異能至上主義に花束を ――神話級異能〈テミス〉は新世界を成り上がる―― 作:衝動
「……そうか」
日向さんに
「ねえ幕之内くん、フっておいて悪いんだけどさ。なんでアタシのこと好きになってくれたの?」
「――お、それはだな」
幕之内さんは
「まず陽奈子ちゃんの顔。可愛すぎる」
「……えっ?」
「それにこのカラダ」
「からだ……?」
――うわあ……。
「おっと陽奈子ちゃん、勘違いしないでくれよ。そりゃボディも最高にエロかわいいけどよ、程良く鍛えられてんだよ。ほら、この
そう言って幕之内さんは、驚くべきことに日向さんの露出した腹部を、
「――いやっ!変態っ!」
「――うおっ!?どうしたんだ陽奈子ちゃん!?」
赤面した日向さんは幕之内さんの頬を引っ
「御宅さん。私は気分が悪くなってきたのですが、これはどういうことですか?」
「あのですな。小生が言えたことでもないのですが、幕之内氏の恋愛はルッキズムの権化でしょーもないですぞ」
「この時代に最悪ですね」
「ルッキズムと言っても、飽くまで筋肉的に、という『マッスルッキズム』ですぞ」
「知らない言葉を造らないでください」
「小生ら、同じ大学の仲間内では、幕之内氏の恋愛のことはしょーもないために『茶番』と呼んでおりますぞ。加えてデリカシーも終わっておりますな」
――これまたせつくんが気に入りそうな……。
「最悪ですね、幕之内さん」
「――おい拓生!それ言うなっつってんだろ!?」
「これで女性に告白するのは何度目ですかな……?」
「お?百六十とちょっとじゃねーか?」
「うわ……幕之内くん、それちょっとヤバいよ」
「待て待て、今までは二番目に好きな女に妥協して告ってただけだ!一番は陽奈子ちゃんだって拓生にも話したことあるだろ!?」
「……という仕上がりですぞ。天ヶ羽女史」
「なるほど。どちらにせよ最低ですね、幕之内さん」
「うおっ!?な、なんだよ夏瀬の女のエロいねーちゃんにも嫌われたじゃねーか!」
「……自業自得ですな」
竜ヶ崎さんと手毬さんは、続け様に幕之内さんに吐き捨てた。
「おォ、なんだァ。アタイ以上の馬鹿かァ」
「馬鹿なのだ。馬鹿
「仕方ありませんぞ。幕之内氏はスポーツ推薦ですからな」
「御宅さん、それは問題発言かと」
「……くっ!だがオレは諦めねえ!また愛を伝えに来るからな陽奈子ちゃん!」
幕之内さんはそう告げると、足早に去っていった。呆れた様子の日向さんが溜息を
「むむっ、ところで手毬女史。幕之内氏とは知り合いだったのですかな?」
「違うのだ。楽しそうなところ回っていたら丈を見つけたのだ!今は丈の家に押し入って
「
「あくまでボクも〈極皇杯〉に出場するし、丈から勉強するってのが主目的なのだ!グータラしたいわけじゃないのだ!」
「ガッハッハ!天罰だァ!吸い取ってやれェ!」
「わかったのだ!」
「ふふ」
「ホント変なヤツらばっかね……」
――すると、カラフルな
『――大変お待たせいたしました!これより!EXTREME MC BATTLE 2110 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL――決勝戦を始めます!皆さん……!見届ける準備はできていますか!?』
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
割れんばかりの、
――来た……!
「始まるのだ!」
「やべェぜボス……!ここに立つってのかよォ……!」
「健闘を祈りますぞ……!雪渚氏……!」
『さあ……!ではこの決勝戦を戦う二人のMC……!
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
『EXTREME MC BATTLE 2110 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL!決勝に残った二人は――!
