異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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12/03 加筆修正


四話 連邦生徒会

 シズコと言う少女から貰った少しばかりの路銀を使い、DU地区行の切符を買い、電車の車内で揺られている。

 

「電車に乗るのは大分久しぶりだな」

 

 最後に電車に乗ったのは一体何年前だろうか、前世では毎日のように乗っていたけれど、転生してからは、そもそも列車と言う概念が無い世界だ。今魔国連邦(テンペスト)を中心として行っている鉄道計画も、俺が始めたことであり、使っている列車も魔石やエンチャント、精霊工学利用した蒸気機関車のようなものであり、厳密な意味での電車ではない。少なくとも、スライム生になってからは電車に乗ったことはなかった。となれば、最後に電車に乗ったのは、前世で田村と田村の彼女との相談に乗るために、待ち合わせ場所に向かう為に使ったときか。

 俺年単位で電車に乗ってこなかったのか。

 

「あぁ!?ミドリ、卑怯だよぉ!?」

「このルールで同意したのはお姉ちゃんだよ。はい、掴んだ」

「ちょっと!?ゴリラの掴みは抜け出すのが難しいのに!?」

 

 電車の中を見てみれば、やはり子供達の方が圧倒的に多い。ここは学園都市と言うほどでもあり、子供達の人口が多いのはある程度納得はいくものの、それに対して大人の姿が殆ど確認することができない。子供達二十人程度を見て獣人の大人が一人確認できるかできないか。一体何処からこれだけの子供達が来ているのだろうか。

 子供達が政治をするということはいまだに考えにくいものの、これほどまでに子供達が圧倒的に多いのであれば、自ずと必然的に政治をしなければならなくなるのか。いや、だとしても、子供達はいずれ大人になり、子供達よりも大人の数の方が多くなるはずだ。けれど、現実問題子供達の方が圧倒的に多い。歴史を見てみれば、学園都市ができたのは近年ではなく、原型はかなり昔からあり、そして卒業をして大人となった子達は外へと出て行く。この世界の大人達は本当に一体何をしているのだろうか。

 

《情報が不足している為、断定できかねます》

 

 シエルでも情報が不足していて、この状況を説明できる明確な答えを見つけられない。

 

『次はミレニアム学園前、次はミレニアム学園前』

「あ、お姉ちゃん着くよ」

「う~、部室に戻ったらもう一度勝負だよ!!」

 

 耳がついたヘッドフォンを身に着けていた二人の少女が電車から降りていく。あの子たちの身長を見て中学生程度のように思えるが、あの子たちも銃を提げていて、頭上にはヘイローがある。他の生徒達も同様に銃を提げて、ヘイローを浮かばせている。ところで、男の子をほとんど見かけていないような気がするのは気のせいかな?さっきから見かけているのが女の子な気がするんだけれど・・・

 

《浮気はだめですよ。本夫(相棒)?》

 

 なんでだろうか、シエルからの圧を感じた気がする。

 

《気のせいです》

 

 いや、絶対気のせいじゃ

 

《気のせいです》

 

はい。

 

シエルの圧に負け、俺は窓の外の様子を見る。百鬼夜行から見えていた点へと延びる光に近付いていて、確実にDU地区へと近づいてきている。

 町並みは木造建築からいくつものビルが建ち並び、その間を縫うように引かれた線路の上を電車は走っていく。

 

『次はDU地区、お出口は左側になります』

 

 アナウンスが鳴り、電車は再び走り出す。このまま何事もなければ数分でDU地区に到着して、連邦生徒会の組織がある建物まで向かうことができるだろう。

 特にこれと言ったトラブルが起きることもなく、電車は目的の駅へと到着し、俺は下車して目的の建物へと向かう。

 

「これが学校か?」

 

 学園と言うにはどう見てもビルだ。確かに前世でも一部の学園はビルの中に存在していたものはあるが、それはビルの一部のフロアを使っただけの話である。けれど、今俺の目の前に立っているビルは、一階にコンビニや銀行などの商業施設を除けば残りの全ての階は一つの学園のものだという。

