異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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三十三話 悪いことなのか

「なぁ?君達?俺がどうして君達を正座させているかわかるかな?」

 

 俺は今アビドス高校の廃校対策委員会室でホシノ、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネの五人に加えて、何故か一緒に居たトリニティ総合学園二年の阿慈谷ヒフミも一緒に正座をさせていた。

 

「あはは・・・」

「ん」

「はい」

「うん、その」

「うへぇ」

「そのぉ」

 

 五人は言葉を濁して俺から視線を逸らす。何があったのかは俺がシャーレに戻った直後、カイザーに関しての情報を集めるため裏で活動させていたソウエイとソーカから、アビドス高校の生徒四名に加えてトリニティ総合学園の生徒一人がブラックマーケット内にある銀行に強盗を仕掛けたという話を聞いたとき、何を言っているのか一瞬分からなかった。けれど、かつてシロコとホシノが犯罪計画を立てていたことを思い出して納得がいってしまった。なんでよりにもよってブラックマーケットの銀行を襲撃したんだ。その辺のことを聞く為にも、俺は彼女達に聞き取りをする。

 

「俺が一昨日、昨日アビドスを離れて仕事をしていた。一日は自国に帰ってあっちで溜まってた仕事を処理してきて、もう一日は他の学園に回って仕事をしていたからな。それに俺は先生という立場ではあるが君達との付き合いは浅い、だからとやかく言える立場では無いことは承知だが、同時に君達を危険な事から遠ざけないと行けない立場だ。その上で聞くが、どうしてブラックマーケットに行った?」

 

ブラックマーケットは情報の宝庫で、前話をしたヘルメット団もブラックマーケットで依頼を受けていた。そう遠くないうちにヘルメット団からブラックマーケットへと結びつくとは思っていたが。

 

「以前のヘルメット団が使用していた兵器の幾つかが現在流通していない物でしたので、それが今でも取引されている場所となればブラックマーケットしかなくて」

「それでどうして銀行強盗をすることになるんだ?」

「それは、これを手に入れるためでして」

 

 アヤネが銀行強盗をした時に手に入れたという集金記録と他にも銀行がやったというお金の出入りを記録されている記録の物だった。

 

「なるほどね・・・で金は強奪したのか?」

「えっと・・・その、はい」

 

 バック一杯、はち切れんばかりに詰め込まれた大量の現金が入っているそれを俺の前に出した。

 

「先に言い訳だけは聞いておこうか」

「ん、私は集金記録を要求したけど、銀行員が勝手に現金を入れた」

「私達は現金を強奪するつもりではなくて、集金記録だけを強奪するつもりでした」

 

 俺は彼女達の言い訳を聞いたうえで、俺は大きくため息を漏らす。目の前のバックから現金の一束を手にしてそれを確認する。どうやら、銀行強盗をされたときに犯人に渡す偽物のお金などではなく正真正銘の本物のお金のようだ。バッグの中に目をやるが追跡するための発信機といったものは仕掛けられていなさそうだ。まあ、ブラックマーケットの闇金、ブラックマーケットの外に出られればヴァルキューレといった機関が捜索するのは難しいはずだ。

 

「それで、お前たちはこの強奪した汚れた金はどうするつもりなんだ?」

 

 俺は手にしていた札束はバックの中へと投げ入れ、正座している彼女たちを見下ろす。

 

「まだどうするかは決めてません」

「ありゃ?借金返済には使わないのか?」

「ん、使わない」

 

 その答えは俺にとっては予想外だった。このバックにどれだけのお金が入っているのかはわからないが、おおよそ一億程度の現金が入っている。今の彼女達にとってここまでの大量のお金は喉から手が出るほどに欲しいはずのものだ。それなのに、借金返済には使わないとハッキリといった、それは彼女たち五人の総意のようだった。

 

「金利9%なら、一億も支払えば年間の利息九百万程度だってのに、返済に使わないんだな」

「むしろ、先生はこの汚れたお金を使うの?」

「あ~まぁ、使うかな」

 

 おい待て、俺何か引かれるようなことを言ったか?なんで五人とも驚いたような顔をして俺から遠ざかっているんだ?

