異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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三十九話 対話と交渉と要求

 風紀委員会の降参、ひとまず戦いはこれで幕を閉じたが、問題はまだ残っている。何故ゲヘナの風紀委員会がアビドス地区まで出向いてきて、便利屋68と交戦していたのか。調べなければいけないこともあるうえ、これの後処理もしなければならない。

 

「チナツ、今回の風紀委員会がここまで来た理由って何?」

「アコ行政官から、アビドスに居る便利屋68を捕縛するようにとの指示です」

「便利屋68四人を捕縛するために?」

 

 どうも引っかかる。ゲヘナの自治区外、いくら指名手配の便利屋68を捕まえるためとは言え、たった四人、実力者と言えど明らかに過剰な戦力と言える。まあ、これだけの人数相手に立った二人で撤退するだけの時間を稼げている便利屋68も色々と問題ではあるのだけれど。

 

「本当にそれだけなのか?これだけの人数を引き連れていて?」

「私達が聞いている指示はそれだけですね。この人数もアコ行政官からの指示ですから」

 

 アコ行政官にアコ行政官か、どうも手法がヒナがとる方法とは大きくかけ離れている。彼女ならば面倒くさいと言って、自分から出向いて便利屋68四人と一人で交戦して捕縛して、後始末を部下に任せるやり方のほうが手っ取り早くその手を取るだろう。だから、これはチナツのいう通り、アコ行政官という人物が取った作戦なんだろう。

 アコ行政官がどうしてこんなことをしたのかを考えようにも、手元にある情報だけでは答えを導き出すのは難しい。ひとまず、さっさとこの風紀委員会達には帰ってもらおう。

 

「とりあえず、帰ってもらってもいいか。今回の被害に対しての賠償請求は後日送るから」

「ちょ、リムル先生どうして勝手に」

「その、私指揮権を持っていなくて、持っているイオリは・・・」

 

 口を挟むセリカを無視して、チナツの応急処置で折れている腕に当て木をして包帯によって固定されているイオリの方を見る。未だに腕が折られたことによる痛みがあるのか、その場で蹲っていて痛みに悶えていた。

 体が丈夫な反面、怪我をしにくくて大きな怪我に対して耐性がないのか。コブタとかなんて、前に腹を切られた時は騒いではいたけど、咄嗟に体を丸めて出血を抑えていて、騒いでいる割には余裕そうだったんだけどな。

 今のイオリとても指揮をできるような状態ではない。

 

「仕方がない、風紀委員会全員に連保捜査局シャーレのリムル=テンペストが告ぐ。即刻この場から立ち去れ。もし指示に従わないなら」

 

 風紀委員会たちに睨みを聞かせると、あっという間に風紀委員の彼女達は自分達の武器を纏めて、その場から逃げ出そうと走っていこうとする。

 

『落ち着きなさい』

 

 突然どこから、いやさっきから俺らの頭上を飛んでいたドローンから一人の少女の声が聞こえてきた。そして、そのドローンからホログラムが投影されて一人の少女が現れるのだけれど。

 

 ものすっごい横乳はみ出しているんですけどぉ!?前に百鬼夜行の陰陽部の部長とお話しした時も凄いって思ったんだけど、何キヴォトスってああしたファッション流行ってるの!?

 

 どうでもいいことに気が行ってしまった。と、そんなこんなの話をしている間に、目の前の彼女は話し始める。

 

『お初目にかかります。連邦捜査局シャーレの先生、それとアビドス高校の方々』

「君は・・・二人が言っていたアコ行政官でいいのかな?」

『はい。ゲヘナ風紀委員会行政官二年の天雨アコです』

 

 ホログラムで登場してくるあたりから察するに、本人はこの場にはいないだろう。大方、ゲヘナ校舎内でドローンを通して、自分は安全な所から状況を見ていたと踏むべきだ。

 

