牢屋敷の看守長   作:野良のなれはて

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三章
第十二話


看守長は、ハルちゃんって名前なんだね!

 

外の家族に会いたいよ…なんでこんなことになっちゃったのかな…

 

ねぇ…ハルちゃん…なんで裏切ったの…

 

私たち友達だったでしょ!ねえ!!

 

 

「っ…!」

 

「はっ…はっ…」

 

佐伯ミリアが死んで数日が経った。

あの裁判が終わってから、ひどい悪夢を見ているのか、私はまとまった睡眠を取れないでいる。

最悪なのが、悪夢の内容を私は覚えていないということだ。睡眠から覚めたと同時に、夢の内容が思い出せなくなってしまう。

それから私は何度も仮眠を取ることが多くなってしまった。

 

(気分が悪い…頭も痛い…水を飲みに行こう)

 

「んぐっ…はぁ…」

 

食堂で水を飲みながら、最近の少女たちのことを考える。

あの裁判以降、少女たちの仲は険悪になり、1人行動をする子が多くなった。

佐伯ミリアの存在が大きかったのもあるだろうが、一番は脱獄計画が最悪な形で終わったのが原因だろう。

もうみんな誰も信じれなくなってきている。

唯一、桜羽エマのグループのみ仲が良好のようだった。

 

(でも、メルルがいるから時間の問題だろうな…)

 

 

 

 

 

 

エマside

 

裁判から数日が経った。

最近エマは熱を出していたが、今日は熱が引いて体が軽くなっていた。

すぐにエマは3人に連絡し、ピクニックに行くこととなった。

 

(今日こそみんなで息抜きをするんだ…!)

 

それからエマたちは花畑に訪れていた。

エマはシェリーたち以外の少女たちも誘ったが来ることはなかった。

 

(みんなにも声をかけたけど…やっぱりこの4人になるよね…)

 

「ここ見晴らし良いですよね〜!」

 

「常に虹が出てるの不気味ですけど、こういう時はなんだか嬉しくなりますわね」

 

シェリーとハンナが見渡していると、遠くに木陰にもたれかかった人影が見えた。

 

「あれ?あそこに人がいません?」

 

「え…?本当だ!もしかしたらナノカちゃんかも!」

 

エマたちが人影に近づいていく。

ある程度距離まで近づいたエマたちは、木陰にもたれかかった人物がナノカではないことに気づく。

 

「あ、あれってナノカさんじゃありませんわ!看守長ですわ!」

 

「わ〜!本当ですね!遠くから見てたので気づきませんでした!」

 

「あれ?でも全然木陰から動かない…?もしかしたら寝てるのかも…」

 

(そういえば、前にナノカちゃんが渡してくれたメモに、看守長が花畑で不定期に寝てるって書いてあったっけ…)

 

「寝てるなら放っておきましょうか!最悪起きたとしても、私たちは何も悪いことはしてないので何も言われないでしょうし」

 

「そうだね…」

 

(こうやって見ると、看守長も普通の女の子に見える…)

 

エマたちが話し合っていると、目が覚めたのかむくりと看守長が起き上がる。

するとこちらに気づいたのか視線を向けてくる。

 

「ば、バレましたわ!」

 

すると背後に扉が現れ、看守長が扉から出てくる。

 

「私を見ていたみたいだが、何か用か?まさか寝込みを襲いにきたのか?」

 

「ち、違うよ!ボクたちはピクニックに来てて、そこでたまたま看守長を見つけただけで…」

 

「…なるほど。そういえばメルルが言ってたっけ…

 

「なら、邪魔をして悪かったな。私は離れるよ」

 

「ちょっと待ってください!」

 

小声で何か呟いて、看守長が離れようとすると、シェリーが呼び止める。

 

「せっかくですし看守長も参加しませんか?」

 

「ちょ、ちょっとシェリーさん!?」

 

シェリーがエマたちに耳打ちしてくる。

 

私たちって看守長のことをあまり知らないじゃないですか?最近は看守長の態度も柔らかくなってきている気がしますし、情報を得るチャンスだと思うんですよね。もしかしたら懐柔もできるかもしれませんし

 

