戦闘は便利屋68の降参宣言を持ってして決した。
「さて、俺はこれからこの子達に事情聴取をするつもりだけど、ホシノ達はこれからどうする?」
先生は握っていた刀を鞘へと納め、服に付いた土を手で払い落しながら聞いてきた。
「そりゃあ、先生?私達も同席するよ。それに」
私達の後ろに山積みとなっている傭兵の子達を見る。一人一人はそこまで強くなくとも、これだけの数がいるとなれば骨が折れるものだった。幸い、先生が強敵な便利屋68の四人を一人で買ってくれたお陰で、私達は他の子達の相手に専念できた。
やっぱり、今朝の勝負は先生にとっては全力とは程遠い力で相手をしていた。あのハルカと呼ばれた少女の子の至近距離でのショットガンによる攻撃の回避、私と戦っていた時よりもずっと避けるのが難しい状況だったはずなのに、当たり前のように回避をしきったうえで反撃に転じられている。
先生の実力は全く天井が見えてこない。私との勝負で先生が本気を出していなかったように感じたが、どうも何かが違う気がする。便利屋68との戦いは私の時とは根本的に何かが違う、そんな印象を覚えた。それが何なのかはわからない。
それでも、先生の天井が見えない先生の強さの一片を見ることはできた。先生は私達の前では銃を使わずに刀の一振りだけで戦っている。けど、本当は魔法が使うことができ、本来はその魔法と刀、他にも魔法以外の何らかの術を持っていて、その圧倒的な手数と使い分け、それが先生の戦い方なのだろう。
私一人で先生に挑んでも勝てる方法が思いつかない。シロコちゃん達が一緒になっても、他の学園の最強と謳われる人達と共同戦線を張って戦ったとしても、先生に傷の一つを付けられるか。付け入る好きがあるとすれば、今の所は私達生徒の前でその全力を見せるつもりはないか。
そんなことを考えつつ、気絶している傭兵達の手を縛り体育館へと放り投げていく。流石にこれだけの人数を一度に監視しつつ収容できる場所となれば、体育館しか選択肢になかった。便利屋68の子達も同様に体育館の中へと運び込み、彼女達から事情聴取を始めた。
事情聴取といっても、まぁ、薄々予想はついていたことではあるのだけれど、ノノミちゃんとシロコちゃんが暴れてしまった。
「ん?もう一回言って」
「だからぁ!!私達は何も知らないんだってさ!!」
「そっちの奴らにやれとわれただけで、詳しいことは知らないんだよ」
「ほんとですかぁ?」
傭兵の彼女達に銃口を突き付ける二人、相手が相手なだけに、自分たちもさっきまで彼女達に銃口を向けて向けられていたから、二人の行動を止めようにも止められずにいた。あ、シロコちゃんが撃ち始めちゃった。
「あだだだだ!!だから嘘じゃないってぇぇ」
マガジン一つが空になるほど銃弾を撃ち続けて、折角意識を取り戻した傭兵の一人が気絶してしまった。
「シロコちゃん?それに皆?多分この子達が言ってる通りだよ?」
「ホシノ先輩、こいつらのことを言ってることを鵜呑みにしちゃうの?こいつらが本当の事を言ってる?」
「傭兵はお金さえもらえれば、雇い主の狙いまでは聞かないものだよ。なんなら、値切られてるみたいだから、そこまで詳しくは知らないとおもうよ」
私達がこれまでヘルメット団を撃退してきた話は伝わっていてもおかしくない。ヘルメット団程度の力では足りないから、暴力沙汰でも引き受けてヘルメット団よりも強い傭兵質を引き連れてくれば私達を倒せるとでも思ったのだろう。
「だから、本当に事情聴取をしなくちゃいけないのは」
便利屋68の彼女達だね。
先生が体育館の隅で尋問している先生の様子を見る。どこから持ってきた机と椅子に便利屋68を座らせて、その目の前には何故かカツ丼が置かれていた。
「なんでカツ丼なのでしょうか?」
「さぁ・・・というか大将もなんでカツ丼なんか作ってるのよ」
「多分、刑事もののドラマの影響かと・・・最近は見ませんけど」
先生ってところどころずれてるって言うか、ネタが古いっていうか。変なところがあるような気がするんだよねぇ。
私達は傭兵達を放っておき、私達は先生のもとへといった。
「ほら、ネタは上がってるんだ。かつ丼でも食って」
「ほ、施しを受けるつもりはないわ!!」
