異能至上主義に花束を ――神話級異能〈テミス〉は新世界を成り上がる―― 作:衝動
学校の体育館ほどの広さのドーム型の安全地帯――その
炎上する機体の真上に立つ、青みがかった
一方、天球の頂点――夕陽をバックに宙に浮いている、宇宙服を着用した、コズミックカラーのふわふわの髪の男。彼は第八回〈極皇杯〉のファイナリストにして準優勝者、「
そしてその二人を、滑走路の地から見上げる、二本の黄色い角を生やした女の姿がある。女の肌は鱗で覆われ、
「ふふ、全く……このHブロックには魅力的な女の子が多いね。最後に可愛らしい女の子二人と殺し合えるなんて光栄だよ」
「気持ち悪ィこと言ってんじゃねェぞォ!ナルシスト隕石野郎ォ!」
「
毒ガスは、これ以上縮小する様子を見せない。夕陽に照らされるこの滑走路の地が、最終決戦の舞台だ。お互いの出方を
霧隠忍の輪郭がぐにゃりと歪んだ。竜ヶ崎巽の視界が一瞬で塗り潰される。次の瞬間、残像のようにもう一体、さらにもう一体と姿が現れ、十体、百体、千体――数える間もなく、同じ顔、同じ殺気を宿した「敵」が、竜ヶ崎巽を取り囲んでいた。機体を包む炎の中、その影がゆらゆらと揺れる。
「ふふっ、まずは巽ちゃんから片付けちゃおうってワケだね」
「「「……否でござる」」」
無数の分身体が口を揃えて言葉を発する。――その瞬間、上空に浮かぶ
「――ぐふっ!」
背後から
一方、竜ヶ崎巽は、次々に襲い掛かる霧隠忍の分身体を
「――『
「「「拙者は一匹いたら百匹いるでござる」」」
「ゴキブリじゃねェか……ッ!」
「
一方、地に勢い良く叩き付けられた
「いてて……。女の子に刺されるのも悪くないけど、勝たなきゃいけないからね。ごめんよ」
そう言って
「ふふっ、僕の異能は偉人級異能、〈
「「「
「あァい!テメェら……ワケわかんねェんだよォ!『
竜ヶ崎巽が地上で必死に霧隠忍の分身体と応戦する中、上空の
「……まあ、今は宇宙飛行士ではないのだけどね」
そして、その小さな身体が巨大な隕石へと変貌する。表面は轟々と燃え、まるでスローモーションかと錯覚さえしてしまう。燃ゆる隕石が徐々に地上に迫り来る。
「――おあッ!?」
竜ヶ崎巽は身を
「優勝すればどんな願いでも叶う――それが〈極皇杯〉だよ」
「「「
「実際のところ、〈十天〉に加入できる権利が得られるのだから夢物語でもないだろうね」
「――ガッハッハ!忍者ァ!テメェの分身、何体か死んだぞォ!」
「「「あの分身体は拙者の分身体の中でも最弱……
霧隠忍の
「――ぐふっ!」
「「「拙者の異能は偉人級異能、〈
「いい!いいね!最終決戦に
「――『
「竜ヶ崎殿。拙者の分身体一匹まともに倒せないとは……
霧隠忍の分身体は、一体一体が霧隠忍と同等の力を有していた。模造品の域を超えたその女の分身体の攻撃は、全身が悲鳴を上げるほどに痛い。竜ヶ崎巽もボロボロの身体で応戦するも、分身体を潰すまでには至らない。彼女は既に意識を失いかけていた。
「ガッハッハ!そろそろだァ!――『
「――『
竜ヶ崎巽の、全身の力をフルに使った突進攻撃。その攻撃により、彼女を取り囲んでいた十数体の霧隠忍の分身体が――爆ぜた。
「「「肉体の強化……
竜ヶ崎巽の視界の端に映る、侵攻を
「ガッハッハ!楽しいなァ!!〈極皇杯〉!!出て良かったぜェ!!」
「「「
一方、再び上空へと舞い上がる
「ふふ、僕も楽しいよ。……ところで、君たちのような可憐な女の子が、どうして〈極皇杯〉に?」
「「「……拙者の里は酷く貧しい里でござる。皆が山から食べられる食材を集め、何とか命を繋いでいるでござる」」」
「――『
火力が跳ね上がった火炎放射が霧隠忍の分身体を葬る。しかし、数を減らしたはずの霧隠忍の分身体は、またしても分身し、その頭数を増やす。戦場には無数の手裏剣や
「「「二一一〇年のこの新世界で……異能という武器を皆が持つこの世で、忍者の力を誰も必要としないでござるからな」」」
「そうか……忍ちゃんはそのために……」
「「「拙者は里の者に勇気を与えたいでござる」」」
「――『
「「「竜ヶ崎殿……」」」
「ボスも、姉御も、拓生も、陽奈子もみんな幸せになってほしいんだァ!辛い目に遭ってきたのにアタイを救ってくれたようなヤツらだからよォ!アイツらは幸せになんなきゃいけねェんだァ!」
「巽ちゃん……」
「――そして、最後にアタイ自身が幸せになるためだァ!」
霧隠忍の
「素晴らしい!君たちは本当に魅力的な女の子たちだ!」
迫り来る毒ガス。既に安全地帯は公園の円形広場ほどの広さにまで狭まっていた。足場を
「……テメェはなんで出場したんだァ!ナルシスト隕石野郎ォ!」
「はは、自己紹介したのに手厳しいね、巽ちゃんは」
「僕は宇宙飛行士として頑張っていたんだけどね。先日、事故で視力を失ってしまったんだよ」
「テメェ……!見えてねェのかァ……!」
「目が見えないと宇宙飛行士には戻れないんだ。僕はもう一度、宇宙から綺麗な地球を見たい。――それが僕の夢さ」
「「「……
「どんな願いでも叶えてくれる〈極皇杯〉――優勝して視力を取り戻すんだ。そして自分の力で夢を叶えるんだ。だから、悪いけど僕が本戦に進ませてもらうよ」
その影の真下――霧隠忍の分身体と拳を交える竜ヶ崎巽は、震えていた。――武者震いだ。そして、彼女は叫んだ。
「――っしゃァ!来やがれェ!ファイナリストになるのはアタイだァ!!」
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