かなり特殊なセクハラを食らうマスターの話 作:テノちに永住希望
イギリス、ロンドンのとある一角にて
椅子に座って本を読む男の背後から、一人の女が現れて話しかける。
「ねぇ、この家…手狭じゃありませんか?引越しましょう?」
「いや、考えてない」
「じゃあ、新しい家を建てましょう。二人で相談して、間取りも立地もゆっくり決めて、二人ともを満足させるものができるまで……私たちで、家づくりしましょう、ね?」
「なにがじゃあ、なんだ?」
女は冷たくあしらう男にしつこく食い下がる、というよりはそもそも男の雑な返答を気に留めてすらいないようだ。
「私が全てを請け負います。引っ越しの手続きも作業も要りません、あなたが起きたらそこはすでに新たなマイホーム。素敵ですよ、ね?」
「別に、俺はこの家で満足している」
「
「……おい、今この瞬間に俺はとんでもないセクハラを喰らった気がするんだが?」
「気のせいですよ。私とあなたの間に交わされているのは未来を夢見る神官と、その永住の地である私の微笑ましい会話ですよ」
「誰がお前に永住すると言った?」
「私との契約とは、そういうことですよ?私のトラマカスキ」
微笑む彼女に、男は額に手を当てて大きなため息を吐く。
二人の出会いはおよそ九年前のこと。
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2004年
冬木、第四時聖杯戦争と同時期のとある地域。
そこは冬木と地脈が接続された場所で、偽物の聖杯と令呪を利用して一人の男が英霊の召喚を実行した。
どこかの世界線で、どこかの学部長が行ったのとほぼ同じ手法だ。
だが、彼の魔術では新たにクラスを作ることなど出来はしない。
彼に許された魔術は、例外を作ること。
その魔術と、触媒として用意された
神殿の心臓部の瓦礫から、彼は神霊を召喚しようと試みていた。
「素に銀と鉄
礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を、四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。」
周囲に魔力が満ち、召喚陣からほんのわずかに漏れ出た光が、儀式は問題なく進行していることを彼に知らせる。
彼は目を見開き、自身の魔術を行使する。
「告げる」
何かが切り替わったような感覚。
召喚陣から強い光が溢れ、突風が辺りを荒らす。
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!聖杯の寄るべに従い、この意この理に従うならば応えよ!……誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。」
その時、彼は召喚の言葉に通常では使用しない一句を添えた。
「されど汝、理より外れ己が道を歩むべし。汝、人の世の例外となるモノ。我、その力を求める者」
それを皮切りに、目を潰さんばかりの光が召喚陣から溢れ出し、男はそれの中でナニカが現れようとするような感覚を覚えていた。
「汝三大の言霊を纏う七天 、抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よ─────!!」
「……サーヴァント・プリテンダー。私を呼んだのは、あなたですね?」
「あぁ、そうだ。俺は魔術師、アッシャー・ロック。アッシャーでもロックでも気軽に呼んでくれ。お前の真名は?俺としては、メキシコあたりの神霊だと踏んでいるのだが」
「惜しかったですね。私はテノチティトラン、あなたが狙っていた神霊を祀っていた祭壇です」
召喚されたサーヴァント──テノチティトランがそう返すと、彼は目を輝かせるのだった。
アッシャー・ロック
とある魔術家系の努力の粋を凝らした最高傑作であり末裔。
彼らの家系が磨いてきたのは、彼らの家系が「エグゼンプティオ・ヴェリタティス(真理の免除)」と呼ぶ、物事に例外を作る魔術。
平均と最高値など、上限が決まっている状況においては例外を作りそれを上回ることができるが、そのようなものが存在しない状況では一切利用できないピーキーな性能の魔術であるため彼はその他に肉体の強化などの魔術を幾つか実践レベルまで磨いている。
今回の彼は、この真理の免除を利用して聖杯戦争の七騎のサーヴァントの例外となるエクストラクラスの召喚を行なった。