「先生、何してんの?」
何かのドラマを真似てなのか、かつ丼を食べさせようとする先生にため息交じりに話しかける。
「なにって、事情聴取だよ。昔こうやって事情聴取しているのを思い出してな」
「多分、それ作りものですよ」
先生はまあそうだけど、と言葉には出していないがそんな感じの事を考えているような表情を見せた。
「ま、それは食べてもらって構わないよ。このまま処分するわけにはいかないからね」
「それじゃあ、いただきま~す」
ムツキと呼ばれていた少女は、割り箸を割ってそのまま食べ始める。君達少し前に山盛りラーメン食べてなかったっけ?というか、先生銃を没収しているとはいえ手足を拘束せずに椅子に座らせている。この状況から逃げ出されても問題ないのか。先生は頭をかいて先ほどまでのふざけていた雰囲気は何処かに行き、何やら悪巧みをしている顔になった。
「で、どのみち君達の依頼は失敗。仮に契約期間がまだだとしても、傭兵団を値切りにしていた君達じゃもう火の車じゃないのかな?」
「う・・・」
「隠しても無駄じゃない?私たちお昼までおごってもらっちゃってるしさぁ」
「そうだね。私達にお金がないことは誰の目から見てもだね」
「そ、そうだけどさぁ」
先生は懐から一つの封筒を取り出した。あの封筒の大きさであの厚さって。
「これ、シャーレの活動費から用意した100万だ」
先生はその封筒を机の上に置き、アルの方へと押し出した。
「「ひゃ、百万!?」」
うちのセリカちゃんも一緒にその大金に驚きの声を上げる。
「何のつもり?」
「君達は今回の依頼は失敗。前金がどの程度なのかは知らないが、このままだと君達は生活に困窮するだろ?」
「残念だけど、そうなんだよねぇ」
「だから、シャーレからの依頼だ。ちょっと調べたいことがあるから、そのことを調べてもらってもいいかな?」
この人は一体何を考えているんだ?ついさっきまで私達と戦っていた相手を雇おうっていうの。
「ちょっと!?リムル先生!?」
「セリカ、悪いがこれはシャーレ側から便利屋68への依頼だ。俺が雇うことへの文句なしだ」
「だとしても、この人達が一体誰から依頼を受けたのかを」
「この子達はそれを話すつもりはないよ。それが彼女たちの信条ならばなおのこと」
「ええ、私達には守秘義務があるの。依頼者がどんな人達だったかなんて話すつもりはないわ」
「うへぇ、先生ならそれを話した方がましって尋問ができるんじゃないのぉ?」
「そこまで行ったら拷問だよ。流石に敵国の要人とかならともかく、子供相手にはそんなことしないよ」
先生はないないと手を振りつつ、席を立った。
「依頼の内容は今度メールで送るよ。そのお金は俺が壊しちまった銃の弁償代も含んでるからな、
それを使ってくれ」
「い、いえ。私達は前金は受け取らない主義で」
「じゃ、それは経費の先払いで。皆の銃はあっちに置いてあるから好きに持って行っていいよ。あ、かつ丼を持ち帰るのに使えそうなのも一緒においてあるから」
先生はそう言って体育館を出て行ってしまった。 私はそんな先生のあとを追いかけていく。
「ねぇ」
「ん?」
先生は外で書類を見ていた。
「どうしてあの子達に尋問しなかったの?」
「あの子たちはもう部活動なんかじゃなくて会社だよ。だったら、お互いに仕事で進めた方が双方にとって都合がいいよ」
先生は見ていた書類を私に渡してきた。私はその書類を受け取り、目を通す。校章はゲヘナのもので、ゲヘナの生徒のことが書かれている書類だった。四人の書類で便利屋68彼女たちのものだった。
「先生、これをどこで?」
「ゲヘナの風紀委員長からもらったやつだよ」
「結局、風紀委員長には通報したの?」
「いやぁ、まだしてないよ。というか初めからするつもりはなかったからね、報奨金も公表はないから貰えるかは怪しいから」
先生は初めからこうするつもりだったのか。
「それに、少し人手が足りていないからね」
「犯罪者集団の力を借りるの?」
「残念ながら、シャーレは生徒なら際限なく部員にできる。その条文に犯罪者の有無は書かれてないよ」
「ふぅん」
「・・・大丈夫。君達には危害を加えさせるつもりはないよ」
その言葉を信じれない私は、やっぱり大人を信じれないのかな。