異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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二十二話 真面目に不真面目な会議

 皆が集まり、俺が仕事に一段落着いた頃、俺は彼女達の定例会議に召集された。彼女達がいつも集まっている一室、そこに俺を含めた皆が集まり各々自分の席へと座った。

 アヤネはホワイトボードを俺たちの前に置き、タブレット片手に進行役を買い、会議を進める。

 

「・・・それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。本日はリムル先生にもお越しいただいたので、いつもよりまじめな議論ができると思うのですが・・・」

 

 いつもより真面目な会議、果たして普段の会議でどれだけ不真面目なのかそんな疑問を覚えてしまう前振りに思わず身構える。

 

「は~い☆」

「もちろん」

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない・・・」

「うへ、よろしくねー、先生」

 

 彼女達は元気よく返す。セリカも昨日のダメージは十分回復したようで、何事もなさそうに見える。

 

「アヤネの言葉が少し気になるけど、よろしくな」

「早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題・・・「学校の負債をどう返済するか」について、具体的な方法を議論します」

 

 議題は随分と真面目な物だった。流石に九億もの借金を返済することは容易なことではなく、難しい話だ。たった五人だけで利息分だけでも返せているのは十分におかしいと思えるが。

 

「ご意見のある方は、挙手をお願いします」

「はい!はい!」

 

 最初に勢い良く手を挙げたのはセリカだった。まるでこの時を待ってましたと言わんばかりりに手を挙げた。

 

「はい、一年の黒見さん。お願いします」

「・・・あのさ、まず名字で呼ぶの、やめない?ぎこちないんだけど」

「セ、セリカちゃん・・・でも、せっかくの会議だし・・・」

 

 そういえば俺の所での会議では、皆のことを名で呼んでいたよなって・・・うちにはファミリーネームを持ってるのってあんまりいないか。魔国連邦(テンペスト)で持ってるのも、俺とヴェルドラ以外では持ってたやつ居たっけかな。

 

「いいじゃーん、おカタ~い感じで。それに今日は珍しく、先生もいるんだし」

「珍しくというより、初めて」

「ですよね!なんだか委員会っぽくていいと思いま~す☆」

「そりゃあ、俺がこっちに来たのは最近だしな」

 

 この世界の教職という存在はいないわけではない。ただ、それはBDで授業を教えるというものだけで、学校に教職の人はどの学園にも居ない。

 

「はぁ・・・ま、先輩たちがそういうなら・・・」

 

 セリカってもしかして流されやすいタイプなのかな?

 

「・・・とにかく!対策委員会の会計担当としては、現在わが校の財政状況は破産寸前としか言いようがないわっ!」

 

 え、会計?セリカが会計?そっか、セリカが会計なのかぁ。偶々君たちのテストの成績を見る機会があったんだけど、その時の数学の成績を見ちゃったんだけど・・・うん、がんばってね。

 

「このままじゃ廃校だよ!みんな、わかってるよね?」

「うん、まあねー」

「毎月の返済額は、利息だけで788万円!私たちも頑張って稼いでいるけど、正直利息の返済も追いつかない」

 

 大体金貨七十九枚かぁ・・・この子たちでベニマルの月収より少し少ない額を稼いでるってすごいな。

 

「これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアをするだけじゃ限界があるわ」

 

 収入の比率を考えれば、指名手配犯を捕まえたことによる報酬が多いだろう。ん?待ってアビドスのこの子達、毎月指名手配犯を捕まえて借金返済に充ててたの?それだけの犯罪者の数と、彼女たちの実績の多さに驚かされる。

 

「このままじゃ、らちが明かないってこと!何かこう、でっかく一発狙わないと!」

 

 確かにこのままではいつまでも借金を返済することはできない。何かしら大きな稼ぎをしなければ、利息の複利でひどい目に合う。

 

「でっかく・・・って、例えば?」

「これこれ!町で配ってたチラシ!」

 

 セリカがバックから何かを取り出して卓上に置く。それを見た俺はすぐに頭を抱えた。

 

「これは!!」

「どれどれ?・・・「ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金」ねぇ」

「そうっ!これでガッポガッポ稼ごうよ!」

「ホシノは何か稼げるアイディアはあるか?」

 

 俺はすぐにこの話題を終わらせて次の話題に移させる。

 

「う~んおじさんわねぇ」

「ちょ!?なんで!」

「黒見さん、これ詐欺です」

「え!?」

「そう、儲かるわけがない」

「シロコ先輩まで」

 

 セリカの持ってきたそれはマルチの詐欺であり、すぐにセリカを除く全員がそれに気が付いていた。あとで、セリカには詐欺対策の特別講習をしてあげないといけないかもしれない。多分、この調子だと他のにも手を出していそうな気がする。

