異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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二十四話 便利屋68

 便利屋68の彼女達とは柴関ラーメンで食事を終えてから少し雑談をしてから別れを告げ、俺達はアビドス高校へと戻った。そして、俺は積み上げられた仕事を処理して、ホシノ達はいつものように学園生活をしていく。

 前世では彼女いない歴=年齢だった俺が、年頃の女の子達が何を考えているのかなんてわからず、ましてや、借金に追われていて返済に追われている生徒達の話題になんて付いていける訳もなく。俺が来るまでの間彼女達だけで過ごしてきていた、今更パッとでのおっさんが入り込める余地なんてないので……ないよな? なんかシロコとノノミの距離が妙に近い気はするけど。まぁ、そんなわけで、今は魔国連邦(テンペスト)の溜まった仕事を片付けている。

 

「ヴェルドラめ、ミリムと喧嘩したなぁ……」

 

 ヴェルドラとミリム関連で修繕費用の請求書が在った辺りから、おおよそ何があったのかは予想が付く。あの二人が何が原因で喧嘩をしたのか、どの程度のけんかをしたのかはわかないが、偶々居合わせたヒナタが仲裁に入ったという記載がある以上、割と本気な喧嘩をしたのだろう。帰ったら二人にはお説教は確定だな。一応シュナが二人に当面の間お菓子は無しと罰を与えてはいるそうだが、今回はその程度では足りないだろう。

 とはいえ、今回の一件には少なからず俺にも責任はあるだろう。流石に俺が出張と言って魔国連邦(テンペスト)を不在にしている期間が長すぎたか。一応夜の間にあちらには戻るようにして、溜まった書類を受け取ったり、俺でなければいけない書類と格闘したりといろいろとやってきていた。それでも、あいつ等と関わる時間は圧倒的に足りなかった。俺が仕事に忙しくて不在にしている時間が長い、そうと分かったあいつら何かしらの行動を起こすとは思っていたが、想定よりも早いな。近いうちに長めの休暇を貰って、あいつらと話をしないとな。

 書類を片付けつつ、並列思考で考え事をしている中、ドタドタト廊下を走る音が聞こえてきた。そして、俺が居る部屋の扉を勢いよく開けてアヤネが飛び込んできた。

 

「うお!? どうした!?」

 

 多少驚くそぶりを見せつつ、魔国連邦(テンペスト)に関する書類は全て胃袋の中に隠して、走ってきたアヤネの要件を聞く。

 

「校舎より南15㎞地点付近で大規模な兵力を確認しました。こちらに進行中です」

 

 随分といきなりな知らせだった。

 

「またヘルメット団か?」

 

 性懲りもなくと言いたいところだが、どうもヘルメット団はヘルメット団でもいくつかの派閥があるようで微妙に名が異なっているらしい。いや、何が違うのかが全く分からないんだよね……

 

「いいえ、恐らく日雇いの傭兵です」

 

 日雇いの傭兵? これまでのヘルメット団を裏から回していた相手とは手法が違うな。となれば、別の組織か? いやそれともヘルメット団が傭兵を雇ったか? いや、それだけの財力があるとは考えにくい、となれば。

 

「便利屋68か……」

「便利屋? ですか?」

「こっちの話だ。詳しい話はあとで話す。とりあえず和平の交渉をしてくるよ」

 

 俺は立て掛けていた刀を手に取り、提げると窓から飛び出した。

 

「リムル先生!? ここ三階ですよ!? そんなシロコ先輩みたいな」

 

 アヤネは上から声を荒げながら言ってくるが、俺はそれを無視して校庭のほうへ走って行き、彼女達を待つことにする。幸い、傭兵達がアビドス高校へと辿り着くまでには少々時間がかかるようで、アヤネはドローンの配置を済ませ、ホシノとシロコ、ノノミとセリカは外へと出て武器を構えて迎撃の陣形を取るだけの余裕はあった。

 

『前方に傭兵を率いている集団を確認!』

 

 インカム越しに聞こえるアヤネの声。未だにこうして聞こえることに違和感を覚えるがそのうち慣れるだろう。そして、こっちの万能探知にもようやくその集団が入り込み始めた。そして、シエルが相手を一人一人と確認していき、彼女達を見つけた。そして、ホシノ達も彼女たちを視界に入れたところで相手が誰なのか気が付いた。

