ヴェリタスと特異現象捜査部の彼女達と話を終えて部屋から出ると、タブレットを開きメールボックスを確認し、新しく送られてきたメールが無いか確認する。
「ん?」
ゲヘナの万魔殿と風紀委員会の連名で一通のメールが届いていた。直近の出来事を考えると急ぎのメールだ、邪魔にならない所でメールの中身を確認する。
「日程調整が大分無茶苦茶だよ。まぁ、戦後処理とかはさっさと済ませたほうがいいけれどさ」
俺は荷物をまとめて、その足で大急ぎでゲヘナ学園と急いだ。俺がミレニアムを出た直後から、また彼女達は俺を追いかけてくる。
ゲヘナ学園に付くと、そのまま万魔殿の部屋へと案内され、部屋の中には風紀委員会のヒナと万魔殿議長のマコトの二人だけだった。加えて、俺をこの場にまで案内してくれた子にはこの場から離れるようにと言われ、部屋の見張りをしているのは他の万魔殿所属の生徒イロハ一人が請け負っていた。
「随分と・・・他人に聞かれたくないように見て取れるが」
「今回は他人に聞かれるのが好ましくない話もあるから」
「・・・そうか」
俺はソファに座り、机越しに二人を見る。
「まず、先日のゲヘナ風紀委員会の連邦捜査局シャーレの先生に対する武力行為に対して改めて謝罪する」
ヒナとマコトは頭を下げる。
「そのことは構わないって、あれくらいなら地元じゃ近しいことは日常茶飯事だ」
「そういってもら・・・え?日常茶飯事?」
「ああ」
「気になることがあったけど、今は聞かないでおくわ。被害にあった民間人に対しては、ゲヘナより賠償金の支払いを個別に行うことにして、一番の被害者である紫関ラーメンの大将とは賠償金と謝罪で同意してくれたわ」
淡々と事務的にヒナは先日の風紀委員会の一件の被害、およびそれに対しての賠償等の対応を事細かに説明していく。
「連邦捜査局シャーレに対しては、これほどの賠償金の支払いを」
俺の目の前に置かれる一枚の書類。そこには0がいくつも書かれていて、3億の賠償金の支払いが記されていた。けれど、俺はその書類をヒナ達の前に押し戻した。
「悪いけど、これは受け取れないよ」
「・・・理由は?」
「あの一軒で被害を受けた民間人、加えて便利屋68には十分な賠償は支払われている。俺自身、あの場で受けた被害は何もない。だから、俺にそれを受け取る権利なんてないよ」
実際に俺があの場で受けた被害といえば、余計な仕事が増えたことと時間が取られた程度。この程度ならば、いつものことであって慣れてしまっている。この事で子供達から賠償金を取ろうなんて到底思えないし、受け取ることなんてできない。
「リムル先生にとってはそうかもしれない。けれど、私達ゲヘナにもプライドがある、ここは一つ受け取ってもらってほしい」
「そうは言われても」
「シャーレがミレニアムから融資を受けている話と、トリニティから資金援助を受けている話は聞いている。実際のところ、まだ足りていないだろ」
だから、どうしてこの世界の学生達は耳がいいのかな?ゲヘナにも諜報部隊があることは知っているけど、だとしても耳が良すぎないかな?
「これと追加で1億、これでトリニティがシャーレに出した額と同額になる」
マコトは俺が戻した書類に加えて新たな書類を乗せて俺のほうへと戻す。
「エデン条約の一件もあるか」
「ああ、政治的意味合いも強い」
「はぁ、わかった。ここは素直に受け取っておくよ」
わざわざ人払いをさせていたのにはこうした意味もあるのだろう。シャーレはあくまでも学園間では中立機関になる。だからこそ、トリニティに多額のお金をシャーレに渡されているとなれば、トリニティと対立してるゲヘナにとって、シャーレがトリニティに傾くと考えて当たり前だ。だからこそ、ゲヘナも同額もしくはそれ以上のお金を渡して自分たちの方へと傾いてもらいたいわけだ。
「このお金は有意義に使わせてもらうよ」
二部の書類を受け取り鞄の中にしまう。
「これで、俺はゲヘナから正式な謝罪と賠償を受け入れた。これでこの一件は終わりだな」
「ああ」
「そうね」
賠償金も謝罪も受け入れた。一先ず、これでゲヘナに来た目的は果たされたが、どうやら、マコトとヒナにとってはまだ俺との話は終わっていなさそうだ。
「シャーレの先生、あなたの実力を見込んで一つ、極秘の依頼がしたい」
「極秘か、さっきのお金にはそれの意図もあったな?」
「なんのことだか」
食えないやつだな。とはいえ、一億の大金を子供達からもらうわけにはいかないうえ、態々俺に極秘で依頼を出すとなればよっぽどのことなのだろう。
「マコト、本当にあのことを伝えちゃっていいの?」
「何を今さら、ヒナもシャーレの先生がこれまでしてきた話は知っているだろう」
「そうだけれど」
俺は一体どんな依頼をされるんだ?
「”雷帝”という名を知っているか?」
「雷帝?」
雷の帝?なんだそりゃ?
《連邦生徒会の記録によりますと、ゲヘナ学園卒業生、在学期間中には鉄拳政治を用いてゲヘナ学園を治めた暴君であり、天才策略家であり、発明家であると同時に政治家と称されていました。エデン条約はそんな彼女に対して連邦生徒会長が行動を制限させるための策の一部との事です》
何者なんだ、雷帝って・・・本当に当時学生だったのか?
