各学園への挨拶周りをしていたある日のこと、今日は珍しくどこの学園ともアポイントメントが取ることができず、前日の夜から泊まり込みで前日から溜まっていた仕事と、しばらく全く手を付けていなかった
「えーと、これはこうだから、こっちはこうして」
未だにこちらの世界についてはわからないことが多くある。彼女達にとっては常識的なことであっても、異世界の俺からしたら非常識なことは多々ある。それは書類作成においてもみられるため、時折ペンを置き、パソコンを操作してそのことを調べることがよくあった。
コンコン
書類と格闘している中、突然シャーレの部室の戸が誰かに叩かれた。今日は誰かがシャーレに来るなんて予定は一つもなかった。飛び込みの来客か、一体誰が来たのかと確認してみれば、扉越しにユウカの姿があった。
俺はすぐに卓上に置かれていた
「どうぞ、戸は開いてるよ」
「失礼します。セミナーの早瀬ユウカです」
ミレニアムとDU地区は隣接していて、電車一本でここまで来ることができる。来ようと思えば簡単に来ることができる距離であるため、彼女が寄り道感覚で来てもそこまでおかしくなかった。そのためか、彼女の格好はとても軽装だった。
「今日はどうしたんだい?何か相談事か?」
先生といえば生徒の悩み相談もある。その悩みは多岐にわたるため俺に答えられる範囲の相談だったらいいのだが。そう思いながら身構えてユウカの言葉を待った。
「リムル先生のお手伝いをしようと思いまして」
そっちか。確かに俺が学生の時も先生の手伝いをしたことがあったっけ。わざわざ遠くまで手伝いに来るってパターンはなかった気はするけれど。
「いや、大丈夫だよ、君だってセミナーの業務で多忙なはずでしょ?」
「それこそ大丈夫です。自分の業務は全て終わらせてありますから」
「わぁ、すっごい優秀」
「ありがとうございます」
生徒会とも言えるセミナーに所属できるだけの実力はあるようで、自分の業務は簡単に終わらせることができるらしい。そして彼女はこちらの話を無視して、俺の卓上に乗せられていた仕事の山を持っていき、席に着いた。
短い付き合いであるものの彼女の人となりは何となくわかってきている。この場合の彼女には何を言っても無駄だということも。俺は
互いにペンを走らせながら、パソコンを操作して資料を纏めるのを進めている中。
「年頃の女の子がこんな所で油を売っていていいのか?同じ学校の子とカフェに行ったり、遊園地に遊びに行かなくていいのか?」
「大丈夫です。友人付き合いは確りしていて、友人とは毎日話していますし、多くの人達と交流を持っていますから。一日二日の放課後程度他の所に行っても問題ありません」
「そういう問題じゃない気がするけれど」
互いに仕事を片付けつつ会話をする。ユウカの方を見てみれば、手慣れたように電卓を片手で打ちながら仕事を片付けていく。セミナーの会計の名は伊達ではなく、予算系の書類は瞬殺であっという間に片付けられていった。それを見て俺もゆっくりとはしていられない、元ゼネコン勤務だった頃の事を思い出しながら、パソコンでマクロを組み、シエル先生のご協力のもと目の前の仕事を片付けていった。
それからしばらくして、俺の卓上からキヴォトス関連の仕事が片付いた頃だった。
「リムル先生、こっちの仕事も片付きましたよ」
「早くないかな?」
俺よりも仕事の量は多くなかったとはいえ、それなりの量があった。俺が同じ量の仕事をしえる先生のサポートなしで一人でやれば、今頃にはまだ半分しか終わっていないであろう量を、彼女は誰のサポートもなしで自力でやり遂げてしまっていた。
「セミナーならもっと面倒な書類が沢山ありますからね。これくらいの書類なら簡単に終わりますよ」
「セミナーってもしかしてブラック?」
「いや、ブラックじゃないですよ?確認お願いしますね」
「ああ」
ユウカが終えた仕事を俺が一通り目を通す。やはりと言うべきなのか、俺が訂正するような個所もなく、完璧に終わっていた。
