まのさばNGif集 作:ミズハ
①一匹ぐらいもっていっても…バレへんか
「こ、これは……どうなんでしょう……?」
牢屋敷に集められた13人の少女達。
12人を集めたその黒幕は今……困惑していた。
「はいはーい!私は橘シェリーっていいます。事件あるところに私あり!
この名探偵にお任せ下さい!」
「全員私に注目―!私は蓮見シェリーっていいます。リーダーはこの私に任せて下さい!」
「私の名前は、二階堂シェリーっていいます!正しい行為が大好きな私です!自殺はこのシェリーちゃんの目が黒いうちはさせませんよ!」
「ボクの名前は桜羽シェリーです!ひとりぼっちにしちゃ、ダメですよ☆」
「ウチの名前は紫藤シェリーですっ!皆さんと慣れ合う気がありませんでしたが、特別ですよー!」
「おじさんは佐伯シェリーですっ!あははーよろしくです!」
【わがはいの名前は夏目シェリーです!訳あってあまり声が出せませんが仲良くして下さいっ!】
「黒部シェリーです!ここにはお姉ちゃんを探しにきました!」
「沢渡シェリーですっ!配信活動をしているので、皆さん見て下さいねっ!」
「宝生シェリーっていいます♡かわいい子ばかりで、危ない気分になりますねっ!」
「のあの名前は城ケ崎シェリーっていいます!絵をかくのが大好きな私と仲良くして下さいっ!」
「遠野ハンナですわ……お見知りおきあそばせ……せ?えっとこれはドッキリかなにかですの?似たようなテンションの人……シェリーさん?たちが沢山居て訳が分からなくなってますわ」
すると、ドドドドッッ!!と11人のシェリーたちが凄まじい勢いで遠野ハンナと名乗った少女に群がりはじめる。
「「「よろしくお願いします、ハンナさんっ!」」」
「ぴっ……!」
なぜか人気のようだ。とんでもない光景にハンナは短い悲鳴を上げた。シェリーたちは全員テンションが高く、全員いつも笑顔で、全員道徳心がなさそうだ。
シェリーたちに囲まれるハンナを見ながら、メルルはこのカオスな状況の感想を呟いた。
「このシェリーさんたちの中に大魔女様がいるのでしょうか……?」
「メルル様、ツッコム所はそこではない気がします。そもそもどうやってこの能天気なシェリーさんたちにストレスをためさせるんですか?」
「……それは、今から考えましょう!」
その後、ハンナを狙ったメルルがシェリーちゃんたちの友情パワーで返り討ちにあうのだが……それはまた別のお話し。
②密着!医療従事者ドキュメンタリー24時!
「マーゴさん……しばらく安静にしていて下さいね」
メルルは医務室で、看守の鎌に切られたマーゴの治療をしていた。
「ありがとうメルルちゃん、体のほてりを鎮めておくことにするわ♡」
「はい……なんとか出血死にはならなくて済んで、良かったです」
メルルは心中でほっとする。少女が苦しむ姿を悲しんでいるのも彼女の本心だからだ。
「大丈夫です、医務室でじっとしてればきっとよくなります!」
メルルが胸の前でグッと拳を握りしめたその時……なにやら慌ただしい足音がして、医務室のドアが開かれた。
訝しむメルルの前に血相を変えて現れたのはヒロだった。
「大変だ……シェリーとノアが気を失って倒れている!」
「ええっ!?大変です!シェリーさん、ノアさんっ!?」
メルルは慌てて意識のないシェリーとノアに駆け寄った。
「完全に意識を失っています……予断を許さない状況です……!」
原因不明の昏睡状態。それがメルルの見立てだった。原因ははっきりと分からない。
「……信じ難いことだがどうやら、この2人は睡眠薬を過剰摂取してしまったらしい」
「オーバードーズですか……うう……シェリーさんはマーゴさんがこうなってしまったので分かりますが、ノアさんもそこまで思い詰めていたなんて」
心配しつつもメルルは少女達にストレスが溜まっていることで内心少しだけ安心していた。
「いや、おそらく睡眠薬の拾い飲みだろう。近くにビンが落ちていた」
「そ、そうなんですか……」
メルルが2人の行動に衝撃を受けていると、また慌ただしい足音が聞こえ今度はレイアが現れた。
レイアはナノカを抱えている。この時点でメルルはとても嫌な予感がしていた。
「メルルくん!ナノカくんが野外で毒草を食べて中毒症状を起こしてしまったんだ!ひどい容体だ、至急手当をた……あれ?」