 

「あれ……ラーメン屋さんの……?」

「ぐ、ぐぐ……」

 

 所で、どうして陸八魔アルはあんなに苦虫を嚙みつぶしたような何とも言えない表情をしているのだろうか。もしかして、あのラーメン屋で彼女等と話していた時襲撃先の相手だと気が付いていなかったのかな? 流石にそんなことはないか。

 

「誰かと思えばあんたたちだったのね!! ラーメンも無料で特盛にしてあげたのに、この恩知らず!!」

「あ、それは俺が払っといてあるから気にしなくていいよ」

「え……そうなの?」

「餃子の分も俺が払ってるから」

「あ、そうだったの御馳走様!!」

 

 あの小柄な子は確か浅黄ムツキだったか。彼女はとっても元気一杯なお礼を言ってくれた。やっぱり、子供はこういう明るさがないとね。

 

「ああ、子供達が腹一杯食えないのは俺も大将も見てらんないからな。俺と大将が好きで勝手にやったことだから、別に恩とかお返しは考えなくていいよ。おっさんのおせっかいってやつだから」

「ああ言っちゃう? アルちゃんこう見えて、施しを受けたら絶対返すタイプの子だよぉ?」

「ちょっと!? ムツキ余計なことは言わなくていいからね!?」

「はぁ、社長? この調子だと話が進まないよ」

「ああ、そうだったわね」

 

 カヨコに言われたことでアルは咳ばらいをして調子を整える。

 

「確かに施しは受けたかもしれないけど、こっちも仕事なのよ。悪いけどね」

 

「便利屋68、話は風紀委員会委員長から聞いているよ」

 

 風紀委員会、その言葉を出した瞬間、便利屋68の中の空気の流れが変わった。先ほどまでの気の抜けた雰囲気から一変、恐怖に震える感じが混じった。

 

「ふ、風紀委員会の知合いですか、そ、それも、あの空崎ヒナの。アル社長、あの人、い、今ここで倒しちゃいますか? 爆破しちゃいますか?」

「ハルカ待って、確かあの人はニュースにも出ていた覚えがあるんだけど」

 

 物騒な発言をするハルカを制止させるカヨコ。ここで爆破されたら塀が壊れてしまうから勘弁してもらいたいかな。

 

「ああ、連邦捜査局シャーレで先生をさせてもらっている、リムル=テンペストだ。よろしくな」

「ちょっとリムル先生!! 何であいつらなんかと気さくに話しているのよ!!」

「まだ敵と決まったわけじゃないからね」

 

 セリカは彼女達便利屋68の子達は完全に敵だと見定めたようで、彼女達と仲良く話している俺にイラつきを見せて気に食わないようだった。

 

「私達が敵じゃないですって?」

「一応、ここまで武力と敵意を見せている状態でもそんなことを言うんだね」

「ああ、まだ開戦した訳ではないからね。さて、和平のお話をしようじゃないか」

 

 戦わずして済むならば、俺はそれで構わない。

 

「わ、和平ですって?」

 

 予想外の話題にアルは驚きを見せる。

 

「ああ、こちらとしては不要な戦闘は避けたいところなんだよね。わざわざゲヘナで指名手配をされている君達がアビドスに来て、アビドス高校を襲撃する理由。それはまず誰かから依頼されていることの予想は容易い」

「そうだね。私達も依頼がなければこんな場所に来る理由なんてないからね」

「こんな場所って何よ!?」

「はいはい、セリカちゃん話が進まなくなるから一々突っかからないほうがいいよぉ」

 

 キーとなっているセリカをホシノがどうどうと鎮めていく。

 

「とはいえ、この情報だけだと君達に依頼をした依頼主までの予想は立てられない。君達からはそれを教えてもらえればうれしいんだよね」

「私たちが依頼主の情報をタダで吐くと思っているのかしら? そうだったら、お笑いね。あなたは便利屋がどんなものなのかわかっていない」

「残念ながら俺がわかるのは戦いで生計を立てる冒険者と国家運営系のほうだからな。傭兵とかの依頼を受けて生計を立てる方はわからないな。とはいっても、無論ただでとは言わないよ」

