朝、俺の部屋に不法侵入していたのは蒼い髪に蒼い衣装を着た少女だった。やっぱりと言うかおそらく彼女も怪獣娘だろう。
「確か名前は星野だったな!お茶をだすのだ!」
落ち着いた俺は厚かましくもお茶を要求してくる彼女に、
「お前はもしかしてテンペラー星人か?」
と、予想した彼女の名前を言ってみる。
「ん?名乗った覚えはないのにどうして私の名前を知っているのだ?」
やはり彼女はテンペラー星人だった。ウルトラマンタロウに登場した凶暴な極悪宇宙人の別名を持つ宇宙人だ。彼女は俺の部屋を見回すと、
「しかし、殺風景な部屋なのだ。お茶すらないのか?」
どうやらテンペラー星人は俺の部屋に文句をつけたみたいだ。
「急に押しかけられて文句言われる筋合いはないんだけど……。まあちょっと待ってろ」
俺はカップ焼きそばをお湯で作ると一緒に食べることにした。
「なんで私まで……」
「しょうがないだろ、朝飯を作れる食材なんて無いんだから」
カップ焼きそばを食べた後、洗面所で二人で歯磨きをしながらテンペラー星人は、
「しかしよくこの私の名前を当てたものなのだ」
「特撮好きでテンペラー星人のことを知らない人なんて少ないからな。あと俺が今まで会った怪獣娘って殆ど元がどんな奴か分かったからな」
「んん?妙な事を……」
そこまで言いかけて、
「あっ!急がないと学校に遅れるのだ!」
俺の部屋を出ていってしまった。どうやら彼女も円谷学園に通っているらしい。という事は俺も急いで支度しないと遅刻するな……。俺は急いで自宅を飛び出した。
◇ ◇ ◇
「やれやれ、ギリギリセーフかな?」
教室に滑り込んだ俺にバキシムが話しかけてくる。
「危なかったね。珍しくゼットンさんより遅かったよ」
ゼットンさんはすでに自分の席に着いていた。俺が「悪い悪い」と謝るとバキシムは苦笑いを浮かべる。
「今朝はテンペラー星人に絡まれてさ……」
「あー、テンペラーか」
テンペラー星人といえば元がウルトラマンタロウに登場した極悪宇宙人でかなり悪質な性格であったが、
「あの子はよく極悪って言ってるけど、良い子だと思うよ?」
「良い子かあ……」
良い子は人の家に不法侵入しないと思う。俺は思わず呟いた。
◇ ◇ ◇
昼休み。
今日は弁当を作る時間がなかったので購買でパンを買うことにした。購買に行ってみるとゴモラとベムスターがいた。ゴモラは唐揚げパンを買っており、ベムスターはサンドイッチを買おうとしていた。
「おう、二人とも」
「あ!星野君だ!奇遇だね!」
「ほんとだ。星野君も購買に行くんだ」
「おう。弁当作る暇なくてさ」
「そうなんだ。今日はパンの気分だったからパンにしたけど、いつもはベムがお弁当を作ってくれるんだ!」
「二人分の弁当を作るのは大変だよ」
そう言うベムスターだったが、表情的にそれに対して不満は無いようだ。俺は「仲が良いんだな」と言うと、二人は顔を赤くする。
「そんな事ないよ!」「そ、そうですね!」
その後三人で昼食をとった。ゴモラとベムスターはよく二人で行動しており、
「そうだ星野君も誘うってどうかな?」
という提案に対し俺も乗っかり、放課後に三人でカラオケに行くことにした。
◇ ◇ ◇
放課後。
教室で荷物をまとめているとテンペラー星人に呼び止められた。
「おい星野!今日こそお茶を頂くぞ!」
「また来てたのか……」
テンペラー星人は毎日のように俺の家に来るようになった。俺は彼女に、「お茶はないって言ったろ」と言い返すがテンペラー星人は引かない。
「私が今日こそ飲みたいと言ったら飲むのだ!」
「あのなぁ……」
「星野君どうしたの?」
テンペラー星人と押し問答していると、そこにバキシムとゼットンが現れた。
「テンペラー星人が急にお茶を飲みに来たいって言ってさ……」
「何言ってんのテンペラー?お茶なら自分で淹れればいいじゃない」
「ええい黙れ!私はこいつの家の雰囲気が気に入ったのだ!」
テンペラー星人は俺の家に上がり込もうとする。俺は慌てて「やめろって!」と言いながら彼女を引っ張る。それを見ていたバキシムがニヤリと笑った。
「面白いじゃん。私も遊びに行こうかな?」
「私も……、と言いたい所ですが姉の面倒を見なければならないので」
ゼットン……、なんか姉のゼットン星人先輩が要介護者みたいな言い方だぞ……。
「まあ、いいけど放課後既にゴモラとベムスターとカラオケに行く約束をしててだな……」
「あら?じゃあ、私達も行っていい?もう何人か呼んで来るし大勢の方が盛り上がると思うよ?」
「うーむ……。まあゴモラとベムスターが良いと言えばいいけど……」
そんなやりとりの結果、他にもウインダムやライブキング、メカギラスといったクラスメイト達も参加する事になった。合計10人以上である。そして、放課後のカラオケ大会が決定した。
◇ ◇ ◇
カラオケ大会が始まり、まずゴモラがマイクを握った。
「~♪~♪」
知らない曲だが、まあ下手では無いと思う。それに続き、怪獣娘達が順々に歌っていく。そして次は俺の番。何を歌おうか考えていると、横に座っていたテンペラー星人が話しかけてきた。
「貴様は何を歌うのだ?」
「うーん。邦楽しか知らないんだよな俺。アニソンは……あんまり……。最近は特撮ソングばっかり聴いてるからな」
「ほう?特撮ソングとな?それはどういう歌詞なのだ?」
