牢屋敷の看守長   作:野良のなれはて

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第十一話

 

 

 

 

「…つまり、君がきた時には元々鍵は開いていて、佐伯ミリアの死体を確認して鍵を閉めた…というわけだな?」

 

「…そうよ。私は遠野ハンナたちが去ったのを確認した後、佐伯ミリアの脈を取って死亡を確認した…その後落ちていた鍵で閉めたの」

 

「なんでそんなことをしたんですか?」

 

「看守長は何度も佐伯ミリアの懲罰房に出入りしていた…なら、殺す機会があったのは看守長しかいない。犯人をわかりやすくするためよ。私たちが一致団結できるようにね」

 

「そんな証言、信用できるわけねぇだろうが…!」

 

「…そうね。私が本当の第一発見者な時点で、一番の容疑者であることは免れないでしょうね」

 

「だけど、もし私が佐伯ミリアを殺害したとしたら、わざわざ看守長に疑いを向ける必要がないと思うわ。全員処刑されてしまうもの」

 

「けれど私が見た時には佐伯ミリアが死んでいた…だから、鍵をかけて看守長が犯人だとわかるように仕向けたの…何かおかしいかしら?」

 

おそらく、黒部ナノカが言っていることは本当なんだろう。

しかし、それだと前の証言と食い違うところが出てくる。

 

「ちょっと待って。その時系列って…おかしくない?」

 

それは、遠野ハンナの証拠だ。

遠野ハンナが佐伯ミリアの悲鳴を聞いた後、入れ違いで黒部ナノカが懲罰房へと入った…それなら、佐伯ミリアが死んだのはいつになるのか?

 

「…でも、魔法という可能性もあると思うわ。看守長が佐伯ミリアを殺害した後、扉の魔法ですぐに移動した…これなら可能のはずよ」

 

「なら、ハンナちゃんたちが聞いたのは『断末魔』ということになるわね♡」

 

「…だったら、そもそも鍵が開いてるのはおかしいんじゃねぇか?看守長なら閉めたまま入れるだろ」

 

「『自分たちの中に犯人なんていない』と思いたいのはわかるが、新たに謎が出てきている以上、それを解決してから怪しむのをおすすめする。君たちが勘違いしている可能性もあるからな」

 

「そうですね〜…実は悲鳴が2人の勘違いだったとか、3人の証言に嘘が混じっているとか…」

 

「…ボクもそう思うよ、シェリーちゃん」

 

そこで、桜羽エマが賛成する。

 

どうやら、桜羽エマは遠野ハンナたちが聞いた声は勘違い…つまり偽装された音声だと思っているらしい。

なら、他者の声色を扱う宝生マーゴが偽装した…と橘シェリーが怪しむ。

しかし、桜羽エマは違う偽装方法を考えていたらしい。

 

「ミリアちゃんの声もハンナちゃんと同じく、『録音された音声』だったんだよ」

 

「それならたしかに、あのタイミングでミリアさんの声を聞く事は可能ですね!」

 

桜羽エマの言うとおりなら、黒部ナノカが見た時に死んでいてもおかしくない。

 

「ならそもそも…佐伯はもっと前から死んでた可能性があるって事か」

 

「犯人は、ミリアちゃんの死んだ時刻を誤認させるために、わざと悲鳴を聞かせたのかも…!」

 

「…私としてもそれなら納得がいくわ」

 

 

 

 

そこから私の疑いは一旦外れ、議論が進んで行く。

議論が進んでいるうちに私は鍵のことについて考え始める。

 

(録音音声については説明できるんだろうけど…なんで鍵が落ちていたんだろう…誰かが看守から鍵を奪った…?)