「連邦生徒会に残っている程度の記録程度なら」
「当時を知るゲヘナ生以外ならそれ位で十分」
「その雷帝がどうしたんだ?捜索をしてほしいのか?」
ただの捜索ならシャーレに極秘に依頼する必要性を感じられない。おそらく、彼女らが俺に依頼したいのは、雷帝にまつわる何かだ。
「捜索をしてもらいたいのはあってる。けれど、探してほしいの雷帝本人じゃなくて」
「雷帝がキヴォトスに残した遺産だ」
「遺産?そんなに膨大なお金が残されてたのか?」
策略家で発明家ならさぞかし懐は潤っていただろう、そのお金があればゲヘナの予算も一気に潤うという考えなのか。
「いや、あやつが残した遺産はお金なんかではない」
「私達も全貌を把握しきれているわけではないけれど、このキヴォトスのどこかに、キヴォトス全土のパワーバランスを大きく崩してしまうほどの兵器が放置されてしまっているの」
「あやつが作った兵器などこの世に残しておいてはいけない、ゲヘナの万魔殿、風紀委員会からの極秘の依頼は、雷帝の遺産の捜索及び破壊だ」
これはまた、予想外な依頼が来てしまった。ただでさえ、銃火器があって引き金が軽い世界なのに、そんな世界のパワーバランスを容易に崩してしまう兵器がキヴォトスのどこかにあって数も不明?ミレニアムでキヴォトスにオーパーツがあることも分かったばっかりなのに、この世界は一体どうなっているんだよ。
「事情は分かった」
「もし、雷帝の遺産が誰かの手に渡った場合、万魔殿と風紀委員会は総力を挙げて破壊と手にした者たちの抹殺に出向くつもりだ」
「・・・そうならないように尽力するよ」
雷帝にオーパーツ、ゲマトリア、デカグラマトン今日だけで新しい用語が多すぎるって。
途中まで書いたけどお蔵入りした部分(お蔵入り理由 ここでホシノ達がもう一度犯罪に踏み切らないよな
それはヴェリタアスの彼女達と話をしている最中だった。突然校舎全体に鳴り響く警報、連徹で死にそうな雰囲気になっていたヴェリタスの面々達も一瞬で覚醒し、何が起きているのか状況を把握しようとする。
「火事ですか!?」
「いや、これは火事の警報じゃないです」
すぐにチヒロとヒマリはパソコンと仮想ウィンドウを操作して、情報収集を始めていく、一方ほかのヴェリタスの面々は自分の大切なものを確保しに行っているあたり、緊急時の動き方がずいぶん違うんだな。
「ふむ、どうやら侵入者のようですね」
「今セミナーの監視カメラの映像に繋げるわ」
あっという間にセミナー側の情報を手に入れた彼女たちは、それをディスプレイに表示させ、何が起きているのかの共有をする。
「おいおい・・・」
そして映し出された監視カメラの映像を見て思わず、俺は呆れてしまった。
「たった四人でミレニアムに侵入するなんて、何を考えているのかしら」
「アビドス生徒です」
「え?」
「あの子たちアビドス生徒です・・・」
何故かホシノ達は正面からではなく、侵入する形でミレニアムへと来ていた。アビドス地区からミレニアムに来る時までは後を付けていることには気が付いていたけれど、まさかこんな手を打ってくるなんて。
「どうしてアビドスの子達がわざわざミレニアムに侵入を?」
「多分俺の後をつけてきたからだろうな・・・あの子たちは時々手段を択ばない節があるから」
銀行強盗をしてまで情報を手に入れようとしている子達だ。彼女達よりも情報を持っている俺が裏で動いていると分かれば、彼女達は俺が彼女達に話していない情報を手に入れるために動き出してもおかしくはなかった。
「一応、彼女達はミレニアムの設備は破壊していませんね。様子からして侵入経路の事前調査はしていないのにも関わらず、ここまで侵入できるなんてかなりなものです」
「借金返済に追われてるなんて勿体ない身体能力ね」
監視カメラに映っている彼女達は器用に、始めてくるはずの場所であるはずなのに人の目が少ないルートを選んで、着実にミレニアムの中心へと進んでいく。道中、警備ドローンやタレットが彼女たちを襲うが、すぐに遮蔽物の裏へと隠れて別のルートで進みだして振り切っている。
「なあ、チヒロ」
「?何かしら?」
「あの警備システムって、俺も攻撃されるか?」
「侵入禁止エリアはホワイトリストのセミナー以外は攻撃されるわね。当然先生も。もしかして・・・」
「ちょっくら、あの子らに説教をしてくる」
俺は提げていた刀に手をのせる。
「その必要はないと思いますよ?」
「え?」
「ミレニアムの掃除屋が出向いたようですから」
「それはそれで問題じゃないかしら?」
「掃除屋って、なん」
それは何なんだと聞こうとした瞬間、外から大きな爆発音が響き渡った。
「アカネがまたやったわね」
「彼女の戦い方は爆発物が基本ですから」
一体何が起きているのか疑問に思っていると、チヒロは映像を操作して他の視点の監視カメラも見せてくれた。
最初のカメラには映っていなかった場所、そこには四人のメイドが立っていた。直後、三人は走り出し、ホシノ達の元へと向かった。一人はその場に残り、しゃがみ込んでスナイパーライフルを構えて狙いを定める。
そして、彼女たちの戦闘はホシノと一人のメイドを除いてあっという間だった。シロコはあっという間に接近されて、銃を撃つ間もなく懐に入られて拘束される。ノノミは投げられた爆発物に対処しきれず、爆発に巻き込まれてダウン。セリカは狙撃により何もできずにダウンだ。
一方、残されたホシノとメイドの中で一番小柄だった子との一騎打ち。ホシノは盾を構えつつ溝からショットガンを出して撃つが、メイドは左右にすばやく移動して狙いを絞らせない。多少の被弾はしても無視して、間合いを詰めてホシノに飛び掛かる。