異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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二十八話 餅は餅屋

 魔国連邦(テンペスト)では約一日程滞在してから、直ぐにキヴォトスへと戻りこちらでの仕事を進めていく。今やるべきことはシャーレでたまっていた仕事を片付けつつ、カイザーについての情報を調べる。

 今のシャーレには情報戦をすることができる程の情報も、収集能力もない。聞けば連邦生徒会には諜報部と呼べるような組織は無いそうで情報収集能力に疑問を覚えてしまう。

 そんなわけで俺はこちらの世界で情報収集が得意な人達に協力を仰ぎたいと思った。そして、丁度今の俺達にとって足りないものを埋めることができる人達が居た。

 俺は魔国連邦(テンペスト)に向かう前にアポを入れていたミレニアムサイエンスへと足を運んでいる。

 

「あ、リムル先生。こっちです」

「ああ、わざわざ迎えに来てくれなくてもよかったのに」

「いえ、リムル先生が来るのなら私が確り案内しますから」

 

 校門で俺のことを待っていてくれたのは、ユウカだった。

 

「それでリムル先生、本当にあそこに用があるんですか?」

「ああ」

 

 笑顔で出迎えてくれた時とは違い、何やら少し面倒臭そうな、嫌そうな顔を見せて確認をする。

 

「本当に、ヴェリタスに用があるんですね?」

「そうだよ」

 

 ユウカがこんな表情をするのには理由があり。今回俺の用がある相手のヴェリタスはここミレニアムに存在してる組織だが、同時に存在していない組織でもある。というのも、ヴェリタスは非公認サークルであり、ミレニアムの生徒が勝手にやっている組織であり、学校運営のセミナーに所属しているユウカとしては立場上存在を認められない組織だった。

 

「あそこはそれなりに問題も起こしているんですけど?」

 

 確かに、彼女達が起こしてしまった問題の話も聞いている。それでも、彼女達以外に俺がやろうとしている話に関われそうな人達がいないのも事実だった。

 

「それでもだね」

「はぁ、わかりました。こっちです」

 

 ユウカに案内されてミレニアムの中へと入っていき、広い校舎の中を進んでいって、ある部屋の一室の前へときた。存在が認められていないにも関わらず、確りとVERitasのロゴが掛けられていて、学校関係者じゃなければここが非公式の集まりだとは到底思えないところだった。

 

「チヒロ先輩!!居ますか!!お客さんをお連れしました」

 

 ユウカは戸を叩きながら少し大きな声で言った。直後、戸が開き、黄色がかった長髪をして眼鏡とヘッドフォンをした少女が出てきた。

 

「そろそろ来る頃だと思ってました」

「コタマ先輩、チヒロ先輩は居ますか?」

「今マキにお説教中です。中で待っていてください」

「お説教って、マキは何をやったの?」

「いつものです」

「ああ、いつもの」

 

 いつもので通じるあたり、いつも同じようなことをやらかしてしまっているのだろう。それが一体どんなことなのかは聞かないようにしておくべきか。

 

「どうぞ」

 

 コタマは戸を開け切り、中へと促す。俺とユウカは中へと・・・ユウカ?

 

「セミナーとしてあなた達が何をやっているのかを」

「ヴェリタスはセミナー管轄じゃないので、お引き取りください」

 

 無理矢理中へと入ろうとするユウカをコタマは追い出していき、カギを閉めた。外からユウカが何か叫んでいるような声が聞こえてくるが、コタマは俺を部屋の中へと手を引いて行って中へと連れて行った。

 部屋の中は沢山のモニターが並べられて、大きなサーバーが置かれていてファンの大きな音が聞こえてくる。そして、そんな部屋の隅のほうで一人の少女が正座してもう一人の少女に怒られている。隅の作業場と思われる場所では一人の少女が半田ごてを使い何かを作っている最中だった。

 

「チヒロ、先生が来ました」

「え?ああ、ごめんなさい」

 

 チヒロ、お説教していた側の少女がこちらを向いた。

 