 

 こっちは何度も戦争を経験して来た身だ。今更子供達の小さな抗争程度で動じるような生活なんてしてきていないよ。

 

「もしこちらが提示する条件を飲んでくれないのならば、君達のことをゲヘナ風紀委員会に通達するよ」

「な!?」

「まぁ、そうするよね」

「ッ!!」

 

 風紀委員会、彼女達にとってはそれだけ嫌な相手なのだ。シャーレの先生という立場の俺が風紀委員会に通達すればすぐに動いてしまうだろう。

 

「君達はゲヘナで指名手配されているからな、君達を拘束してゲヘナに引き渡せばかなりの報奨金がアビドスに入るからね」

「ん、全員捕まえる」

「シロコちゃんも大人しくしていようねぇ」

「ちょっとホシノ先輩!? 今目の前にお金があるのよ!! 取りに行かないわけがないでしょ!!」

「……なんか、ごめん」

「い、いえ、事実だから構わないわ」

 

 後ろで暴走しているアビドス組を抑えているホシノに感謝をしつつ、続ける。

 

「もし教えてくれるのならば、今回の一軒は口を紡ごう、あとあれを今日一日は止めさせておく。君達にとっては風紀委員会に現在の所在を知られてしまうのは避けたいだろ?」

「そ、それは」

「ヒナ委員長に見つかるのは確かにまずい」

 

 ヒナの影響力がどの程度のものなのかは知っている。だからこそ、ゲヘナの生徒相手にはヒナの存在をチラつかせるだけで大人しくなり、とても有効な手である。

 

「それともう一つ、アビドス高校からは手を引いてもらおう。さっきも言ったがこちらとしては不要な戦闘をするつもりはない。弾も薬も修繕費もただじゃない。これに関しては、君達が受けている依頼の成功報酬の倍を俺が支払う。どうだい?」

「ほ、報酬の倍ですって……」

 

 少なくとも、金銭が目的ならばこの時点で手を引いてくれるはずだ。彼女達にとっても時間は有限であり、リスクを減らして大金を得られるのならばこの条件は十分に破格なものになっているはずだ。

 

「その条件で私達が飲むと思っているの? 私達は便利屋でどんな依頼も、黒い案件だって受けるよ。私達にとっては信用が命。依頼主を裏切って目先の利益を得ていたら、信用なんてなくなる。その程度の依頼じゃ割に合わないよ」

「そ、そうよ!! 私達はアウトロー、依頼された内容はどんなものでもこなすのが私達便利屋68なのだから!!」

「ま、そうだよな。ちなみに、依頼内容を聞いてみても良いかな?」

「それはね、あなた達アビドス生徒を学校から追い出すことよ!!」

 

 刹那、アルは手にしていたスナイパーライフルを片手で持ち上げ、そのまま銃口を俺へと向けて引き金を引いた。スナイパーライフルは相当重量があり、片手で取り扱うものではない。それを意図も容易くやっているアルの筋力、至近距離と言えど確り頭部に狙いを定めているアルの技量が伺える。

 思考加速の中、ゆっくりと進んでいく弾丸を見つつ余計な事を考えてから、提げていた刀を手にし、引き抜きそのまま弾丸を切った。

 

「き、切ったぁぁ!?」

「よく叫ぶね。その子……とりあえず、和平は決裂でいいんだな?」

「ええ、こっちは仕事だからね!!」

「あなた達は弾幕を張っていなさい!!」

 

 初めから成立するとは思っていなかった交渉は決裂し、便利屋68は背後にいた傭兵達へと指示を出す。それに対して、俺はホシノ達に指示は出さず、彼女達にとって何時ものように、彼女達の戦い慣れたやり方をさせた。そして、俺は地面を力強く蹴って走り出し、便利屋68との距離を詰めた。

 俺の接近をいち早く察知したハルカは三人の前に出て、抱き抱えるように持っていたショットガンを構えて銃口を俺へと向ける。そして、躊躇うことなく引き金を引き、いくつもの小さなペレットが俺へと襲い掛かる。

