異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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四十二話 電子情報戦のプロ

 彼女達と話し合いを終えた頃、ミレニアムのヴェエリタスの彼女達から呼び出しを受けた。彼女達から俺に対して連絡が来るとなれば、あの一件しかない。すぐに途中だった仕事は片づけて、大急ぎでミレニアムへと急いだ。

 

「・・・」

 

 後をつけてくる彼女達にはどうしたものかと思いつつ。

 ミレニアムに着いてすぐに彼女達の部屋へと入るために扉を開けて、一歩踏み込んだが、その足をすぐに戻した。

 

「うお!?」

 

 部屋の中からは妙に甘い香り、エナジードリンクの匂いが充満していて、サーバーから発せられる熱気と彼女たちの汗で蒸し暑かった。それでも部屋の中へと入っていき、

 

「あ、リムル先生。いらっしゃい」

 

 まるで死んでいるかのようにチェアに体を任せている彼女たち。どうやら俺が思っていた以上に格闘していたようで、もう体を動かしたくないそんな感じがひしひしと伝わってきている。ハレに至ってはホットアイマスクを付けて熟睡している始末だ。

 

「チヒロ先輩~、リムル先生が来ましたよ」

 

 すこし大きな声を絞り出して奥に居るチヒロを呼び出すハレ。そして、部屋の奥から壁に手を当てて伝いながらチヒロは歩いてこちらに来た。

 

「ハレ、大きな声を出さないで。徹夜明けの大きな音は響くから」

「えっと・・・何徹した?」

「四徹」

「即刻寝なさい」

「報告を終えてから寝る」

 

 髪の毛がぼさぼさで全く手入れされていない状態で、目の下には酷い隈があるチヒロはまとめたであろう報告書を俺に手渡した。

 俺はそれを受け取り、フラフラしていたチヒロを近くにあった椅子に座らせて、俺も近くにあった椅子に座る。

 

「こんな状態でごめんなさいね」

「いいよ、ただ話が終わったらすぐにでも寝てほしいかな」

「シャワーを浴びたいところだけど、危ないからね」

「それは本当に危ないからね」

 

 眠気がひどい状態で水辺に行くのは本当に危ないからやめてね。

 

「それで、何が分かった?」

「ちょっと面倒なことになったともいえる」

「侵入がばれたか?」

「いや、そこは大丈夫」

 

 面倒なことになったと言われて、最初にカイザーに侵入がばれたのかと思ったが、チヒロ曰く違うようだ。であれば、一体何が面倒なことになったのかわからない。

 

「ひとまず最初から説明するよ。まず、カイザーがアビドスでやっていることについてだけど、彼等は宝探しと称してアビドス砂漠に埋もれている何かを探しているみたい」

「何か?」

「調べても何かとしか言えなかった。わかっている範囲でもアビドス地区に過去の遺物があって、その遺物がオーパーツな兵器ってことくらい」

 

 こんな世界でもそんなものがあるのかと思いつつ、何故カイザーがそんなものを探しているのか疑問が生まれる。少なくともアビドス地区の権利を買い集めていたのは、そのオーパーツを手に入れるために邪魔をされないようにするためだとも考えられる。

 

「それがどの程度の兵器なのか、なんの概要もわからなかった。あくまでそこにそんなものがあるってだけの情報だけっぽい。他にこの兵器に関する情報は私たちでは見つけられなかった」

「たったそれだけの情報であいつらはアビドス地区であれだけの行動をしているのか」

「兵器さえ手に入ればおつりがくるレベルなのかもしれないね。ただ、このオーパーツがミレニアムの別件に関わっちゃってね」

「それが面倒なことだと?」

「そう。まあ、それは一旦置いておくとして」

 

 置いておくの!?すっごい気になるんだけど!?

 

「それでカイザーPMCのサーバーにも侵入したんだけれど、どうもアビドス砂漠に拠点を作っているみたい」

「カイザーPMCが砂漠で?」

「そうみたい。多分宝探しの掘り出し部隊なんじゃない?」

 

 民間軍事会社が何故掘り出しを、掘削機械を使っていても不自然じゃないからか?それとも誰も近づかせないようにさせるための防衛網か?

 

「で、どうもカイザー以外で別の組織が関わってるっぽいのよ」

「別の組織?」

「ゲマトリア、そいつらがカイザーにオーパーツの情報提供をしているみたい。リムル先生はこの名に覚えは?」

「ないな・・・」

 

 ゲマトリア、情報戦に長けていそうなヴェリタスでも覚えがないとなれば裏で暗躍している組織なのか。ひとまずこの世界のオーパーツについての知識があるようだから、もしかしたら、俺達の世界に干渉してきた組織なのかもしれない。個人的に接触してみる価値は十分にありそうな相手だ。

 

「ゲマトリアに関しては情報提供を受けているって書類に名が書かれていただけでそれ以上は不明。今でもカイザーと関係があるかはわからなかった」

「関りがあるってわかっただけでも十分だよ」

「そう言ってもらえるとありがたいわ。次にリムル先生が知りたいと思っていたお金の動きなのだけれど」

 

 チヒロの言葉を聞き俺は息を飲む。

 