「初めまして。ヴェリタスの副部長、今は部長代理をしている三年各務チヒロよ。よろしくね」

「ああ、連邦捜査局シャーレの先生をしているリムル=テンペストだ。よろしくな」

「それで、こっちの子が」

「同じく三年の音瀬コタマです」

「で、あっちで回路を弄ってるのが、二年の小鈎ハレ」

「私は一年の小塗マキだよぉ」

 

 随分と個性的な面々が集まっているそんな感じがした。そして、俺たちは部屋の中央にあった机を囲うように座り話し始める。

 

「それで、シャーレの先生がうちヴェリタスにようがあるのかしら?」

「一つ、仕事の依頼をしたくてね」

 

 仕事の依頼、そう聞いてチヒロの顔は険しいものになる。

 

「その依頼ってのはセキュリティ面でのことかしら?」

「いいや、ハッキングの方でお願いしたいことがある」

「・・・要件次第ね」

 

 俺が彼女達に頼みたかった事、そしてコタマがユウカをこの場から追い出してくれたことに感謝をしつつ、持ってきた資料を卓上へと広げる。

 

「これは・・・アビドス地区の登記簿謄本よね」

「あれ?これ大部分がカイザーコンストラクションがなってるよ?普通、そこの学園の自治区じゃないの?」

「カイザーって悪い噂しか聞かないよね」

「ミレニアムやほかの自治区でも警戒対象だったよねl

 

 四人は資料を見ながらそれぞれの感想を漏らす。

 

「どうも、カイザーがアビドス地区の土地を妙に買い集めているんだ」

「土地なら工場建設とか、資材置き場とかいろいろ考えられますし買い集めていても不思議ではないのでは・・・」

「土地としての価値がないうえ、何をしようにもできない土地だ。誰も欲しがらないような土地だよ。ここは」

「じゃあ、この土地の買い占めは」

「何かしらの意図があるはずだが、それがわからないんだ。現状考えられているのは、これだけ広大な私有地を有すれば、中心は誰の目にも届かない場所ができるってくらいだが・・・それだけとは考えにくい」

「それを私達に依頼したいわけね」

 

 アロナはある程度のハッキングはできても、足を残さずにやるには時間がかかりすぎる。シエルは物理的にサーバーへと近付かなければいけない。だからこそ、相手に悟られずに相手の情報を奪い取ることができる、それができるヴェリタスに力を借りたかった。

 

「加えて、アビドス高校はカイザーから地上げの被害にあってる。そろそろ手段を択ばなくなる可能性もあるからな」

「急ぎの案件でもあるのね・・・」

 

 チヒロは自身のあごに指先を当てて考える。

 

「報酬はこの程度までしか出せないが、頼めないか?」

「嘘!?チヒロ受けましょうよ!!」

「うひゃ!!これだけの額ならしばらくの間公演とかしなくてもいいんじゃないの?」

 

 俺が電卓を使い提示した額にコタマとマキが食いつくが、チヒロはため息を漏らす。

 

「あんたたち、今回の依頼はその程度の額じゃ全然足りないんだからね」

「え?」

「相手はカイザー系列、セキュリティの硬度も相当高いでしょうし、侵入には手間取る。それにリスクという点を天秤にかけるとこの報酬じゃ割に合わない」

「今の連邦生徒会じゃそこまで予算が多いわけじゃないからな、俺としてはここまでの額が限界なんだ」

 

 チヒロは卓上に広げられていた資料たちを一つにまとめ上げ、俺の前へと返す。

 

「一つ質問させて、先生はどうしてその情報が欲しいの」

「カイザーの目的が知りたい。もし、それがここキヴォトスに致命的な問題を引き起こすなら、先手を打って妨害する。何もなければ何も聞かなかったことにするよ」

 

 その答えを聞き、チヒロは少し微笑んだ。

 

「わかった・・・シャーレの先生からの頼みだし、コタマ、ハレ、マキ!!これから大仕事よ、数日は徹夜を覚悟して」

「は~い」

「妖怪MAX1ダース注文しておきますか?」

「2ダースは必要だと思うよ?」

「それと先生、相手がもし自分たちが悪いことをしているって自覚があるならオフラインで情報を管理している可能性もあるから、その点は気を付けてほしい」

「ああその点は大丈夫、むしろオフラインならそっちのプロがいるから」

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