異能至上主義に花束を ――神話級異能〈テミス〉は新世界を成り上がる―― 作:衝動
――時は再び、少し
白いマッサージチェアが一面に並べられた空間。青年・夏瀬雪渚の眼前で、ぱん、と弾けるような音と共に、マッサージチェアに腰掛けていた
「は……?」
俺は思わず声を漏らした。露出度の高い格好の黄緑髪の女――
庭鳥島のその表情には恐怖の色が滲んでいる。怯えた様子の庭鳥島は、俺に胸を押し付けて抱きつく。そして庭鳥島萌は、声を震わせながら叫んだ。
「――お、鬼が……鬼が出たばい!」
「馬絹……!」
――俺も、庭鳥島も、そして馬絹も、コーヒー牛乳を飲んで
ふと、そのスパフロアの奥に目を向ける。他に誰もいなかったはずのその階層。凄まじい殺気を感じたのだ。奥の白いマッサージチェアの
「ヨぉ……有名人……」
「――
男はフード付きの防寒コートに全身を包み、バラクラバと呼ばれる顔の覆いで口元を覆い隠し、目だけを出している。ブーツや手袋を着用し、全身白で統一された、「白い死神」とでも形容すべきその姿に背筋が凍る。
「――せ、せつな!逃げんと!」
短い丈の白いキャミソールを着た庭鳥島は、その背中から美しいグラデーションとなった赤い翼を生やす。そして、変貌させた猛禽類のような脚で、俺の背中をがしりと掴んだ。俺に有無を言わさないほどのスピードで。まるで、あの強かった庭鳥島が、酷く怯えているようだった。
俺を脚で掴んだ庭鳥島は、まるで何かから逃げるように、そのまま窓ガラスを突き破った。庭鳥島の華奢な身体にガラス片が突き刺さる。そして銃声と共に、庭鳥島の脚に一発の弾丸が命中する。だが、そんな
その
――あの尋常ではないタフネスを発揮していた馬絹を一撃……。
「庭鳥島……」
「逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと逃げんと――」
「――おい!庭鳥島!」
「――あっ、せつな……気が動転しとったばい」
現状の安全地帯は本館の七階以下、北館の五階以下のみである。窓を突き破った庭鳥島は、
そこは大宴会場であった。天井高く吊られたシャンデリアが淡い光を放ち、大理石の床に
「ここは……大宴会場たいね」
円卓が
「これは……」
他に誰もおらず、
――
「庭鳥島……大丈夫か……?」
「え?」
「いや、脚……」
「あ、あぁ、大丈夫ばい!なんとか……」
庭鳥島の露出した右脚の
「
「はうっ!」
その名を出した途端、庭鳥島が身を
――昨年の〈極皇杯〉、その本戦の一回戦第三試合、庭鳥島萌と冴積四次元は激突した。結果は冴積四次元の圧勝。その試合時間は僅か十六秒で決着――このことが、庭鳥島のトラウマになっているのではないか。
ふと、大宴会場の奥に目を
「逃げるなヨ……〈
「……は?」
――なん……で……!?
冴積四次元は、雪国で知られる〈城塞都市テンジク〉の軍人であった。異能戦争において、同国の
――正直、冴積四次元の異能はわからない。奴は昨年も含め、過去に三度も〈極皇杯〉の本戦に進出している。が、その本戦での一対一の異能戦において、使ったのは
「――せつな!あいつは……!あいつは……!」
「落ち着け……!」
――連絡通路を使ったのか……?いや、それでも早すぎる。
「はぁ……!はぁ……!」
この北館四階は、大宴会場の他にボールルーム――舞踏室や、イベントホール等が存在するバンケットフロアだ。大理石で造られた廊下を駆け抜け、エレベーターのボタンを叩き付けるように押す。
背後を振り返るが、冴積は追って来ていない。
世界十三位の男、第九回〈極皇杯〉ファイナリストにして
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