「ありがとうユウカ、助かったよ」
「いえいえ、これくらい。それでリムル先生」
「なんだ?」
先程の仕事を持って行ったときとは違い、何やらこちらに少し下手に来ている印象を覚えた。
「少しお時間頂いていいですか?」
「・・・それが初めから目的だったでしょ?」
俺の仕事の一部を自分で片づけて、その分早く片付いた時間で俺と何かをしたいという算段だった。まだ
「わかった、これを片付けたらな」
「はい!!」
今日一番の笑顔をユウカは見せてくれた。俺は大急ぎで残された仕事を片付けて、全てが終わったころはすでに日が傾き、空は夕焼けの赤と夜の青黒い色のコントラストを立てていた。
「すまないな、こんな時間になっちゃって」
「いえ、私が来た時間も遅かったですから」
ユウカが俺をどこかに連れていきたいとのことだったので、ユウカの案内で目的地に向かう。
「リムル先生はここに慣れましたか?」
「まぁぼちぼちかな。常識の違いには驚かされてばっかりだけれど」
「そうですか・・・私としたら帯刀しているほうが驚きますけど」
この世界の生徒達は銃を携帯していることが当たり前なのだ。それは銃を持っていない人は全裸で出歩いている人よりも見かけないことに。あれ?こういう言葉が出てくるってことは、昔全裸の不審者が現れたってことに・・・考えないことにしよう。
さて、それだけ銃を携帯している生徒達が多い中で俺が無手の状態でいるのはあまりよろしくない。そのため、俺がよく使っている刀をそのまま出して帯刀している。
「ここです」
ユウカに連れてこられた場所はよくあるファミレスチェーン店。学生達が集まるにはちょうどいい場所だ。
俺とユウカはファミレスのテーブル席に座り、フライドポテトとソフトドリンクを注文し、ポテトを摘まみながら話し始める。
「それで、わざわざ場所を移した理由は?」
「その、お恥ずかしながらうちのヴェリタスっていう集団がリムル先生に興味を持ったらしくてですね・・・」
「それで?」
「多分シャーレの部室に盗聴器を仕掛けていると思います」
「ああ、あれか」
先日シャーレの部室に戻ってきたとき、シエルが部屋に仕掛けられている盗聴器に気が付き、だれが仕掛けたのかを調べるために放置していたが、ミレニアムがやっていたのか。
「本当に申し訳ありません。ヴェリタスの部長が仕掛けた人にきつく言ってるそうなので」
「まぁいいよ、聞かれて困るようなことはないから」
ユウカが俺をこの場所に連れて来た理由はなんとなくわかった。ヴェリタスの子達にこれからの会話を聞かれたくない、そういったところか。
「所でリムル先生、ここまで連れてきてあれなんですが・・・財布の方は大丈夫ですか?」
「・・・一応大丈夫」
「見せてください!!」
ユウカに俺の財布が奪い取られて、中に入れていたレシートとお金を次々と確認されていってしまった。
「リムル先生?このレシートの数々は何ですか?」
「はは・・・」
俺が遠くの方を見るが、ユウカは机越しなのに凄い目力でこちらのことを見てくる。
こうして、俺はユウカに最近使ったお金の使い道を洗いざらいに吐かされることになってしまうのだった。おまけに、ユウカに俺の財布が何故だが握られることにも・・・
「やっぱり、おかしいですね」
ミレニアムの一室、音瀬コタマはパソコンに保存されていた音声ファイルを止めてそうつぶやいた。
「ユウカとチヒロに怒られてしまいましたが、実は盗聴器自体はもっと前から仕掛けていました。その盗聴器が録音した音は・・・」
新たなファイルを再生し、盗聴した音声データを聞いていく。夜中、リムルがシャーレの一室へと戻ってきたと思われる扉の開閉音、そこからリムルが移動していく足音、ペンを走らせてる音が何度も響き渡る。そして、その音は早朝の時報を伝えるその時まで聞こえてきていた。
「それも連日、先生は一体いつ寝ているのでしょうか?日中の活動の話も聞くと盗聴を開始してから先生は一睡していないはず・・・」