異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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12/02 加筆修正


三話 百鬼夜行

 アヤメの案内を元に山を下りて行けば、昔ながらの日本様式を残しつつも、現代の建築様式を取り入れて融合した建物が立ち並び、車にバイク、はたまた電車も走っている様子が見える。

 アヤメの話からこの世界の技術力は俺の前世と比較して遜色ない所か、一歩か二歩先に行っていると受け取れた。

 事前にこの世界に魔物が居ないことを知る事ができたため、人の姿に擬態して無用なトラブルは避けて街の中に入っていく。

 行き交う人達を見てみると、肩から銃を提げていたり、腰のホルスターに拳銃を差していたりする。アヤメが言っていた通りこの世界では銃が一般的で、銃を持っていない人の方が珍しい。俺もこの世界に溶け込むために拳銃の一つでも携帯しておくべきか。あと、あっちの世界で見慣れてしまっているけれど、獣人もかなりの数居る。オートマタに関してはちょっと驚いた。

 

「うっそだろおい」

 

 街中を歩いていると思わず声を出してしまうものがそこにはあった。

 

「自動販売機に弾薬が売ってるよ、しかもやっす」

 

 自動販売機がいくつも並んでいる、俺の知る飲み物を売る自動販売機が並んでいる中、当たり前のように多種多様の弾薬を販売している自動販売機が設置されている。

 自動販売機の造りを見てみるが、煙草の自動販売機の様に購入に対して制限を設けるような造りは見受けられない。普通に飲み物の自動販売機の様に誰でもお金を入れて、購入したい商品のボタンを押せば購入することができる造りだ。

 魔国連邦(テンペスト)では、まだ自動販売機は存在していない。それ以前に無人販売という販売形式自体定着していない。ダンジョンはあくまで景品と言う形で宝箱の中に仕舞っているだけで意味合いが違う。そして、商品を無人販売しているなんて話は他国を含めて聞いたことはない。それなのに、この地では武具の一部がこうして手軽に売られている所を見るに、本当に日常の一部だということが受け取れる。加えて、隣のリサイクルボックスには空き缶とペットボトルのゴミ箱に加えて、空薬莢用のリサイクルボックスがあった。

 俺の中で銃の認識は前世の頃から対して大きく変わっていない。と言うよりも変わるきっかけがなかったの方が正しいか。

 引き金を引けば弾丸が打ち出されて、それが体を貫き死に至らせる。魔法やドラゴンなどファンタジーな世界で銃以上に危険な事に関わって生きていたのに、銃への認識が変わらないのは、あの世界で銃はマイナーすぎる武器で戦うことがなかった。使い手も俺が知る限りでも片手で数えられる程度。

 危険な武器という認識はあれど、今の俺ならば銃弾程度は体を貫通させることなどできず、表面の結界が受け止めるため、そもそもダメージにすらならない。これまで戦争に関わってくれた部下達でも少なからずダメージを受けても、数発程度ならば重症にならず先に相手を倒したうえで回復能力が上回るため、そこまで脅威な武器には思えない。けれど、同時に戦闘に関わってこなかった魔国連邦(テンペスト)の住人達ならば、銃弾の一発でも十分な致命傷になるだろう。俺が出会ったばかりの頃のリグルドたち、ゴブリンだったらば十分に危険な代物だ。

 自動販売機に銃弾が売られている事に驚きつつも、他にもこの世界の事を知るために歩いていき、色んな店を見ていく。

 最初に寄ったのはコンビニ、雑誌コーナーへと足を運び置かれている新聞紙や雑誌に手にして、一瞬だけ胃袋に入れてすぐに何事もなかったかのように棚へと戻す。ほんの一瞬だけだが、その一瞬さえあれば、シエル先生が内容を把握してくれるため、後からシエル先生に内容を効けばいい。

 

「コンビニでも銃を置いているのか」

 