 あまりの大きさに驚きつつも、ここに来た目的を果たすことにしよう。

 連邦生徒会、ここは学園都市の中枢とも言える場所でもあるため、必然的に情報がここに集中する。ここならば一度に多くの情報を手に入れることも、この世界からあちらの世界に干渉してきた相手に関する情報を見つけられるはずだ。

 とはいえ、どうやって情報を手に入れたものか。俺は異世界の住民であり、この世界の住民でも生徒でもない。正面から入れば十中八九門前払いを受ける事になるだろう。アヤメは俺の事を信じて話してくれたが、今回はそうもいかない。彼女達からしたら見ず知らずの相手、ましてや魔物が自分達が持っている情報をよこせと言って、はいそうですかと渡してくれるわけもない。

 そうなれば、どうやって情報を手に入れるかは決まっている。

 

《左側に換気ダクトがあります》

 

 連邦生徒会に所属している生徒達に気が付かれないように、彼女達が持っている情報を盗むのが一番だ。こうしたことはソウエイ達の得意分野なのだが、今彼らは居ないので、俺一人で対応しなければいけない。

 スライムの姿に戻り、換気ダクトの中に入る。在り来たりな方法かもしれないが、スライムと言う不定形の形で色んな所や狭い所でも入れるのならば、これ以上にバレずに侵入するのにうってつけの手はない。

 一応、ダクト内からの侵入者に対してセンサーが設置はされているが、普通なら見えないうえダクト内の狭い空間な為、避けるのは難しいものであるが、シエル先生の前ではそんなものは無力。構わず奥へ奥へと進んでいき、建物の中へと侵入した。

 

「お、それっぽい場所を見っけ」

 

 ダクト内を移動している途中、大量の棚と段ボールが置かれている部屋を見つけることができた。

 

「よっと」

 

 換気口を壊さないように慎重に出て、周囲の様子を見渡す。

 万能探知は周囲には誰もいないと伝えているが、万能探知をかいくぐる相手もいるため自分の目で改めて周囲を確認する。

 

「よし、誰もいないな」

 

 いないと分かれば、音を立てないように気を付けつつ積まれている資料たちを片っ端から調べていく。調べると言っても、俺自身はこの部屋にある物を全て一度捕食して、シエル先生に調べてもらい、何事もなかったかのように元に戻すだけ。

 

《有力な情報は見つけられませんでした》

 

 当てが外れた。もしかしたら紙などの書類、物として残っていないのかもしれない。そうなれば、サーバールームかサーバーにアクセスできる端末を見つけなければお目当ての情報は見つけられない可能性が高い。

 俺は再び換気ダクトの中を入って中を移動していく。万能探知のおかげで建物の構造と、何処に人が居るのかはわかるため、見つからないように移動するのは容易であっさりと大きなコンピューターが置かれている部屋に侵入できた。

 

「ここか」

 

 コンピューターを操作するためには、キーボードの操作が必須で打ちやすい人型の姿へと戻り、弄り始める。

 

「あ~やっぱりか」

 

 モニターに映るいくつものウィンドウを操作してみるが、直ぐにいくつものセキュリティに阻まれてしまい、情報の閲覧をすることができない。

 ハッキングなんてしたことが無い俺がセキュリティを突破することができるわけもなく、お手上げだ。

 

「シエル、どうにかならないか?」

《データサーバーへ物理的に侵入することができればどうにかなると思います。端末からの侵入では限界があります》

 

 シエルでも直接データサーバー(物理)に触る事ができなければ、その演算能力をもってしてもハッキングはできないのだろう。

 データーサーバー(物理)はすぐ隣にある、無理にこの端末からサーバー内のデータを閲覧せずとも、シエルならばデーターサーバー内のデーターを直接閲覧することができる。

 データーサーバーに触れて一度捕食をしようとした瞬間、ここサーバールームに向ってきている少女が一人いた。まずいな、一回どこかに隠れるべきか、隠れるにしてもどこに隠れるべきか?そんなことを考えている間に、少女は入ってきた。

