異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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第53話

 離れていく黒服を見届けて、ホシノがどうしてこんな契約をしてしまったのかを考える。

 黒服がホシノと交わした契約内容の全貌をわかっていない。けれど、黒服がカイザーとの関係を切ってまで俺にカイザーの内部情報のリーク、アビドス校舎再建の無償協力をしてまでおつりがくる何かを黒服は手に入れられる。それがホシノのことなのだろう。

 黒服がホシノを狙う理由はホシノが持つ膨大な神秘、それを黒服は狙っていて研究材料にしたい。だからこそ、ホシノの身を自由に研究できる状態にしたい、その為にはホシノが協力的で反抗されないようにしなければいけない。だから、アビドス校の未来の為に、ホシノは自分の身を差し出してしまったのだろう。

 

「リムル先生」

「わかってる。どうにかして取り返す」

 

 どうやってホシノを取り返すべきか。少なくとも黒服とホシノが交わしている契約ですでにホシノ身柄は黒服の手に渡っていると考えるべきだろう。無理矢理実力行使で黒服からホシノを奪い返してしまってもいいかもしれないが、後々面倒なことになる。

 黒服、あいつの実力が計り知れないうえ、ゲマトリアの組織の規模が分からない。カイザーの様に裏からキヴォトス全域に影響を及ぼせる程のものなのか。少人数の小さな組織なのか、現状持ちうる情報では判断できない。

 

《解析鑑定結果から戦闘能力は皆無です》

 

 戦闘面では俺が過剰に上回っているが、武力で解決してしまってはホシノをちゃんと取り返せたとは言えない。黒服の土俵、契約の中で黒服がホシノと結んだ契約を無効にさせなければいけない。

 けれど、一つ問題があった。時間が圧倒的に足りない。

 明日の朝方には連邦捜査局とSRTでカイザーに強制捜査を行う。黒服がこの情報を把握しているかしていないかはわからないが、俺は明日の朝方から昼頃までは強制捜査に参加しなければならず、他のことに手を付けられなくなる。その間にホシノの身に何かがあれば俺がすぐに向かうことはできないのだ。ソウエイが傍に居るためよっぽどのことは起こりえないとは思うが、確実に対応に遅れは生じてしまう。

 ホシノのために使える時間は今日だけ、どうやって取り返すべきか、シエルと手元にある情報でどうするべきか思考加速の中で策をめぐらせる。

 

「ん?」

 

 シロコの耳がピクリと動かして、遠くの方を見る。何かに気が付いたのか、そちらの方に耳を澄ませて音を拾おうとする。

 

「銃声がする・・・」

 

 銃声、またヘルメット団や不良集団が喧嘩を始めたのか、誰しもが最初はそう考えた。けれどそれはすぐに違うことがわかった。

 銃声の数が突然増えた、そして同じような銃声が同じ感覚で鳴り響いている。銃声以外の音も交じっていき、銃声が聞こえてくる方からは黒い煙が上がり始めている。

 

「!?おいおい、あれ火災じゃないか!?」

 

 火災が起きているとなれば色々と話が変わってくる。シロコ達もあそこで何かが起きている事、そして銃撃が起きていることはわかっている。すぐに全員で荷物を纏めて煙が昇っている場所へ俺らは急ぐ。

 

 少ない街の住人たちが泣き叫びながら走っていく流れを逆流していき、問題の場所へと向かっていく。

 

「リムル先生、これって」

「ああ、むしろ俺にとっては慣れた方かもな」

 

 この世界では銃撃戦は日常的に行われている、だからこそ隣で銃撃戦が起きていても当たり前のように受け入れて、隣を素通りしていく世界、そんな世界の住人が逃げ出す程の事が起きている。

 この世界では普通ではない、けれど俺にとっては慣れてしまった状況。住人達が死の恐怖を覚えて走っていく様子は、俺には慣れてしまった光景なのだから。

 人の波を抜けると、ただでさえ人の少なく廃れていた都市部は廃墟の様に建物がボロボロになり、看板は落ちて、大型モニターには穴が開いていた。そんな中、隊列を組み前進しながら銃声を響かせているカイザーPMCの兵士の姿がそこにはあった。