 

(看守は基本的に私かゴクチョーかメルルの言うことしか聞かないはず…何かしらの魔法?それとも力づく?いや、ありえないよね…)

 

私が鍵について考えていると、桜羽エマが日中電話をかけたことについて聞いてくる。

 

「ねぇ看守長、ボク、事件の前にミリアちゃんに電話をかけちゃったよね?」

 

「…ああ、かけていたな。あの時から拘束自体はしていたから、私が代わりに出たが…」

 

「でも履歴は残ってない…だから誰かがスマホのデータを消したんだ」

 

録音の仕掛けをしていたのなら、データを消した理由はそれがバレないようにするためだろう。

 

「なら、犯人は電話をしてた看守長か、部屋に入ったナノカのどっちかじゃね?」

 

「私はそもそもデータの消し方がわからない…」

 

「は?スマホのデータの消し方ぐらいわかるでしょ。脳みそ老化してんの?」

 

(う…実年齢はおばあちゃんだから何も言えない…メルルでも使えるのに…)

 

「…結局は私か看守長が怪しいということになるのね」

 

「でも当然、私はデータを消していないわ」

 

「…私も消していない」

 

私と黒部ナノカが睨み合っていると、桜羽エマが新たにもう1人データを消せた人物をあげる。

 

「いや…もうひとりいるはずだよ。スマホのデータを消すことができた人物が…」

 

「その人は…アンアンちゃんキミだ」

 

「…!」

 

桜羽エマが言うには死体を発見した際、佐伯ミリアのスマホを発見したのは夏目アンアンらしい。

 

「確かに、私は最後佐伯ミリアの部屋を出る際、ケータイを懲罰房の中に置いてきていた…夏目アンアンが最初に発見したのなら、データを消すことは可能だろうな」

 

「…わずらわしい話だ」

 

「やはり、ナノカが全てを仕組んだのだろう。わがはいは関与していない」

 

「…どうして私だけを怪しむのかしら?怪しいのは看守長もでしょう?」

 

「わがはいは前に医務室で、看守長が機械音痴なのは確認している。データの消し方を知らないというのも事実なのだろう」

 

「ならば、明確な動機もあり、アリバイの証明もすることができないナノカが犯人だろう」

 

「わがはいより、ナノカのことを疑うべきではないか?」

 

「んだてめぇ…突然べらべら喋りだしやがって…」

 

「…事件に関係ない発言は、『慎め』よ。わがはいが喋るという事はそういうことだ」

 

「ぐっ…!?」

 

それから夏目アンアンと黒部ナノカの

 

(今のが夏目アンアンの『洗脳』の魔法…使っているところは初めて見た…ん?『洗脳』…?あっ…!)

 

私はひとつの答えに辿り着く。

 

(夏目アンアンは洗脳で鍵を手に入れたんだ…!録音のトリックも洗脳を使えば自身に疑いが向かないように仕向けることができる…!なら犯人は———!)

 

 

 

 

それから少し時が経ち、今は『鍵はどこから来たのか?』について話し合っている。

しかし、今まで鍵のありかがわかっていなかった少女たちでは、答えは出ないだろう。

そこで、桜羽エマが私に聞いてくる。

 

「ねえ、看守長、鍵は看守と看守長の2人が持ってるんだよね?」

 

「そうだな。鍵は常に私たちが持ち歩いている。他に持っている人はいないな」

 

「つまり鍵はふたつある…看守長はさっき鍵を見せてくれたから、ナノカちゃんが拾った鍵は元々看守が持っているはずだったものだよね」

 

「ボクたちだけだと、鍵がどこから来たのか答えを出すことができない…だから、拾った鍵について看守長の意見を聞かせてほしい」

 

「…わかった。なら、証言しようか」

 


 

エマside

 

———審問開始———

 

「まず、基本的に鍵は私たち 2人が持ち歩いている。私は今まで鍵を持ち歩いていたから、その拾った鍵は間違いなく看守が普段持ち歩いている鍵だろう」

「なら、看守が鍵を置き忘れたり、盗まれる可能性はあるのかしら?」

 

「置き忘れた可能性はわからないが…盗まれることはないだろう」

「…なぜそう言い切れるのかしら」

 

「看守なら、透明人間だとしても気づいて殺すことができるからな。また、橘シェリーのように怪力の魔法で奪い取ろうとしても返り討ちにしてしまうだろう」

「なら、なんで鍵が落ちてんだよ…!」

 