 セリカは自分が騙されたことに気が付きうなだれる。

 

「それで、ホシノは何かアイディアはあるのか?」

「うむうむ、えっへん!」

「少し嫌な予感が・・・」

 

 アヤネ、そんなことを言うんじゃない。というか、アヤネが言っていた言葉とさっきのセリカのせいで俺もうすうす嫌な予感がしているんだけどさ。お願いだからそんなことを言わないで、そしてホシノも頼むからね。

 

「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー」

 

 確かにホシノが言う通り、この学園は他の限界集落ならぬ限界学園同様生徒数が少ない。生徒数が少なければやれることは少ないうえ、言ってしまえば稼ぎ口が少ないことになる。比較的まともそうな意見だ。

 

「生徒数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせば、毎月のお金だけでもかなりの金額になるはずー」

「え、そうなんですか?」

「確かに、生徒一人で毎月十万稼いだとすれば、百人で一千万。より稼ぎやすい環境になるな」

「先生の言う通り。だからまずは生徒の数を増やさないといけないよね~、まずはそこからかなー」

 

 考えは悪くはないかもしれない。けれど、それはこのアビドス高校の現状を知ったうえで入学したいと思える子達が居ればの話になってしまう。知ったうえで来てくれる子は余程の物好きとしか言えないな。

 

「そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も与えられるしね」

 

 連邦生徒会に関われるようになるには、一定数以上の生徒が在籍していること。そこまでの規模まで行ければ、事実上の安泰ラインではあるが。

 

「鋭いご指摘ですが・・・・でもどうやって・・・」

 

 それだけの生徒を集められるだけの魅力も、器もこの学校にはない。

 

「簡単だよー、他行のスクールバスを拉致ればオッケー!」

「お~い!?」

「はい!?」

 

 さっきまでの真面目な意見はどこに行った!?最後の最後でこれまでの全てを台無しにするようなことを言いやがった!?

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入学書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー」

「ホシノ?それ連邦生徒会関係者である俺の前で言うようなことか?おい?目をそらすな」

 

 ホシノは俺から目をそらして追及されないようにする。

 

「それ、興味深いね。ターゲットはトリニティ?それともゲヘナ?ミレニアム?狙いをどこに定めるかによって、戦略を変える必要があるかも」

「シロコ!?」「シロコ先輩!?」

 

 シロコが思いの外乗り気で、その目は本気でやろうとしている気配すら感じさせる。そして、ホシノお前もシロコが乗ってきたことに驚いているのを見逃さないからな。

 

「そんなことをしたら、俺がアビドス高校を廃校での引導を渡すからやめろよ」

「ん・・・わかった」

「うへ、ごめんなさ~い」

「ごめんなさ~い、じゃありませんよ、ホシノ先輩・・・もっとまじめに会議に臨んでいただかないと・・・」

 

 ホシノは真面目な意見を言いつつ、後半はふざけた感じなのか。とはいえ、生徒数を増やすこと自体は現状の改善には一番いい手だろう。

 

「いい考えがある」

 

 次に意見を述べるのはシロコなのだが、ここまでの流れですでに嫌な予感しかしない。それはアヤネも同じようで、話させていいのかという雰囲気を感じ取った。

 

「はい・・・二年の砂狼シロコさん」

「銀行を襲うの」

「はぁ!?」「はいっ!?」

 

 何言ってるのこの子!?

 

「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。金庫の位置、警備員の動線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから」

「さっきから一生懸命見ていたのは、それですか!?」

「5分で1億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた」

 

 なんでそこまで準備がいいんだよ。そして全員分の覆面を取り出して、今この場で被るな。まずい、このシロコって子、ヴェルドラ、ラミリス、ミリムと言った問題児とは全く別の方向での問題児かもしれない。そして覆面を被るな。

 

「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー?」

「わぁ、見てください!レスラーみたいです!」

 

 頼むからノノミこの状況で悪乗りをしないで欲しい。収集をつかせるのが難しくなるから。

 

「いやー、いいねぇ。人生一発で決めないと。ねぇ、セリカちゃん?」

「そんなわけあるか!!却下!却下ー!!」

 

 セリカは声を荒げて提案を却下する。

 

「俺もそんなことをしようものなら、アビドス高校は潰す方針で舵を切るぞ・・・」

 

 後輩に却下されてか、シロコはふくれっ面をしながら覆面を外して席に着く。

 ここまで三人中三人とてもまともとは言えず、頭を抱えたくなるような提案。もしかして毎回こんな感じで会議をしているのか?よく今まで利息分の借金の返済がしてこれていたな、この子達。

 

「はぁ・・・みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと・・・」

「あのー!はい!次は私が!」

「はい・・・2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでおご意見をお願いします」

 

 さすがにここまで来て、前の三つを超えるようなトンチな奴は出てこないだろう。大丈夫だよね?

