異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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四十一話 話し合い

 便利屋68の彼女たちは、風紀委員会に追われることがなくなったとはいえ、これまでのことがあり風紀委員会達から逃げるように居なくなってしまっていた。風紀委員会と万魔殿は発狂した風紀委員達を連れて帰っていた。そして俺たちは、場所を移してアビドス廃校対策委員会室。少し前は俺が彼女達を問い詰めていたのに対して、今日は俺が問い詰められる形となっていた。

 

「大体何があったのかは聞かせてもらったよ。それで先生?係争地帯ってどういうこと?」

 

 ホシノは小柄ながらも睨みを効かせて、まるで背後には般若がいるかの如く圧をかけてくる。

 

「まだ調べている途中だからすべてがはっきりとした情報ではないけど、それでも構わないかな?」

「知っていることを全部話してください」

 

 ノノミに言われ、俺は纏めていた資料の一部を彼女たちの前に出した。

 

「アビドス地区について何か使えそうな情報が調べている中見つけた情報だよ」

「これは、地籍図ですね」

 

 アビドス高校とその周辺以外別の色で塗られた地図を広げて、彼女達はそれに目を通していく。当然すぐに異常性に気が付いてこちらを見る。

 

「ちょっと!?先生なんなのこれは!?」

「カイザーコンストラクション、そこがアビドス地区の大部分の土地の権利を有していることを記している地図だよ」

 

 彼女達はそれがすぐには理解ができなかった。それでも彼女たちは疑問を口にする。

 

「どうしてアビドス自治区をカイザーコンストラクションが保有しているんですか、本来自治区が学校が有するものです。アビドス自治区ならアビドス高校が、どうして何の関係もないカイザーコンストラクションが」

 

 ノノミの疑問は最も。ここの常識ならば管轄の土地の権利はその学園が有しているもの、それが当たり前なのだから。けれど、アビドスは当たり前が当たり前ではなかった。

 

「過去の取引の記録とかは確認できなかったが、過去の登記簿謄本の記録から、アビドス高校からカイザーコンストラクションへと権利が移っていることは確認できた」

「どうして、なんで」

「なんでアビドスの自治区がカイザーなんかの手に渡ってるわけ!!」

 

 セリカは俺の胸倉を掴む勢いだったが、実際に掴みかかろうとしたところでよけて話を続ける。

 

「あくまで推測の域は出ないが、昔のアビドス生が君達ほどお金を稼いでいたとは考えにくい。おそらく月々の利息の返済すら滞ってしまう程度しか稼げていなかったのかもしれない」

「それじゃあ・・・」

「担保として出していた土地がカイザーに移ってしまったんだろうな。この校舎もあと一回も利息を払えなかったら銀行の手に渡っちまうってのと同じことだ」

 

 面倒なことに、未だに借金の借用書が見つけられていない。恐らく本校舎のどこかに置いて来られたままなのだろう。だから、本当に担保として土地をかけられていたのかも今はわからないものだった。

 

「どうして、そんな、なんで土地を担保に」

「仕方がないことだよ。借金をすることになった時期のアビドスのことを考えても、まともに担保として出せるものは土地だけだった。その時には備品なんてとっくに売り払ってるはずだよ」

「何を考えていたの当時の生徒会は!!あんな奴らにお金を借りるだけじゃなくて、土地まで奪われて!!」

 

 セリカが怒るのもわからなくはない。けれど、今ここで怒っていても仕方がない。

 

「その時の最善の策はそれだったってことだけだ。目前の問題をどうにかしなければいけないのは今も昔も変わっちゃいない、違うか?」

「それは、そうだけど」

「俺からしたら、どうしてここまで重要な情報が引継ぎされていないのかが気になっている。本館から分校のこっちに移った時に書類のいくつかが置いてこられたにしても、流石に情報が欠落しすぎている」

 

 借金が幾らあってどこに返済しているか、もっと後輩たちに伝えなければならない情報はあっただろう。結果彼女たちはこんなに重要な情報を知らないまま過ごしてきていたのだから、三年生のホシノですら初耳なことは表情から見て取れる。

 

「多分、おじさんたちの代を境に途切れちゃったんだろうね」

「ああ、そういえば、ホシノ先輩は最後の生徒会の副会長だったとお聞きしたことが」

「最後の生徒会?どういうことだ?」

 

