異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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第一話 それなりに加筆修正しました。


五十五話

 カイザーが実力行使という手を打ってくるのは予想外だった。ここまでアビドス高校を追い込むことができれば、一年と経たずにアビドス高校の存在はなくなっていたはずだ。いくらシャーレの権限でもここまでボロボロになってしまった学園を再建させるのは難しい。だから、あとは持久戦へと持ち込むものだと思っていた。けれど、カイザーはここに来て実力行使をしたのだ。

 実力行使をしてまで事を急ぎたい事情がカイザーにあったのか?黒服が協力関係を切って、外部に兵器が眠っている情報が渡るのを嫌ったのか?考えてもどの理由がカイザーの急かさせたのかわからない。

 わからないことがあっても、一先ずわかっている事から片付けていく。立場上俺はカイザーの問題を急いで解決しなければならず、ホシノの一件は後回しにしなければならない。その事をシロコ達は理解してくれて、シロコ達はホシノの一件の解決に動いてくれた。

 

(ソウエイ、ソーカにシロコ達を頼む)

(御意)

 

 俺とソウエイとで繋がっている一本の糸を伝わせ思念伝達で指示を出す。この世界ならばソーカ一人でも十分すぎる護衛になってくれる。ソウエイも分身体で黒服の追跡とホシノたちの護衛とどちらもしてもらっている。シロコ達の身の安全は大丈夫だろう。

 鳴り響く銃声の発生源へと向かい、先程相対したカイザーPMC部隊よりも大規模な部隊を見つけ、彼らの前に立ち塞がる。

 

「連邦捜査局シャーレの先生、リムル=テンペストだ。カイザーPMC諸君に忠告する、先程連邦捜査局シャーレに対して敵対的行動が確認できた、直ちに戦闘行為及び破壊行為を止め撤退しろ。もししなければ、連邦捜査局シャーレ及び連邦生徒会への敵対行為とする」

 

 一応先制はせず、こいつらに忠告をする。最も、こいつらにこの忠告が意味がないことはわかっているけれど、忠告をしないでやった場合後々面倒なことになる。

 カイザーPMC兵士達の動きは止まるが、引き金には指を掛けたまま。臨戦態勢のままであることに変わりはない。

 そんな兵士達を掻き分け・・・いや、兵士達が自主的に動き道を作り兵士達よりも大柄なオートマタが現れた。

 

「これはこれは、シャーレの先生お初目にかかる」

「お前は・・・カイザーPMCやカイザーローンを統括している理事だったか?」

「ああ、その通り。私の事を知っていてくれたのだな」

「まあな」

 

 まさか中間管理職自ら戦場に出てきてくれるとはな。

 

「ならこの一件の責任者はお前ということでいいんだな?」

「確かにカイザーPMCの兵士達に指示を出しているのは私だ」

「そうか。こちらからの要求はただ一つ、直ちに戦闘行為と破壊行為をやめろ」

「それは無理な相談だな」

 

 互いに顔を見て表情をうかがう。けれど、俺は表情に出さず、オートマターの表情なんて変化がわからない。

 

「交渉決裂か・・・」

 

 こいつらがまともに交渉に乗ってくれるとは思っていなかった。だから、俺は柄に手を乗せる。

 

「ここで手を引いてくれるならばそこまでしなかったが仕方がない」

「貴様が強い事は話に聞いているが、たった一人でこれだけの人数を相手にするのは無謀だとは思わないかね?貴様も命は惜しいだろ」

「あいにく、こっちはもっと多くの兵士を相手にしたことがあるからね」

 

 カイザー理事は自分の勝ちを疑っていない。様子からして黒服は俺のやっていたことをこいつに伝えていないのか?それとも、俺のことを過少評価しているのか。まぁ今となってはどっちでもいいことか。

 

「戯言を、貴様一人でなにができるというのだ?第一、ここは我々カイザーの」

「その問答はさっきやった。連邦捜査局シャーレは戦う場所を選ばないんだよ」

「・・・まぁよい。ここでシャーレの先生を倒せるのならば儲けものだ」

「その選択を取るとどういうことになるかわかっているよな?」

「もちろんだ」

 

 カイザーが手を挙げる、それが発砲の指示となり次瞬間には銃声が鳴り響き、カイザーPMC兵士が俺を狙って銃口を向けて引き金を引いた。

 

「遅いんだよ」

 

 銃弾は確かに早いかもしれない、弾速は普通の人の目では見ることはできない。ただ、俺の前では遅すぎる。

 この世界では銃が基本的な武器なせいで、基本的な戦い方はどの相手も変わらない。撃ち出された銃弾は多少のずれはあれど基本的に直線的で攻撃を予測しやすい。そもそも対物ライフルの強力な弾丸、RPGやグレネード等の爆発物でも俺に十分なダメージを与えることはできないのだからよける必要もない。

 思考加速により世界がゆっくりと進んでいく中、俺は体を動かしてゆっくりと進んでいく銃弾を避けることもなく、最短距離でカイザーPMC兵士の元へと近づいていき、胴体を切断する。そのまま近くに居た奴の腕を肩から切り落とし、また別の奴の頭を鷲掴みにして隣に居た奴にぶつける。

 一連の動きを終えた後でも、最初に撃たれた銃弾はまだ空中で進んでいて、切断された部分はまだ自由落下を始めたばかりのまま。これならカイザーPMC兵士達全員が何が起きているのか認識できる前に全てが終わるだろう。

