異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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四十六話 私達にできること

 私達が今まで必死こいてどうにかしようとしていたアビドス高校の借金問題も、先生が用意したお金であっさり解決してしまった。一応、今でも三億という借金が残っていることになっているが、元々あった借金は約九億。既に借金の大部分はリムル先生が肩代わりしてくれたのだ。それだけでなく、貸主は連邦捜査局であるため、最悪私達がこの借金を返済しきれなくても問題ないのだ。

 

「カーテンは閉めてあるね」

「はい、盗聴器もありません」

 

 私達は今、アパートで暮らしているシロコちゃんの部屋に集まっている。所謂女子会のような形ではあるけれど、私達がこれからする会話はそんな可愛らしいものではない。

 外から誰にも見られないように窓という窓を全員で調べて、カーテンを閉めて遮断する。そして盗聴器が仕掛けられていないかを調べていく。

 外から誰も私達の会話を聞いていないことを確信すると、小さな声で話せるようお互いの体が触れ合う程近くに来て話し合う。

 

「ねぇ、別に会議をするだけなら学校でもよかったんじゃない?わざわざシロコ先輩の部屋まで来て」

「セリカちゃん、これから私達がするの会議は先生に知られないようにしないといけないんだから」

「そうだけどさ、ここまでする必要があるのかな?」

 

 セリカの言う通り、誰かに聞かれないようにするための会議ならば駅前のカラオケボックスや貸し切り部屋等、他人が容易には入れないような場所でやればよく、ここまで警戒してやる必要はない。けれど、ここまで警戒したうえでやっているのは相手が相手だからだ。

 

「あの人は一体どこで聞き耳を立てているかわからないし、部下がどこに隠れているかもわからない」

「ブラックマーケットで会ったソーカさんもリムルさんの部下のようですし」

「あそこで情報収集をできるような人です。相当腕が立つ方のはずです」

 

 先生は私達よりも圧倒的に強いはずなのに、その力を使ってカイザーやブラックマーケットなんかに物を言わせるようなことはしない。本人は平和主義をうたっているが、もし相手が自分に敵になるようならば容赦はしない。今の先生にとってはカイザーは敵ではないのか。

 

「それに、今回私達が話すことは先生にとって都合が悪い内容も含まれているからね」

 

 私達が先生を呼ばずに、彼の部下にも話を聞かれないようにしているのはそういうことだ。

 

「それじゃあ、皆。単刀直入に聞くけれど、皆は先生、リムル=テンペストのことを信用している?」

 

 ホシノが切り出したその質問。それに全員はすぐに答えることはできなかった。

 

「私は信じていいと思います」

 

 最初に答えたのはアヤネだった。

 

「確かに最初は怪しかったですが、私達の救援要請に答えて先生なりにやれることをやってきてくれています。セリカちゃんが誘拐された時も率先して捜索をしてくれていましたし、アビドス高校が抱えている問題にも対応してくれています。助けを求めておいて、私達が先生を信用しないなんて、そんなことをしていいんですか?」

 

 リムルが彼女達にアビドスのためにしてきたことは、十分彼女達のためになっていて、リムルが居らず問題の対応をしなければ、今はずっとずっと酷い状況になっていてこの場の誰かが欠けることになっていただろう。そこまでしてくれたリムルのことを信用しないなんてことをしていいのか?

 

「そうだよ。リムル先生を信用するべきだよ。私が死ぬかもしれなかったのに、リムル先生は魔法を使ってまで助けてくれたんだから」

 

 次に答えたのはセリカだった。彼女は自分の命の危機に、家族とも言えるほど大切な仲間達と二度と会えなくなるかもしれない中、リムルが可能な限り隠そうとしていた魔法を使ってまで助けてもらった。この場の誰よりもリムルに対して恩義があるのだ、そんな彼女がリムルを信用しないなんてできなかった。

 

「本当に、信じていいのでしょうか」

 

 信じるべきと主張した二人に対して、疑心を示したのはノノミだった。

 

「確かにリムル先生は私達のために行動を起こしてくれました。けれど、本当にあれは私達の為にしたことなのでしょうか」

「どういうこと?」

「結局はリムル先生が私達を利用するために、今は私達に良い印象を持たれるように行動をしているんじゃないでしょうか」

 

 ノノミはこの場で誰よりも裏切ることを知っている。期待させておいて結果が振るわなければ容易に切り捨てる。それをまじかで見てきてしまったからこそ、信じたいからこそ信じられなかった。

 

「ん、私はリムル先生を信じる」

 

 シロコは初めから信じないという選択肢はないように言い切った。

 

「どうしてですか?」

「リムル先生は私達よりもずっとずっと強い、そんな人がわざわざ面倒な手をする理由がわからない。私達を利用したいなら初めから利用しているはず」

「シロコちゃんらしいね」

 

 根は実力主義なシロコに他の子たちは苦笑いをした。

 

「ホシノ先輩はどうなんですか?」

「うへ、おじさんは?」

 

 ここまでホシノ以外の全員が自分の主張を述べている。ノノミ以外は信じると言っていたが。

 

「この会議を主催したのはおじさんだよ?正直、信じられないかなぁ」

「どうしてですか?」

「やっぱり、私達の知らないところで何かをやっている所かな。私達の問題をあの人は何も言わずに解決していってる、私達の問題なのに私達は何も知らないんだよ。この前のお金だって、結局私達が知らないまま、先生がいろんな学園からお金を貰って用意してたんだから」

 

 ホシノの言う通り、リムルは彼女達からしたらかなりの秘密主義に見えてしまっている。事態がいい方向へと進んでいても、同時に彼女達の不信感を買ってしまっている。

 恩義はあってもそれを上回るも不信感があった。

 

「今だって、先生が何をしているか答えられる?」

 

 その問いには誰も答えられなかった。先生だから先生としての仕事をしているのだろう。そういう憶測はあっても、裏で何か動いているかもしれない。

 自分達の問題なのに全くわからず、自分達が知らなければいけないような情報を先生は、自国の諜報部隊を使って自分達が手に入れられないような情報も手に入れたうえで、黙っている。それがさらなる不信感を煽っていた。

 

「それに、先生がいつまでもアビドスに構っていられるとは考えにくい。一校の先生じゃなくて、キヴォトス全域の学園の先生だから、私達アビドスの為だけに仕事なんてしていられないよ」

「ですが、私達には優先的に」

「それだって他の学園も同じだよ。あくまで、私達がその中でも一番危ないからってだけで付きっきりになってるだけ。いつ、この支援がなくなってもおかしくないんだよ」

 

 ホシノの言う通り、自分達がリムルがここまで手厚い支援をしてくれているのも、自分達の学園が相当やばいところまで入ってしまっているから、それをどうにかするためにも他の学園への支援と比べても圧倒的な支援を付きっ切りでやることでどうにかなっている。そして、その支援はいつ、どのタイミングでなくなってしまってもおかしくはない。加えて、アビドスがここまで持ち直せたのは、全てリムルの支援があったからで、自分達は何もしていないのに等しい。

 

「この支援がなくなったら、私達はどうするの?」

 

 これまでの通り賞金稼ぎをしたりアルバイトをしたりしてお金を稼ぐ?カイザーにアビドスの土地を取られているのにそんなことをしていて何の意味があるのか。借金がなくなったアビドス高校の私達に一体何が残るのか。

 

「これは私達の問題でもあるから、私達も動かないとだよ」

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