先生が一度自分の国に戻って溜まりに溜まった仕事を片付けてくると言って、今はアビドスからもキヴォトスからも出て行ってしまっている。だから、こっちに滞在している間はよくアビドス高校に居た先生はいない、今のアビドス高校は久々の私達五人だけの日常へと戻ってきた。
先生がいない中、明け方に皆で校庭に集まっていた。
「・・・お待たせしました。変動金利等を諸々適用し、利息は788万3250円ですね。すべて現金でお支払いいただきました、以上となります。カイザーローンとお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願いいたします」
カイザーローンのスタッフに私達が今月ヘルメット団との相手との片手間に集めたお金の殆どを渡した。もし、先生が来てくれてなかったら今月分の返済が危うかったかもしれない。
「はぁ、今月も何とか乗り切ったねー」
「・・・完済まであとどれくらい?」
「309年返済なので・・今までの分も入れると・・・」
「言わなくてもいいよ、正確な数字を言われると更にストレスが溜まりそう。どうせ死ぬまで完済できないんだし!計算しても無駄でしょ!!」
セリカちゃん、できればそんなことは言わないでほしいな。まぁ、それはこの場にいる全員がわかってはいることなんだけれど。そうだとしても、あれだけ頑張って私達が稼いだお金が一瞬で無くなってしまって意味がないという現実は心に来るものがある。
「ところで、カイザーローンはなぜ現金でしか受け付けないのでしょうね?わざわざ現金輸送車まで手配して・・・」
重くなってしまった空気をどうにかして変えようと、ノノミが話題を切り出す。しかし、それは失敗だった。現金輸送車という言葉にシロコちゃんが目をキラキラとさせてしまった。
「シロコ先輩、あの車は襲っちゃだめだよ」
「うん、わかっている」
本当にわかっているのかな、このわんぱくっ子は・・・
「計画もしちゃだめ!!」
「うん・・・」
この様子からして、前から現金輸送車の襲撃を考えていたのかもしれない。恐らくあの現金輸送車の移動ルートも調べていたはずだ。
「ま、とりあえず先に解決するべきは、目の前の問題でしょ。とにかく教室に戻ろー」
教室へと戻り、私達はこれからのことを考える。それぞれが自分達の席へに座り、何時ものように真面目で不真面目な会議をするかに思えたが、アヤネちゃんが会議を始める前から許さない雰囲気を出していて私達は押し黙った。
「この前の襲撃の件ですが、まず私達を襲撃したのはリムル先生の言っていた通り「便利屋68」という部活で。ゲヘナではかなり危険で素行の悪い生徒たちとして知られています。便利屋とは頼まれたことは何でもこなすサービス業で・・・」
アヤネちゃんが話してくれた便利屋68の四人に関しては、事前に先生が教えてくれた情報とほとんど変わらなかった。先生はゲヘナの風紀委員会の委員長と関わりがあるらしい、だから何かとゲヘナの情報を仕入れられてるらしい。
「続きまして、セリカちゃんを襲ったヘルメット団の黒幕についてです。先日の戦闘で手に入れた戦略兵器の破片を分析した結果・・・現在は取引されていない型番だといういことが判明しました」
アヤネちゃんは一人で色んなことを調べておいてくれた。そして、重要な情報を見つけてきてくれた。
「もう生産してないってこと?」
「それをどうやって手に入れたのかしら」
「生産が中止された型番を入手する方法は・・・キヴォトスでは「ブラックマーケット」しかありません」
「ブラックマーケット・・・とっても危険な場所じゃないですか」
「そうです。あそこでは中退、休学、退学・・・様々な理由で学校をやめた生徒たちが集団を形成しており、連邦生徒会の許可を得ていない非認可の部活もたくさん活動していると聞きました」
「便利屋68みたいな?」
「はい。それから便利屋68も、ブラックマーケットでなどか騒ぎを起こしていると聞きました。」
「そこは重要ですね」
現状今の私達には直近でやるべきことはない。加えて、これは私達の問題に大きくかかわることだ、それならやるべきことは決まっている。
私達は荷物をまとめると、その足でブラックマーケットへと向かった。もし、この場に先生がいれば、全力で私達がブラックマーケットへと向かおうとするのは止めようとするけれど、幸いこの場に先生は居ない。行くのは今の内だ、アヤネちゃんは校舎に残りサポートをして他の皆はブラックマーケットへと向かった。
「ここが、ブラックマーケット」
「わぁ☆すっごく賑わってますね?」
アビドス地区と比べれば人が圧倒的に多く、物の売り買いも多い。ブラックマーケットであるにも関わらず、アビドスと比較にならないほど活気がある。
「本当に。小さな市長を想像していたけど、街ひとつぐらいの規模だなんて。連邦生徒会の手が及ばないエリアが、ここまで巨大化しているとは思わなかった」
どうしてここまでブラックマーケットが大きくなっていったのかは知らないが、その規模は大きなもので、一つの学園が持つ自治区に負けないほどの広さをしている。そんな場所がアビドス地区に隣接していたことに今まで知らなかったなんてな。
「うへ~普段私たちはアビドスにばっかりいるからねー。学区外は結構変な場所が多いんだよー」