 レジカウンターの奥、前世ならばカードパックやくじ等が置かれていた辺りに、当たり前のように売り物の銃が置かれている事にまた驚かされる

 それにしても、この世界には俺の前世であったものと同じようなものが在る。まるで、この世界についでに百鬼夜行に日本人の転生者あるいは転移者が居たのではないかと疑いたくなる。

 コンビニを出て、次に寄ったのは本屋。この場所ならばキヴォトスの歴史、彼女達が呼ぶ外の世界について、銃火器について、この世界の常識についてなどを知る事ができる。当然売っている本には先程コンビニでやった方法と同じ方法で情報を集める。店員さんに変な目で見られてしまったけど、多分二度とこの店に来ることはないだろうから気にしない、気にしない。

 そんな感じで情報を集めていく中で、キヴォトスの地図の情報を手に入れることもできた。

 

「あそこに行けばいいのか」

 

 俺はある特徴的なものが在る方を見る。そこには地から天へと光が伸びていき、空へと向かう途中で幾何学模様を描いている。あの光の根本にはDU地区と呼ばれる連邦生徒会と呼ばれる組織が存在する。その組織がここキヴォトスにおいて中心を担っていて全体の政治を担っている。そこへ向かうことができればより有力な情報を手に入れることができるだろう。

 

「歩いていくのは現実的ではないな」

 

 DU地区へと向かうには、百鬼夜行地区からミレニアム地区を抜けてようやくDU地区へと入る事ができる。各学園の地区は前世の市町村程度の大きさがあり、百鬼夜行地区とミレニアム地区は市以上の大きさがあるため、とても徒歩で移動するのは現実的ではない距離だ。

 全力で移動すれば簡単に着くことはできるかもしれないが、この世界でスキルや魔法を使うのは問題になる可能性が高く、問題を起こしたくない。せめて自転車や公共交通機関を使えればいいかもしれないが、残念ながらこの世界のお金を持ち合わせていない。かと言って俺が持っている物はこの世界には存在していないはずのもの、それをこの地へと持ってくることへの影響がどの程度なのかはわからない以上、下手に換金することはできない。

 流石にアヤメに渡した防寒着と回復薬程度ならばそこまで大きな影響にはならないはず。

 

「ホームレスっぽくなるけれど、適当に落ちているお金を探しつつ向かうべきかな」

 

 ないものは仕方がない、多少の時間はかかっても歩いていこう。そう決めてDU地区へと足を進めていく。

 歩いていく中、多くの人達が行き交いながら道の端では出店を組み立てて居たり、景観や看板、飾りつけをどうするかの会話が聞こえてくる。この様子にはとても見覚えがあった。

 

「祭りの準備か?」

 

 魔国連邦(テンペスト)でもよくお祭りをしていて、俺も出店の位置や景観に口出しをすることがある。その様子によく似ていた。

 そして、アヤメ曰く、百鬼夜行ではかなりの頻度でお祭りが行われているらしい。たとえそれは直近で問題が起きても、開催中に問題が起きたとしても、必ず祭りは開催されて最後まで開催される。何が何でも祭りを実施する程の祭り好きだと。

 

「どんな祭りなのかは気になるけれど、調べているほどの余裕はないかな・・・」

 

 他所の祭りがどんなものなのか、経営がどんなものなのか、自分達の祭りの為に参考にしていきたいという考えもあるけれど、ここへ来た目的が目的であるため調べるのは事が片付いて時間に余裕がある時にしよう。

 準備しているスタッフ達の間を通り抜けていき、出店の通りを出て行こうとした。そんな時だった。

 突然鳴り響く乾いた小さな爆発音が何度も響き渡った、そしていくつもの小さな物が高速でこちらへと飛んできた。即座にそれを察知したシエルによって思考加速が働き、俺の見る世界はスローモーションへとなった。

 高速で飛んできていたものは弾丸であったが、俺には止まって見えている。弾丸が自分の元へと届くまで十二分過ぎる時間があるため、その間に俺に対して撃ってきた相手の方を見たが、見るからにスケバンと言った少女たちが、ミニガンやスナイパーライフル、サブマシンガンを構えて発砲している所だった。