 

「誰ですか!?」

 

 俺が換気ダクトから入ってきたのに対して、少女はちゃんとした扉の方から一人の少女が入ってきた。彼女はホルスターに入れていたハンドガンを引き抜いて俺に構えた。

 

「あ、やべ」

 

 結局隠れる所を見つける前に見つかってしまった。俺は直ぐに両手を挙げて、戦うつもりは無い事を示しつつ、退路を確認する。

 扉の出入り口は一つで、そこの前に一人の少女が立ち塞がっている。走り抜ける事はできなくないだろうが、横を走り抜けた時少女を怪我させやすい。

 来た道である換気ダクトの方へと戻るには、一度スライムの姿に戻らなくてはならない。敵か味方かもわからない相手に自分の手の内を見せすぎるわけにはいかない。

 ここで俺がスライムであるという情報が露見した場合、今後の活動に大きな支障をきたす可能性がある。できる事ならば、この姿のままうまいこと逃げきりたい。

 

「一体ここで何をしていたのですか?」

 

 銃口はこちらを捉えているが、その手は揺れている。普段使っていないのか安定していない。どうやらこの子は戦いなれていないようだ。

 

「ちょっと調べごとを、ここならその情報が手に入れられるかなって思っていたんだけれど」

「一体何の情報を探していたのですか」

「残念ながらセキュリティを突破できなかったから、直接サーバーを弄って調べようかなと思っていたんだけれど」

 

 見るからに彼女はこちらを警戒している。このまま動き出しても、銃声を立てられて応援が来てしまうだろう。魔法で閃光を起こして彼女の視界を奪おう。そう構えたとき。

 

「・・もしかして、リムル=テンペストさんですか?」

「どうやら、ここに来たのは正解だったみたいだな」

 

 こちらの世界に来て俺が名を名乗ったのは、百鬼夜行のアヤメとシズコの二人だけで、昨日今日の話。情報伝達の速度はスマホがある点からあっちの世界よりも早く、既に伝わっていてもおかしくはないものの、アヤメはあの雪山の中、電波環境は最悪。シズコは祭りの準備で手一杯で連絡をしている余裕は考えにくい。それならば、目の前の少女は昨日今日で俺が関わった話を聞いていないはず。

 それなのに、俺の名を知っているのならば、他の伝手から俺の名を知ったことになる。例えば、この世界から異世界の俺に干渉してきた人物とか。

 

「俺の名をどこで知った?」

 

 答えを聞くために問い、少女は構えていた拳銃を下ろしてホルスターに仕舞う。

 

「連邦生徒会長の書置きです。ようやく来てくださったのですね、受付で言ってくれれば迎えに上がったのですが」

「ん?」

 

 なんだか俺が思っていた言葉とは全く違う言葉が出てきた。

 拳銃を下ろした所を考えると、俺を敵だとは思っていない。つい先程まで思いっきり怪しい行動をしていたにも関わらず。それどころか、俺の事を迎え入れるつもりだったのも思える。

 

「先程は銃を向けてしまって申し訳ありません。詳しい話をするためにもこちらに来てもらってもよろしいですか?」

「あ~、わかった」

 

 どうも俺が思っているのとは全く別の展開になりそうだ。それに少女は俺に対して話したい事もあるようだ。罠の可能性も否定しきれないが、結局情報を手に入れられていない今、情報を手に入れられるのならばこの話に乗っても良いだろう。

 少女は自分に付いてくるようにと背中を見せて扉の先で待っている。俺は歩き出して少女の後を追う。

 

「私は学園都市「キヴォトス」の連邦生徒会所属主席行政官七神リンです」

「名前は知っているようだけれど、リムル=テンペストだ。よろしく」

 

 行政官、わかりやすく言えば国会公務委員のような立場のようなもの。しかもそこの主席となれば、この子はここ連邦生徒会の中にある一つの部門のトップと見てよさそうだ。

 リンは持っていた書類を俺に渡す。

 

「その資料に目を通しておいてください。リムルさんにお渡しする予定だったものですので」

「これ、ずっと持っていたの?」

「はい、今日リムルさんがいらっしゃることは分かっていましたから」

 

 俺が今日来ることが分かっていたなんてどういうことだ?俺が今日他の場所に、特に百鬼夜行で情報を集めている可能性だって十分にあったはずなのにな。それなのに、今日来ると分かっていた?