「ホシノ先輩、ここに来たことあるの?」
「いんやー、私も初めてだねー。でもほかの学区には、へんちくりんなものがたくさんあるんだってさー」
私達は雑談をしながらブラックマーケットの中を進んでいく。まるでいつもの学区内を歩くようにと移動していたが、突然銃声が鳴り響いた。
「銃声だ」
こんな場所でも銃声が聞こえてくるんだ。そう思っても私たちには関係のないことなのだから、放っておこう。そう思っていたが、その銃声はこちらへと近づいてきていた。そして、一人の少女のその少女を追いかける数人の少女達で銃声の主がこちらに近づいてきた。
「う、うわぁぁ!まず、まずいです~!!」
その少女は逃げる先は考えず、とにかく後ろから追いかけてきている少女たちから逃げていた。けど、前を見ていなかった少女はシロコにぶつかってしまった。
「おい、お前らそのトリニティの生徒をアタシたちによこしな」
そして、流れるように少女を追いかけていた奴らに私たちも絡まれることになってしまった。けれど、彼女たちは不運だっただろう。目の前のこうしたチンピラ相手には容赦しない子達がここにいた。
あっという間にシロコちゃんとノノミちゃんの手によってチンピラ達はギッタギタのぼこぼこにされていった。
「み、皆さん強すぎませんか?」
「ん、これくらい普通」
二人の強さに若干引いている逃げている子だったが、どうやら他の
「ありがとうございました。みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした・・・」
少女は頭を下げてお礼をする。ん・・・なんか今路地裏で糸が見えなかった?気のせいかな?
「それに、こっそり抜け出してきたので、何か問題を起こしたら・・・あうう・・・想像しただけでも」
トリニティ生徒がこの場所にいるだけでも異常なのだが、どうやらこの子も相当素行が悪い生徒なのだろう。
「私は阿慈谷ヒフミです。皆さん、本当にありがとうございます」
何度も頭を下げるヒフミだった。
「えっとー、ヒフミちゃん?それにしても、トリニテイのお嬢様が何でこんな場所に来たの?」
そして、ずっと気になっていた疑問を投げかけた。この場所にトリニティのお嬢様が来るような理由は普通はないはずだった。それなのにこの子は来ている。何かしらのよっぽどの理由があるように思えた。
「あ、あはは・・・それはですね・・・実は、探し物がありまして。もう販売されていないので買うこともできないものなのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて・・・」
「もしかして・・・戦車?」
「もしくは違法な火器?」
「化学兵器とかですか?」
私達は思いつく限りの違法的な物を上げていくが、ヒフミはそれに困った表情を見せた。
「えっ!?い、いいえ、・・・えっとですね、ペロロ様の限定グッズなんです」
ペロロ様?おじさんの知らないものの名が出てきた。
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
セリカちゃんも同様に、一体何のことなのかと疑問を口から漏らす。
「はい!これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定ぬいぐるみ!」
ヒフミはスマホの画面でお目当ての物を見せてくれたが、それを見た瞬間、なんていえばいいのかわからなくなった。きもい鳥の口に無理やりチョコミントらしきアイスがねじ込まれているぬいぐるみだった。とてもかわいいというのは無理があり、趣があるとも言えない。案外先輩はこうした片がものを好みそうだなとも思った。
「限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ」
逆に100体も作られているのか。
「ね?かわいいでしょう?」
圧すら感じるその同意を求める言葉に私たちは困った。
「・・・」
何かとずれていたりスパッと言ったりするシロコちゃんですら押し黙っていた。
「わあ☆モモフレンズですね!私も大好きです!ぺろろちゃん可愛いですよねえ!私はミスター・ニコライが好きなんです」
ノノミちゃんはこうしたものなのが好きなのか?いやでも、私達の中では一番流行に敏感だから、今の流行がこういうものなのかもしれないけれど・・・だめだおじさんには全くわからない。
そして、ヒフミちゃんとノノミちゃんの二人がモモフレンズ談議に花を咲かせてしまった。
「いやぁ、おじさんにはさっぱりだなぁ」
「ホシノ先輩はこういうファンシー系に全く興味ないでしょ」
「わかります!!このキャラかわいいですよね!!」
なんかヘイローを持っていない女の人まで談話に加わっている。いや、本当に誰?
「あ、失礼しました。私ソーカと言いまして、今この場で仕事をしていまして」
「ヘイローを持っていないところを見るに、外から来た人?」
「はい、ここからは遠く離れた場所から来ていまして。ちょっとお話いいですか?」
彼女がいったい何者なのか、この場にいる全員が彼女の接近に気が付くことができなかったことに驚かされるなか、彼女達は一体私たちに聞きたいのか。
「ここブラックマーケットで一番依頼が回ってくる場所ってどこですか?」