩れ落ちた。スゥっと科学兵の体が消えて行く。入り口に戻ったのだろう。

 

「あひ」

 

 私も程なくして崩れ落ちた。楽勝だなんて、そんな訳がない。今回は非常に運が良かったが、きっと。次はこうはいかないだろうという確信があった。意識を手放した。

 

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