 一応、ユウカと話した際にこの世界の常識と俺の非常識っぷりの話は聞かされている。外の世界の住人は基本的に銃弾一発でも致命傷のはず、だから剣を持ってここの人達と戦うような人はいないと。まあ、俺は外の世界の住人ではないとしても、この子達は外の世界の住人と思われている俺に足して躊躇いもなく引き金を引ける。その肝の据わり方には他の子達には無いものが在る。

 

「おっと」

 

 銃口が俺の方へと向けられた時点で、すぐに真横へと避け、引き金が引かれた時には射線上から外れているため、俺へと飛んでくるペレットはほとんどない。多少の被弾は無視し、鍔を握る力を調整する。

 

「やられてください!!やられてください!!」

「な!? 早い」

「嘘!?」

「ありゃりゃ?」

「……やっぱり本気じゃなかったね」

 

 攻撃を外したか当てたのか関係なく、ハルカは愛銃のフォアエンドを引き、薬室に次弾を送り込もうとする。けれど、射撃と射撃の僅かな隙間な間隔、ホシノが絶え間なく射撃してきた中でも唯一生まれていた攻撃されない瞬間、その瞬間を逃すことなく俺はハルカの目前へと迫り刀を振るった。

 

「え?」

 

 ハルカは何がされたのかわからず、目前へと迫った俺に銃を押し当てて引き金を引こうとした。そして、気が付いた。俺が振るった刀はハルカの持つショットガンの銃身を叩き切っていて、斬られた先の銃身は音を立てながら地面にぶつかり、エアーチューブから装填されていたシェルが飛び出してきた。ハルカの理解が追いつくまでに彼女の胸倉を掴み、そのまま彼女が気絶する程度の力加減で地面へと叩きつける。

 

「まずは一人」

「うそぉ?うちで一番タフなハルカが?」

 

 彼女達にとっては一番耐久力があると思っていたハルカが一撃で無力化されたことに衝撃が走る。けれど、傭兵達には大した衝撃は走っていないようで、ホシノ達と交戦を続けていた。

 傭兵達はそれなりの数はいるものの、ホシノ達が遅れを取るとは考えにくい。最悪、ホシノ一人でもあれだけの傭兵達を相手にしても容易に撃退することができるだろう。問題は、俺の目の前にいる便利屋68だ。

 

《彼女達の保有する仮称「神秘」のエネルギー量はアヤネ、セリカ、ノノミと同等か少し上です》

 

 こちらの世界に来てから生徒達の実力を測る目安として使っている一つが、俺とシエルが「神秘」と呼ぶこの世界特有のエネルギーの保有量である。俺達の世界の魔素同様強ければ強いほど保有している量が多く、漏れ出ている量も比例して多くなる。言い方は悪くなってしまうが、この世界の有象無象とも言えるほどの生徒たちを見てきても、この「神秘」を漏れ出すほど持っているほどの生徒は多くなかった。その中でも漏れ出すほどの「神秘」を持っていたのは、アヤメやワカモ、ヒナと言った相当実力があり戦闘で名を聞くレベルの人たちだ。ミカもそれなりに漏れ出ていたため、彼女も強いのかもしれない。アヤネ、セリカ、ノノミも僅かに漏れ出す程度には持っているようで、ヘルメット団相手には準備不足がなければ負けることはない程度に強さを持っている。そんな三人と同じか少し上回る程度、この便利屋68の四人はここキヴォトスにおいては十分な実力者であると見れる。

 

「次はだれが相手だ?」

 

 ゆっくりと立ち上がり、手の平を上にして指を何度かまげて挑発する。多少の時間はかかっても、力加減がし易く、一人一人無力化できたほうがこちらとしてはやりやすいが。

 

「あはは、じゃあ次は私が」

 

 ムツキはそう笑いながらいい、ポケットから何かを取り出してこちらへと投げてきた。俺はそれを宙で掴み取ると、そのまま投げ返す。それに対してムツキは持っていたバックでバットの如く振り、こちらへと打ち返す。最後に俺はそれを真上に投げて上空で爆発させた。

 