 気になる事はあれど、一先ずリンから渡された資料の一部に目を通しつつ質問をする。

 

「連邦生徒会長の書置きで俺の名を知ったって言ったけど、連邦生徒会長から俺の事は何か聞いていたのか?」

「いえ、書置きでリムルさんの名前だけです」

「その書置きはいつ頃見つけたんだ?」

「約一か月程前です」

「・・・俺がこっちに来る前か」

 

 あっちの世界とこっちの世界とどの程度時間の進みにずれが生じているのかはわからない。仮に殆ど時間の流れが変わらないとすれば、俺に対して転移術を行使するよりもずっと前から俺の存在を知って居たことになる。

 

「一か月前?」

 

 書置きが一か月前?それほど前から書置きを置いていた?もしかして、連邦生徒会長ってだいぶ前から今も出張している?

 現状俺の存在を認知していたとされる連邦生徒会長、誰よりも怪しいのにも関わらずタイミングを合わせたかのように出張しているって、なおの事怪しい。

 

「ん?」

 

 渡された資料に目を通していると、ある一文に目が止まった。

 

「ちょっとまて、なんで俺が先生になる事になっているんだ?」

「すみません。私もどうしてリムルさんを先生に就任させるかの話は聞いていないものでして」

「知らないって、その連邦生徒会長からは何も聞いていないのか?」

「はい、書置きに書かれていたのは先生になってくれるとのことだけでして。直接話を聞けていません」

 

 推定ではあるが、異世界の住人であることを知っていて、しかも拉致ったうえで先生をやらせようとしているって、その連邦生徒会長は一体何を考えているんだ。第一、俺が先生の任に付く保証なんてどこにもないはずなのに。

 

「君としてはどこの馬の骨かもわからない俺を先生にさせるなんてどう思うんだ?」

「ただの先生であるのならば何とも思いませんでしたが、リムルさんの場合は特殊です」

「特殊?一体どういう」

 

 リンの言葉から只の先生ではないことは分かるが、それが一体何のことなのか、乗っていたエレベーターを降りつつ聞こうとした時だった。

 

「ちょっと待って!!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!」

 

 突然大きな声で話しかけられて、思わずそっちの方を向き、見てみれば四人の少女がこちらへと詰め寄ってきている。

 ツインテールで藍色をした髪を持ち、スーツのような制服の上に白いブレザーを着ていて、ジャケットの内側には二丁のサブマシンガンを携えている少女。胸には学生証が提げられていて、学園の紋章と学園の名が記されている。

 ミレニアムサイエンススクール、その名からして理系工業系の学園だろうか。

 

「ん?隣の方は」

「主席行政官、お待ちしておりました」

 

 綺麗な銀髪をロングヘアーにして頭部には小さな翼を持ち、灰色の制服を着ている。制服に記された校章はボルトアクションライフルを手にしている少女と同じものであるため、同じ学園の所属と思われる。手には白く塗装されたアサルトライフルを握っている少女。

 黒いロングヘアーで、全身真っ黒な制服に赤いネクタイを付けている。背にはとても大きな翼を持ち、片翼を広げただけでもその中に三、四人は入る事ができるだろう。そしてとても長いボルトアクションライフルを手にしている少女。

 二人の言葉が偶然被さってしまった。若干二人の間に気まずさが生まれる。

 というか、この子、その胸がすっごいな・・・高校生くらいで胸ってこんなになるもんなんだ。

 

