異能至上主義に花束を ――神話級異能〈テミス〉は新世界を成り上がる―― 作:衝動
「「「ミルルーーーーーーーーーーン!!!!!!」」」
『みんなありがとー!!!』
一千万人の観客の「ミルルン」コールの中、円形闘技場――厳密には楕円型だが……そのアリーナ内に現れたのはウェーブがかった紫のポニーテールの女だった。その女は、闘技場内アリーナに置かれた女神を象った彫刻――女神像の前に立った。
『司会は私!!インターネットアイドルの
裏ピースで元気良く登場したラベンダー色のウェーブがかった長い髪の女――よく目を凝らすと彼女は精巧にできたホログラムだと
『四十八万人の!!人生を懸けた戦い――〈極皇杯〉!!
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「「「ミルルーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!」」」
――動画配信サイト、「
「ふおおお……!!生ミルルンですぞ!!!」
拓生が興奮した様子で鼻息を荒くする。ミルルンは満員の観覧席を一周ぐるりと見渡して告げる。
『皆さん準備はバッチリのようですね!!!では開会式!!!まずは!!!〈極皇杯〉の会場となる、ここ!!!〈天上天下闘技場〉や異能バトルのメッカ・〈王手街エリア〉はこの国から生まれた!!!〈
ミルルンが闘技場の天井に手を掲げる。一千万人の観客の視線が、闘技場の天に注がれる。そこには、一人の長い黒髪の女性の姿があった。
「おォ!女王様のご登場かァ!」
ふわりふわりと、まるで天女かのように、その女は天から舞い降りる。中国の伝説に登場するような、仙人を思わせる緑や黄緑を基調とした衣装を身に纏っており、肩からは「天女の羽衣」としか形容できない白い布が伸びている。美しい羽衣が優雅に風に
――
女王は優雅に闘技場の地に降り立つと、懐からマイクを取り出しゆっくりと口を開いた。つい先刻まで歓声の嵐で賑わっていた一千万人の観客たちは、そのあまりの存在感に言葉を失っている。――否、魅入ってしまっている。
――女王――ということは世界六国の異能バトルを司る人間の一人……か。
『皆の者。
――
『こうして今年も〈極皇杯〉が開催できるのも普段の皆の者の活躍があってのこと――〈
――まあ女王様自身が戦う機会は滅多にないだろうから異能の詳細が公になっていないことも納得ではある。
『本日と明日の二日間に渡って開催される第十回〈極皇杯〉――
いつの間にか、闘技場の上空には、巨大なホログラムディスプレイ――大型マルチビジョンが幾つも投影されていた。その画面には、女王が挨拶を述べる姿がリアルタイムに映され、右側には読むことができないほどに爆速で流れるコメント欄、左上には同時視聴者数と思われる数字が表示されている。
――同時視聴者数十億人超。世界総人口は十一億人なのだから、〈天上天下闘技場〉に来場している観客や出場者も含めれば、この開会式の時点で既に世界人口の九割以上が視聴していることになる。改めて〈極皇杯〉――モンスターコンテンツである。
『さて皆の者、準備はよろしいか?』
女王の合図により、静かに女王の言葉に耳を傾けていた一千万人の観客たちが沸き立つ。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!」」」
「「「
女王は〈天上天下闘技場〉の観客たちを一瞥した後、僅かに頷いて告げた。
『
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
拍手喝采と大歓声の中、女王は会釈をし、闘技場内外を行き来するための通路と思わしき物陰へと向かっていった。ミルルンがマイクを口元に近付け、元気良く司会業務に戻る。
『〈日出国ジパング〉・女王!!!
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
止むことのない歓声の中、女王が足を踏み入れた通路に、もう一つ、女王とは別の人影が見える。その人影は女王に恭しく頭を垂れている。
目を凝らすと、その人物は見覚えのある人物だった。黒い
――〈十天〉の杠葉姉妹に仕えているのだからその姉である国王に仕えているのも当然か。
「――ボス!拓生ォ!すげェ盛り上がりだなァ!」
「そうですな!雪渚氏と銃霆音氏が戦ったEMBの決勝を思い出しますな!」
「これが……〈極皇杯〉か……」
『さあ!会場の熱も最高潮ですが!!!続いては!!!〈十天〉を代表して、〈十天〉・第一席の
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「鳳様ー!!!」
「すげえ!初の〈十天〉勢揃いだ!」
俺たちが座る出場者観覧席――その真向かいの観覧席には、十一の玉座が横並びになっている。その中央の玉座に座るのは、イケメン然とした爽やかな赤髪の男だ。白く長い
――〈十天〉・第一席――
鳳の頭には白い小ぶりな王冠が
――神話級異能、〈
よく見知った顔である天音や陽奈子、そして雷霧や師匠も含め、〈十天〉の面々が十一の玉座から立ち上がる。新世界の頂点に君臨する〈十天〉が並ぶ様は壮観だった。隣に座る竜ヶ崎や拓生も、その想像を絶する存在感に気圧され、言葉を失ってしまっている。
そんな中、〈十天〉・第一席――
『こんにちは。〈十天〉の鳳だ』
観衆はその存在感に圧され、静かに鳳の言葉に耳を傾けていた。彼の声音には、自然と聞き入ってしまう。そんな不思議な魔力があった。
『去年の〈極皇杯〉の優勝者のその後についてはみんなも知ってくれている通りだ。彼が〈十天〉入りしてからの活躍は目覚ましいものだったね』
その当人――編み上げたコーンロウ、側頭部に稲妻型のブロンドのメッシュ、お気に入りの黒いパーカーを着たその男は、いつものダイナミックマイクを懐から取り出して言った。
