努力アウトソーシング ~寝てるだけの最強姫、起きたら世界救ってた~   作:エレティムさん

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22.謎の魔法使い

 

(……ん?)

 

 夢の中。

 ぼんやりとした、いつもの夢。

 

 そこに、《夢霞》が浮かんでいた。

 銀色に光る、わたしの刀。

 

(あれ……?)

 

 手を伸ばしてみる。

 でも、届かない。

 

 刀はゆらゆらと揺れて——

 すぐに霧のように消えてしまった。

 

(……そういえば、最近よく見るなぁ、この夢)

 

 でも、眠い。

 考えるのも面倒。

 

(まあ、いっか)

 

 ……zzz

 

 

 

...*...*...(っ˘ω˘c)zzz...*...*...

 

 

 

 四天王を倒してから、数日。

 今日、わたしは玉座の間に呼び出された。

 

 勇者パーティが帰還したらしい。

 四天王が現れたということで急遽勇者パーティが帰還することとなったのだ。

 そして……褒章の受け渡しは勇者パーティが帰還するまで待ってほしいと言われていた。理由は……まあ、だいたい分かる。

 

(めんどくさ~)

 

 わたしは、あくびを噛み殺しながら、玉座の間に足を踏み入れた。

 

 

 

...*...*...(っ˘ω˘c)zzz...*...*...

 

 

 

「ネムよ。そして、勇者パーティ諸君」

 

 国王の声が、玉座の間に響いた。

 

 玉座の前には、長旅から戻ったばかりの勇者パーティが並んでいる。

 

 金髪の勇者、優しそうな聖女、ローブを纏った賢者、そして聖女の騎士のセドリック。

 

 その隣には、紫のローブを着た男が立っていた。

 誰だろう? しかし……なんというか、張り付けたような笑みを浮かべていて、第一印象から良くは見えなかった。

 

「先日、王都が危機に瀕した際、このネムが多大な功績を上げた」

 

 国王が続ける。

 

「魔物の大群を殲滅し、さらには四天王をも撃破した。そして、その際に王都防衛で多大な協力もした魔法使いマグヌスも、信頼に足る実力者であることが証明された」

 

 勇者が、わたしを見て微笑んだ。

 聖女も、優しい笑顔を向けてくる。

 

(……てか、マグヌス? 誰それ?)

 

「まず、四天王討伐の功績を称え、ネムに褒章を授ける」

 

 国王が威厳に満ちた声で宣言した。

 

「金貨1000枚を授与する」

 

 おお、金貨1000枚!

 

「そして、王都防衛の功績により、ネムとマグヌスには――」

 

 国王が一呼吸置いた。

 

「勇者パーティへの加入権を授ける!」

 

(やっぱり……)

 

 わたしは心の中でため息をついた。

 

(めんどくさ~)

 

「当然、入らないよ」

 

 わたしははっきりと答えた。

 

「そ、そうか……」

 

 国王が残念そうに呟く。

 

「私は謹んでお受けいたします」

 

 その男――うさんくさそうな笑みを張り付けた男、マグヌスが丁寧にお辞儀をした。

 

『この者がマグヌスですか……』

 

(ナミギリ、どうかした?)

 

『いえ、姫様。この者は危険です』

 

(え?)

 

『実は、この前の、雷球が落ちてくるとき――そこで一瞬、殺気を感じました』

 

(……ほんとに?)

 

『間違いありません。奥義を使って、雷球を返すために、雷球の前に出た時でした。背後から一瞬の殺気を感じました。振り返る余裕などありませんでしたが、今、観察して確信しました。この者が、地上から一瞬殺気をぶつけたと』

 

(えええ? でも、王都の人たちもたくさんいるのに、分かるものなの? というか、わたしには殺気というのもよくわかんないんだけど?)

 

『剣士ではない姫様には難しいかもしれません。ですが、この者だという、確信があります』

 

 脳内会話していると、国王の声が聞こえた。

 

「よろしい! 勇者パーティの面々からも反対意見はないということも分かった。では、マグヌスは勇者パーティに加入とする!」

 

 国王が言った。

 

「いや、よろしくないでしょ!」

 

 わたしは思わずツッコんだ。

 

「ほう? なぜだ、ネム?」

 

 国王が不思議そうに聞き返す。

 

『姫様、殺気のことは言わない方がよろしいかと』

 

(なんでよ!? 言えばいいじゃん!)

