牢屋敷の看守長   作:野良のなれはて

2 / 12
第二話

 

 

私は自由時間が終わった頃、倉庫に向かい食堂に並べる食べ物を運んでいく。

毎日食事を運ぶのは面倒なので数日分をまとめて運んでいる。

 

そして運んできた食べ物を食堂のビュッフェカウンターに並べていく。

どれも見た目も味も最悪なものばかりで、唯一まともな見た目なのはデザートのフルーツだけだった。

 

私は、自由時間が始まるまでに遅めの昼食を済ませる。

本当は彼女達と同じ時間に食べてもいいのだが、奇異な目で見られ、自由時間なのに誰も話出さなくなってしまう為、私は極力自由時間の間は食堂には近寄らないようにしている。

 

私が食事を終え、看守と共に屋敷内の見回り、管理チェックをしていると、外の監視フクロウから連絡がくる。

どうやら、紫藤アリサが監房に戻っていないらしい。私は扉を出し発見場所へと向かう。

どうやらまだそこまで遠くに行ってなかったらしい。塀近くにいる紫藤アリサを発見し、私の扉を抜けてきた看守が恐ろしいスピードで近づき紫藤アリサを抱える。

 

「チッ!離せよ!化け物!」

 

看守は何も言わず紫藤アリサを抱え、地下の懲罰房へと連れて行った。

 

(後で様子を見に行こう…)

 

初日で混乱しているのもあるだろう。多少は多めに見るつもりだが規則は規則だ。

見せしめも兼ねて2日間懲罰房行きになってもらおう。

 

私は牢屋敷内に戻ると、丁度外出禁止時間が終わったらしく地下から少女達が上がってくる。

 

私はそれを横目に、シャワールームへと服を運びに向かった。

 

シャワールームに服を運び終えて、紫藤アリサの様子を見に行く途中、地下で桜羽エマと遭遇した。

 

「わっ!か、看守長!?」

 

桜羽エマは私と出くわすと顔を真っ青にし怯える。

私は何も言わず懲罰房へ向かおうとすると、桜羽エマが声を出す。

 

「ま、待ってよ!聞きたいことがあるんだ!」

 

「…なんだ?」

 

私は無表情で振り返る。

 

「その…今まで何回もボクたちと同じような女の子がここに連れてこられたんだよね…これまで脱出できた子っているの…?」

 

桜羽エマが恐る恐る聞いてきた。

私は否定する。

 

「いや、いない。私の記憶の限りではこれまでこの牢屋敷を脱出できた少女はいない。みんな殺されるか処刑されたよ」

 

「そう…なんだ…」

 

桜羽エマは青ざめた顔で俯く。

 

「…でも脱出方法を探したりすることに関しては咎めるつもりはない」

 

「…えっ?」

 

桜羽エマは戸惑った様子で私を見上げる。

 

(どうせ脱出方法はみんな探し出すだろうしね…それならついでに大魔女についての本も探してもらった方が楽でいい。私が監視しなくてもメルルがいるし…)

 

「私と看守は規則違反者を罰することはあるが、それは現場を見た場合だ。疑わしきは罰せずが基本原則だから規則を破らなければ好きにしていいよ」

 

「もちろん目の前で脱走準備をしたり、脱走計画を立てるのはダメだけどね。その時は罰則を受けてもらう」

 

私はそれだけ言い残し、懲罰房へと歩く。

桜羽エマは私の背中を呆然と見つめていた。

 

私は紫藤アリサの房に入る。

紫藤アリサは懲罰房の中で磔刑台に拘束されていた。

 

「あ?今度は化け物の親玉かよ…とっととこの拘束を解けよ!私をここから出せ!」

 

「悪いけどそれは無理だ。君は規則を破った。罰は受けないといけない」

 

私は淡々と説明する。

紫藤アリサも暴れても無駄だとわかったのか少しおとなしくなる。

 

「今日一日は拘束具は外さない。明日まで大人しくしていたら、拘束具は外してやる」

 

「チッ…わかった、懲罰房にいる間は大人しくしてやる…そもそも大人しくするしかないんだろ?」

 

紫藤アリサは諦めた様に聞いてくる。

 

「そうだな。まあ、初日だし多めに見てやる、そこの拷問器具も使わないし、2日間の懲罰房行きで罰は終わりだ」

 

「そうかよ…ならさっさと出ていけ!」

 

私は紫藤アリサの房から出て、牢屋敷内の見回りをしながら、紫藤アリサのことを考える。

 

(言動や行動に問題はあるけど…意外と理性的だったな…)

 

もしかしたら、素行は悪いが根は真面目なのかもしれない。

そう思いながら、牢屋敷の見回りをしていると丁度通りかかった医務室からメルルが顔を出す

 

「あ…看守長さん!実はアンアンさんが体調不良で倒れてしまって…医務室で過ごす許可が欲しいんです…」

 

別にメルルが好きに決めたらいいのでは?と、思ったが今は囚人扱いだったことを思い出し、メルルに許可を出す。

 

「いいよ。ただし規則通り介助の付き添いは1人までだから今日は氷上メルルが介助をするように」

 

「はい!ありがとうございます…!」

 

そうしてメルルと話しているとメルルのスマホが鳴る。

 

「あっ…そろそろ自由時間は終わりですね…私は医務室でアンアンさんと過ごしますね」

 

「わかった。問題は起こさないように」

 

私は牢屋敷の見回りを看守に任せ、遅めの晩御飯を食べ、花畑へと向かう。

 