『ま、なんだ♪〈極皇杯〉に人生懸けてる奴も
――〈
その男――〈十天〉・第八席、銃霆音雷霧はニヤリと笑った。その歯から銀色のグリルを覗かせる。
『――最後まで立っていた奴が勝者だ♪Are you OK?』
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
雷霧の言葉に観衆が沸き立つ。雷霧は鳳に視線を向け、合図を送る。鳳は小さく頷き、再びマイクを口元に近付けた。
『皆の活躍を期待しているよ。日頃の成果を全て出しきってほしい。僕たち〈十天〉も、最後まで見届けさせてもらう』
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「すげェ人気だなァ!姉御も陽奈子もよォ!」
「同じクランで感覚が麻痺しますが……流石〈十天〉ですな……」
大歓声の中、天音や
「あァ?なんだァ?」
騒めき立つ観衆の中、突然、見下ろす円形闘技場の内部――アリーナの大地から凄まじい物量の水が湧き出した。まるで
俺が
『ではこのままオープニングセレモニーへと参りましょう!!!なんと!!!今年はあのアイドルユニット!!!〈
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
「――ぶひっ!?ト、トリクラですとぉ!?」
「トリクラ……と言えば涙ちゃんが所属するアイドルユニットか。大人気だな……」
「芸能に
「フォッ!フォオオオオオオオオオオオウ!!!!最高ですぞ!!!」
重力に従って降り注ぐ水飛沫の中、アリーナの中央に立つ涙ちゃんは、マイクを片手に笑顔で告げた。
『いっくよーっ☆「恋のきゅんピッド☆発射準備OK!」っ☆』
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
闘技場中のスピーカーから流れる音楽と、止むことのない大歓声の中、アイドルらしからぬ衣装に身を包んだ三人の女の子たちは、歌い始めた。涙ちゃんをセンターにその三人――〈
三人の可愛らしいビジュアルとは対照的に、ポップで弾けた印象の中毒性のある音楽。合いの手を挟む観衆たち。視界の遠方に映る一般観客席には、サイリウムを振って踊る――
――アイドルユニット、〈
「最高ですぞ!生トリクラが観られるとは!」
――トリクラは熱狂的なファンを生み出し続けている。その圧倒的なビジュアル、圧巻の歌唱力にキレのある振り付けとパフォーマンス――どの要素を抽出しても圧倒的だ。人気があるのも頷ける。
音楽チャートランキング一位の楽曲――「恋のきゅんピッド☆発射準備OK!」はAメロ、Bメロを終え、サビに入る。観衆の熱がヒートアップする。
『『『神も悪魔もハート撃ち抜けっ☆彡』』』
『きゅんで天界パニック状態!?』
センター、涙ちゃんの右側でマイペースに歌う、ふわふわとした雰囲気の小柄な女の姿がある。彼女は、話題のアニメのヒロイン役を全て掻っ攫い、担当したキャラクターソングは大ヒットを連発する、超人気声優の
ピンクのショートボブで、頭頂部に髪の一部が猫耳のように立ち上がっており、可愛らしさや親しみやすさ、コミカルさを演出している。モコモコの白いファーダウンジャケットに身を包んでおり、明らかにアイドルといった格好ではない。
『ズッキュン☆ドッキュン☆恋心Boom!』
センター、涙ちゃんの左側でクールな表情を浮かべたまま、エレキベースを華麗に弾きながら歌う、他の二人に比べて長身の女。狼を模したフードを被ったバンギャ――バンドギャル風の出で立ちのブロンドヘアのセミロングのその女は
動画配信サイト、「
『ラブの暴走止めらんないの!』
そしてセンターポジションに立つのは、〈
『『『『神も悪魔も恋に落ちちゃえっ☆彡』』』』
鮮やかなオレンジ色で、淡い青のメッシュが螺旋状に入った大きな編み込みを肩に垂らした、ウェーブがかったボリューミーなサイドテール。頭には大きな貝殻の髪飾りを着けている。
『最高速の「好き」が爆誕!』
漣漣漣涙は当初、参加したアイドルオーディションにおいて凄まじい人気で合格を勝ち取り、ソロのアイドルとしてデビューしながらも、その圧巻のビジュアルと明るく
『てゆーか運命じゃない?これ???』
――というか涙ちゃんはあの露出ファッションがアイドル衣装だったのか……。三人ともアイドルとは思えない衣装だが、それでも、この迫力をこれほどまでに見せつけられると、その人気に納得せざるを得ない。
『きゅんの暴走!正義なんで!!!』
上空に映し出された大型ホログラムディスプレイには賞賛のコメントが飛び交う。観衆の凄まじい熱気がこちら側にまでヒリヒリと伝わってくる。思わず、その熱に当てられそうになる。
――雷霧と言い、師匠と言い……〈十天〉はこんな化物ばかりかよ……!
「ガッハッハ!楽しいなァ!」
「小生は感動していますぞ……!」
「すげーな……涙ちゃん……」
魅入っているうちに、楽曲はフィナーレを迎える。留まることのない熱気と大歓声の中、〈
『みんなありがとーっ☆☆☆』
「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!いいぞトリクラーーーー!!!!」」」
「「「最高ーーーー!!!!」」」
再び湧き上がった水柱。雨のように降り注ぐ水飛沫の中、アリーナには涙ちゃんや
――神話級異能、〈
そんな大盛況のオープニングセレモニーを、女神像の前で見守っていたミルルンは、余韻に浸る観客たちに告げた。
『うおお……流石〈
ミルルンは表情を引き締め直し、高らかに宣言する。
『――それじゃあイっちゃいましょうか!開会式のラストを飾るのは!〈十天〉同士の!!
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