まだそんなこと考えてたんですの…懐柔なんて無理でしょう…

 

でも情報を聞くのは良いかも…前は魔法のことしか聞き出せなかったし

 

わ、私は看守長を参加させても良いと思います…

 

エマたちが話し合っていると看守長が気まずそうに話しかけてくる。

 

「…私がいたら気が休まらないと思うが?おそらく息抜きのためにピクニックをしに来たんだろう?」

 

「ぼ、ボクも看守長とピクニックをしたい…かも」

 

「わ、私もです…」

 

「…良いのか?」

 

看守長がハンナの方へと視線を向ける。

 

「だぁー!もうわかりましたわよ!ただし、そのおっかない鎌だけそこに置いてきてくださいまし!」

 

「…別に参加すると言ったわけじゃ———」

 

「ダメ…ですか?」

 

メルルが看守長に近づき頼み込む。

 

「…わかった。なら、参加させてもらおう」

 

 

 

看守長side

 

気がついたらピクニックに参加することになっていた。

私がいたら気も休まらないし、気まずいと思っていたが、以外と気にせずみんな楽しめているようだった。

 

(私がいることで空気を壊すようだったら、帰ろうと思っていたけど…大丈夫そうかな)

 

そこで、隣で花を摘んでいたメルルが花冠を作り私に被せてくる。

 

「わぁ…!とっても似合ってますよ!」

 

「普段とのギャップがすげーですわ…」

 

「…そうか」

 

私は赤くなった顔を隠すようにそっぽを向く。

それから食事をしたり、花を摘んだりしてゆったりとした空気が流れる。

 

「それにしてもエマさん、すっごく良い笑顔ですね」

 

「そ、そうかな?こういうの久しぶりだからなんだか嬉しくなっちゃって」

 

「友だちと一緒に過ごして、お喋りして…本当に、久しぶり…」

 

「ご、ごめん勝手に友だちとか!と、友だちとはちょっと違うのかもしれないけど!」

 

「友だちって認識で合ってますわよ」

 

遠野ハンナはぶっきらぼうに言い放ち、照れくさそうにそっぽを向く。

 

「ハンナちゃん…ありがとう…」

 

「ですです!私たちはもう友だちです!こんなにずっと一緒にいるんですからズッ友です!」

 

「それ、意味が違うんじゃないかしら」

 

「もちろん、看守長も入ってますからね!」

 

橘シェリーが私に向けて言い放つ。

 

「…私も?」

 

私は意表を突かれ、目を見開く。

 

「友だちと言うよりかは、めっちゃ怖い先生ぐらいの感覚ですわ…」

 

「えぇー、本人目の前で言うのは可哀想じゃありませんか?」

 

「…別に大丈夫だ。むしろ友だちと言われても反応に困る」

 

「そうですかねー…」

 

「シェリーさんが気を許し過ぎなんですわ…」

 

そうして和やかな空気が流れ、ひととおり食事を終えた後、橘シェリーが立ち上がる。

 

「あら、もう帰るんですの?」

 

「まっさかー、ここからが本番ですよ!」

 

「じゃーん!」

 

橘シェリーはどこからか、ほうきを取り出して掲げる。

どうやら、遠野ハンナにほうきで空を飛んでもらおうとしているらしい。

ぐいぐい来る橘シェリーに、ほんの少し遠野ハンナが涙目になり、助けを呼ぶような眼差しをこちらに向けてくる。

 

「わ、私でお手伝いできることがあったら良かったのですが…ごめんなさい〜…」

 

「…まぁ、迷子になったら探すから行ってきたらいいんじゃないか」

 

「…わかりましたわよ!やればいいんでしょ、やれば!」

 

そうして遠野ハンナは諦めたように大きくため息をつき、橘シェリーの手からほうきをかっさらう。

 

「やったぁ〜!」

 

そうして2人はほうきに乗り、低空飛行で空を飛ぶ。

わいわいと騒ぎながら飛ぶようすを私たちは笑顔で見ていた。

そうして遠くまで飛んで降りた2人に扉を出す。

 

「疲れただろうし、これで帰ってこい」

 

「ありがとうございます!いや〜最高でした〜」

 

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…」

 