 全員の銃口は俺の方を向いておらず、誰かを狙っているというわけでもない。どうやら制圧射撃を行って、その中の流れ弾が俺の方へと飛んできたのだろう。

 俺に対して狙われた攻撃ではないのならば、一安心できる。けれど、このままだと彼女達が撃った弾丸は祭りの屋台や装飾などに着弾して破壊してしまう。

 

「ありゃりゃ」

 

 ひとまず銃弾に当たらないように避けてからどうするべきか考える。ここで俺が彼女達と戦闘をしてしまっていいのだろうか、少なくとも百鬼夜行には百花繚乱などの治安維持組織があるため、少しすれば彼女達が来るだろう。ただ、短く見積もっても五分以上は到着に時間がかかる。それだけあればこの場を滅茶苦茶にするには十分すぎる時間だろう。

 

「ちょっと!?あんた達なんてことをするの!!」

 

 屋台設営に関わっていた一人の少女がショットガン片手にスケバン達に応戦しようとする、けれど、既に応戦は後手に回ってしまっている。少女が遮蔽物から飛び出して引き金を引こうにも、既に周囲を撃たれてしまっている為、遮蔽物から出ることができない。

 

「?おかしいな」

 

 ここで一つ違和感を覚えた。銃が一般的であればあの少女以外にも応戦できるような人は居るのではないか?けれど、他の獣人やオートマタは逃げたり隠れたり、とても応戦しようとしているようには見えない。

 

「銃を持っていても戦えるかは別ってことか・・・」

 

 スケバン達が次々と出店を破壊していく、流石にこの状況を見過ごすのは心が痛む。

 

「仕方がないか」

 

 俺は胃袋から刀を取り出して引き抜き、ゆっくりと彼女達へと近づいていき、飛んできた弾丸は切り落として進み、最終的にサブマシンガンを持っていた少女の懐へと入り込みその銃を叩き切る。

 

「へ?」

 

 一瞬の出来事、理解が追い付かず目の前に俺が居るにも関わらず、体を硬直させて動けなくなる。そんな少女の胸倉を掴み地面へと叩きつける。そして少女の目の前に剣先を向ける。

 仲間の異常に気が付いた他のスケバン達は俺の方を向き、銃口を向ける。

 

「ッヒ!?」

「何が目的は知らないけれど、折角祭りを準備しているのに邪魔をするのはいただけないな。その物騒な物は仕舞ってくれないかな?」

 

 こちらのお願いに対して、彼女達の返事は予想通りのものだった。

 

「あ?うぜぇんだよ!!ヒーロー気取りですかぁ?んなもんは他所でやってろよ!」

「刀なんてだせぇもんを使ってよぉ!!」

 

 ここまでテンプレのような事を言うのか。

 

「なら、君達はヴィラン気取りかな?そんなことは他所でやりな、ここは祭りの準備会場だよ。それに無抵抗な相手に武器を使うことだって十分にダサいと俺は思うけど?」

「うるせぇ!!」

 

 自分達が言ったことをそのまま返されて逆上してか、俺に対して銃口を向けてきた。

 

「そこの人危ない!」

「大丈夫だよ」

 

 遮蔽物の後ろに隠れていた少女は声を出して、スケバンに対して銃を構えようとする。けれど、それよりも先にスケバンの方が引き金を引く方が早い。

 唸るモーターの回転音に続き、絶え間なく鳴り響く銃声の数々。そして大量の弾丸は俺の方へと飛んでくるが、素早く横へと回避して射線から外れて、強く地面を蹴り一気に間合いを詰める。

 

「はや」

 

 その言葉を最後まで言い切る事はできず、腹部に入れられた拳によって力なく倒れる。

 

「君もやるかい?」

 

 チャージングボルトに手を掛けていた少女の目の前に剣先を突き出す。

 

「な、まだ距離が」

 

