TSする呪いを掛けられたので、原因となるダンジョンを防衛する   作:ゼフィガルド

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26日目:第三陣 その3

 エムリスとアレクセイ達によ48人PTは、現状を顧みれば正しい選択だったと言わざるを得なかった。

 異形と化したマナBBの猛攻に加えて、フレンドリファイヤすらも気にしない物理攻撃に加えて、あらゆる耐性を突破する異常付与をばら撒く『唄う者』の猛攻は4人PTでは到底耐えられる物ではなかっただろう。

 

「エムリス!! どうにかしろ!!」

 

 アレクセイ達もよく立ち回っているが、全てが前代未聞の状況故に反攻に転じることができずにいた。むしろ、ロシアチームが誰も欠けていないことから、彼らもやはり高ランク探索者に見合うだけの実力があった。

 一方、エムリスの眷属達は猛攻に耐え切れずに次々と消滅させられていた。コレには彼も冷や汗を浮かべていた。

 

「君達! ここから先は『円卓(ラウンズ)』の力は借りられないと思ってくれ!」

 

 残っていた眷属達と装備はエムリスの『大剣』と『大盾』に取り付けられた水晶へと戻って行く。破損した鎧と鎧、そして大盾が姿を変えて大剣と組み合わさり、超大剣とでも言うべき姿になっていた。

 各所に取り付けられた水晶が鳴動して、刀身から放たれる光が異形と化したマナBB達を焼き払う。

 

『――さ―』

 

 フロアを冒す凶器を焼き払い、引き裂きながらエムリスが肉薄する。迫り来る触手を切り飛ばし、正気を揺さぶる咆哮も掻き消される。

 それでも、遠距離から攻撃を仕掛けようとする有象無象はアレクセイ達が対応していた。

 

「いけぇ!」

 

 大量の触手を叩きつけようとするより、エムリスが振るう方が早かった。刀身から伸びた光刃は逆袈裟に振り抜かれ、触手はおろかフロアの壁すらも切り裂き、ボスモンスターの胴体を完全に真っ二つにしていた。

 

『――|――』

 

 切断面から放たれた閃光がフロアを覆う。異形と化したマナBB達が消し飛び、室内を満たす濃度の高いマナを吸収しきれなくなった、アレクセイ達のパワーアーマーは警報を鳴らしていた。

 

「リーダー! アーマーが!」

「それよりもアイツだ!」

 

 全てのモンスターが一掃された後、アレクセイ達は膝をついているエムリスへと駆け寄った。

 

「おい、大丈夫か?」

「すまない。円卓(ラウンズ)達はもう使えない」

 

 彼の装備品に取り付けられている水晶を見れば、いずれも輝きを失っているか、あるいはひび割れていた。だが、アレクセイ達は気落ちしていなかった。

 

「だけど、俺達は誰も欠けちゃいねぇ」

「強がっちゃって。君達の便利な吸収機君も壊れているじゃないか」

 

 先の一撃の余波もあり、アレクセイ達のパワーアーマーも一部破損していた。

 特に、マナ吸収機構の損傷は問題であり、大気中のマナを取り入れることで常時発動できていた分身に制限が掛かるとすれば、戦力の大幅ダウンは否定できない。が。

 

「問題はねぇ。あんな化け物倒した英雄サマがいるんだからよ」

「……意外だ。君、実は結構ノリが良いんだね」

「お前も、呆けたツラするんだな」

 

 饒舌なエムリスにしては直ぐに返事をしなかったことを察してだろう。2人して、小さく笑った。最後の挑戦に向けて、4人は休憩を取ることにした。

 

――時間は少し前後して

 

「なんか。思ったよりもあっさりやられたな」

 

 てっきり、創造主様? が全員始末してくれるものだと思っていたが、あの無茶苦茶な人数を減らしただけで終わってしまった。それでも十分凄いが。

 

「エムリスと言う男が使っていたアーティファクトが規格外だったというのもあるのだろうが、何より……」

 

 バフォーが視線を向けた先。そこにはカリカリに瘦せこけたスキュさんがいた。説明はされていないが、何があったかは薄っすらと察しがつく。

 

「あの状態のスキュさんでもマシンパワーが足りていない感じで?」

「全く足りとらん。ミニ四駆にスポーツカーのエンジンを搭載している様な物だ」

「よく、スキュさんの全身吹っ飛ばなかったねぇ」

「極当たり前の様に、私の体が爆発四散する予定だったみたいに話すの止めて貰えますか……」

 