(私も少し寝よう…)

 

私は花畑に横たわり、瞼を閉じる。

 

(今日は初日だから忙しかったな…明日からは少し楽になるといいんだけど…)

 

そう思いながら私の意識は闇へと落ちていった…

 


 

エマside

 

自由時間が終わって監房にロックがかかった頃、エマは房内のベッドに寝転びながら今日あった出来事を整理していく。

 

(突然こんなところに連れてこられて…ここでずっと暮らすなんて、信じられない…)

 

ラウンジでゴクチョーが話していた内容…ボクたちは魔女になる因子を持っていて、それが原因でここに連れてこられたらしい。

最初は信じれなかったけど、メルルちゃんがボクの傷を治してくれた治癒の魔法…そしてシェリーちゃんの怪力、ハンナちゃんの浮遊の魔法…それはボクたちが魔法を持っていると信じるには充分だった。きっと他の子たちも何か魔法を持っているのだろう。

 

(でも…ボクは魔法なんて使えない…魔法があるっていうのも今日初めて知った…ボク間違えて連れてこられたのかな…)

(ボクたち…ずっとここで暮らすことになるのかな…)

 

つーっと頬に涙が垂れる。

 

(会いたいよ…ヒロちゃん…)

 

ボクは、明日になったらこんなのは全部夢で、ふかふかのベッドで起きると信じて眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エマさん、エマさーん、朝ですよ〜?起きてくださーい」

 

「うう…ん…あとちょっと……ってわああああっ!?」

 

薄く目を開いたエマの眼前に、シェリーの顔があり。エマはぎょっとし、叫んだ。

それからきょろきょろと周囲に視線を巡らせる。牢屋の中だ。

 

(やっぱり夢じゃなかったんだ…ボク、ここに捕まっちゃったんだ)

 

「朝食後の自由時間が長いので、牢屋敷を探索しようと思ってるんです。一緒に行きません?」

 

「…うん、そうだね。顔洗うからちょっと待ってて」

 

エマは急いで顔を洗い、シェリーと共に房を出た。

 

(そういえば隣は…)

ボクは隣の房の様子を確認する。

 

「ふんふふ〜ん♪」

 

(相変わらず、お絵描きしてる…アンアンちゃんはいないみたい…あの後大丈夫だったのかな…)

 

房内のノアの絵は、また様変わりしていた。

スプレーアートは緻密に描きこまれ、カラフルに彩られている。とても一晩で描かれたものには見えない。

 

「すごい…」

「バルーン…」

 

ぽつりとシェリーが呟いた言葉で、エマは首を傾げる。

 

「バルーン?」

 

「エマさん、知りませんか?世界的に有名なストリートアーティストですよ!」

 

「正体不明でその姿を見たものもいないって噂だったんですけど…まさかのノアさんだったんですね!」

 

「すごいすごいすごーい!ノアさん、サインください!!」

 

呼びかけにノアが振り返ってきた。

 

「さいん?」

 

「ノアさん、『バルーン』なんですよね!」

 

「ん?ああ〜そうだよ〜?へへ〜照れるな〜。」

 

(世界的に有名なアーティストって…本当に?ただちょっと変わった子だとばかり…)

 

「そんな有名人が捕まってるなんて…」

 

「ね、ねえ、ここに連れてこられたのって絶対騒ぎになってるよね!?そういえばレイアちゃんも芸能人だし、世間が黙ってないよ!きっと警察がボクらのこと捜してる!」

 

縋るようにエマは口にしたが、シェリーにはピンとこなかったのか、首を傾げている。

 

「どうでしょう?この牢屋敷は国家ぐるみな気がします。ゴクチョーさんが言ってましたよね。全国で行われた検査で引っかかったって」

 

「そうなると、警察の動く事態にはなっていなのでは。むしろ協力した側かも。もしかしたら私たち、死亡扱いになってるかもしれませんね」

 

なんでもないことのように、シェリーが爽やかな笑顔で言い放つ。

 

「そんな…そんなのおかしい!このままにしちゃダメだよ!」

 

「ヒロちゃんが殺されたこと、ちゃんと外の人に知らせないと!救助を呼ぼうよ!」

 

「ふむ。それもまたありな展開ですか。脱獄するってことですね?」

 

「脱獄…う、うん。ボクらは間違ってここに連れてこられた」

 

「だからまずは、脱獄を考えよう…」

 

その時エマは看守長に言われた言葉を思い出す。

 

「そ、そういえば!昨日看守長に聞いた話なんだけど、脱出方法を探すこと事態は問題がないって言ってた!」

 

「おや?そうなんですね」

 

「う、うん、なんか疑わしきは罰せず?が基本原則らしくて、規則を破らなければ好きにしていいって…」

 

エマは昨日聞いた看守長の話をシェリーちゃんに共有した。

 

「なら、バレなければ何しても大丈夫ということですね!」

 

「で、でも…昨日脱走したアリサちゃんは、あっさり看守に捕まってたから、あんまり危険なことはしないでね…?」

 

エマは念を押すようにシェリーちゃんに言う。

 

「そういえば…看守って何人もいるのかな?」

 

「今のところ確認できたのは、あの異形の看守と看守長さんだけですね。看守長さんがどういったルーティーンで行動しているかは分かりませんが、脱獄計画自体はなんとかなりそうな気がします」

 

「ボクらはまだここのことを知らなすぎるし、いろいろ見回って良い脱獄方法がないか探そう!」

 

「承知しました!」

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。