異能至上主義に花束を ――神話級異能〈テミス〉は新世界を成り上がる―― 作:衝動
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
――またか……!歓声は半々……!これは……!
必死に歓声を上げる。それは竜ヶ崎さん、御宅さん、日向さん、手毬さんも同様だった。
会場中から、せつくんに浴びせられる声援は、
『もう一度聴かせてください!先攻――
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
『後攻――MC
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
必死に歓声を上げる。そして――勝者が決まった。
『勝者……ッ!!MC
――勝った……!
『よってEXTREME MC BATTLE 2110 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL!頂点に立ったのは――MC
――せつくんが勝った……!
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
司会がステージの
――おめでとう……!おめでとうございますせつくん……!
「っしゃァ!ボスが〈十天〉を
「おめでたい!おめでたいですぞ!雪渚氏!」
「すごいのだ!雪渚はすごいのだ!」
一方の
「…………そうか♪負けたか♪」
『おめでとうございますMC
せつくんは、司会の男から優勝賞金の「¥20,000,000」と記載された大きな賞金ボードを、頭を下げながら受け取った。
――
そして大きな賞金ボードを受け取ったせつくんは、マイクを通して視界の男に問うた。
「あのー、これ、今換金できます?」
『えっ……と、今ですか?』
会場中のオーディエンスも不思議そうに騒めき立つ。せつくんは、
「はい。今です。図々しいついでに、
『えっと……すみません、MC
「――お♪オレが立て替えまっせ♪」
口を挟んだのは
『あっ、ありがとうございます
「いいんすよ♪世話になってるんで♪ほらMC
銃霆音さんが指をパチンと鳴らすと、大きな電気エネルギーの塊の中から、
「ああ、ありがとう。お前その異能……万能すぎないか……?」
「〈十天〉舐めすぎっしょ♪ま、いいけどよ♪で、なんだ♪」
「ああ……」
せつくんはそう短く答えると、その大量の金貨を、会場へと
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
観客たちがそれを両手を挙げて受け取る。そして、せつくんはマイクを片手に言った。
「優勝させてもらっておいて悪いんだが、俺はラッパーには戻れない。生き返ったばっかで、まだ恩を返さなきゃならねえ奴がいるからな。だからこの賞金を受け取る資格はない」
「おほっ♪」
「この金はお前らが愛する音楽のために使え」
「カッケ♪アルジャーノンの時代で言うトコの日本円で二千万円だぞ♪」
「なーに、お前から
「天才が♪
「さあな……つーか随分あっさりしてるんだな」
「ガチで
「そうか。俺もだ」
「改めておめでとうマイメン・アルジャーノン♪」
二人は力強く握手――そして肩を抱き寄せ合った。〈
『――改めてEXTREME MC BATTLE 2110 GRAND CHAMPIONSHIP FINAL!優勝は!MC
「「「「「Wooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!」」」」」
そんな二人を
――こうして、第九十一回・EXTREME MC BATTLE GRAND CHAMPIONSHIP FINALは、夏瀬雪渚改め、MC
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――数十分後。激闘を終えた夏瀬雪渚と銃霆音雷霧の両名は、「超渋谷第一体育館」内にある、出場者控室付近の喫煙所にいた。俺は煙草の煙を吐きながら、同じく壁に
「
「みてーだな♪つーか
「もう途中から楽しんでしまったな」
「『音を楽しむ』で音楽だからな♪」