 瞬く間にカイザー理事を囲っていた兵士達は全てを無力化する。内部のメモリ等は破壊していないため、部品交換さえすればこいつらは何事もなかったかのように動ける。おかげで、オートマタ相手ならば武器を向けるのが楽だ。

 

「な!?何が起きた!?」

 

 カイザー理事にとっては一瞬の出来事、自分は発砲の指示をした、その次の瞬間には周りに居た仲間が全滅している。何が起きたのか理解できるわけがなかった。

 

「それを理解する必要はないよ」

 

 カイザー理事の背後から剣先を突き付ける。

 

「い、いつの間に?!」

「いつだって良いだろう?今のお前にとってそれは些細な問題なんだから」

「ま、まさかお前がこれをやったのか」

「他に誰がいるんだ」

 

 この世界では理解しがたい出来事ではあるが、他に俺以外にだれができるというのか。

 

「さて、色々と教えてもらいたいことがある」

「ふん、それで勝ったつも」

 

 カイザー理事は懐に仕込んでいた銃を振り返りながら引き抜き俺に向けようとする。

 

「銃が無駄だってことを学習しろよ」

 

 俺にその銃口が向く前に銃身は切り落とされ、カイザー理事の手に残ったのはグリップとトリガーだけだった。

 すかさず、剣先をカイザー理事の首下へと差し込む。

 

「一つ分からないままのことがある。何故今日襲撃を決行した?アビドス校舎の崩壊がお前達が原因なのはまだ推測の状態だが、アビドス校舎が崩壊していることは耳に入っているはず、このままアビドスが廃校になるのは時間の問題だった。それなのにどうして襲撃を決行した?俺という存在が居ることも分かっていたはずだ」

「シャーレの先生が居る以上、他の手でアビドス校の廃校を防ぐ可能性があったからだ。それに、これ以上時間と費用をかけられていないのだよ」

「あ~、上にいい加減結果を出せって言われてる感じ?」

「・・・」

 

 沈黙と目をそらした。そうかこいつ中間管理職だったな、上と部下に板挟みになって、上手くいかない事業の責任を一人取らされている・・・もしかして砂漠のお宝探しってこいつの左遷か?

 

「もしかして左遷・・・」

「言うな!!」

 

 うん、大変だな。

 さて、こいつが事を急いだ理由は俺という不確定要素がどんな影響を起こすかわからなかった事に加えて、上からこれまで成果らしい成果を出せておらずいい加減成果を出さなければ立場が危ういから直ぐに成果を出したかったから多少のリスクを取っても襲撃の実行に移したか。

 

「ならば黒服とはどういう関係だ?」

「黒服だと!?あやつは小鳥遊ホシノが退学したと一方的に告げて勝手にカイザーの内部資料を持っていきおった!碌な資金も伝手も無いのにカイザーを裏切りおって」

 

 黒服に資金がない・・・か。背後がわからないけれどこれは使えそうだな。

 

「なるほどね。黒服とカイザーは協力関係だとはわかっていたが、裏切られていたか」

 

 黒服がカイザーとの関係を切ったことに間違いはなさそうだ。

 それにしても、どうしてこいつが俺の質問に簡単に答えているのか、こういう奴なら最後の最後まで威勢を張っていそうな気がするけれど。

 

《上空より大型の飛行物体を確認しました》

 

 疑問に思ったところでシエル先生が万能探知に飛行物体が引っ掛かったことを伝えてくれた。なるほど、これがカイザーがこうして素直に答えていてくれた理由か。

 プロペラが風を切る大きな音が聞こえてくる。それが聞こえてかカイザー理事は俺が突き刺していた刀を掴み無理矢理引き離して、俺から距離をとる。

 

「ははは!!馬鹿め!!時間稼ぎだとも気が付かずに!!これぞ我がカイザーが新しく開発した」

 

 上空から来たそれは無駄にでかい何かをリリースしカイザーの傍に落とした。

 

「だから、勉強しろよ」

 

 それは飛び上がった俺によって上空で叩き切られ真っ二つになった。

 

「は?は?はぁぁぁぁ!?」

 

 カイザー理事は何が起きたのか理解できずに大きな声で荒げる。というかスピーカーであそこまで声を荒げることができるんだな。

 

「ありえない、ありえない!?たかが刀で何故我らカイザーの最新鋭兵器ゴリアテを両断できる!?」

「俺の大切の仲間が打った刀がそこらの刀と同じわけがないだろ・・・って言ってもこの世界の奴らにはわからないか。さぁて、もう対抗する手段はないか?」

 

 カイザー理事の前に立ち、これ以上何かされても面倒な為四肢を切断した。

 

「これからお前を捕虜とさせてもらうよ?まあ、どうせトカゲの尻尾切りで捕虜としては使えなさそうだけど」

 

 胸元を掴み持ち上げてカイザー理事の顔を見るが、何故か無反応だった。

 

「ん?あれ?おーい?」

 

 もしかして気絶したかと思い顔をぺちぺちと叩いてみるが反応はない。

 

《データの送信記録が確認できました。四肢を切断された時点で人格データを転送して逃走したと思われます》

「え、何その逃走手段あり?」

 

 どうやら逃げられてしまったみたいだ。

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