 少しずつ彼女の目へと剣先を近づけていく。彼女は後ろへと逃げようとするが、体は思うように動かないのか、ガタガタと足を動かして、後ろに運ぼうとするけれど全く動かないでいる。

 

「このまま続けてもいいけど、どうする?やらないならそこの二人を持って行ってほしいんだけど?」

 

 俺が目をやる方には失禁している少女と、口から吐しゃ物を出してしまっている少女。見るからにどちらも危険な状態だ。それを察してか、今なら一番安全に逃げられると分かってか、少女は持っていた銃を投げ捨てて、倒れている二人を担いで何処かに走っていった。

 

「ふぅ」

 

 刀を鞘に納めて、振り返る。

 

「こんな感じでよかったかな?もう少し早く介入するべきだったかもしれないけれど」

 

 構えたまま撃つタイミングを見失ってしまった少女は、未だに状況を飲み込めていないのか、ぽかんと口を開けたままと成っている。俺はそんな少女に話しかける。

 

「え、ああ、ええ。シズコびっくりしちゃって状況を飲み込み切れないんだけれど・・・おねえ・・・さんでいいのかな?」

「心は男かな。俺はリムル=テンペストだよ」

「えっと、リムルさん助けてくれてありがとうございます」

 

 少女は頭を深く下げてお礼をする。

 

「ああ、いいよこれ位、頭をあげて」

「私は百代堂の看板娘にしてお祭り運営委員会部長河和シズコです。よろしくね」

 

 きゃぴきゃぴと少女は自己紹介する。

 

「ああ、よろしく」

「お陰で大きな被害を出さずに済みました。今大きな被害を出したらお祭りの開催まで間に合わなかったので、本当にありがとうございます」

「いいっていいって、俺としても祭りが台無しになるのは許せないことだし」

「このお礼は必ず返します・・・そうだ、百代堂の優先入場なんてどうでしょうか」

「だからいいって」

 

 別にお礼を貰うために人助けをしたわけではないため、お礼は断ろうとした。

 

「あ、いや、だったらDU地区までの路銀を貰えないかな?今持ち合わせが無くてさ」

「へ、その程度でいいんですか?」

 

 俺の提案にシズコは本当にそれだけでいいのかと表情で訴えかけてくる。確かに徒歩で移動するのには面倒な距離でも、電車を使って移動すれば大した距離ではない。故に運賃も殆どかからない。額もそれほど多くは無いため、これ位の額のお金ならばすぐに渡してくれるだろうし、貸し借りもなくなる。

 

「わかりました。え~と、百鬼夜行からDU地区は電車でこの程度だから・・・これ位ですかね?」

「うん、ありがとう。それじゃあね」

 

 彼女から少額のお金を受け取ると、俺は再び歩き出して駅の方へと向かっていく。途中、入れ違うように青い羽織を羽織った少女達が騒ぎがあったほうへと走っていく。彼女達は確かアヤメと同じ百花繚乱の子達かな。

 

「彼女の事を考えれば今は話さないほうがいいか」

 

 アヤメの話の事を考えると、今は彼女達にアヤメの事を話すべきではないか。彼女達から歩みよらせるのと、アヤメの心の整理が必要だろう。俺から下手に言って事を面倒にさせるのは避けるべきか。

 俺が彼女達の横を通り過ぎる。その時だった、一人の少女が俺の腕をつかんだ。

 

「?どうしたのかな?」

 

 百花繚乱の生徒で、見るからに大和撫子を思わせる顔をして黒色の耳に二つに分かれた尻尾、猫又の様にも思える少女だ。

 

「あなた、一体何者、ここで何をしていたの」

 

 少女は睨むように問う。彼女の直感か、俺を逃がさないと腕を確りと掴んでいる。

 

「何ってただこの辺りを歩いていただけだよ」

「本当にそうかしら、その提げている刀は一体何なのかしら」

 

 俺が提げている刀を見る。

 

「・・・逃げる」

「待ちなさい!!」」

 

 流石に事情聴取やらであまり時間は取られたくないので、俺はこの場から逃げ出した。

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