「それは…わからないな。当時、看守が何をしていたのか聞けたら良いんだが…」

「…」

 

「なんも喋んねーじゃん!」

「無口だからな。私が命令したとしても喋ることはないだろう」

 

「なら、あなたに別のことを聞くわ。この看守に意思はあるのかしら」

「まぁ無いことはないだろう…生きているからな。だが、看守が自発的に殺したり、共犯者となることはないだろう」

 

 

———反論看守が共犯はありえる

 

 

「本当にそうなのかな…?看守が共犯の可能性はあると思うよ」

 

「…ほう?」

 

「だって、鍵の管理は看守がしてたんだよね?だったら、懲罰房の中に鍵があるのはおかしいんじゃないかな」

 

「仮にそれがナノカちゃんの嘘だとしても、ナノカちゃん自体が鍵を持っていること自体がその証言と矛盾する…」

 

「看守が今鍵を持っていないことが、看守長の証言と矛盾しているよ!」

 

「だが…看守が勝手に動いたとは思えない…ゴクチョーは命令していないよね?」

 

「もちろんです。そもそも、今日懲罰房に出入りする予定があったのはあなただけですよ」

 

「なら、尚更おかしくないかな?ナノカちゃんが持っている鍵はどう説明するの?」

 

「それは…わからないな。だが、誰かに命令されてという可能性はないはずだ…看守にそんな意思を持つことはできない」

 

「…桜羽エマ。君には看守を従わせる方法に心当たりがあるのか?」

 

「…あるよ」

 

「キミの『魔法』なら…看守を操れるはずだ!夏目アンアンちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

看守長side

 

そこから議論は進み、桜羽エマが佐伯ミリアに電話をかけたことによって夏目アンアンは犯人だと認めた。

当然、少女たちの投票は全員一致で夏目アンアンとなった。

 

「さ、さっさとコイツ処刑しよ!何されるかわかったもんじゃない!」

 

洗脳に怯えた様子の沢渡ココが叫ぶ。

そんな中、私は佐伯ミリアとの最後の会話を思い出す。

 

(佐伯ミリアをなんで殺したんだ…彼女は思いやりを持った優しい子だったのに…仲直りも…したがっていたのに…)

 

「業務時間外ですので、巻きで進行しましょう。大変申し訳ないのですが、皆さん、さっさと処刑ボタンを押してください」

 

次々と少女たちはボタンを押していく。

 

「はい、さっさといきましょう!これより、魔女の処刑を執行します〜!」

 

前と同じように、ゴクチョーが処刑台を操作し、私と看守が夏目アンアンを処刑台へと連行する。

連行している途中、夏目アンアンが桜羽エマを見て話す。

 

「何故だ…?わがはいは、友達だと、思っていた」

 

「ようやくあの日々が取り戻せたはずなのに」

 

「また一緒に映画を見ようと、約束したじゃないか」

 

(桜羽エマと夏目アンアンは仲が良かったのかな…?それにしては桜羽エマの顔色がおかしい…?)

(…とりあえず私は仕事をしないと)

 

私は喋っている夏目アンアンを気にせず連れて行き、人形劇のような処刑台に立たす。

すると、垂れ下がっていた糸が夏目アンアンに巻き付く。

 

「あらまあ、皮肉ね。人を操るあなたが操り人形にされてしまうなんて」

 

「みんなを操っておっさん殺したんだし、当然の報いじゃね」

 

「なんでおっさん殺したんだよ!ねえ!」

 

「ミリアちゃんじゃない…」

 

桜羽エマがぽつりと言葉を吐き出し、注目が集まる。

 

「アンアンちゃんが殺したかったのは、ボク、だったんだね…」

 

(…え?何を言って…)

 

「?何を言うのだ?お前は、佐伯ミリアの中身だろう…?」

 

「言ったじゃないか、あの時中身を入れ替えた…って…」

 