 生徒会なんて学園かある間は廃校にならない限りあり続けるはず、それなのに最後の生徒会とは。

 

「おじさんも生徒会として働いてたのなんて、一年の頃で半年もやってないよ。それに私もその辺の生徒会の先輩たちとは実際に関わりはなくってさー。私が生徒会に入った時には、もう生徒会の人たちは殆どやめちゃってたから」

 

 そうか、仮に継承されてきていたとしてもホシノの目前で継承してきていた生徒会は事実上無くなった。だから、ホシノはそれを知る機会がなくなって、継承はそこで途絶えてしまった。

 

「その時はもう在校生も二桁になってたし、教職員もいない。授業なんてものは、もうとっくの昔に途絶えてた」

 

 それはもはや学園なのか・・・どこかの学園に吸収合併されたほうが・・・借金があったから無理か。

 

「生徒会室も、そうと言われなければただの倉庫にしか見えないところだったし、引き継ぎ書類なんて立派なものは一枚もなかった。ちょうど砂漠化を避けようとして、学校の建物を何度も移してた時期だったこともあってね」

 

 引継ぎなし、移転を何度もしていた。そりゃあ情報が欠落していって後輩たちが何も知らない状態になってしまうのも当たり前な話だ。

 

「そもそも最後の生徒会って言ったって、新任の生徒会長と私の二人だけだったし。・・・その生徒会長は無鉄砲で、会長なのに行内でも随一のバカで・・・私の方だって、いやな性格の新入生でさ、いや~・・・何もかもめちゃくちゃだったよ」

 

 ホシノがそういうって、一体どういう状況だったんだ。それに当時のホシノもホシノでよく生徒会に入ったな。

 

「校内随一のバカが生徒会長・・・?なにそれ、どんな生徒会よ・・・?」

「成績と役回りは別だよ、セリカ」

「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに・・・」

「セリカ、あとで勉強教えてやるから」

「わ、わかってるってば!どうして急に私の成績の話になるわけ!?一応突っ込んでおいただけじゃん」

「いや、ここで君が突っ込みを入れるのは違うわけで」

「どういうわけよ!!」

 

 重たい雰囲気はセリカの成績の話を対価に振り払われた。

 

「うへ~、いやいや、まさにその通りだよ。生徒会なんて肩書だけで、おバカさん二人が集まっただけだったからね。なんの間違いだか、生徒会なんかに入っちゃって・・・いや~、あの時はあっちこっちに行ったり来たりだったねぇ。ほんっとバカみたいに、何にも知らないままさ」

 

 そうは言っているが、ホシノの口は綻び、当時のことが楽しかったのかこれまで見てきたホシノの表情の中で一番純粋な笑顔にも見えた。

 

「まあ、昔のことを掘り返していても仕方ない。他に俺の方でも色々と調べていることはあるけれど、現状アビドス高校はカイザーに土地を狙われていることに変わりはない」

「どうして、カイザーはアビドスの土地を狙っているのでしょうか」

「そこはまだ、俺もソーカ達も調べているけど全く何が狙いなのか答えにはたどり着けていないよ」

 

 ヴェリタスの彼女たちならば答えに辿り着けているかもしれないが、まだ彼女たちの報告は何も上がっていない。だからこそ、今わかっている情報だけで手を考えないといけない。

 

「これから先もカイザーはアビドスの土地を得るためにあの手この手で嫌がらせや妨害をしてくるのは確実だ」

「「「「「・・・・」」」」」

 

 さて、ここいらで話を閉めようか。そう思って目の前の書類を片付けようとした。

 

「どうしてこんなに大事な事を知ってたのに、黙ってったの?」

 

 ホシノの問いで全員が一斉に俺の方を見た。

 

「手に入れられた情報に確信がなかったってことと、ソーカ達が手に入れた情報は非合法的手段が多い。下手に君達に伝えて混乱させることを防ぎたかった」

「そうなんですか」

「だとしても!!これは私達の問題なんだから、私達も関わらせてよ!!」

「君達の気持ちはわからなくない。ただ、相手はカイザー、しかもブラックマーケットに手を回したり君たちに嫌がらせや妨害をしてくるような大企業相手だ。こっちも慎重に手を打たないといけない」

「そんな」

「必要な時には君達の手も借りる。だから、今は大人しくしていてほしい」

 

 下手に動いて状況を悪くさせることはできない。今は少しずつ手札を増やすしかないんだから。

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