「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

 赤い眼鏡をかけ、茶髪と言うには赤みを覚える髪色で肩より下まで伸びた髪をして、シャツに黒いスカート、恰好からどこの学園の制服か判断しにくい恰好をして、とても大きくパンパンに詰められたバッグを肩にかけている少女。バッグの外ポケットには一丁の拳銃が見える。

 当然、四人ともリンも含めて頭上にはヘイローと呼ばれる物を浮かばせていた。

 

「ああ、面倒な人達に捕まってしまいましたね」

「そう思っても口には出さないほうがいいと思うぞ・・・っと、俺はリムル=テンペストだ。よろしく」

 

 俺は一番近くまで来ていた藍色の髪をした少女に手を差し出す。

 

「あ、早瀬ユウカです」

 

 ユウカは俺の手を取り握手をする。

 

「じゃなくて、今、学園都市で起きている混乱の責任どうするつもりなのよ!!数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この前なんか、うちの学園の風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

 百鬼夜行の時点で薄々感じていたものの、やはりこの世界の学園の規模はおかしいと思える。どうして一つの学園が当たり前のように風力発電所を持っているのだろうか。彼女の言っている感じだと、実験のための風力発電機とかではなく、本当に電気を作るための発電所と言う感じだ。

 

「連邦矯正局で停学中の生徒達について、一部が脱出したという情報もありました」

「スケバンのような不良達が、登校中のうちの生徒達を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

「戦車やヘリコプターなど出所のわからない武器の不法流通も2000%以上増加しました。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

 

 うん、この世界俺が俺が思っていた以上に治安が悪いのかもしれない。と言うか2000%増って何?えっと100%増で元の二倍ってことになるから二十一倍!?え、上がり過ぎじゃない!?それって治安維持組織全く機能してないっってことじゃない!?あとこの世界、戦車やヘリコプターって一般流通しているのね!?道理でコンビニで漁った雑誌の中に戦車やヘリコプターのカタログがあったわけだよ!!

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ合わせて!」

 

 次々に飛ぶ言葉、それに対して俺は答えられないためリンの方へと目をやる。けれど、今のユウカの問いに対して、おおよその答えに予想は着く。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

 まぁ、そうだろう。書置きが一か月前にあり、その間に話ができなかったとなれば、出張などと言う形でこの場所から離れていたことは容易に想像できた。それでも、行方不明になっていたことは可能性としてはある程度だった。

 答えを予想していた俺に対して、答えを予想できていなかった少女達は驚いていた。

 

「結論から言うと「サンクトゥムタワー」の最終管理者が居なくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です」

「一応、自国の政治関係者だが・・・やばい所の話じゃないだろ」

 

 行政、平たく言えば治安維持や公共設備やサービスなどの維持等と言ったものが一切機能していない。いくら魔国連邦(テンペスト)でも行政機能が失われれば、数日国が持つかもわからない。それが治安がもとより悪いほうの世界でそうなればやばいどころで済む話ではない。 

 

「彼女達の反応を見ると公表もしていないだろ、一か月近くもそんな状態を続けて一体何を考えているんだ?」

「連邦生徒会長の失踪が知られれば今以上に事態の混乱が考えられたからです。ですが、認証を迂回できる方法を探していましたが・・・先程まで、そのような方法は見つかっていませんでした」

 

 そういいながら、俺の方を見る。

 

「それがさっき俺に話していた先生の事か?」

 

 何故先生がこの事態を解決させることができるのか、関連性があるのかはさっぱりわからない。けれど、失踪する前にわざわざ残した書置きで俺の名を残すだけでなく先生に指名している。そこまで手を回している人物がこうした状況を想定していないとは考えにくい。ならば自分の権限をどこかしらに委任しているはずだ。

 

「はい、リムル先生がフィクサーになってくれるはずです」

「まだ俺が先生になるとは一言も言っていないんだけどな」

「この方が?」

 

 俺が先生に指名された話を聞き、困惑と驚きの表情を見せる。

 