流石に医務室内のただ事ではない状態に気付いたのだろう、レイアも困惑している。
「レイアさん、ヒロさん……すみません、私が指示を出しますので皆さんの看護を手伝ってくれませんか?応援も欲しいです」
笑顔なメルル。しかし彼女から感じられる気迫に、レイアとヒロが一歩下がる。
「もちろん私も手伝わせてもらうよ、この状況ではそれが正しい行動だ」
「ヒロくんの言う通りだね、リーダーの私が責任を持って看病させてもらうとしよう!」
「ありがとうございます!」
流石にメルルも一杯一杯だ。大量出血のマーゴ、昏睡状態のシェリー、ノア、中毒状態のナノカ。それぞれ症状が違う上に全て命に関わる重症、しかも誰が死亡しても裁判にならない。ならばメルルが治すしかない。
「……よし!」
メルルが気合を入れると、また慌ただしい足元が聞こえた……。
流石に耳を塞ぎたくなったが、なんとか気力を振り絞って音の方向に向いた。
そこにいたのは真っ青な表情のエマと、ハンナと、アンアン。
「メルルちゃん、大変!ハンナちゃんが、ここが孤島だと気付いて魔女化しそうになってる!」
【わがはいの魔法で少し落ち着いたが危険な状態だ】
「ハンナ、『落ち着け!』」
「早く帰らないと……島に置き去りは嫌ですわ……!」
ハンナのメンタルが弱いことは事前調査で知っていたが、あまりにもタイミングが悪すぎた。
それにもうひとつ、メルルは医療関係者であったが故に気づいた。
気付けてしまった。
「アンアンさんも、今かなり貧血がひどいのでは……?」
「……っ」
メルルに指摘されると、それを待っていたかのようにアンアンの体が崩れ落ちた。
「アンアンちゃん……!」
エマや周囲の少女が何か言っているようだが、メルルの耳にはもはや入らない。
どうしてこの囚人少女たちは、2日目にして殺し合ってもいないのに半壊状態に陥っているのであろう?医療従事者の苦労も知らず。
メルルは低い声で話し始めた。
「ゴクチョーさん」
「はい!?どうしましたメルルさん?」
「予備のベッドがあるのでしたら用意して下さい。6人分必要です。あと牢屋敷の他の少女全員を、看護に回させて下さい。できますよね?」
「……も、もちろんですとも!」
慌てた様子でゴクチョーが飛び去って行き、数秒後牢屋敷にゴクチョーのアナウンスが響き渡った。
それからのことは、メルルはよく覚えていない。
病状が様々な少女達の看護は大変であり、しかも死んだところで裁判は行われず、いずれ殺すはずの少女達の看護を永遠としなければならない。
「……!」「……!」
看病し、看病し、看病する毎日に、終わりは見えなかった。
その献身的な行為は、あまりにも徹底的に、長期に及んだ。
繰り返される日常に絶望し、漆黒の闇がメルルを襲う。
「ああ、そうですね……」
ある日、唐突にメルルの強靭な理性の糸がぷっつりと切れた。
自分は今までどうして、我慢なんてしていたのでしょう……と。
(みんな治せばいい)
奇跡の光が医務室全体に及ぶ。
するとマーゴ、シェリー、ノア、ナノカ、ハンナ、アンアンの容態がみるみる回復していく。
「もう……これで、いいんです。」
メルルはそう呟いて、泣いている少女たちを視界の端にとらえながら静かに意識を失った。
数日後。ベッドで横になっているメルルにゴクチョーが話しかけていた。
「メルル様、これから囚人たちへのストレスはどうします?だいぶ想定外のことが起きちゃったみたいですけど」
「……もう疲れちゃいました。みなさん、私が魔女化しかかっていると勘違いしているみたいですし、みんな代わる代わる私の世話をしてくれて」
メルルは、弱弱し気に微笑んだ。看病して、看病される毎日。
それは大魔女が至上主義だったメルルの心を、ほんの少し動かしていた。
「国からの罰は私が受けます。それでも思っちゃったんです。みなさんと楽しく生きていきたいって。長い間牢屋敷の管理をしていたんですし、少しぐらいはわがままを言ってもいいですよね?」
「……はあ。全てメルル様のせいにしますが、かまいませんね?」
「……はい、かまいません」
メルルは力強く頷く。
「私にとっては、ほんの少しの短い一幕ですから」
HAPPY END ?