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
大歓声の中、ステージ上に流れ始めた音楽。背面の巨大なLEDスクリーンには、決勝戦を戦う二人の男の顔写真とMCネームが表示される。それに合わせて、二人の男が、ステージの裏――その両端の袖から同時に姿を現した。
そして、二人は司会の男を挟み、ステージに向かい合って立った。お互いの目を見て離さない二人の間隔は、一メートルにも満たない。二人の真剣な表情を浮かべていた。二人がこの一戦に
『改めてEXTREME MC BATTLE 2110 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL!決勝に残った二人は
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
「ぶちかませー!!!
「MC
ステージの
そして――ステージの
『――さあ!皆さんも既におわかりの通り、今大会……!とんでもないことになっております……!決勝に残った一方は、
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
『そしてそんな
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
――なんだこの凄まじい熱気は……。……が、私も高揚してしまわざるを得ない。こんな興奮は……間違いなく日常生活で得られる類のものではない。
『会場の熱も最高潮……!――では!そんな二人が戦う決勝のbeat!DJ New Worldに聴かせてもらいましょう!』
司会の男の熱の
観衆は、赤青一本ずつ束ねられたサイリウムを持った右手を高く掲げて前後に揺らし、ビートに乗る。会場中が赤と青の二色に染まる。私たちもそれに合わせて、入口で受け取ったそのサイリウムを高く掲げる。
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
「おォ!姉御ォ……いい音楽だなァ……!」
「はい……」
ステージの上に立つ二人は色鮮やかな光の下、音楽にノって小さく首を揺らす。音楽が止むと、アリーナ中の観客からDJへと、賞賛の声が投げ掛けられた。
「「「Nice DJ~!!!」」」
『この決勝に
司会の男が二人の顔を交互に見て、二人に問う。ステージの上手に立つ銃霆音さん――
「
その言葉を受け取った、ステージの下手に立つせつくんもまた、マイクを口に近付けて、呆れた様子で言葉を返す。
「嘘
「ババアも〈十天〉・第二席だと公表したんだ♪問題ねえだろ♪」
そう言って
「今日集まったヘッズ共♪さっきのオレらの異能戦観てたって奴は
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
大歓声と共に、二色のサイリウムが掲げられる。広いアリーナの中で、赤と青の二色の光が、
「肖像権侵害にプライバシーの侵害……お前色んな法律違反してるぞ……」
「ハハッ♪まあアルジャーノンが心配してる点は大丈夫だ♪カメラ止めてたから心配すんな♪」
――せつくんが危惧していたこと。あのクラブ内で、
「そうかよ」
「以上だ♪これで思いっきりやれるな♪」
――信じても良さそうだ。〈
せつくんは
「俺は特にありません」
『――わかりました!それでは先攻後攻を決めるジャンケンを――』
司会の男がそう促すと、二人の男はジャンケンを始める。
『ではMC
「――先攻で」
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
食い気味に答えたせつくんの言葉に、会場中の観客が沸く。ラップバトルでは相手の言葉を聞いてアンサーを返しやすい後攻が有利とされている。だが、せつくんは
――せつくんも本気だ。
『OK!立ち位置はそのままで!先攻青コーナー、MC
――勝敗の判定は極めてシンプルだ。ラップバトルの直後、客判定によってより多く歓声が上がったMCの勝利となる。
「――やばいやばいやばいやばい!!!」
「
「MC
会場中から二人に声援が浴びせられる。無数の色鮮やかなムービングライトの光と、ステージの至るところから差すスポットライトの光が、ステージの上で交錯する。ステージの上に立つ二人を色鮮やかに映し出していた。
――ヤバい。心臓が破裂しそうだ。
「――雪渚氏!信じてますぞ!」
「よ、よくわかんないのだ!でも、きっと雪渚が勝つのだ!あの日――十六年間の地獄からボクたちを救ってくれたみたいに、雪渚がきっと勝つのだ!それがボクの認めたライバルなのだ!」
「そうだなァ!〈十天〉が相手だろォと異能戦じゃなかろォと関係ねェ!アタイらのボスが最強だァ!」
「夏瀬……勝って……!!」
――せつくんが、こんな
――これから起こる、僅か十分弱の出来事は、やがて「伝説」となった。
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