「え?どこかの学園の生徒とかじゃなかったんですか?」

「その、大人だったのですね」

「あれ?俺もしかして子供だって思われてた?」

 

 確かに幼い顔をしていて、彼女達とそこまで身長は変わらない。まぁ、確かにあっちの世界は年功序列ではなく、実力至上主義で年齢なんて関係ない世界だったからな、俺の見かけがそこまで大事では、いやそれ以上にスライムが先行していたか。

 

「あ、すみません。キヴォトスではないところから来た方だとは思っていましたが、先生だったのですね」

「はい、こちらのリムル先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

「だから、やるとはまだ言ってないんだけど?」

「行方不明になった連邦生徒会長が指名・・・?ますますこんがらがってきたんじゃないの・・・」

 

 大丈夫ではないけれど、俺にもよくわかっていないから。

 

「・・・先生は元々連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活動の顧問としてこちらに来ることになりました」

「俺は別件でこっちに来たうえ、先生になる話もついさっき聞いたばかりなんだけれどね?」

「連邦捜査部「シャーレ」は単なる部活動ではなく」

「ねぇ!?今の無視!?」

 

 俺が先生になるとは一言も言っていないのに、俺が先生になる事は確定事項の様に話が進んでいる。一応異議だけは申し上げて置く。

 

「一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒達を、制限なく加入させることすらも可能です、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です」「それを外部の人間に渡すほどの権力じゃないだろ」

「同意見です。何故これだけの権力を持つ機関を、連邦生徒会長が作ったのかはわかりませんが・・・」

 

 多少治安が悪いため、武力行使で鎮圧を行うことはざらにあると思える。魔国連邦(テンペスト)でも、治安維持のためにある程度の武力行使はある。それでも、あくまで自分達の力が及ぶ範囲だけである。

 他の組織の管轄である地域で、自由に戦闘だけでなく好きな様に活動することが認められるなんて普通に考えればあり得ない。今の俺でもドワルゴンなんかで勝手に戦闘なんてすれば大目玉になってしまうのだから。

 

「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今は殆ど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下にとある物を持ち込んでいます。先生を、そこにお連れしなければなりません。モモカ、シャーレの部室にちょっとヘリが必要なんだけれど・・・」

 

 彼女はどこかに通信をすると、ホログラムが出現してポテチを食べている少女が現れた。

 俺も後でポテチを食べよう。

 

『シャーレの部室?ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』

 

 それを聞いて俺は外の方を見てみる。目を凝らして遠くの方を見てみれば、何やら煙が上がっている場所が見えた。

 

「大騒ぎ?」

『矯正局を脱出した停学中の生徒達が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ』

「うん?」

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良達を先頭に、周りを焼け野原にしているみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れて来たみたいだよ?』

 

 先程不法流通が2000%上昇したとも言っていたが、もはや顔に手を当てて天を見上げたくなる話だ。

 

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事な物があるみたいな動きだけど?まあでも、とっくに滅茶苦茶な場所なんだから、別に大した事な・・・あっ、先輩お昼ご飯のデリバリーが来たから、また連絡するね』

 

 彼女はそう言い残して一方的に通信を切った。それに対してリンは指先をぴくぴくと動かして、とても怖い目つきをしている。

 

「まあ、何だ、組織改革をすることをお勧めするよ・・・話を聞いた感じ、あそこで報告を止めていたみたいだし・・・」

「今度の議題に加えておきます。さて、この事態の対処ですが」

 

 リンは後ろに居た四人の少女の方を見る。

 

「な、なに?どうして私達を見つめているの?」

「丁度ここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々が居るので、私は心強いです」

「少なくとも、彼女達も暇そうじゃないと思うけど?」

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

 

 リンに無理やり連れられて、その戦闘地域へと行くことになってしまった。

 

「だから、俺は先生になるとは言ってないぞ?」

 

 とはいえ、連邦生徒会長が俺に対して残したあるものには興味がある。それが一体何なのかを知るためにも、この場は付き合うことにするか。

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