異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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四十七話 これからのどうすれば

 アビドス高校の借金問題は事実上解決したといっても過言ではない。けれど、借金問題が解決した所で今のアビドス高校は他の問題も山積みとなっている。今からアビドス地区を復興させるにしても、土地の大部分の権利はカイザーに移ってしまっていて、アビドス高校には全くと言っていいほどお金がない。先生が用意してくれたお金の大部分も借金の返済に使ってしまい、新しく何かを始めるためのお金は手元に残っていない。結局、今のアビドス高校にできることなんてなにもない。

 

「あれ?リムル先生は?」

 

 廃校対策委員会室に入ってきた直後のシロコはそう聞いてきた。

 

「リムル先生なら、今日は連邦生徒会で仕事をしているそうです」

「なんやかんやでずっとアビドスで仕事をしてたからね。毎日引いちゃうレベルで仕事をしてたのに、連邦生徒会にもまだ仕事があるって・・・仕事のし過ぎで倒れないのあの人?」

「リムル先生曰く、自国の仕事もやっていてあっちでやる面倒ごとよりはずっと楽と言ってましたけど」

 

 ほぼ四六時中、私達が誘わなければアビドス高校にいる間はずっと書類仕事をしている所を見せている。仮にアビドス高校を離れても他の学園に出向いたり、他の仕事をしている。けれど、先生はその仕事を自分一人で片づけたうえで、更に仕事を持ってきて片付けている始末。

 

「リムル先生っていつ寝ているのでしょうか、夜中にモモトークを送っても返信してくれますが」

「私達が見ていないところで寝ているんですよきっと」

「そうね、流石に夜の間は寝てるでしょ。睡眠時間三時間とかって言いそうだけれど」

「流石に寝てると思いますよ」

 

 いくらキヴォトスの民でも寝なければ体に大きな影響をもたらす。外の世界から来た先生もその例外ではないはず、だから先生は自分達の知らないところで休憩して睡眠時間をとっているはず。そんな憶測の話をしていた。

 

(先生は本当に一体いつ寝ているんだろう)

 

 この中で先生が夜中も仕事をしていることを知っているのはホシノだけだった。そんなホシノはふと先生の日ごろの活動を振り返った。

 放課後、私達が家へと帰るのを見届けてから仕事を続ける。何処かに向かうこともあれば、アビドス校舎に籠って仕事を続ける。仕事の内容は遠目では確認できず、自国の仕事と言うのは私達から隠す。

 籠って仕事を続けて二十二時頃、監視をしている私に対して寝るようにと言ってくる。言って来るだけで、私がそのまま先生のことを見ていても特に私に対して何か言ってくることはなく、妨害してくることもない。そして、先生はアビドス高校を出てゲヘナ地区へと向かった。それからしばらく先生はアビドス地区には戻ってこず、明け方にはアビドスへと戻ってくる。聞いた話ではゲヘナの風紀委員長ちゃんの仕事を手伝いに出向いているとか。

 日中はどこか別の学園に向かうか、アビドス高校に残って仕事をしている。改めて考えてみれば、先生はほとんどの時間を仕事に費やしている。それだけの時間を仕事に費やしても毎日のように新しい仕事が舞い込んできていることを考えると。

 

(あれ、先生ってすっごいブラックなところで働いている?)

 

 先生の仕事の効率が良いのか悪いのかは仕事内容を知らないから判断できない。それでも毎日のように大量の仕事を片付けていると考えれば、異常と言えるだろう。最初のうちは連邦生徒会で不祥事が起きたばかりで仕事が多いのかとも思っていたが、落ち着いてきたと思える今でも最初のころと全く変わらない仕事量をこなしている。いくら大人といえど、大人だからという一言で済ませるのは無理があるように感じた。

 そのうえで、先生は自国の仕事よりは楽だと言っていた。国王と言えど、毎日徹夜上等の仕事量をこなしていて楽ってどういうことなのだろうか。

 

「そういえば、リムル先生がこの前”やっぱり紙って良いな!木版より圧倒的に薄いし軽いから持ち運びやすいし嵩張らないよ。うちでも日常的に紙が使えるように量産体制を作りたいよ”って言ってたんだけど・・・さすがに冗談よね?」

「それは・・・どうなんでしょうね」

 

 国王なのに労働環境は酷いのかもしれない。

 