「そうか、なら話は早いな。今回の一件について説明を求めるよ。何故ゲヘナ自治区外で風紀委員会の戦力を行使しした?」

『風紀委員会としてゲヘナの問題児を捕まえるための活動をしてなんの問題がありますか?』

「ああ、その点に関しては問題はないな。だけど、俺が聞いているのはゲヘナ自治区外で戦力行使をしたかだ。論点をすり替えるな」

『ああ、それでしたらその問題ありませんよ。そこがどこの学園の自治区でもないことは確認していますから』

「はぁ!?ここはアビドス自治区よ!!私達に何も言わずに勝手に入ってきて戦って、大将の店を壊したのはあんた達でしょうが!!」

 

 これは、後でちゃんと説明しておかないとだな。

 

「セリカ、落ち着け。シロコもノノミも銃を下げろ。確かにここが係争地帯と仮定することもできる、それならそちらの筋は通らないこともない。なら、次の質問だ、何故無関係な原住民を巻き込んで爆撃した?」

『それに関しては現場指揮のイオリの責任です。私の方からは民間人を攻撃していい指示は出していません』

「自分に責任はないと?」

『ええ、そうでしょう。私が現場の状況をすべて把握しているわけではありませんから、現場の判断は現場に任せます。そのうえで判断したのがイオリなのですから』

 

 アコの答えを聞いて、俺はもはや呆れを通り越した。

 

『それでは、次はこちらから話させてもらいますね。ゲヘナで指名手配されている便利屋68の身柄引き渡しを要求します』

 

 こいつは一体今までそのドローンで何を見てきていたんだ?思わずそれを口にしそうになってしまったが喉元で抑え込んだ。

 

「理由は?」

『便利屋68はゲヘナで指名手配されています。風紀委員会として取り締まるのは当然のことでしょう?』

「なるほどねぇ」

 

 こいつはこの状況でその要求をして通ると思っているのか? それに足して、俺がする答えは決まっている。

 

「NOだ」

『ほう、何故でしょうか?』

「現時点で風紀委員会に対して信用がないことが大きい。係争地帯と言えど、君達がした行為は看過することができない」

『つまり、犯罪者の肩を持つおつもりなのですね?』

「少なくとも、この場で善と悪を問われれば、俺は君たち風紀委員会を悪と俺は言い切るよ」

『そうですか。交渉は決裂ですね』

「交渉?一体いつからこれを交渉だと思っていたんだ?」

『いえ、初めから思っておりませんよ』

「そうか、まあこの場を囲うように軍を展開している奴が交渉するとは思っていないよ』

 

 ホログラムの機械越し、それでも俺とアコ行政官の目は合い。そして。

 

『総員「ん?」ッ!?』

 

 アコが指示を出そうとした瞬間、竜霊覇気を絞りに絞ったものを発させる。同時に、この場にいた全員、少し離れたところにいた風紀委員達にもその覇気は伝わり。一瞬にして場は完全に静寂と化す。

 

「ッ~!!」

 

 シロコは目を見開き、戦闘の体制を取りながら後ろに跳ぶ。ノノミは手にしているミニガンを強く握り、アヤネは腰を抜かしてその場で崩れる。セリカは失神していた・・・チナツは脈が速くなり呼吸が荒くなり、イオリは痛みに悶えていたのにそれを忘れたかのようにこちらを見る。アコは白目を、ハルカはもう何を言っているのかがわからない金切り声を挙げている。

 そして、周囲にいる風紀委員たちはもはや阿鼻叫喚となった。

 

「死にたくない!死にたくない!!」

「こ、殺される」

「嫌だ嫌だ嫌だ!!」

「あ”あ”あ”」

 

 全員がとても酷い状態となっていた。

 

 流石に全員怯えすぎじゃないかな?魔王覇気にも足らない程度のものなんだけれど。どうしてここまで怯えているんだ。

《あちらの世界と比べて死が間近でない分、恐怖への影響が大きいかと。原住民の恐怖耐性を下方修正します》

 ああ、そっか。あっちと比べて怖いことに合う事が少ないか。

 

『な、なにをしたんですか』

「何もしてないよ?強いて言えば覇気を出したってくらい」

『意味の分からないことを』

「で、さっき何を言いかけたのかな?」

 

 俺は彼女にもう一度問う。また変なことを言ったら次はないという意味も込めての問い。けれど、その問いの答えは一つの砲撃によってかき消されたのだった。




骨折すると・・・マジでしばらく悶え苦しみました。
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