 

 なぜかナミギリは制止してきたけど、わたしは言った。

 

「殺気を感じたの!」

 

「殺気とな?」

 

「うん! 雷球を返すために奥義を使おうとしていたところで、こいつの殺気を感じたの!」

 

 わたしが、ビシッと指さした。

 

「マグヌス、答えよ」

 

「もちろん、そのような事実はございません。ふむ、しかしそのときは、剣聖はかなり上空にいたのでは? そして地上から殺気を感じたのも事実なのかもしれません。しかしいかに剣聖と言えど、雷球も迫っているような極限状態で、王都の地上にいるたった一人の殺気に正確に気付けるものでしょうか?」

 

「ふむ、確かに。一理ある」

 

 国王はそう言うが、ナミギリは言った。

 

『姫様、わしは確信しております』

 

「でも、ナミ……わたしは絶対に、こいつだって確信してるから!」

 

「ふむ、そうだな。ここは剣に詳しく、中立のものに聞く方が良いか。おい、聖女の騎士セドリックよ」

 

「はっ」

 

 わたしの代わりに勇者パーティに入った、聖女の騎士が呼ばれた。

 一歩前に出る。

 

「教えてくれ。今、ネムが言ったような、殺気の感知は可能なのか」

 

「私には不可能です」

 

 って、おい!

 

 セドリックは続ける。

 

「ですが、それは私の話。剣聖ネメシア殿下の技量ははるかに卓越しています。恥ずかしながら、私はその実力の底を引き出せぬまま負けてしまいましたが、ネメシア殿下ならば可能だとしても違和感はありません」

 

「なるほど……」

 

「もちろん、いかにネメシア様と言えど、話に聞くような極限状態では、誤認してしまうこともありましょう。ですので、申し訳ございませんが、わたしにはどちらが正しいかはわかりかねます」

 

「ふむ、ならば、審問を執り行う」

 

 審問! わたしも受けたやつだ。

 

「『真実の天秤』を使えば、嘘をつくことはできまい。マグヌスについては審問を行い、疑惑が晴れたのち、勇者パーティ加入とする。皆の者、これでよいな?」

 

 国王は言った。

 

 勇者、聖女、賢者は、頷いている。

 みんなオッケーっぽい。

 

「待っただよ! いや、審問はクロだけどね? そもそも王都防衛っておかしくない? わたしが王都防衛したじゃん!」

 

「確かに、ネムも王都防衛した。しかし、マグヌスもしたのだ。ともすればネム以上にな」

 

「はぁ!? だってわたし、王都にいる魔物たちを一旦全滅させてるよね!?」

 

「だが、そのあとの霧の巨人との戦いでは、王都の守りはマグヌスが中心だったと報告を受けている」

 

「……え?」

 

(そうなの?)

 

『正直分かりませぬ。霧の濃さだけでみればそれほどだったとは思いますが、わしは霧の巨人と戦っておりました故』

 

「でも、霧の濃さ的には、大したことなかったでしょ?」

 

「そうか、ネムは知らなかったか……霧の巨人が現れてから、発生する魔物は『暴走』状態だったと報告を受けた。圧倒的な膂力に、怪我を負っても、腕一本になるまで破壊を止めない魔物たちに、王都は壊滅的な被害を受ける可能性もあった」

 

「暴走ねぇ……」

 

『そういえば、姫様は見ておられませんでしたか』 

 

(寝てたから……)

 

「そこでマグヌスが魔物を倒し、兵士や市民を癒し、防壁を張った。これにより、被害は軽微で済んだのだ。報告によれば、数百体の暴走魔物を倒し、千人規模の傷を癒したと」

 

「お褒めに預かり恐縮です」

 

 マグヌスは、笑みを浮かべたまま、一礼した。

 本人は優雅だと思ってそうで、イラっとした。

 

 わたしは反射的に言った。

 

「なんか顔も善人って感じがしないじゃん! それなのに勇者パーティっておかしいでしょ」

 

「はぁ……善人顔かどうかは人それぞれの感性だろう。わしにはむしろ物腰柔らかな青年に見える。ネムと違ってな」

 

「むす~! ほんとクソジジイ!」

 

「おいネム、父上と呼ばんか! もしくはパパと呼んでくれてもいいんだぞ」

 

(というか、この人怪しいんだけど。殺気向けてきたって絶対おかしいもん!)

 

 わたしは、マグヌスを横目で見た。

 

「なんだ、マグヌスを勇者パーティに入れたくないのか?」

 

 国王が、何が問題なのかわからないという顔をしている。

 

「別に? そもそも、審問の結果で、どうせ入れないはずだし」

 

 でも、嫌な予感がするのはなんでだろう?

 

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