(なるほど…佐伯ミリアは嘘をついたのか…あの子は優しい子だから、きっと、夏目アンアンが桜羽エマに殺意を抱いているとわかった時、それが、自分に向けられるようにしたのだろう…)

 

(でもそれじゃ…あまりにも…)

 

報われない。

 

「そんな、そんなのって!!」

 

「違う!わがはいが殺したかったのは、ミリアじゃない!エマだ!」

 

(でもなんで、桜羽エマを殺したいと思ったんだろう…動機がわからない…)

 

同じことを思ったのか、橘シェリーが質問する。

 

「教えてください、気になるんですよ。なんでエマさんを殺そうと思ったんですか?」

 

「殺したかったのがエマさんだと判っても、その動機がどうしてもわからなくて」

 

「そうよ、一体なんでですの!?エマさんはみんなを脱出させるって誰より頑張っていたじゃありませんの!」

 

「…それが嫌だった!」  

 

「わがはいは、ここから出たくなかったんだ!」

 

どうやら夏目アンアンは、ここで生活することが望みだったらしい。

おそらく脱獄を目指している桜羽エマたちとは、意見が合わなかったのだろう。

そのストレスが徐々に膨れ上がり、殺人をするきっかけになってしまった。

 

そこで、ぷっと、宝生マーゴが噴き出す。

 

「満たされてはいけないなんて、エゴでしかないわね」

 

「だってあなた、ここでの暮らしに満たされていたんでしょう?」

 

「あなたは幸せな暮らしを手に入れたくて、身勝手に佐伯ミリアを殺したのよ」

 

その言葉を聞いた夏目アンアンは、もがいていた体をピタリと止める。

おそらく、禁忌に踏み込んでしまったのだろう。

 

「そう、か…わがはいは幸せだったのか…」

 

「満たされたくて、またやってしまったのか…」

 

夏目アンアンの瞳から、つうと雫が頬を伝う。

操り人形と化した夏目アンアンは鋭利なナイフを持たされる。

それから、ナイフで自身の首元を切りつけていく。

夏目アンアンは絶叫し、復活と再生を繰り返す。

 

(殺し合いさえなければ、ここで静かに暮らすっていう選択肢もあったんだろうな…本当に、ごめんなさい…)

 

「これにて終幕になりますので、彼女は永遠の牢獄へと閉じ込めます」

 

仕掛けが作動し、処刑台が入れ替わっていく。

 

「やれやれ、やっと帰れます…これにて閉廷とします!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

裁判が終わり、私は佐伯ミリアがいた懲罰房に訪れていた。

死体は片付けられているが、少し血生臭さが残っている。

私は椅子に腰掛け、項垂れる。

 

昨日の昼までは元気とは言えないが、少しの希望を持って生きていた。

私も普段囚人と話すことは中々なく、今回は少し情が移ってしまった。

 

(ダメ…だよね…看守が囚人に情が移るなんて…でも…せめて、仲直りぐらいはさせてあげたかったなぁ…)

 

(…私にそんなこと思う資格なんてないよね)

 

「はぁ…」

 

ため息を吐いた後、椅子から立ち上がって懲罰房から出るとゴクチョーが飛んでくる。

 

「おや、看守長ですか。ここで何を?」

 

「…何もしてないよ。ただの見回り」

 

「そうですか…まぁ良いでしょう。あまり囚人に情を移さないでくださいね。それがあなたのためですから」

 

「わかってるよ…」

 

「それと、一応言っておきますね。最近裁判で証言することが多いみたいですが、犯人に誘導するような証言は控えてくださいね」

 

「はいはい…と言っても、怪しまれた時と、証言を求められた時以外は話してないでしょ…それに、ゴクチョーの仕事も減るからいいでしょ」

 

「本当にわかってるんですかねぇ…まぁ、一応言っておいただけです。気をつけてくださいね」

 

それだけ言いゴクチョーは飛び去っていった。

 

(はぁ…こんなのいつまで続くんだろう…メルルのためにも、早く大魔女見つかってくれないかな…)

 

それから私は懲罰房を離れた。

 

 

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