牢屋敷の看守長   作:野良のなれはて

3 / 12
第三話

 

 

早朝、食堂に朝食を並べ終えた後、私は水の入ったボトルを持ち懲罰房の様子を見に行く。

紫藤アリサの房を開け、言葉を発する。

 

「調子はどうだ。紫藤アリサ。」

 

「…いいわけないだろ、化け物が」

 

紫藤アリサは少しやつれていて、あまり寝れていない様子だった。

 

「約束通り拘束を外しにきた。あと、念のため言っておくけど、外した瞬間暴れ出したりしたら、罰則が増えるから。」

 

「チッ…わかってるよ、さっさと外せ…」

 

私は紫藤アリサの拘束を外し、持ってきたボトルを差し出す。

 

「次来るのは明日だからな。今のうちに水分を摂っておけ」

 

紫藤アリサは差し出したボトルをひったくるようして奪い、ボトルの水を飲み干した。

 

私はボトルを回収し、紫藤アリサから離れる。

 

「明日まで大人しくしておくように」

 

そう言い、紫藤アリサの房から出ると桜羽エマと、橘シェリーが懲罰房へと来ていた。

私は何も言わず立ち去ろうとする…だが、橘シェリーが笑顔で話しかけてきた。

 

「看守長さん!ここっていったい何をする場所ですか?」

 

「ここは懲罰房だ。規則を破った者がここに入れられる」

 

「なるほど…ここがゴクチョーさんが言ってた懲罰房ですか。看守長さんは一体ここに何をしに来たんですか?」

 

「紫藤アリサの様子を見に来ていた。そこの房にいるから話したいなら話せばいい」

 

「この牢屋敷についての謎や質問はゴクチョーに聞けばいい。私よりも詳しいだろう」

 

私はそう言って話を切り上げ、懲罰房を退出した。

 

そして仮眠を取る為に花畑に向かい寝転がる。

花畑は私のお気に入りの仮眠スポットだ。私は頻繁に寝ることが多いので花畑に来る頻度はとても多かった。

少女達はまだ牢屋敷の探索をしており、まだ外の探索には手が回っていない様子だったので、誰もいない花畑で私は眠りに落ちた。

 


 

エマside

 

エマとシェリーは看守長が言っていた、アリサの房内を覗き窓から覗く。

室内にある禍々しい道具類を見つけ、エマは蒼白になりながら座り込んでいるアリサを見つける。

 

「アリサちゃん!」

 

「あ…?誰だてめえら…」

 

アリサは目立った傷はないが、少しやつれていて、消耗している様子だった。

 

「大丈夫ですか?ひどいことをされたのでしょうか?」

 

アリサのギラギラした瞳が、エマとシェリーを強く睨む。

 

「てめえらに関係ねーだろ…」

 

「…ああでも、ひとつ…いや、ふたつ忠告しておいてやる。まず、屋敷から遠くに逃げると、監視の化け物フクロウが大量に飛んでやがったよ」

 

「そいつらに見つかった途端、看守共が飛んできた…。」

 

「高い塀があったから燃やそうとしたんだが、それも無理だった。不思議な力で炎がかき消えちまって…どうなってんだよ、クソッ!」

 

(塀を燃やそうとした…?過激なことするなぁ…)

 

「そしてあの看守長…あいつは魔法が使える」

 

エマとシェリーはその言葉を聞き目を見開く。

 

(看守長も魔法が使える…?)

 

「監視のフクロウに見つかった時、最悪撒けると思ってたんだが…突然何もないところ扉が現れたんだよ…扉から看守長と看守が出てきて、ウチは一瞬で捕まった。脱獄は難しいってことだ…」

 

「ふむ…私たちは囚人として捕まっているので、この監獄やすやすと私たちを逃すはずがありません。難しくて当然なのでは」

 

「っ…笑いに来やがったのかてめえ!あっち行けよ!消えろ!!」

 

感情的に喚きだしたアリサに、エマとシェリーは仕方なく引き下がる。

 

「どうやら元気そうですね。規則によれば明日には出られるでしょうし、とりあえず無事が確認できて良かったです」

 

「うん、そうだね…」

 

「足枷までつけられてかわいそうに…」

 

「ん?アリサちゃんって、最初から足枷をつけられていたような」

 

「ああそうでしたっけ!いきなりハードモード囚人だったんですね。要注意人物だと思われていたんでしょうか」

 

「そうかも…」

 

 

 

その後、エマとシェリーはマップを頼りに、一階の医務室へと向かい、アンアンとメルルの様子を確認していた。

そして、医務室で出会ったレイアに案内され中庭に訪れていた。

 

(外の空気…!)