「なんで爆弾でキャッチボールしてるのよ」

「キャッチボールなのかな?」

「どっちでもいいでしょ!!」

「じゃあ、これはどうかな!!」

 

 今度は広範囲に同時に爆弾を投げられた。って、こいつ俺の足元に居る仲間が爆発に巻き込まれてもお構いなしなのか?爆弾を切って無力化は・・・下手に誘爆したほうが怖いな。もう爆破は確定だし、地面はボロボロだから周囲が壊れるのはコラテラルダメージってことで避けよう。

 

「逃がしませんよ」

「えちょ!?」

 

 俺の足は掴まれた。先程気絶する程度には勢いを付けて地面へと叩きつけられたにも関わらず、ハルカはまるで何事もなかったかのように動き出して、決して俺の足からは離れないという意思表示すら見せる顔でしがみ付いてきた。

 まずい、このままだと思うように走れない。仮に走れたとしても、しがみ付いたハルカを地面で強く擦るか叩きつけることになってしまう。

 

「それじゃあ、爆」

「危ない!!」

「発~!!」

 

 目の前で爆弾が一気に爆発していったが、起爆する直前にホシノが爆弾と俺の間に割り込み、盾を構えて爆風を防いだ。

 

「大丈夫?」

「ああ」

「先生じゃなくて、そっちの子」

 

 人一人を守るだけの大きさの盾では横に二人並ぶ形では爆発を防ぎきれない。盾とホシノの後ろにいた俺は大部分の爆発と炎は防いでもらえたが、足にしがみ付いていたハルカにはそれなりにあたってしまったようで、意識を失っていた。

 

「初めから俺を守る気じゃなかったね?」

「どうだろうね」

「肩借りるよ。盾を地面を刺すように頼む」

 

 ホシノの肩に手を置き、力を入れて跳びホシノを飛び越えて、ホシノがしっかりと固定した盾を踏み台にし、もう一度跳びあがり、ムツキの頭上に来た。先ほどのように爆弾を使うおうにも頭上に投げれば自分も巻き込まれる。そして、ムツキが持っている銃は体格に対してかなり大きなマシンガン、真上に向かている余裕はないはず。頭部に一叩き入れれば無力化できる、そう思って刀を構えた。

 一発の銃声が鳴り響いた。

 金属と金属がぶつかり合う音が響き、俺は受け身を取りながら地面に着地をしてアルの方を見る。そして、宙を舞っていた俺の刀が地面に落ちて、カタンカタンと音を立てた。

 

「まじか」

 

 アルの持つ狙撃銃の銃口からは煙が立ち上る。あの一瞬、ムツキと俺の刀が当たる直前に、アルは片手で狙撃銃を持ち上げ、刀身に狙いを定めて引き金を引いた。予想外すぎる攻撃なうえ、俺は空中に居たため十分な回避行動を取れず、直撃を許して刀を弾き飛ばされてしまった。

 

「どういうエイムの良さをしてるんだよ」

 

 思考加速といったスキルやアシストなしで、あんな一瞬、針の穴に糸を通すなんて日にならない難易度の事を一発で、味方への被弾を、失敗を恐れずにやって見せた。

 

「武器を手放しちゃったわね」

 

 アルはコッキングレバーを引く、カヨコも拳銃を手にしてこちらに向けている。そして、ムツキはその間に俺から距離をとって次の爆弾を取り出していた。

 

「その速さは厄介だけれど、武器がなければ怖くないわ!」

 

 アルの狙撃が俺の頭部を狙って飛んでくる。そして、ムツキの弾幕が俺が逃げる方向を制限して、避けた先を狙うようにカヨコの追撃が飛んでくるなど、彼女達の連携の良さを見せられる。

 どうにか彼女達の銃撃を避けつつ、落としてしまった刀を取りにいけないものかと、少しずつ刀のほうへと移動していったが。

 

「取らせないよ」

 

 カヨコの銃弾が俺の刀を弾き飛ばし、そう簡単には取らせてくれない。ホシノもどうにか俺のカバーへと来ようとしたそうにしているが、それを見越したうえでアル達はホシノに傭兵の数の暴力で釘付けにされてしまっている。

