異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

13 / 68
実際、アビドス高校の惨状とかを考えると、こういうことがあり得るよね・・・


十三話 汚職

 アビドス高校を出て直ぐにシャーレの部室へと向かい、郵便受けを確認してみればアヤネが言っていた通り、アビドス高校からの救難要請の書簡が届いていた。

 救援物資の申請はシャーレの管轄で無いため、俺の判断で連邦生徒会が保有している物資を持ち出すことは原則としてできないものになっている。とはいえ、先程襲撃を受けていて、直近でも数度襲撃を受けている状態での物資不足は十分な緊急性を有しているはず。

 俺は急ぎ、補給物資の出庫の申請書類を書き、連邦生徒会へと急いだ。

 連邦生徒会は相変わらずあわただしく、生徒が書類を持って走っている。俺はそんな彼女達の間を通り抜け、備品管理を担当している生徒の元へと向かった。

 

「君、これを至急でお願いしたいんだけれど」

「補給物資の申請ですか?でしたら承認に一週間は」

「至急だ。今すぐに通して出してほしい」

 

 こういう時俺がトップでないことで諸々の手続きが必要な煩わしさを覚える。俺一人で事を進められた魔国連邦(テンペスト)とは異なり、ここのトップは連邦生徒会。俺はあくまでそこに雇われている先生なのだ。

 

「いくら先生と言えども、これは規定です。結果は一週間後にお伝えしますから、それまでお待ちください」

「緊急なんだ、そこをどうにかできないのか?今すぐに必要なんだよ」

「ですから、規則は規則です。こればっかりは先生にも」

「でしたら、私が許可します」

 

 俺と担当の生徒とやり取りしている中に、彼女が割り込んできた。

 

「リン行政官!?」

「補給物資の申請には最終的には連邦生徒会長の押印が必要ですが、現在それは私が代行しています。つまり、私が許可したとすれば?それに補給物資、特に緊急を要する書類は至急案件で当日中には生徒会長のところまで回すようになっているはずですが?」

 

 最後までは言わなかったが、現在の自分達のトップが良いと言ってしまえば部下である彼女たちは何も言えなくなってしまう。担当の生徒は困惑しつつも先程俺が渡した書類をリンへと渡した。リンは書類を一瞥し、懐からハンコを取り出してハンコを押し俺に渡した。

 

「あれだけの仕事をこなしている先生が緊急を要するとなんて余程な事です。そうですね?」

「ああ、在校生五人の学校が不良生徒達に何度も襲撃されてるんだよ。お陰で物資も切れかけてるようだ」

「それは・・・」

 

 ここで大変ですねなんて他人事な事を彼女達は言えない。こうした不良生徒達の相手は本来連邦生徒会がしなければいけなかった。けれど、現実はそんな所まで手は回っていない。

 

「補給物資の運送を手配しますか?」

「いや、俺が直接持ってく。そっちの方が早いからね」

「わかりました。こちらで補給物資は纏めておきます」

「頼んだ」

 

 直ぐにリンは近くに担当の生徒に指示を出し、倉庫から様々な物資を取りに行かせた。その間に俺はこの場で待つことになるのだが、一つ気になったことがあったのでリンに聞くことにした。

 

「アビドス高校って名に覚えは?」

「アビドス砂漠にある高校の一校程度しか」

「・・・過去に救援要請とかあったか?」

「少なくとも、私が在学してから三年間はありませんね」

「・・・」

 

 果たしてあれだけの荒れよう、街並みも住民減少により荒れ始めていたとしても、あそこまで進行するものだろうか。それに、救難要請も本来ならばシャーレより先に連邦生徒会に要請するはず。それなのに、俺の元に救難要請は届いた。そして、連邦生徒会の立場的にはNo.2だった彼女は過去に救難申請が出されたことを知らない。連邦生徒会に救援を要請しても無駄だった?

 

 シエル、アビドス高校以外で今にも廃校になりそうとか、直近で廃校になりそうな学校はわかりそうか?

《可能です。支援が必要な学園をリストアップします》

 

 シエルはあっという間に、依然胃袋に入れてシエルに覚えてもらった大量の学園のデータの中から、本来支援が必要な学園を調べてもらった。

 

「リン行政官、ちょっと電話をしたいからいなくなるんだけれど、もしかしたら」

「わかりました。ここで待っています」

「すまない、すぐに済ませる」

 

 俺は部屋を出て通路でタブレットを起動させる。

 

「アロナ、アビドス高校に電話を頼む」

『アビドス高校ですか?生徒さんに電話をするなら生徒情報から』

「それだと不審がられるだろ。学校の方に頼む」

『わかりました』

 

 アロナはアビドス高校校舎への電話番号を調べてかけ始めるが・・・・

 

『あれ?おかしいですね、アビドス高校への電話番号はこれのはずなのですが」

 

 どういうわけだが、アビドス高校には電話が繋がらない。アロナは不思議に思いつつも、アビドス高校にかかわる電話番号へと片っ端から掛けていった。

 

『こ、今度はアビドス高等学校分校校舎への電話番号です!!』

 

 タブレットからアロナの息を切らす声とダイヤルの音が聞こえてくる。そして、

 

『はい、アビドス高等学校の奥空アヤネです』

 

 彼女が受話器を取ってくれた。

 

「ああ、俺だ。シャーレのリムル=テンペストなんだけれど」

『先生!!急に電話なんかしてどうしたんですか?』

「至急で確認したいことがあってな」

『確認したいことですか?一体何でしょうか?』

 