 

ずっと閉鎖的な場所にいたエマは、緑豊かな庭園の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

 

「ここは囲まれているけれど、正面玄関から外に出てみると良いよ。自然が溢れていて、良い景観なんだ。もっと開放的になれると思う」

 

にこにこと提案してきたレイアに、エマとシェリーは顔を見合わせる。

 

「ボクら、てっきり正面玄関は鍵がかけられているのかと思ってた」

 

「自由時間は本当に自由に歩き回らせてくれるみたいなんだ。ただ、外出禁止時間は鍵がかけられるみたいだけどね」

 

話し込んでいたら、上空から羽音が聞こえてエマたちは顔を上げる。予感はあったが、ゴクチョーだった。

 

「おや、桜羽エマさん、橘シェリーさん、蓮見レイアさんじゃないですか」

 

「ゴクチョー…」

 

レイアはゴクチョーの出現に警戒し、険しい顔になってエマとシェリーを守るように前に立つ。

 

「私たちは規則に従って生活している。何も悪いことはしていないよ」

 

「ええ、その調子で頑張ってください。ここはとてもいいところですから、楽しんで暮らしていただけますと」

 

唐突にゴクチョーが現れたことでエマとレイアは表情を強張らせていたが、シェリーだけは目を輝かせている。

 

「遭遇できるなんてラッキーです!看守長から質問は全部ゴクチョーさんに聞けばいいって教えてもらいました。ちょーっとお時間いいですかゴクチョーさん!」

 

シェリーは次々とゴクチョーに質問を投げかけていく。

 

「…やれやれ。まあ、わからないことばかりなのもかわいそうですよね」

 

「あまり時間は取れませんが…ほんの少しだけ教えてあげましょう」

 

「この牢屋敷はですね、500年前からあるんですよ」

 

「500年!?」

「どうりで老朽化が激しいわけだね…」

 

「その当時は魔女を捕える場所ではなく、魔女が普通に暮らしているお屋敷でした。大魔女を中心に、たくさんの魔女が仲良く暮らすいいところだったんですよ」

 

感情がまるでわからない存在ではあるが、穏やかに語るトーンから、昔を懐かしんでいる印象を受けた。

 

「あるとき、魔女とは違う種族———人間がこの島にやってきたときも、この中庭でお茶会を催して、魔女たちは人間を歓迎したんです」

 

「最初は人間側も警戒していましたが…次第に打ち解け、月に一度のお茶会をする関係にもなったんですよ」

 

「それがなんで囚人を捕える牢獄なんかに?」

 

「ええと、それは大魔女が———おっと、おしゃべりのしすぎはよくありませんね。私はこれで」

 

ゴクチョーは逃げるように、さっさと飛び去っていった。

 

(牢屋敷…大魔女…人間と魔女のお茶会…大切な情報な気がする。『魔女図鑑』にメモしておこう)

 

「もっとゴクチョーさんのお話を聞きたかったですね!でも大収穫だった気がします!」

 

「う、うん…」

 

(シェリーちゃんみたいに素直には喜べないけど…)

 

エマとシェリーはレイアと別れ、牢屋敷の探索に戻っていった。

 


 

看守長side

 

花畑で寝ていると、1人の足音が近づいてきた。私はその音に気付き立ち上がる。

すると近づいてきていたのは黒部ナノカだった。

彼女は銃口をこちらに向け話す。

 

「私たちをここに誘拐して、馬鹿げたゲームをさせている黒幕がいるのでしょう。今すぐに黒幕の名前を教えて」

 

「黒幕…?ゴクチョーのことか?」

 

私はしらを切り、扉をいつでも出せるようにする。

 

「嘘を吐かないで。私はこの牢屋敷がどういったものなのか知っている。あなたたちの企みも全部」

 

「仮に黒幕を私が知っていたとして…何故君に教える必要がある?」

 

私たちが睨み合っていると黒部ナノカのスマホが震える。どうやら自由時間の終わりを知らせるメッセージのようだ。

 

「…今回は見なかったことにする。このまま監房へと戻れ。さもないと規則違反として懲罰房入ることになる」

 

黒部ナノカは銃を下ろし、森の方へと消えて行く。

 

「…絶対に黒幕を見つけ出して、あなたたちを…殺してやるから」

 

(私は監房に戻れと言ったはずなんだけど…まあいいか、探すのは看守に任せよう)

 

私は牢屋敷の方へと戻っていった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。