異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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三十八話 大将をやったのはあんた達か

 校舎から飛び出した俺たちは紫関ラーメンがある場所へと急いだ。一体どんな騒ぎが起きているのか、最悪戦闘をすることに備えて、シロコ達は移動している間にそれぞれ自分の銃へとマガジンを挿入して薬室に弾薬を送り込む。

 

「これは・・・」

 

 俺等が紫関ラーメンのすぐそばへと到着した。そして、遠目ながら紫関ラーメン付近で何が起きているのか確認できた。少人数対軍隊規模の大多数が、いや少人数のほうがどうにかしてこの場から撤退しようとしている状況だ。そして両陣営に覚えがあった。少人数のほうは便利屋68、軍隊のほうはゲヘナの風紀委員会だ

 

「なんでゲヘナの風紀委員会が・・・」

「ゲヘナ!?なんでそいつらがアビドスに!?」

 

 俺のつぶやきを聞いていたセリカが反応する。セリカが口にした通り、どうしてゲヘナの風紀委員会、治安維持組織が自分たちの管轄を離れてアビドス地区に足を運んで戦闘をしているんだ?状況を見るにとても便利屋68から仕掛けられて応戦しているという風には見えない。むしろ、風紀委員会が便利屋68へと攻撃をしているようにも見える。

 俺は走る足を早め、シロコ達を置いていき彼女たちのもとへと近づいていく。そして、気が付いてしまった。

 

「大将!!」

 

 カヨコが誰かを背負っていると気が付き、それが誰なのかと確認するまでもなく誰なのか分かった。柴関ラーメンの大将がけがをした状態でカヨコに背負われていた。

 俺の声に気が付いたカヨコとムツキはこっちを見て手を振る。

 

「リムル先生ちょうどよかった!!」

「リムル先生お願い!!大将を」

 

 俺はカヨコのもとへと駆け寄り、負傷している対象の様子を見る。死んではいないが、かなりひどいけがをしている、おそらく俺らの耳にも聞こえた大きな爆発に巻き込まれてしまったのだろう。

 こちらの世界の住人には効果が薄いと分かっていても使わないよりはまし、カヨコ達と路地裏に回って身を隠し、大将をその場で寝かせてフルポーションを被せる。

 

「先生、それは」

「うちの所の薬だ。病院に連れて行くまでの繋ぎだよ。それよりも、一体何があった?」

「私達も状況は飲み込めてないけど、おそらく」

「風紀委員会が私達を狙って柴関ラーメン屋事、爆撃した」

「お前たちがやったわけじゃないんだな?」

「私達にあそこまでしてくれた大将を無暗に傷つけると思う?」

 

 それもそうか。となれば、この場での敵は風紀委員会だ。彼女らの狙いは便利屋68、この子達を差し出せば事は丸く収まるだろうけど、ここで風紀委員会相手に下手に出れば風紀委員会が調子に乗る可能性も十分にある。俺がこの場でどちらの味方に付くかは明白だ。

 

「カヨコ、ムツキ、一時的にシャーレの部員にならないか?」

「え?どうして急に?」

「・・・なるほどね。わかった、私が代理で社長とハルカの分も承認する」

「助かる。二人は大将を見ていてくれ。そろそろアビドスの子達も到着するはずだから」

「わかった」

「気を付けてね、先生」

「ああ」

 

 俺は路地裏に三人を残して、カヨコとムツキが大将を安全なところまで運べるまで時間稼ぎをしている、アル達の元へと急いだ。

 

 瞬間的に何十、何百発も弾丸が自分達に向って飛んでくる中、アルとハルカは遮蔽物を駆使しながら応戦していた。

 

「あ~もう、これだけの数相手にしてたら弾が持たないわよ」

 

 一発一発、風紀委員の頭に直撃させてワンショットワンダウンをさせているアルでも、弾の数には限りがある。目の前に居る風紀委員会全てを倒しきりのは無理だ。一方ハルカは何時もの様に一切怖気を見せず、気迫と勢いだけでアルに近付こうとする風紀委員会を片っ端から撃ち飛ばしていく。

 

「トップの首さえ取れれば」

 

 アルはスコープ越しに風紀委員会を指揮している人物イオリに標準を合わせる。

 

「ッ!!」

 

 引き金を引こうとするが、その手を放してすぐに遮蔽物に身を隠す。直後アルの頭上を飛んで行った。イオリの狙撃がアルよりも先に相手を取ら和えていた。

 

「狙撃ポイントを変えているなんて・・・余裕はないわよ」

 

 大将を逃がすために弾幕を張っているムツキと戦況を見ているカヨコが不在な状態で、ヘイトを買うハルカと後方で支援するアルでは、風紀委員会の大人数をここまで耐えているほうがおかしい話だった。

 自分たちも頃合いを見てこの場から逃げるべきか、そう考えていたところで、彼は来た。

 便利屋68と風紀委員会の間に割り込むようにリムルは現れた。

 

「双方、そこまで!!」

 

 