 

「はぁ、そのうち強硬策を取るとは思っていたが」

 

 カイザーPMCが民間人に銃口を向けて引き金を引いていた。おまけに街路樹や街頭、フェンスや建物など進行に邪魔なものは次々となぎ倒しながら進軍していた。

 

「ちょ!?なによこれ」

「セリカ、落ち着け。面倒なことだが、ここはカイザーが土地と建物、施設の権利を持ってる常陽だ」

 

 セリカは声を荒げようとするけれど、俺はそれを止めさせる。

 本当に権利というものは面倒くさい。ここでカイザー相手に俺らが攻撃を仕掛ければこっちの方が悪くなるのだから。

 

「武器は提げておいてくれ、先制攻撃はカイザーにさせる」

 

 シロコ達をその場に留まるようにハンドサインと指示を出し、進行しているカイザーたちの前に俺は立つ。

 カイザーPMC兵士たちは俺の存在に気が付いて銃口を俺へと向ける。けれど部隊長なのかこの場に居るPMCの指揮を執っているであろうオートマタが指示を出し、銃口が向けられたものの引き金は引かれなかった。

 

「連邦捜査局シャーレの先生をしているリムル=テンペストだ。カイザーPMCとお見受けするが、市街地内での大規模な武力行使及び一般市民への傷害、負傷者多数、これについて説明を願いたいが、責任者はどこにいるかな?」

 

俺の質問に答えたのは、先程攻撃を止めるように指示を出したオートマタ。

 

「ここはカイザーが所有する土地だ。事前に退去命令を出している、それにも関わらず居座り続けた住人に強制的に退去してもらっているだけだ」

「強制退去ね、だとしてもここまでの武力行使をするのは話が違うんじゃないか」

「事前通告はした。それに退去しなければ解体工事に巻き込まれるともな」

「安全確保をせず、一般市民に被害が出ると分かっていて解体工事を進めるのはどうなんだ?それに明確に日付を告知しなかったのはどうかと思うぞ?」

「ここはカイザーの土地だ、ここで私達がどうしようが私達の勝手だ」

「キヴォトスは法治国家・・・いや、法治学園か?まぁ、法が第一だ、お前達の土地だろうが、法が第一だ」

「連邦捜査局シャーレには企業と一般市民との揉め事に干渉する権利はないはずだ」

「アビドス学園近郊での揉め事はアビドスが無関係とは言い切れないうえ、シャーレには何に干渉してはいけないなんて条文はない」

 

 お互いにああ言えばこう言う。

 

「連邦捜査局シャーレから通告する、一般市民への被害が確認されているため、直ちに活動を停止するように」

「ならばカイザーPMCはお前たちに通告する、即刻カイザーの所有地から退去するように、もし退去しないのならば相応の武力を行使する」

 

 お互いににらみ合う。

 

「退去しないのならば、お前達!!撃て!!」

 

 指示が出た瞬間、PMC兵士たちは引き金を引き銃声を鳴り響かせる。

 俺に対して飛んでくる無数の弾丸、けれどそれは俺の元へは届かない。そして、つい先ほどまで俺と話していたPMC兵士の頭部は胴体から離れていた。

 

「え?」

「は?」

 

 PMC兵士側から何が起きたのか理解ができていない声が聞こえてきた。

 俺は落ちていく兵士の頭部を掴み取り、他のPMC兵士の方へと向かってそれを投げる。

 

「連邦捜査局シャーレの先生をしている俺に銃撃を行った、それの意味が分からないなんて言わないよな」

 

 一瞬のうちに抜刀した刀をPMC兵士たちに向ける。

 

「最終警告だ、今すぐにこの場所から失せろ」

 

 最終警告をするが、その警告むなしくPMC兵士達は俺に対して引き金を引いた。

 

「警告はしたぞ」

 

 俺は一太刀で目の前に居るPMC兵士達、全てを破壊した。

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