 カリカリに痩せたスキュさんが残された力でツッコミをした後、パタリと倒れた。残す番人は私だけとなった訳だ。それと気になったことがもう一つ。

 

「創造主様はどこに行ったんだ?」

「知らん。ただ、ここに戻って来ていないからダンジョン内を散歩しているんじゃないんだろうか」

「上司に職場を歩き回られるって生きた心地がし無さそうだよね」

 

 だけど、戦力を削いでくれたことには感謝している。相手の装備品にも少なからずのダメージが入っているし、後は頑張るだけだ。

 とか思っていると、頭上から黒い靄が降りて来た。黒カビでも降って来たのかと思ったが、噂をすればと言う奴か。

 

『――! |_!』

 

 ポコンポコンと黒い靄から青白い光が放り出されていた。ニワトリの産卵を思い出すが、これは一体なにを生み出しているんだろうか?

 

「先のフロアで大量に飛散したマナを搔き集めて来たそうだ。……え、いや。あの。その。ちょっとそれは性急すぎるんじゃ」

 

 急にバフォーが慌てたので何事かと思ったが、もう遅い。件の青白い光は私の中に入り込んでいた。

 

「うぉおおおい!?」

 

 奇妙な感覚だった。全身が猛烈に暑いのに、頭の中は最高の睡眠を取ったかのように冴え渡り、階下から響いて来る足音や会話内容さえ聞こえそうだ。

 全身から力が湧き上がるとはこのことか。映画とかじゃ、力を手に入れて酔いしれる。と言うのは定番の破滅コースだが、なるほど。この高揚感を前にしては、正気でいられる気はいない。

 

「創造主様! コイツは元・人間です! あまり無茶は!」

『―?』

「む……。いや、それでも私も巻き込んだ手前。見捨ててはおけぬのです」

 

 本当にコイツは悪魔なんだろうか。力に酔いしれている私の方が、余程悪魔っぽい気がするんだが。

 鼠径部、胸部、上腕部、脚部が黒い獣毛に覆われ、頭頂部から生えていた巻角も変形していた。この状態を知っている。恐らく、今の私の同行部分はヤギと同じく四角い形を取っていることだろう。

 

「バフォー。だったら、見守っていてくれ。勝てば同期が残り、負ければ心配事が消える。君が損することはないさ。それに」

「それに?」

「探索者として。探索者を試すって、やっぱり面白いんだよね」

 

 その言葉にバフォーは感銘を受けたのか、何かを言うこともなく頷いた。

 扉の前まで探索者達が来ている。バフォーと創造主は姿を消した。コレから対応するのは私一人。ギィと扉が開かれた。

 

「やぁ、レディ。迎えに来ましたよ」

「コレは丁寧にどうも。ジェントルメンは歓迎しているよ」

 

 ノリで返したが、言ってから滅茶苦茶恥ずかしくなった。

 創造主の邪魔さえ入っていなければ、彼らは確実にダンジョンをクリアしていた。だけど、そうはならなかった。

 アレクセイと呼ばれていた男達が動く。例の分身スキルを発動させていた。発動しっぱなしと言う訳にはいかないだろうが、単純に手数を増やすというのがどれだけ強いか。と言うのは、散々見て来た。

 こちらもマナBBを出現させて……とか思っていたが、小細工は要らない。強化された脚力で天井まで跳ねて、適当な1人に狙いを付けて。発射する。

 

「避けろ!!」

 

 アレクセイが叫ぶ、エムリスが大剣を構える、反応できた1人は横っ飛びに回避していた。避け切れなかった1人をアーマーごと踏み潰していた。

 倒したという余韻に浸る間もなく、先程までいた場所を大剣が通り過ぎて行った。続いて銃撃を食らったが、これは手で掴み取ることができた。

 

「返すよ!」

 

 マナでコーティングしてガチガチにした後で、お返しした。エムリスは避けていたが、アレクセイ達のパワーアーマーにめり込んでいた。

 

「さぁ、折角4人で来てくれたんだ。私を攫う気概を見せてくれよ」

「紳士として甲斐性の見せどころだけれど。いや、きついねコレは」

 

 今までの高ランク探索者達と違って、エムリスとの会話は割と楽しい。

 なるほど、バフォーやクモ男がボスとして色々と拘る理由も分かる気がする。とは言え、今回ばかりは結果は半ば分かっていたが、私自身の3度目となる防衛戦が始まった。

 

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