 前から思っていたことだけれど、便利屋のあの子達はこの世界では相当強いほうなんじゃないかと改めて認識させられる。あれだけの風紀委員会の人数を相手にしていたにもかかわらず、アルとハルカの二人には明確なダメージらしきダメージはない。一方で風紀委員会の委員達の多くは二人によって気絶させられている。いくら数の差の優位性があるにも関わらず、この数の差を埋めるのは容易ではないのに。

 俺の登場に風紀委員会には動揺が波のように伝わっていく。

 俺はまだ抜刀しない、いくら弾を叩き切るために使うためでも、この状況で武器を取り構えたら交戦する意識があると思われるため、面倒ごとを起こさないためにも武器には手を伸ばさない。それに、場所が場所だ。ここでの戦闘行為は後始末が本当に面倒くさい。

 

「連邦捜査局シャーレの先生、リムル=テンペストだ。ゲヘナ風紀委員会とお見受けするが・・・責任者と話がしたい。もし、話ができないなら、ゲヘナの自治区外での戦力行使として・・・それ相応の対応はさせてもらうことになる」

 

 鞘を握り、いつでもこれを抜くことができると示す。それで彼女達は言葉が飛び交いあって、戦場は静まったはずだった。俺は半歩横に動いた。

 

「・・・俺が言うのもなんだけどさ、連邦生徒会直々の捜査局の人間を攻撃するのがどういう意味だか分かってるか?」

 

 俺が先ほどまで立っていた場所に銃弾が通過して、後ろにあった物に着弾した。それを撃ったのは白銀の髪をして、ほかの風紀委員とは違う服装をしている、おそらく隊長格の少女だった。そして、直後。

 

「私達の前線医療部隊は交戦するつもりはないですから、というか降参します!!」

 

 大きな声で覚えのある声が聞こえてきた。そして、目の前の部隊から何人かの子たちが離脱していった。

 

「いまのは・・・チナツか?まあ、いいか、事情説明は終わってから聞かせてもらうよ」

 

 刀を引き抜き、構えそして地面を蹴った。

 それから何が起きたのかは語るまでもない、銃を構えようとした風紀委員達の銃を片っ端から破壊し、他にも攻撃しようとする子達の武器をすべて破壊して無力化していく。

 戦闘というにはあまりにも一方的なもの、俺が次々と風紀委員を無力化していく中で、遅れながらムツキとカヨコ、アヤネとホシノを除くアビドスの三人が合流した。

 

「えっと、どういう状況」

 

 アルとハルカがどうにか抑えていたはずの戦況は、俺一人で逆転してしまっている状況に、カヨコは思わず困惑してしまう。

 

「状況は分からないけど、あいつらが大将を店を攻撃してきたやつらなんでしょ!!」

 

 状況を完全に飲み込め切れていなくても、わかっている情報だけで風紀委員会が攻撃を仕掛けてきたこと、俺が風紀委員会と戦闘していることから、情報の真偽を問わずとも風紀委員会が敵であることはわかることだった。

 セリカが自分の銃に手をかけて、セーフティーを解除した。

 

「アビドスの戦闘行為は認めない!!」

 

 俺は大声で彼女達が戦うことを制止した。

 

「な、どうして!?」

「なんで」

 

 俺が止めたことにセリカは再び大きな声を上げてしまう。詳しい事情を今説明しているほどの余裕は俺でもない。これ以上被害を出させないように、被害を最小限に抑えるためには。

 狙いを一人に絞り、地面を蹴り、隊長の元まで駆け出す。

 

「そんなんで」

 

 隊長と思わしき人物、イオリの目前まで迫る。道中の風紀委員は押し倒していき、そして剣先はイオリの首を捉える。

 

「ッ!?」

 

 イオリは咄嗟に銃で俺の刀を弾き、そらす。そらすので手一杯で俺の掴みまでは避けきれなかった。イオリの腕を掴み、俺の方へと引き寄せて姿勢を崩させたところで、腕に勢いよく肘で殴る。

 大きな音を立て、イオリの腕は本来ならば曲がってはいけない所で腕を曲げる。この状態では痛みでまともに体も動かすことはできないだろう。イオリはそのまま力なくその場で倒れ、痛みに悶える。

 

「お前たちはまだ続けるか?」

 

 残りの風紀委員達に問うが、ほんの一瞬で自分達のリーダーを無力化されてしまった現実に、彼女達の戦意は一気に失われた。中には持っていた銃を捨てて両手をあげる者たちもちらほらと現れた。

 

「チナツ」

「なんでしょうか?先生」

 

 少し離れたところでイオリの腕が骨折していることにうわぁという表情をしながら見ていたチナツへと話しかける。

 

「風紀委員会の降参でいいのかな?」

「そうですね」

 

 風紀委員会は降参した。それを確認して、イオリの腕を掴み元の形に戻してからフルポーションを彼女の腕にかけてやった。




 有象無象の数だけの風紀委員相手にリムルさんが戦闘するシーンが結局思いつかなかった。
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