「まぁ、リムル先生はいませんけれど、皆揃いましたし会議を始めましょう」

 

 アビドス廃校対策委員のメンバーは揃っている。

 アヤネはホワイトボードを持ち出し、私達は机と椅子を動かして囲って会議ができるようにして、会議を始める。

 

「今回の議題は、これからのアビドス廃校対策委員会の方針です。これまで私達アビドス廃校対策委員会の方針は借金返済のために様々な方法で稼いできました。ですが、この前の連邦捜査局シャーレの融資により、カイザーローンからの借金は連邦捜査局シャーレへの事実上借り換えとなりました。また、同時に約十一億の融資のうち返済に必要な額は三億、約五億の減額も入りました」

 

 アヤネはこの前あったお金のことを話し始める。こうして聞いてみると、先生は容易に八億のお金を手放している。国王だからお金に余裕はあるのか、お金に対して頓着はなく、シロコとノノミが食事に誘えば一緒に出向き食事はおごってくれている。

 

「ですが、私達にはまだ三億の借金が残されていることには変わりありません。加えて、私達が直面している問題は借金だけではありません」

「え?どういうこと?」

 

 借金以外に何か問題があったっけと言わんばかりに間抜けな顔をセリカちゃんは晒す。

 

「これまでの返済能力を考えれば、約四年程度で返済を完済できる見込みです。加えて、これまであったヘルメット団の襲撃の減少が見込めます。現にこれまでのヘルメット団の襲撃ペースから考えても、間隔が開いています。これならば想定よりも早く完済ができると思われます」

 

 借金が返済できる。それができることに問題はない。けれど一体何の問題があるのか。

 

「問題は借金を完済した後です、私達はこれまで借金返済を目標として活動していましたが、これからは借金の返済を終えた先を見据えなければいけません」

「えっと、借金が返済が終わったら・・・どうすればいいのかな?」

 

 これまで私達は借金の返済の為に活動をしていた。けれど、借金の返済を終えた先、それのことは一度も考えたことがなかった。当たり前だが、私達が在籍している間に借金の返済が終わるなんて考えたことなんてない。

 

「今までのようにお金を稼いでいちゃダメなの?」

 

 シロコの問、確かにこれからも私達はお金を稼いでいくことは確実だ。けれど、それだけではだめだ。

 

「確かにお金を稼ぐことも重要です。けれど、ただお金を稼ぐだけではだめです。現在のアビドス地区の大部分はカイザーに権利を奪われている現状です。これから先どうやって土地の権利を取り返すのか、再びカイザーから借金をしないようにするためにどうするのかを考えなければなりません」

 

 これまでのままいけない、かといって私達がこれまでの何かをしてこなかったから、今更何ができるのかわからない。そもそも、たった五人の私達が今さらどうにかできる案が出ていればアビドスはこうもなっていなかったはずだ。

 

「カイザーが保有しているアビドス自治区の権利を取り返すのは容易なことではありません。おそらく、余程の事がなければアビドス地区の権利を売りに出すことはないでしょう」

「じゃあ、アビドス地区はもう取り返せないってこと?」

「可能性は低いと思います。過去のアビドスの生徒会によって交わされた契約ですので、金利に違法性はあれどほかの部分に違法性はありません。現状私達が土地の権利を取り返すのは難しいと思います」

「じゃあ」

「カイザーを襲うなんて馬鹿なことは言わないでくださいね。シロコ先輩」

「・・・ん」

 

 やばいことを口走りそうになったシロコに対してアヤネは先手を打つ。

 

「取り返せなくとも、これ以上アビドスの土地をカイザーに奪われないようにする手を考えるべきです」

「そのためには、砂の問題を解決しないとですよね」

 

 毎日のように積もっていく砂、先生がこちらに来た直後、先生の何らかの手によって積もった砂を除去してくれたが、それからかなりの時間がたって再び砂は積もっていっている。過去のアビドスが借金した原因もこの大量の砂だ。この問題をどうにかできなければ、アビドスはまた借金することになるだろう。

 

「リムル先生に聞けば何かいいアイディアはあるでしょうか」

「どうでしょう。リムル先生が住んでいたところが砂漠地帯なら何か手掛かりになることを聞けるかもしれませんが」

 

 そのリムル先生はこの場にいない。そして、まじめな会議はここまでだった。そこからはいつものように、不真面目な会議が始まった。 

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