「主題歌とか挿入歌のことだよ。ヒーロー物の音楽。知らないのか?」
「知らんな。だが、気になるぞ!」
テンペラー星人が興味津々なので俺は端末で検索する。するとヒットしたのが『ウルトラマンコスモス』の主題歌だった。俺はその曲を入れる。流れてきたイントロと共に俺は歌い始めた。
「~♪~♪」
歌い終えると拍手が起こった。隣のテンペラー星人も何故か真剣な表情で聞いていたようだ。
「なかなか悪くないじゃないか。だがこの歌詞は何だ?意味不明だぞ!」
「いや、それが魅力なんだよ」
「そうなのか?」
テンペラー星人は納得していないようだった。
その後もカラオケ大会は続く。しかし、女子ばかりで男子は俺だけだとなんか居心地悪く感じるな……。皆美人だし開き直れればいいんだが、俺のハートはどうにもヘタレなようだ……。俺がぼんやりしていると不意に肩を叩かれた。振り返るとバキシムがいた。
「どうしたの星野君?元気ないね」
「いや、別に……」
「嘘つかなくてもいいよ。私たちと一緒にいて退屈した?」
「そんな事はないけど……」
「じゃあいいじゃない。もっと楽しもうよ!」
バキシムはそう言って俺の腕を取ると強引にステージへ引っ張っていく。そして二人でデュエットすることになった。
「~♪~♪」
バキシムと歌いながら俺は思った。
(なんで女子に囲まれてるのに楽しいなんて感じるんだろう?)
それはきっと彼女達がみんな良い子だからだろう。そう思うことにした。
◇ ◇ ◇
放課後。俺はカラオケ大会の余韻に浸りながら一人帰宅していた。クラスメイトの怪獣娘達の楽しそうな様子を思い出し、思わず笑みが零れる。そういえば、生活基盤の事忘れてたな……。一応口座には結構金は有るし、当面は問題なさそうだけどアルバイトくらいはした方がいいかな?そんな事を考えながら街をぶらついてるとある店が目につく。
「『メトロン商店』……。もしかしなくてもメトロン星人がいるのかな?」
ウルトラセブンに登場したあの宇宙人が経営するお店みたいだ。怪獣娘達が通う街ならあっても不思議はないかもな。好奇心に駆られて店内に足を踏み入れた。
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店内には様々な商品が陳列されていた。食品から日用品まで何でも揃っている。店員と思しき人物が居る。赤い髪で上半身の露出が凄い衣装をした人だ。特徴的にこの人がメトロン星人なのだろう。それにしても今まであまりツッコまなかったけど、怪獣娘ってエッチい格好の子が多いなあ!こちらは男なので不必要にドキドキしてしまうぞ。
メトロン星人からちょっと目線を外すと『アルバイト募集中』と書かれた貼り紙が店内に貼ってあった。時給は800円くらいと安いが他に条件は特に書いてない。求人誌を見る手間が省けた。
「すいません。あの貼り紙の件で聞きたいんですけど」
俺はメトロン星人に声をかける。彼女は俺をじっと見てから言った。
「アルバイト希望?期待はしてなかったけど居るもんなんだねえ」
「えっと、募集してるんですよね?勿論今すぐじゃなくてもいいので面接を……」
「採用」
「え?」
「採用だよ。ただし雇うからにはきっちり働いてもらうからね」
「あ、ありがとうございます!」
思ったよりもあっさり採用されてホッとした。店長曰く、店は基本的に一人で回しているので助かるとのこと。早速勤務開始日を決めた。どうやら週3回くらい働く事になりそうだ。これでバイト生活スタートだ。貯金は沢山あるけど働く事は大切だからな。
◇ ◇ ◇
次の日の放課後。今日から仕事が始まる。早速俺は店へと向かった。メトロン星人ことメトロンさんに出迎えられた。
「いらっしゃい。じゃあ早速仕事を始めようか」
「はい。宜しくお願いします!」
最初の仕事はレジ打ちの練習だった。簡単なものばかりで難なくこなすことができた。次に品出しを教えてもらう。これもすぐに覚えることができた。他にも掃除や買い出し等色々あるようだ。
「まあ今日のところはここまでにしておこうかな。慣れない内は無理しない方がいいだろうしね」
「分かりました」
仕事を終えて帰ろうとするとメトロンさんから声をかけられた。
「明日からも頑張ってね!あ、それと……」
「?」
「ここの制服はコレだから」
そう言って手渡されたのは、白いエプロンだった。シンプルだな……。てかメトロンさんは着けてないよね?露出度的にこれが必要なのはメトロンさんなのでは……?そう内心思うが、口に出したらセクハラになりそうなので黙っておく。
「ありがとうございました」
俺はメトロンさんにお礼を言うと店を後にした。
◇ ◇ ◇
バイト生活は順調だった。仕事内容も慣れれば大した事はない。そしてバイトの合間を見てクラスメイトと遊ぶ事も増えてきた。そんな中、店先のカプセル販売機を回すダダを見かけた。ダダも円谷学園に通う怪獣娘の1人で、よくここのカプセル販売機でフィギュアを集めているようだ。
「調子はどうですか?」
ダダに話しかけると、
「またダブっちゃったよ……。もう少しシークレット出やすくしてよお……」
「いやー、俺は一アルバイトだし……、そんな権限は……」
「そっかあ……」
残念そうなダダだった。
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