大勇者ゴローは美少女になりたい   作:匿名

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第1話

山本吾郎は最強の勇者である!

 

十八歳の時に女神に導かれこの世界に降り立ち早二十五年。

あまたの敵を屠り、国を救い、数々の偉業を成し遂げた。

 

最強無敵。不撓不屈の大勇者。

 

そんな彼には狂おしい程の願望があった!

 

 

 

「女の子になってチヤホヤされたい――――!」

 

 

 

首都の一等地に建てられた彼の屋敷。

 

一流の家具が並べられた煌びやかな部屋に御歳四十三歳の叶わぬ願いが吐露され消える。

 

 

そんな彼の傍でフワフワと浮かぶ桜色に光る光球。

 

擬似神霊バディが声を掛ける。

 

 

『YES! Master! ロングラン派の秘匿術式に性別変更の術式がございます。実行しますか?』

 

「絶対にノゥ! いいか!? バディ! 俺は可愛い女の子になってチヤホヤされたいんだ! あの術式は見た目が弄れん! 単に俺の息子がなくなり、オッパイを装備した所でチヤホヤされると思うのか!」

 

『確率計算中……終了。……マスター。確率なんて糞喰らえです』

 

「それラスボス戦とかに言うとエモいやつ!」

 

『YES! そう言えば大魔王と戦った時に私、言いましたね』

 

 

元々バディはゴローのチャートリアルの為に女神に遣わされた存在。

 

長い冒険を経て自我を確立し、あらゆる術式を学び行使出来る近接特化型勇者であるゴローの相棒である。

 

 

ゴローは改めて自分の身体を見下ろす。

 

身長210cm。体重160kg。

 

鍛えこまれた筋肉で武装した偉丈夫。

 

どう考えてもこれでは駄目だ。

エモくない。

 

 

『In the first place、マスターは魔力を身体強化に特化させていますから多少の術式は跳ね返してしまうのが問題です』

 

 

かつて大魔王の呪いすら跳ね除けたこの身体が憎らしい……!

 

無情な相棒の声を聞いて膝から崩れ落ちるゴロー。

 

 

「……ん? 待て。ちなみにさっきのロングラン派の秘匿術式とやらなら一応性別変換は出来るのか?」

 

『YES! ほぼ即死級の神呪魔法ですので、78%の確率で死にますが、22%の可能性で女性になれますよ』

 

「なんかリアルな数字出すの止めてくれる!? そこは普通99%失敗するけど、1%に賭けて成功するやつじゃん!」

 

床に頭を打ち付けて嘆くゴロー。

その姿には人間族最強の益荒男と魔族にすら謳われた面影は欠片もない。

 

 

「そ、それなら物理的に美少女になるのはどうだ?

肉を削ぎ落とし、骨格を弄ればあるいは……!」

 

『貴方、ドラゴンに噛まれても平気でしょ?』

 

「くっそぉおおぉお!」

 

 

かつて大戦の最中、大賢者コレトーに裏切られた時の様に嘆く救国の大勇者ゴロー。

 

その牙は世界を噛み砕くと謳われた最悪のドラゴン、世界竜ユグドラシルの牙を跳ね除けた我が身を呪う。

 

 

――――しかし、ゴローは決して諦めない。

 

例え相手が10万の大軍であったとしても引かずに戦い抜いた豪傑である。

 

 

「……考え方を変えよう。私自身を美少女に変化させるのは難しくても、美少女と融合すればどうだ? いや、この際皮を被る……バ美肉おじさんになる方向なら!」

 

『Oh! ……まさか女性を殺してその皮を……!』

 

「やるかっ! バ美肉おじさんはもっとバーチャルな存在だ」

 

『Hmm……。幻影魔法の一種でしょうか? それなら可能ですね。

しかし、幻影は幻影。あまりにも体型が変わると術式処理でエラーが起こります。』

 

「むう。高身長筋肉美女か……。ありだな。しかし、やはりここは王道のアイドル系美少女を目指したい」

 

『 Shaking My Head……。そもそも何で美少女なんです? 別に貴方は英雄として皆からチヤホヤされているでしょうに……』

 

 

独身ではあるものの、何だかんだと浮名を流すゴローである。

 

その筋肉隆々の見た目こそ人を選ぶが、フランクな性格とどんな無茶も有言実行して来たバイタリティ溢れる人柄故、その人気は未だに衰えを知らない。

 

 

「ふん。自我を確立したとは言え、まだまだ高尚な人間の考えを知ることは難しいみたいだな」

 

『ぶち殺すぞ。クソマスター』

 

バディはあらゆる知識を蓄えた知識の擬似神霊。

知識不足を弄られると怒る。

 

長年の付き合いであるゴローならではの軽口だ。

 

 

「俺はこの世界に召喚されてから戦い続けて来た。別に嫌だったわけじゃあない。むしろ性に合っていたんだろうな。しかし、それは所詮、血塗られた獣の道だ……」

 

小さなため息をついてゴローは遠くを見つめる。

その脳裏には今までの戦いが浮かんでは消えていった。

 

「最近思うんだよ。散っていった強敵達。良い奴も嫌な奴も怖い奴も悲しい奴もいた。彼等がいたから今の俺がいる。しかし、こうも思うんだ。

戦わない選択はなかったのかと……」

 

『マスター……。だから貴方はその姿を捨て戦わない道を……!』

 

「あぁ、そして何より――――」

 

伝説の大勇者はその万感の想いを込めて宣言する。

 

 

「俺には可愛い女の子になって皆からチヤホヤされたい願望がある!」

 

 

『OK。マスターの名前の予測変換に変態を追加しておきます。ちなみに、他は脳筋、馬鹿、熱血、なんか汗臭そう、空気読め男などがあります』

 

「お前、俺が何言っても傷つかないとか思うなよ!?」

 

 

これは世界を救った大勇者にしてTS願望を拗らせた狂人。

 

勇者ゴローの物語である。

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