 これは、確かに風紀委員会も警戒する相手なだけはあるな。単純な力や数の暴力ではない。自分達にやれることを理解して、それぞれがその役割を徹している。狙撃銃を持っているアルは最初こそ前線にいたが、俺との交戦を始めてから少しした頃には後方まで下っていて瓦礫に下半身を隠して狙撃に徹している。カヨコは周囲の状況を見て、傭兵に支持を出し、俺の動きを妨害するように撃つ。ムツキは注目を集め、広範囲の攻撃と牽制の射撃を使い分けてヘイトをコントロール。ハルカは武器を失えど、構わず俺に突っ込んできて動きを妨害してくる、君さっき気絶してなかった?復活早くない。

 ハクロウに剣術指南で何度も不可視ともいえる剣術を受けてきたから、まだ見えているだけ銃撃は回避がしやすい。それでも、こうも連携を取られてしまうと俺の実力では刀一本で切り抜けるのは難しい。ハクロウにこれがバレたら俺もコブタと一緒にしばらくしごかれることになりそうだな。

 

「ちょっとずるさせてもらうよ」

 

 刀の方まで俺が近づくことができないのならば、刀の方を俺の方へと近づかさせればいい。目に見えないほど細い万能糸を操り、柄に巻き付けると勢いを付けてこちらへと引き寄せる。

 

「剣が勝手に?」

 

 すぐにカヨコとムツキは刀が俺のほうへと来ていることに気が付き、空中で弾こうと撃つが、その程度では万能糸が千切れるわけもなく、俺の手に刀は納まった。

 

「うわ~なにそれ!?どういうマジック!?」

「刀の柄に糸を巻き付けていたのを引き寄せただけだよ」

「結構無理があると思うけど」

「実際にそうだから、それ以上でもそれ以下でもないよ」

 

 使っている糸は特殊なものだけで技術的な嘘は言ってないからね!さて、刀が戻ってきたことだし。この状況で一番相手の陣形を崩せるのは彼女だよね。

 

「ぼーとしてたら爆破しちゃうよ!!」

 

 ムツキが投げた爆弾が爆発した。彼女達にとってこれは効率よく広範囲にダメージを与えられる手法なのだろう。けれど、それには大きな弱点がある。

 

「どこに行った?」

 

 爆発の直後は煙が舞い、俺の姿を見失う。普通なら煙が晴れた頃でも相手は爆破した範囲からはそう離れていない。けど、相手が普通じゃなければ?その範囲から居なくなっていて、俺が何処に居るかと探さなくてはいけない。

 

「こっちだよ」

「!?」

 

 上空経由でカヨコの背後へと回り込み、とっさに銃底で俺のことを殴ろうとするカヨコの腕を掴み上へと上げ、肩を掴みそのまま地面へと叩きつける。その際の衝撃で手放してしまった拳銃は蹴り飛ばして遠くとやる。

 

「どうする?まだやるか?」

 

 カヨコの目の前に刀を突き刺し、アルのほうを見る。

 

「コンクリートに突き刺した?」

「ッ!カヨコ大丈夫!!」

「先に仲間の心配か。仲間を大事にするのは好きだよ。だけど」

 

 アルは心配して体を前のめりに、銃を下げてしまった。

 

「アルちゃん!!避けて」

「え?」

 

 その瞬間、俺はアルの方へと駆け出した。アルはすぐに迎撃しようと銃を持ち上げて、狙いを定めようとするが、そこまでやった時には俺が懐へと入り込み、狙撃銃を蹴り飛ばした。

 

「噓でしょ?」

「惚けてないで!!良いからはな」

 

 ムツキがマシンガンを俺へと撃とうと構えるが、そんなムツキの背中に強い衝撃が走り前へと倒れてしまった。

 

「ムツキ!?」

「うへぇ、おじさんたちを忘れて貰っちゃ困るよ?」

 

 ショットガンにシェルを入れながらホシノが歩いてくる。そして、ホシノの背後には倒れた傭兵たちを山となるように積み上げていくシロコ達の姿があった。そして、カヨコは悟った。

 

「社長?どうやら私たちの負けみたいだよ」

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