「シャバい音楽教師みたいなこと言うんだな……お前……」
「くーっ♪マジで最後、弾みで『
「つーか銃霆音、お前音源で十分結果出してんだからもうバトルしなくていいだろ。既に三連覇してんだろ?」
――銃霆音雷霧が〈
――MCバトル――ラップバトルに出場するラッパーは、
「バトル出る理由、ってか♪簡単だ♪オレと仲間たち――〈
「一人残らずってか?イカれた夢物語だな」
「その夢を実現するため
――銃霆音雷霧。「フェイク野郎」であることの一点を除けば、恐らく文句のつけようのないラッパーだと俺は思う。
「異能バトルも良かったよな♪オレと引き分けるなんて立派じゃね?」
「あーそれ聞きたかったんだが……あれお前の何割だ?」
「お♪ガチで戦ってたのか、ってコトか♪まあそりゃ殺すつもりはなかったから多少は手加減したが、バイブス的にはガチだぜ♪んー、三割弱ってトコか?」
――あれで三割弱かよ。改めて〈十天〉――化物だ。
「……マジか。それで?俺は結局お前の御眼鏡に
「ケッ♪それ聞くか♪文句なしの合格だよ♪」
「それなら良かった。これで駄目なら打つ手なしだった」
「次の〈
――〈
――だが〈
「まあ他の〈十天〉次第でもあるがまあ今日の一連のアルジャーノンの動き、俺の理想通りだ♪〈十天〉からも異論は出ねーだろ♪」
――まあ〈
「結果はババアあたりを通して伝えることになんのかね♪」
「お前その天音をそう呼ぶのやめろ。ぶち殺すぞ」
「おいおいつれねーな♪いくらアルジャーノンに言われてもやめねーぜ?オレはオレの信念でやってるからな♪」
「はあ……天音の前では言うなよ」
「勘違いすんなよアルジャーノン♪ババアもだが、オレは〈十天〉の連中は好きなんだよ♪こんな
「それで〈
「ああ♪恩義があるから〈十天〉の格を落とすような真似はできねえ♪〈
「お前マジで後で日向に謝っとけよ……」
「どっちにしろ日向はオレのこと嫌いだろうから許してくれなさそーだが♪まあOK♪つかあのときのアルジャーノンのキレっぷりは感じたぜ♪」
「それイジんなよ……。流石にキレるだろあれは……」
「それを狙ってやったんだっつの♪……にしてもあのMC
――天音は……「死者の蘇生」という、人間が絶対に犯してはならない禁忌を犯して、その代償として心が崩壊した。本来普通の可愛らしい女の子だったハズなのに、壊れた心を何とか保つために、自身が夏瀬雪渚に仕えるメイドなのだと、自身に「役割」を課した。その結果、日夜メイド服を着て、交際している俺にすら敬語で話すようになってしまった。
――そして銃霆音と直接戦ってみて確信した。神話級異能、〈
「なあ銃霆音」
「てか雷霧って呼べよマイメン♪一晩で二度も殺し合った仲だろ♪」
「……じゃあ雷霧。天音が神話級異能、〈
「まあな♪天ヶ羽はオレたちが生まれるよりずっと前から生きてるから、初めて会ったときからあの調子ではある♪〈十天〉は気を
「他の神話級異能も同様なんじゃないか?雷霧と戦ってわかった。神話級異能は……『異常』だ」
「アルジャーノンも神話級異能だけどな♪だがまあ正解だ♪歴史上――神話級異能を持った人間は、一人残らず三十歳を迎える前に死んでる♪」
――ネットに噂程度に書いてあったが……やはりか。天音は……老化するのを神話級異能、〈
「三十歳を迎える前に死ぬって言っても戦死じゃねー♪異能ってのは寿命を削ってんだ♪上位ランクの異能であればあるほどな♪だから多分、オレもあと八年以内には死ぬ♪」
そう言って銃霆音――雷霧は、煙を吐きながら虚空を見上げた。少しだけ、悲しそうな表情を浮かべながら。
「死にたくねーなあ♪まだまだやりてーこと色々あんだけどよ♪」
――改めて思う。この異能至上主義の新世界は異常だ。
「なあアルジャーノン♪教えてくれよ♪死ぬのって……怖かったか?」
「あのときは……そうだな。望んで海に沈んだからかな、不思議と死ぬのは怖くなかったよ。自分の身体に穴を開けたときはクソ痛かったけどな」
「そっか♪」
先程まで心地良かったハズの煙草の煙。だが、このときだけは、肺を満たす煙草の煙が、不思議と不快だった。
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