かなり特殊なセクハラを食らうマスターの話 作:テノちに永住希望
「ほうほう、俺の魔術はそう作用したのか。……失礼だが、少し全身を調べさせてもらっても?」
「いきなりセクハラですか。酷いマスターを引いたものです、ね」
「違う違う!建造物なんだろう?それがサーヴァントとなったなら、どこまでが人で何処までがモノなのか、調べない術はないだろう!」
ぐぐぐっ、と近づいてくるアッシャーを前にテノチティトランは後ずさる。そして暫く彼女を観察したアッシャーは申し訳なさそうに
「……はじめに言うが、俺は聖杯を狙ってない。お前こそが目的だったからな」
「私が?」
「そうとも、俺の目的は俺の魔術を実証すること。俺は考えてたんだ、先代たちが紡いできた魔術では、根源の渦への初めの一歩すら踏み出せないんじゃないか……とな」
「それと、私の召喚にどのような関係が?」
「──エグゼンプティオ・ヴェリタティス。我がロック家が積み上げてきた魔術だ。これは理から外れるための魔術、理の外に出ることができる魔術ではなく理の外でしか存在できない魔術だ。しかし、この魔術は燃費が悪い、人が一人理から外れるだけでも世界に睨まれるからな」
アッシャー立ち上がると顎をさすりながら、言葉を探すように話を続ける。
「……我が家の先代たちが目指したのは、理の中心で根源の渦を見出すのではなく、理の外に理りを見つけることだった。根源の渦とは果たしてたった一つきりのモノなのか、それを突き詰めたんだ。だが、俺は理の外に手を伸ばすなど馬鹿馬鹿しいと思っていた。実際、失敗続きだったからな」
考え込む時の癖なのだろうか、部屋の中を落ち着かなく歩きながら話を続けていた彼は、そこで言葉を切って立ち止まりテノチティトランに視線を向けた。
「しかし、今ここにお前がいる。お前は我らの長い歴史の中で数少ない成功例だ!俺はついに理の外側に手を伸ばした!あぁ、これほど喜ばしいことがあるだろうか?お前がいなければ俺はチンケな小説家に成り下がるところだった」
「……小説家?」
「あぁ、この召喚が失敗すれば魔術の道から外れようと決めていたんだ」
彼は机の中から原稿用紙の束を取り出す。
未だ白紙のそれは、もしもテノチティトランが召喚に応じなければ、文字で埋め尽くされ様々な出版社の元に送り届けられていただろう。
しかし、彼はそれに火をつけた。
「……よし、これで未練はない。改めて、ロック家の末裔、アッシャー・ロック。理の外を歩み、理の外に理を見出すことを目的とする魔術師だ。よろしく」
差し出された手をテノチティトランが握り返す。
握手を終えた彼は慌ただしくどこかに電話をかけ始める。
「……俺だ。この前のルートで、同じ物は後いくつ手に入る?──わかった、言い値で買おう、全部だ」
様々な場所に電話をかけ、同じような内容の会話を繰り返すこと十回ほど、彼はようやく電話を受話器に戻した。
「……何をしていたんです?」
「俺とお前の契約祝い品ってとこだ。数日もすれば届くだろう」
そして数日後のこと、暇を持て余していたテノチティトランは外から聞こえた大きな音で目を覚ました。
敵襲かと思い外に行ってみると……
「──ま、マスター?これは……」
「お前ならわかるだろう?在りし日のテノチティトラン、その残骸だ」
一つ一つはごく小さな欠片、しかし確かに
「サーヴァントの中には、自らが作ろうとした建築物の残骸を用いて宝具を形成するサーヴァントがいると聞く。お前がそのタイプからわからなかったが、とりあえず記念としてかき集めた。お陰で貯金は空だが、まぁ良いだろう」
「──これを、私に?」
「あぁ、そうだ。宝具にするなり取り込むなり好きにすると良い」
テノチティトランが欠片の一つに手を触れる、するとそれはまるで在るべき姿に戻るように彼女の中に溶け込んでいく。
欠片の一つ一つがテノチティトランの霊核を確かなものへと変えていく。
「──よし、上手くいったな。お前は理の外から呼び出した、世界に排斥されるサーヴァントだ。だが、その欠片たちが……お前がこの世界に存在した証拠たちが、お前がこの世界に存在することを支えてくれるはずだ」
「……感謝します。マスター」
「礼には及ばない、するべきことをしただけだ。追加でいくつか取り寄せておいた。お前の最盛期というものを、もう一度見せてくれ」
都市の最盛期、それは人がいてこそのものだ。
だが彼はそれを見せろと言った。
彼一人でも、彼女が最盛を迎えるまで文字通りの百人力で支えると……本人がそこまで考えたのかは別として、テノチティトランは今の言葉をそのような意味だと捉えた。
そして……
「──えぇ、今度こそ私は、不滅の都市となって
ここに、二人の最初の絆が結ばれた。
大変長らくお待たせしました。
少しモチベが死んでたんですけど、終章で復活して「どうせ終章やってるなら全部読み終わってから書こう」と考え、今日に至ります。
亀のようなペースになりそうですが今日から更新していきたいと思います
それに伴って、ネタバレ注意、本編読了後推奨、のタグを追加させていただきます