努力アウトソーシング ~寝てるだけの最強姫、起きたら世界救ってた~   作:エレティムさん

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29.勇者パーティ

 

 温泉から戻ると、勇者パーティが待っていた。

 

「ネム王女、アウレリア!」

 

 勇者が一歩前に出てきた。

 

「ネム王女、我々はこれから魔王討伐の最終段階に入る。君の力があれば、必ず勝利できる。共に歴史に名を遺そう」

 

 相変わらず、キザなセリフ。

 

 でも——

 

「それでは、お別れですね」

 

 アウレリアが、寂しそうに微笑んだ。

 

「え……?」

 

 心臓が、ドクンと鳴った。

 

「ネムは、また前線に戻られるのでしょう? わたしたちは魔王討伐に向かいますから」

 

(お別れ……?)

 

 それは——

 

(嫌だ)

 

 アウレリアがいなくなったら、また眠れなくなる。

 

 また、あの恐怖の日々に戻る。

 

 毎晩、魔物に襲われるんじゃないかって怯えて。

 

 リアル惰眠ができなくて。

 

 頭がぼんやりして、思考がまとまらなくて。

 

(嫌だ……!)

 

「嫌だ!」

 

 思わず、声が出ていた。

 

 周囲が、驚いてこちらを見る。

 

「ネム王女……?」

 

 勇者が戸惑った表情を見せる。

 

「わたし……一緒に行く」

 

「え……?」

 

 アウレリアが目を見開いた。

 

「一緒に、魔王を倒しに行く!」

 

 わたしは必死だった。

 

「アウレリアと離れたら……眠れなくなる」

 

「ネム……」

 

「それに……」

 

 わたしは、アウレリアを見た。

 

「魔王を倒して、一緒に寝る約束したでしょ?」

 

 アウレリアの目が、潤んだ。

 

「はい……約束、しましたね」

 

 そして——

 

 満面の笑みを浮かべた。

 

「嬉しいです。ネム様が、一緒に来てくださるなんて」

 

「ネム王女、君がついに一緒にパーティに参加してくれて嬉しいよ。僕はずっとこの時を待っていたんだ。一緒に歴史に名を遺す英雄になろう!」

 

 勇者が、キザなセリフで歓迎する。

 

「はぁ」

 

 わたしは適当に返事をした。

 

 全然ときめかない。

 

 賢者が、静かに口を開いた。

 

「魔王討伐の成功率は、もともと95%でした。しかし、剣聖殿の加入により、99.8%にまで上昇します」

 

「……0.2%は?」

 

「不測の事態です。しかし、限りなくゼロに近い」

 

 賢者は冷静に分析する。

 

 データキャラなんだな、この人。

 

 聖女の騎士、セドリックが一歩前に出た。

 

「剣聖殿、共に戦えることを光栄に思います」

 

 セドリックは、わたしの実力を認めてくれている。

 

 剣技大会で戦った相手だから。

 

『セドリック殿は、強者でございます』

 

 ナミギリの声が、脳内に響く。

 

『姫様が出場なさらなければ、優勝していたのはこの者でしょう』

 

(そうだよね)

 

 わたしが参加していなければ、セドリックが剣聖になっていたはずだ。

 

 そして——

 

 フードをかぶった男が、一歩前に出てきた。

 

 魔法使い、マグヌス。

 

「よろしくお願いします、剣聖殿」

 

 表面上は丁寧だけど——

 

(やっぱり怪しい……)

 

 

 当たり前のような顔でこの場に立っている。

 どんな手を使ったかは知らないけど、審問は突破したらしい。

 

 でもわたしは、信用しないよ。

 ナミギリが殺気を向けてきたと言っているんだ。それが何よりの証拠。

 

 でも——

 

 今は、それよりもアウレリアと一緒にいることが大事だ。

 

「それでは、出発しましょう」

 

 勇者が剣を掲げた。

 

「魔王を倒し、世界に平和を取り戻す!」

 

 

 

 

...*...*...(っ˘ω˘c)zzz...*...*...

 

 

 

 

 遠征が始まった。

 とある四天王の居城に向かうための旅。

 

 1~2週間かかるらしい。

 わたしたちは、森を抜け、山を越え、川を渡った。

 

 道中、賢者が説明してくれた。

 

「勝率を最大化するために、魔王を倒しに行く前に、四天王をすべて倒しておくのが良いです。残る四天王は、三位一体の四天王のみですから」

 

 三位一体——

 

 その言葉を聞いた瞬間、心臓が凍りついた。

 

 あの夜の記憶が、鮮明に蘇る。

 

 天井が吹き飛んだ瞬間。

 眩い光の柱。

 三体の魔物。

 

『剣聖ネム——お前を、ここで始末する』

 

 あいつらは、わたしを狙っていた。

 認識阻害のイヤリングを着けているのに。

 平凡な少女に見えているはずなのに。

 それなのに——魔王は、わたしを殺そうとしている。

 

 ナミギリが圧倒した。

 

 でも——

 

 死体が、消えた。

 

(また……あいつらと戦うんだ……)

 

 体の奥底から、震えが込み上げてくる。

 

「あの時……死体が消えたのは……」

 

「ええ」

 

 賢者が頷く。

 

「三位一体の四天王は、特殊な異能を持っています。三体を同時に倒さなければ、復活してしまうのです」

 

「同時に……?」

 

「はい。一体でも生き残れば、他の二体も復活します」

 

「それって……」

 

「至難の業です」

 

 賢者は冷静に答えた。

 

「我々も、何度か接敵しましたが、倒しきることができませんでした」

 

「でも、今回は剣聖殿がいます」

 

 セドリックが言った。

 