2人が扉から出てくる。

そうしてメルルがお茶を淹れて、まったりとした空気になる。

そこで橘シェリーが切り出す。

 

「ところで、エマさん」

 

「なに?」

 

「二階堂ヒロさんとはどういったご関係だったのでしょうか?」

 

「いかにもワケありって感じでしたよね?どんな確執があったのでしょう?」

 

(そういえば…突き飛ばされていたりしたな。何かしらの確執はあったのだろうが…)

 

それから桜羽エマはぽつぽつと語り出す。

どうやら、二階堂ヒロとは幼馴染で、いじめっこといじめられっこのような関係だったらしい。

だが、桜羽エマは二階堂ヒロのことをまだ大切な存在だと思っている。

私はその話を聞き、少し気まずくなる。

 

(…私が直接殺したわけじゃないとしても、原因を作ったのは、私だ…あの時止めることもできたのに…)

 

そこから、話はみんながここに捕まる前の話になる。

その途中、私にも話が振られる。

 

「看守長さんの話も聞きたいですね。牢屋敷のこととか、看守長さんの過去とか!」

 

「私か…少し長くなるがいいか?」

 

「全然大丈夫です!むしろいろんな情報持ってそうでわくわくします!」

 

(と言っても…メルルも聞いてるし言える範囲は限られてるけど…)

 

「わかった。じゃあ話そうか」

 

私はぽつぽつと語り出す。

 

「まず、この牢屋敷は君たちも予測できていると思うが、この牢屋敷の運営は国家ぐるみ…機関というものが関わっている」

 

「その機関によって君たちは連れてこられた」

 

「そして、元々この牢屋敷は魔法を使える少女たち…君たちを()()()()に作られた」

 

「守るため…?」

 

「そして、魔法が暴走してしまうことを恐れた機関は、魔法を使える少女たちを殺そうという決断をしたんだ」

 

「そこで、私とここの管理者が何も知らない少女を殺すのは可哀想だと主張して、この牢屋敷の運営をすることになったんだ」

 

「つまり…元々私たちは殺される予定だったと…」

 

橘シェリーが暗い顔で呟く。

 

「待って…それっておかしくないかな?守るためって言うけど、ならなんで、こんな殺し合いみたいなこと…」

 

「それは…すまないが、言えない」

 

(少なくともメルルがいるこの場では、言えない…)

 

(それに言ったとしても、何も変わらない…結局大魔女を見つけないことには…)

 

「…なら、次は看守長さんのことを教えてください!」

 

気まずい空気を壊すように橘シェリーが聞いてくる。

 

「そうだな…なら魔法について話そうか」

 

「私の魔法は『扉の魔法』。扉を出すことができる範囲はこの島全域までだ。そして何度も使うとかなり体力を消耗する」

 

「体力の消耗に距離は関係なく、回数によって消耗が激しくなる」

 

「じゃあその魔法を使って島から出る!みたいなことはできないんですね」

 

「そうだな。私自身もう長い間ここから出ていない…外がどうなっているのかはよくわからないし…」

 

「長い間って…そんなに生きてるってことは看守長は魔女なの?」

 

「…少し違うな」

 

私は自分の特性について語る。

 

「私は、本質的には君たちに近い。魔法を使えて不老なだけで、それ以外はほとんど人間と同じなんだ。食事をしないと死んでしまうし、致命傷を負っても死んでしまう…中途半端な魔女…」

 

「『半人半魔』…とでも言おうか…まぁ要は、魔女化しなくて、不老で魔法が使える、中途半端魔女って思ってくれたらいい」

 

私は話し終えると、立ち上がる。

 

「…さて、私はそろそろ仕事に戻るよ。君たちはここでもう少しゆっくりすればいい」

 

「ま、待って!」

 

私が花畑を去ろうとすると、桜羽エマが呼び止める。

 

「最後に看守長の名前だけ…教えてくれないかな…?」

 

「…そういえば言ってなかったな。私の名前は暁烏ハル。まぁ…好きなように呼んでくれ」

 

「なら、これからはハルさんって呼びますね!私のこともシェリーで構いませんよ〜!」

 

「そうだな…じゃあ次はそうさせてもらうよ」

 

 

 

 

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