 受話器越しでも不思議そうにしているアヤネの声が聞こえてくる。

 

「まず、アビドス高校は過去に連邦生徒会に救難物資の要請は出したことがあるか?」

『はい、何度かありますね。ですが、受理されたことは一度も』

「連邦生徒会に出向いたことは?」

『そちらに出向いているほどの余裕は私達にはなくて・・・』

「わかった、ありがとう。あと、そこって分校だったの?」

『あ、はい。大分前に本校校舎は砂嵐がひどくて、こっちに移ったそうです』

 

 アビドス地区って結構大変な地区なんだな。俺はそう思いつつも電話を切り、リンのもとへと戻った。

 

「直近で他校から救援要請はあったか?」

「そちらもないですね」

 

 少し調べないといけないことがあるかもしれない。

 

「リン行政官」

「何でしょうか?」

「連邦生徒会の過去の書類、色んな学園からの要請書類関連全部閲覧させてくれないか?」

「理由次第です」

「・・・結果的に連邦生徒会長を捜索する助けにはなるはず」

「・・・わかりました。許可します」

 

 俺はリンから許可を取れた。だから俺はすぐに担当の生徒が居なくなった机の引き出しを片っ端から開けていき、中の物を確認していく。

 突然俺がしだした行為に周囲にいた生徒達はざわ付き始めるが、構わずに調べ進めていき見つけた。

 

「あった」

 

 俺は認めたくなかったが、それを見つけてしまった。

 

「それは?」

「過去に要請された、アビドス高等学校からの救援物資要請書類。俺が来る一か月以上も前のものだよ」

「・・・ッ!?」

 

 ただ面倒くさくてここで止まっていたのならばまだ良かった。それなのに、何故かこの書類はすでに出庫が許可された書類になっていた。アビドス高校にそんな物資は来ていないという話になっておらず、本来保管されている場所とは全く関係ないデスクの中で見つかった。

 

「アビドス高校だけじゃない、旧私立ヒヤシンス学園、リナリア学園・・・他の学園のもあるぞ・・・」

 

 隠されていた不正の証拠と思われる書類が次々と出てくる。そして最悪なことに、見つかっていく資料の学園は、先程シエルにリストアップしてくれた学園ばかりだった。

 

「さて、これ、どうする?」

 

 ここまで杜撰な管理をしていることにはもはや声が出てこない。ユウキだって西欧商会も俺等に関係を悟られないように暗躍していた。それなのに、こうしてあっさり物的証拠が出てきてしまったことに、詰めの甘さを感じてしまう。

 

「本来連邦生徒会長の押印がなければならないはずなのですが・・・偽造の押印ですね」

「はぁ」

 

 ただでさえ、連邦生徒会は大変なことになっているのにも関わらず、加えて不祥事の発生。これには、俺とリンは互いにため息を漏らしてしまう。

 

「で、どうする?書面的にはアビドス高校他多数の高校から正式に要請された補給物資の出庫を許可しているぞ?けど、アビドス高校はそんなものは受け取っていないどころか承認されていないと証言してる」

「過去の備品の入出庫履歴を確認します」

「外部にはどう報告する?ただでさえ連邦生徒会の信用は地に近いのに」

 

 そう、連邦生徒会の信用は地に近い。というよりも、直近の連邦制都会への信用はあくまでも連邦生徒会長個人に向けられていたものだった。その連邦生徒会長が居なくなっている今、加えて直近での連邦生徒会の対応も含めて信用は落ちに落ちている。

 

「正式に大々的に公表します。問題を起こしたのは連邦生徒会の一部、他の連邦生徒会は無関与だと」

「悪いことはどんな風にも言える。それだけだと信用は得られないぞ?」

「痛みの伴う公表です」

「痛みか・・・」

 

 すでに信用を失っている連邦生徒会は、信用以外の別の何かで代償を支払わなければない。その代償はただの金銭だけでは解決しないことは、彼女もわかっていた。

 

「私が該当の学園全てに出向き謝罪します。救援物資が遅れたことに対する損害補償も支払って」

「多分、補償を支払ってたら連邦生徒会は終わるぞ」

「え?」

「ここ、この前廃校になってる。そうした学園生徒たちにも補償金を支払ってたら予算が底をつくぞ」

「ッ?!」

 

 発覚が遅すぎた。それに、手掛かりはあったのだ。連邦生徒会長が失踪してからの犯罪発生の上昇率が明らかにおかしかったのだ。もしそこに、初めから連邦生徒会に恨みがあったものならば、連邦生徒会が手を貸してくれていればどうにかなっていたのを、助けを求めていたのに何もしなかった連邦生徒会となれば・・・

 

「すでに手遅れだと」

 

 俺は彼女の言葉に何も返せなかった。前にも思ったが、全てが生徒の責任を超えていて、生徒がやることなすことも超えている。もしかして、連邦生徒会長はこうした後始末を俺にさせるために失踪したのか?

 

「手遅れだからと言って、何もしないわけにはいかない。後手に出れば出るほど取り返しが付かなくなる」

「そうですね。リムル先生は」

「ひとまず、補給物資を受け取ってアビドス高校に向かう。あそこもいつ廃校になってもおかしくないから」

「わかりました、完了次第連邦生徒会に来てください」

「ああ・・・」

 

 これから連邦生徒会は自らを地獄へと落とすことになる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。