「予想通り、アビドス高校以外にも高金利で借金をさせている学園が多数あったわ。これがその地図よ」

「これは・・・思っていた以上だな」

 

 アビドス程ではなくても小さな学園たちがカイザーによって自治区を奪われて、小さいながらも地図の至る所にカイザーの手に権利が移動してしまっている土地があった。

 

「手を打つなら早めにしておいたほうがいいかも、これじゃあいつ取り返しが付かないことになるかもわからない」

「ああ、その為にも手札を急いで揃えないと」

 

 他にもヴェリタスが手に入れてくれたカイザーの内部情報に目を通していく。金の動き、表面的ではわからなかった裏の繋がりがある企業達、何処にどんな指示を出していたかの記録それらを読み込む。

 

「こうして調べてみると、カイザーが悪いことしているって知っていたことも氷山の一角で、本当に悪いことはずっとずっと水面下で起きていたのね」

「表向きにやってくるような相手なら楽だよ。本当に厄介なのはこうして水面下で動いて、気が付いた時には手遅れになっている相手だ。まだ手を打てる段階で気が付けた分、御の字だ」

 

 問題はその水面下の問題を表に出して、対処するか。相手が相手だから水面下で処理しても大したダメージにはならないよなぁ。

 

「最後にリムル先生」

「ああ、なんだ?」

「ミレニアム側の面倒事なのだけれど・・・リムル先生は蛇型の巨大兵器について何か知っている?」

「・・・知ってるよ」

 

 セリカが攫われて俺が奪還した直後現れた謎の蛇型の大型兵器。あの時はセリカを連れて逃げることを専念していたため、相手がどんなものだったのかははっきりと調べていなかったが、ここでそれを聞くとは思わなかった。

 

「あれは「デカグラマトン、その予言者の一つ「ビナー」ですよ」ヒマリ部長、来てたのなら言って」

 

 チヒロの言葉を横取りするように言ったのは、この場に新しく表れた車椅子に座っている真っ白な少女。その少女の隣には・・・過去一露出が酷い、というかあれもう胸の局部しか隠してないよね?そんな少女が立っていた。

 

「えっと、君は?」

「私の名前はヒマリ。このミレニアムサイエンススクールにおける、天才ハッカーです」

「私は和泉元エイミ、よろしく」

 

 多分キヴォトスに来て一、二を争うキャラの濃い二人に出会ってしまったのかもしれない。

 

《個体名「和泉元エイミ」から他の個体よりも多く熱エネルギーが放出されています。服装はその熱エネルギーに対して機能的な放出の為だと推察します》

 あ、痴女じゃなかったのね。高校生の痴女だったら、俺すっごい心配してたよ。

 

「俺は連邦捜査局シャーレの先生、リムル=テンペエストだ。よろしく頼む」

「こちらこそよろしくお願いします」

「その人は、ヴェリタスの部長でもあって特異現象捜査部の部長でもあるの」

「二つの部活動の部長?」

 

 部活動の兼任の話はそこまで珍しくはない。けれど、兼任している部活動の両方で部長を務めているなんて話は相当珍しい。

 

「元々ヴェリタスは私とチーちゃんで設立した組織なんですよ」

「だからチーちゃんって呼ばないで」

「ですが、あの排水溝の泥水が設立した特務組織なのですが・・・実のところ出来たのはつい最近なんですよね」

「私達がカイザーにハッキングを仕掛けてる途中にね。あとリオ会長への言い方どうにかならない」

 

 ・・・え、今のどこにリオ会長の名前の要素が?

《排水溝の泥水の部分ですね》

 同級生にひどい言われようだけれど、リオ会長は一体何をしたんだ。

 

「元々私と浄化槽に浮かぶ腐った水とでデカグラマトンに関することは調べていましたが、今回リムル先生が接触してくれたおかげで、大きく前進したのが設立の切っ掛けになります」

「そんなことになってたのか」

 

 リオ会長と手を貸してはいても、犬猿の仲なのかそれとも喧嘩するほど仲がいいのか、もはや悪口と言っていいのかわからなくなる呼び方に反応に困ってしまう。

 

「はい、今回のカイザーへのハッキングには私も協力しました。その中で、一つ気になる情報も手に入れられました」

「気になる情報?」

「ビナーが発掘地域に近づかないように、PMCが防衛していた情報がありました」

「あれから防衛していた?」

 

 ビナー、あの時俺は撤退するために極小黒炎獄を使ってどうにか逃げ切った。カイザーPMCはこの世界の銃器や兵器を使ってあれから防衛している。正直に言って、極小黒炎獄を受けて十分なダメージになっていなかったあれ相手に防衛をするなんて、被害を考えても大半のことが割に合わないと思える。

 

「はい、ただこの話はとても込み入ったものになります。それに、今のリムル先生にはほかにも解決しなければならない問題がありますよね。また別の機会でデカグラマトンに関してお話をいたしましょう。こちらに関しては私たちにもわからないことがたくさんありますから」

「そうだな・・・」

 

 わからないことが多いことを話すよりも、今わかっていることを話すほうが多くの意味がある。俺は彼女たちがまとめてくれたカイザーPMCの情報を頭に叩き込む。

 

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