 

「はい!犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!」

 

 そう言い切れるあたりから、少なくともこれまでよりはましな提案なのだろう。俺は少し安堵の息を漏らしつつ、話に耳を傾ける。

 

「アイドルです!スクールアイドル!」

 

 どうしてだろう、普通ならばそんな馬鹿なことを何て言いたいのに、これまで出てきたものがひどすぎたせいで、至極真っ当な提案に聞こえてきてしまう。

 

「ア、アイドル!?」

「そうです!アニメで見たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです!私たち全員がアイドルとしてデビューすれば」

「却下」

 

 すぐにその提案を却下したのは、意外なことにホシノだった。これまでの流れを見たら、ホシノも乗ってきそうなものだったが。

 

「あら・・・これもダメなんですか?」

「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大うけしそうなのに」

「うへーこんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない」

「決めポーズも考えておいたのに・・・」

 

 まあ、ホシノ体格はかなり小柄な方で小学生と間違われてもおかしくない。この体格を好むのは所謂ロリコンといったところか・・・

 そんなことを考えていると。

 

「水着少女団のクリスティーナで~す☆」

 

 ノノミが決めポーズをとりながら名乗った。

 

「どういうことよ」

「俺もわからない」

「何が「で~す♧」よ!それに「水着少女団」って!だっさい!」

 

 グループ名で水着がついっているって、まさかアイドル衣装を水着にするつもりなのか?それはいろいろと危ない気がするんだけど。ましてや未成年の子たちにやらせるような内容じゃないだろ。

 

「えー、徹夜で考えたのに」

「そんなことで夜更かししない」

「あのう・・・議論がなかなか進まないんですけど、そろそろ結論を・・」

 

 この会議でどうやって結論を出せばいいのだろうか。三つは犯罪関連で一つは比較的ましではあるもののアイドル。とてもまじめな会議をやっていたとは思えない議事録がシエルの手によって完成しているのだが。

 

「それは先生に任せちゃおうー。先生、これまでの意見で、やるならどれがいい?」

「俺に振るか?まぁ、シロコの提案は論外、ホシノの生徒数を増やすことには同意するがスクールバスのジャックは論外として・・・」

 

 俺は少し考える。

 

「そうだな。過去のアビドスの産業を調べたが、ここは観光業によって多くの収益を得ていた。のちの調査の記録とかも調べたが、他の産業を生み出すのは無理を感じたな。現状のアビドスで多くの収益を得ることを考えれば、アイドル業を始めるのが一番なんじゃないか?」

「うへ?アイドル?」

 

 実際、アイドル業が上手くいけばその収益は莫大なものになる。グッズの収益も多いうえ、権利で収益を得る方法もある。彼女達ならばアイドルをやれるだけの十分な素質はあると思える。

 

「これでも、あっちじゃ商人と金儲けしてたんだ。商売に詳しい知人にも手を貸してもらうよ」

 

 とりあえず、アイドルをするとして衣装が必要だよな、こっちで材料を買ってシュナに織ってもらうか。拡散能力は幸い動画共有サイトがあるから、そこをスタート地点にして。歌や音楽は・・・タクトに頼ればいいか。問題は踊りだよなぁ、やっぱりアイドルには踊りが必要だよな。

 

「衣装を作るからさ、例えば」

 

 白紙の紙を手にして、シエル先生に手を動かしてもらいいくつかの衣装のデザイン案を書きあげる。それも一つや二つではなく、俺が前世で何となく見た衣装をシエルが読み取り書き出したものなので何十枚にもなる。あとは、シュナ達が俺に着せようとした可愛らしい衣装のやつも含まれている。

 

「わ、先生ってデザイナーだったの?」

「ある意味ではそうだが、元ゼネコン勤務だ。建築のデザインにはかかわってるよ」

「え、そっちだったんですか」

「ああ、とりあえず。衣装と楽曲、振り付けのほうは俺の知人の力を借り」

 

 そんな風に話している時だった。当たり前のようにアイドルで、しかもやることを前提で話を進めていると。

 

「何当たり前のように話を進めているんですかぁぁ!!」

 

 ついにアヤネの堪忍の袋が切れてしまったようだった。

 とはいっても、現状のアビドス高校だと観光業に使えるようなものはないうえ、物流の拠点に使用にも、砂漠の砂が課題となってしまう。それに新たな産業を生み出そうにも、元手が一切ないこの現状では、元手を必要としない何かで稼がなければいけない。案外、アイドルという手も悪くないと俺は思うんだけどなぁ。

 

「・・・ノノミ、俺はアイドル衣装を着ないからな?」

「え~、どうしてですか?」

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