異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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二十九話 対抗策

 ヴェリタスの彼女達との話を終わらせて部屋を出ると、扉の前でジト目をしたユウカが立っていた。

 

「もしかして、ずっと待ってた?」

「はい、ヴェリタスとのお話は終わりましたか?」

「ああ」

 

 何故か表情が変わらないユウカ。一体ユウカが何を考えているのか全く分からないのだけれど、ユウカが今この場所にいてくれるのならば都合がいい。もう一つ、ミレニアムへと来た要件をすませることにしよう。

 

「ユウカ、もう一つの要件があるんだが、時間いいかな?」

「構いませんよ。こちらにどうぞ」

 

 ユウカに案内されて今度はセミナーが使う会議室へと来た。

 

「それで、私に話し、しかもミレニアムに出向いてまでって一体なんの話なんですか?」

 

 お互いに席に座り、ユウカはタブレット片手に話を進める。

 

「ミレニアムって、確か金融業をしているって話を聞いてな」

「確かに、ミレニアムは金融業をしていますね。必要ならば金銭の融資、機材の貸し出しもしていますが。それがどうしたんですか?もしかして、お金を借りたいんですか?」

「まあ、そういうことになるね」

「一体いくらですか?」

 

 俺はユウカの問いに対して、一部の資料を取り出して彼女の方へ渡した。

 

「約十億、連邦捜査局シャーレでだ」

「用途は?」

 

 ユウカは受け取った資料に目を通していく。そして、俺が言った額に目を驚かせていた。

 

「アビドス高等学校の借金の借り換えだ」

「どうしてそんなことを?」

「このままカイザーローンの借金を背負っている事実を消したい」

「・・・なるほど」

 

 現在アビドス高校が背負っている借金はカイザーローンからによるものだ。当然この借金は問題視しているカイザー系列の金融企業なため、カイザーがこの借金を口実にどんな手を打つか予想がつかない。そのためにも、借金という事実は消しきれなくても、借り換えを行いカイザーのアビドスに付け入る口実を減らしたい。けれど、現在の連邦生徒会とシャーレの予算では到底借り換えを行えるだけの資金はない。

 

「・・・事情は分かりましたが。こちらの金貸しもあくまでこちらに利益を得るための商売です。利益が見込めない、もしくはリスクが高すぎる場合は貸せない、もし貸せても高金利になってしまいます。現在のアビドス高校の状況では、直近の返済額が五人で月約七百万・・・どうやって五人でこれだけ稼いでるの?これだけの返済額を常に維持し続けるのは難しいですし・・・残念ながら」

 

 この条件では金を貸してもらえないことは俺もわかっていた。だからこそ、俺は周囲を見渡してあるものを確認する。

 

「ユウカ、この部屋に監視カメラや盗聴器ってあるか?」

「カメラはまあ、ありますし。盗聴器は・・・ヴェリタスがどこかしらに設置してると思いますけど・・・」

「ユウカ、ちょっと部屋の外に出ててもらってもいいかな?」

「え?」

「いいから」

 

 ユウカはどうしてそんなことをお願いするのかと思いつつも、俺の頼み通り一度外へと出てくれた。俺はすぐに部屋にある監視カメラを一時的に無力化し、胃袋にしまっていた未だに換金することができず、扱いに困っていたクレイマンから手に入れた貴金属と宝石をふんだんに使った装飾品を取り出していった。

 

「ユウカ、もう大丈夫だよ」

「一体何をして・・・ってなんですかこれ!?」

 

 部屋に入ったユウカは、目の前に大量に積みあがった見るからに高価な装飾品の数々に目ん玉を飛び出させた。そして、ユウカはアワアワとしながら宝石に指をさしつつこちらの方を見る。

 

「手に取って見て構わないよ。これを担保にいくらまでなら借りれそうだ?」

「ま、待ってください。少し査定をしないと・・・ちょっと他のセミナーの子達も呼んできます!!」

「あ、行っちゃった・・・廊下を走るなよぉ」

 

 ユウカは部屋を飛び出して、廊下を駆けていった。

 それからしばらくして、ユウカが他のセミナーの子達を引き連れて、目の前にある大量の貴金属と宝石の装飾品の山をして驚きの声を上げつつも、彼女達は一つ一つを手にして鑑定を始めた。

 それからしばらくして、ユウカは一枚の紙を持って俺の元へ来た。

 

「あくまで簡易的な鑑定ですから、相場よりも安くなってしまいますが・・・私の裁量で出せる上限一杯の三億でしたら。これ以上はセミナーで稟議して会長から承認されなければ難しいです」

「そうか、わかった。ひとまず、三億貸してもらえるかな?」

「わかりました。すぐに書類を作成してきますね」

 

 そうして、ユウカは再び部屋を飛び出して、書類を作成しに行った。他のセミナーの子達もユウカに連れられて行ってしまった。

 また一人取り残されてしまったなと思いつつ、椅子の背もたれに寄りかかり天井を見上げていると、部屋の入り口に誰かが来たようだった。

 

「ん?」

「こんにちわ、先生」

「リオ会長か、こんにちわ」

 

 まるで俺以外の全員がいなくなるタイミングを見計らって現れたリオを見つつ、彼女は部屋へと入って俺の前に来た。

 

「随分とお金が必要なようね」

「まあね。今の連邦生徒会にはお金がないから」

「そうでしょうね。あれだけの不祥事の対応に追われていればお金は出ていく一方でしょうから」

「稼ぎ口も少ないからな」

 

 リオは卓上に置かれたままになっていた俺が用意した資料を手に取り読む。

 

「流石にこれ以上の増額は難しいけれど・・・三億の返済を不要にしてもいい条件があるとしたら、先生はどうするかしら?」

「・・・内容次第かなぁ」

「そう難しい話ではないわ。ただ、先生あなたでなければできないことだけれど」

 

 これはまた、随分と面倒なことを要求されてしまいそうだ。それでも、必要ならばその条件を飲むか。

 

「いい返事を待っているわ」

 

 そう言って、リオは持っていた資料を置き部屋を出て行ってしまった。

 本当にあっという間、この部屋に滞在していた時間は五分もなかった。まるで、初めから俺とユウカが話していた内容を知っていて、事前に自分が話したい内容を決めたうえでそれだけを話しに来たかのように。監視カメラと盗聴器は無力化していたんだが、他にもあったのか?

 そんなことを考えている間にユウカが書類を持って戻ってきた。

 

「リムル先生!!ひとまず、これが三億円分の借用書です!!」

 

 リオ会長が俺へどんなことを頼むのかは今は置いておこう。流石にアビドスの面倒ごとを超えるような面倒ごとはないはずだろうから。

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