異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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十七話 捜索

「セリカが行方不明になった!?」

 

深夜にゲヘナへと向かい、当たり前のように残業をしていたヒナの手伝いをし、別件をこなして皆が登校する時間よりも少し過ぎた頃にアビドス高校へと来た俺を待っていたには、思いもしなかった知らせだった。

 

「はい、セリカちゃんの部屋を見に行ったのですが帰ってきた痕跡もなくて」

「今、大将に確認してきたけど、あの後予定より少しに早くに帰ったって」

「じゃあ、柴関ラーメンから帰りの間に?」

 

何故突然セリカが行方不明になったのか、そんな疑問を覚えるが俺は直ぐに部屋に置かれていた地図を手にして広げると、アビドス高校、柴関ラーメン、セリカの家に印を付ける。

 

「少しでも手掛かりが欲しい、全員覚えている範囲でいいから昨日の行動を書いていってくれ」

 

 俺は学校で仕事をしていた時間、そこから自転車でゲヘナまで移動していたことを記す。続けてシロコもノノミもアヤネも昨日の行動を地図に記す。ホシノは・・・彼女も学校に居たことを記した。

 

「ワカモ!!君も少し来てくれ」

「呼びましたか?あなたさま?」

「誰?」

「新しい人が来ましたね・・・」

「百鬼夜行の人でしょうか?」

 

 ワカモにも昨日の行動を地図に記してもらい、常に俺の近くに居るように移動していっている。この範囲ならば、大した情報は期待することはできないか・・・

 

「関連があるかはわかりませんが、この場所ですから、大体この辺りにヘルメット団と思われる集団の移動を見ましたね」

「本当か?」

「ええ、あなた様相手に噓なんてつきませんから」

 

 そこから、俺とアヤネはワカモが見たというヘルメット団の集団が居たポイントと、紫関ラーメンからセリカの部屋までの推定帰路にある防犯カメラの映像を提供してもらえるよう、何度も頭を下げにいった。シロコ、ノノミ、ホシノは色んな人達に聞き込みをしていったが。

 

「くそ、まさかここまで情報がないなんて」

 

 すでに過疎化が進んでいる所かつ、時間も遅いタイミング。目撃情報はほぼ期待することはできなかった、けれど防犯カメラならばある程度は把握することができると思っていた。けれど、現実は違った。防犯カメラは設置されていても、すでに壊れていたものだったり、録画がされていなかったり、そもそも誰の物なのかもわからない防犯カメラの達ばかりだった。数少ない機能していた防犯カメラの中から、セリカの影を追おうにもどこにも映っていなかった。その中分かったのは、紫関ラーメンからそう離れていない場所で交戦の跡があったこと、ヘルメット団が使ったと思わしきトラックの姿。

 地図に数少ない手に入った情報を書き込んでいき、セリカがどのように移動していったのルートを考えるが、明らかに情報が少なく絞り込むことができない。

 

「先生、セリカちゃんの携帯の位置情報はわからないの?」

「使いたいのは山々なんだが、今の連邦生徒会の状態で職権乱用したら連邦生徒会の方が致命的なダメージを受けるから使えないんだ。今、相棒達に足を残さないルートを構築してる」

 

 たった一人のために晒すリスクが余りにも高すぎる。シエルがネットワークの掌握さえできていればもっと容易に事を進められるかもしれないが、そんなことを常日頃からするには気が引けるうえ、今からやっていては移動面で時間が足りない。大急ぎでアロナ主体でシエルと共に足を残さないようにルートを構築させているが、それがいつ終わるのかはわからない。

 

「アヤネ、過去にセリカが帰らなかった時何処に行っていたかわかるか?」

「思い当たる箇所は捜索しましたが・・・こことここで喧嘩したときセリカちゃんが向かう場所です」

「ホシノ、仮にセリカが攫われたと仮定して一時的に立て籠るとしたらどの場所を使う?」

「その条件だったら・・・ここと、ここと・・・ここが怪しいかな。ただ、この辺りは私達が既に捜索してる」

 

 いくつもの仮説と地元民である彼女達の意見を組み合わせ、俺達が実際に足を運んで確認した情報を照らし合わせていき、候補個所を次々と潰していく。

 捜索を始めてかなりの時間がたち、既に太陽は最も高いところを通り過ぎて落ちて行っている。そして空がようやく赤くなり始めたころ。

 

『リムル先生!!やっとセントラルネットワークに侵入に成功しました!!これなら足もつかないはずです』

 

 アロナが足が付かないように細心の注意を払ったうえでの侵入にようやく成功した。

 

『セリカさんの携帯の位置情報を持ってきました』

《現在の捜索地図情報と組み合わせます》

 

 アロナが持ってきた情報にシエルがここまでで分かっている情報と照らし合わせ、そのままシエルがセリカが居ると考えられる場所を割り出すが。

 

《個体名「黒見セリカ」は砂漠方面に向かった可能性が極めて高いです》

「やっぱり・・・・砂漠か」

 

 俺らが少ない情報から絞り込んだ時点で薄々感づいてはいた、アビドス地区には廃墟が多く隠れやすい場所が多い。それなのに、その殆どがいないと考えられ、残されたのは何もない砂漠方面へとなっていた。

 

「ど、どうしましょう。砂漠方面となりますと、行方不明になった時間から考えて・・・」

「確実にあのワカモって人が見たヘルメット団がセリカちゃんを誘拐しているね」

「それに・・・もう半日以上いや、数時間したら丸一日経つ。車を使ってたらもっと広い」

 

 気が付くのが遅すぎた。時間をかければかけるほど捜索範囲は広がっていってしまう。

 