 

「先生は何か困ったことがあったら他者から奪い取ることに躊躇いがないの?」

「躊躇いがないって、それはやらないよ。いくら自分達が困っていても他人から奪い取るようなことはしないさ。俺は平和主義なんだよ」

「じゃあどうして」

「一つ、前提が違うんだよ」

「前提がって」

 

 平和主義で他人から奪うことに初めから躊躇いがなかったら今の魔国連邦(テンペスト)は存在していない。

 

「相手は闇金、しかも君達から手に入れたお金を君達に襲撃させるようにお金を回していた奴らのお金だ。先に手を出したのは相手の方で、君達の学園を奪い取ろうとしていた相手だ。そんな相手から賠償として奪い取って何が悪い?」

「前から思ってたけど、先生って考え方が変わってるよね」

「昔と比べてだいぶ考え方が変わった自覚はあるよ。それに俺は何度も戦争をしてきた当事者、過ごした環境が大きく違うから考え方は大きく違うよ」

「戦争って」

 

 戦争という言葉に彼女たちは反応した。普段落ち着いた様子を見せているノノミは目を見開き互いに顔を見合わせた。そういえばここは異世界だったから、俺があっちの世界でどんな立場なのか、何をしてきたのかを知らなくて当たり前だったか。

 

「先生って・・・その・・・戦争ってことは人を・・・殺したの?」

「ああ、何千人もこの手で殺したよ。俺も仲間たちも敵をこの手で」

「ッ!?」

 

 ここの人達は体が丈夫で怪我をしにくい。だからこそ死というものを俺が思っている以上に彼女たちは忌避する。

 

「誤解される前に言っておくが、俺らから戦争を仕掛けたことは一度もない。全て先制攻撃を受けた後か、既に交戦している友好国を救援するために戦争しただけだ」

「それでも、相手を殺したことには変わりないんですよね」

「そうだな」

「殺さない道は・・・なかったんですか?」

 

 アヤネの問いに俺はあの時の言葉を思い出す。ルールは三つ。 1.人間を襲わない2.仲間内で争わない3.他種族を見下さない。俺が仲間のみんなに言い聞かせた言葉だった。

 

「俺も初めはそれを願ったさ」

「でしたら」

「待って、願ったさって、もしかして」

「殺しを俺が禁じたせいで仲間が死んださ」

 

 そう言って彼女たちは言葉を失った。まぁ、その時死んだ仲間は俺が魔王になってどうにか生き返らせて、今でも元気に過ごしているけどわざわざはなすことではないか。それに水っぽい話になってきたし。

 

「水っぽい話になっちまったな。それに、えっとヒフミだっけ?すまないなこんな話を聞かせちゃって」

「い、いえ大丈夫です」

「まあなんだ、俺から言えることは・・・何時までも綺麗事を言ってたらいつか取り返しがつかないことになるぞ。自分達しか頼れる仲間がいないのなら猶更な。あと危険な事に首を突っ込まない、俺に相談してくれれば俺も同伴したし、もっと穏便に情報も手に入れられたかもしれない。今回はどうにかバレずに逃げきれたけど次もそう行くとは限らないんだからな」

 

 俺は一億の大金が入ったバックを手に取る。

 

「こいつは俺がどうにかしておく、大丈夫悪いようにはしないから。ヒフミ、彼女達の銀行強盗に付き合わせてしまって済まない、俺の監督不届きだ。トリニティには俺が正式に謝罪に向かわせてもらう」

「い、いえそれは!?というか、私がブラックマーケットに行ってることがばれちゃいますから、できればやめていただけると」

「ちょっとまて?それってつまり、内緒に言ってたってことだよな?トリニティのお嬢様が・・・ヒフミ・・・君には別の意味でお話をする必要があるみたいだな」

「あ、しま」

 

 口を滑らせてしまったヒフミの手を引き、俺とヒフミは対策委員会室を出ようと扉を開ける。

 

「先生、最後に一つ聞かせて」

「?なんだ?」

「ソーカって人、リムルさんの知り合い?」

「・・・そうだよ」

 

 答えるべきか悩んだが、ホシノ達は俺の知り合いだと確信しているようだった。変に間を開けてしまった以上、どう答えても変わらないだろう。 

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