「必ず、倒せるでしょう」

 

「ええ」

 

 アウレリアが微笑んだ。

 

「私の魔法で、三位一体の四天王のおおよその位置が分かっています。追い詰めて、一気に倒しましょう」

 

(三体、同時に……)

 

 それは、確かに難しい。

 

 でも——

 

(ナミギリがいれば、大丈夫)

 

 わたしは、そう信じていた。

 

 

 

 

……*……*……(っ˘ω˘c)zzz……*……*……

 

 

 

 

 道中、魔王軍の雑兵と遭遇した。

 

「敵だ!」

 

 勇者が剣を抜く。

 

 その剣が、光を放ち始める。

 

「光よ、悪を断て!」

 

 眩い光の斬撃が、雑兵を薙ぎ払う。

 

 アウレリアが杖を振るう。

 

「癒しの光よ!」

 

 味方の傷が、瞬時に回復していく。

 

 賢者が魔法陣を展開する。

 

「氷結!」

 

 雑兵の足元が凍り、動きを封じる。

 

 セドリックが剣を振るう。

 

 堅実な剣技で、確実に敵を倒していく。

 

 マグヌスが氷の槍を放つ。

 

 氷魔法が、雑兵を貫く。

 

 そして——

 

『参ります』

 

 ナミギリが動いた。

 

 一瞬。

 

 ただの一瞬で、すべての雑兵が倒れた。

 

「す、すごい……」

 

 勇者が驚愕の声を上げる。

 

「流石は剣聖……」

 

 セドリックも、感嘆の表情を浮かべた。

 

(ナミギリは、やっぱり最強だ)

 

 わたしは、少し誇らしい気持ちになった。

 

 でも——

 

 わたしは、基本的に喋らない。

 

 体は、ナミギリに任せている。

 

 だから——

 

 周囲と会話することができない。

 

 ナミギリの口調で喋ると、バレてしまう。

 

 アウレリアが、心配そうにこちらを見ている。

 

(ごめん、アウレリア……)

 

 喋りたいのに、喋れない。

 

 この状況が、少し辛かった。

 

(もっとみんなと話したいのに……)

 

(アウレリアと、もっと話したいのに……)

 

 

 

 

……*……*……(っ˘ω˘c)zzz……*……*……

 

 

 

 

 その日の夜。

 

 わたしとアウレリアは、同じテントで過ごすことになった。

 

「結界を張りますね」

 

 アウレリアが杖を振ると、テントの周囲に淡い光の壁が現れた。

 

「これで、魔物は入ってこられません」

 

「ありがとう、アウレリア」

 

 わたしは、心から感謝した。

 

 この結界があるから、安心して眠れる。

 

 アウレリアがいるから、眠れる。

 

「今日は楽しかったですね」

 

 アウレリアが微笑む。

 

「うん……楽しかった」

 

 本当に、久しぶりに楽しいと感じた。

 

 勇者パーティのみんなと過ごす時間。

 

 美味しい食事。

 

 剣の鍛錬。

 

 すべてが、楽しかった。

 

「明日も頑張りましょうね」

 

「うん」

 

 わたしは頷いた。

 

「おやすみなさい、ネム」

 

「おやすみ、アウレリア」

 

 わたしは、毛布にくるまった。

 

 アウレリアの優しい気配が、すぐそばにある。

 

 安心感が、全身を包み込む。

 

 久しぶりの、リアル惰眠。

 

 すぐに、深い眠りに落ちていった。

 

 

 

……*……*……(っ˘ω˘c)zzz……*……*……

 

 

 

 数日が過ぎた。

 

 毎晩、同じように過ごしていた。

 

 アウレリアが結界を張ってくれる。

 

 わたしは安心して眠る。

 

 その習慣が、当たり前になっていった。

 

 アウレリアへの信頼が、どんどん深くなっていく。

 

 親密度が、増していく。

 

 でも——

 

 ある夜、わたしは思った。

 

(これって……いつまで続けられるんだろう)

 

 アウレリアは、毎晩眠らずにわたしを守ってくれている。

 

 聖女の祝福で、眠らなくても平気らしいけど——

 

(わたしだけ、アウレリアに頼りっぱなし……)

 

 それが、少し心苦しかった。

 

 そして——

 

(やっぱり、魔法使いの人格が必要だ)

 

 魔法使いの人格を手に入れれば、結界を張ってもらえる。

 

 そうすれば、アウレリアに頼らなくても、リアル惰眠ができる。

 

 でも——

 

(マグヌスは……ダメだ)

 

 あの人は、絶対に怪しい。

 

 契約相手には、ならない。

 

(他に、誰かいないかな……)

 

 そんなことを考えながら、眠りに落ちた。

 

 

 

……*……*……(っ˘ω˘c)zzz……*……*……

 

 

 

 数日が過ぎた。

 

 毎晩、同じように過ごしていた。

 

 アウレリアが結界を張ってくれる。

 わたしは安心して眠る。

 

 その習慣が、当たり前になっていった。

 

 アウレリアへの信頼が、どんどん深くなっていく。

 

 でも――

 

 ある夜、わたしは思った。

 

(昼間も……アウレリアと話したいな)

 

 夜のテントの中では、たくさん話せる。

 でも、昼間は体をナミギリに預けているから、話せない。

 

 昨日も、一昨日も、その前も。

 ずっと、そう思っていた。

 

(いつか……昼間も、話せるようになったらいいな)

 

 アウレリアの優しい気配が、すぐそばにある。

 

 安心感が、全身を包み込む。

 

(アウレリアと……もっと、一緒にいたい)

 

 そんなことを思いながら――

 

 わたしは、深い眠りに落ちていった。

 

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