「ここからは移動しながら考えるぞ!!アヤネ、確かジープがあったよな!!」

「はい!!それなら、私が運転できます」

「全員荷物を纏めろ。俺達はセリカ捜索の為にアビドス砂漠に入る、準備ができ次第アヤネのところに集合、俺は水と携帯食料を用意してくる」

「うん」

「わかりました」

「わかった」

「はい!!」

 

 準備に五分という時間もかからずに、アヤネが倉庫から引っ張り出したジープへと全員が乗り込みアビドス砂漠へと向かう。

 砂漠というのは厚いイメージが先行するが、砂の地面は熱を保持せず夜はあっという間に冷え込み気温がマイナスに入るのは当たり前。そのため、長丁場を覚悟してかホシノ達の荷物にはマフラーといった防寒具もある。俺は戦闘になることを踏まえ、教師として着ていたスーツから、いつもの服へと戻した。

 

「うお!!」

「しっかり捕まっていてください。荒い運転になりますから」

 

 砂漠の中を走る車は何度も砂の上り坂で勢いよく跳び、着地の度に車内の俺たちはひどく揺られる。普段落ち着いているイメージの多いアヤネからは想像できない荒い運転から、彼女の心情がうかがえる。

 そんな揺れる社内の中、俺は地図を広げて捜索する場所にあたりをつける。

 

「ホシノ、こっち方面には何か施設はあったりするか?」

「ほとんどの施設が放棄された施設だからね、もし誘拐犯がそうしたところを拠点にしているんだったら、こことここ・・・あとここは近くに小さいけどオアシスがあるからここも夜を過ごすには使える」

「ん、ホシノ先輩詳しい」

「ちょっと昔にこうしたことを調べる機会があったからね」

 

 その機会が一体何だったかは今は聞かない。ホシノの言葉から誘拐犯が砂漠方面で活動するときの拠点を絞り出す。ここ数日アビドス市街地を散策してそのあたりにはヘルメット団の拠点がないことを考えると、アビドス生徒が普段から近づかない場所に拠点を置いている。その状態で誘拐に使った乗り物の管理もこちらの拠点で行っているとすれば、車両を置くことができるだけのスペースが必要になる。仮にあったとしても野ざらしになるような場所は当然論外として。

 

「そうなると、このあたりが怪しいが・・・」

「だいぶ離れているね」

「この距離だと、すべてを回っていたら燃料が到底足りませんね・・・」

 

 急いで出てきたうえ、常に借金に追われているアビドス高校の備品。緊急時に使えればいい程度の準備しかされておらず、予備の燃料なんてものは搭載されていない。移動の難しい砂漠の中で足を失ってしまっては、遭難のリスクすらあった。

 

「それに回っているだけの時間もない。もっと絞り込まないと」

 

 すでに日は沈み始めている。これ以上時間をかければ街灯のない砂漠の中など一寸先も見えない暗闇に包まれてしまう。そうなってしまっては、移動はほぼ不可能。

 

「なあ、こっちの人達は飲まず食わずでどの程度耐えられる?」

「食事なきなら3~4日、水なしなら2~3日だけど、誘拐されるときに戦闘したうえで砂漠の中に放置されたら1日も持たないかも・・・」

 

 既にセリカの消息が不明になった時刻を考えると、セリカの状態はかなり悪い。

 

「子供一人守れなくてどうする」

「?リムル先生、今何かおっしゃいましたか?」

「アヤネ、すまないが少し止めてくれ」

「え?はい」

 

 アヤネにジープを止めさせ、俺はジープから降り地図と周りを交互に見る。

 

「先生、何か見つかったの?」

 

 幸いまだ日は出ていて周囲は明るいうえ、ここは砂漠の中視界を遮るようなものは殆どない。だから俺はそのまま飛翔した。

 

「え!?」

「リムル先生が飛んだ!?」

「翼が、生えてる?」

「うへぇ?どうゆうこと?」

 

 空から砂漠を見下ろす。例え魔力探知の範囲が狭くなっていても、物理的な影響はこの世界でも変わらない。だから、魔素に頼らない観測手段ならば、光を観測する方法ならばこの世界でも広範囲の探索が可能だ。スキルや魔法の使用は控えていたが、子供一人守れないならそんなもんなんて捨ててやる。

 都市部と違って、この場所ならば光を遮るものも変に光を屈折させる必要もない、この場所なら探索ができる。俺が合図をするとシエルがあっという間にアビドス砂漠の、俺が干渉することができる範囲中水で作り出したレンズを生み出す。そして景色を映す光を、離れた場所の景色もレンズを通して俺の場所へと伝えさせる。そして、見つけた。

 

「アヤネ!!そのまま西南西に走らせろ!!そっちにヘルメット団がいる!!トラックのナンバーも同じだ」

 

 

 

 

 今、私は夢を見ているのだろうか?いや、夢だったらどれだけ嬉しいことか。セリカちゃんの行方不明から、誘拐の線が濃厚になってしまった。そこから、私達で先生でセリカちゃんがいる場所を絞り込んで、最終的に砂漠にいると踏んだのだけれど。突然先生が蝙蝠のような翼を出したかと思ったら、そのまま空へと飛んで行った。そして、なぜだか先生の元には目に見えて沢山の光が集まっていた。それは決して見間違えなんかじゃない、赤く、砂がピンク色を覚えてきている中で先生は光を集めていて違う色をしていた。

 きっと、あれが先生が隠していた秘密の一つなんだろう。明らかに私達とは全く違う、異質の力それを使ってセリカちゃんを攫ったであろう集団を見つけた・・・どうして初めからその方法を使わなかったの?

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