「もしもし、こちら連邦捜査局シャーレの先生、リムル=テンペストです」
鳴った受話器を取り、定型的な言葉を言って相手の言葉を待つ。
『あっ、本当にでちゃった!ど、どうしよう!?』
受話器越しに聞こえてくる声は少女のもので、元気一杯ではあるものの、焦りを感じさせるものだった。あと、どこかで似たような声を聞き覚えがある気がする。電話の性質上、実際の声じゃなくて近しい声になるだけだから。
『落ち着いて深呼吸デス委員長!スー!ハー!』
『わ、分かった。すぅ、はぁ……』
また別の少女の声が聞こえてくる。できれば、電話をかける前に落ち着いてから初めて欲しいのだが。相手が少女ならば、こうした経験がないのかもしれない。
『えっと、もしもし!その、こちらは…シャーレのリムル先生のお電話番号で、お間違いないでしょうか?』
「はい、合っていますよ」
『あ、合ってた!良かった……』
一応最初に名乗りはしていたが、緊張のあまり聞き逃してしまっていたのか。
『……じゃなくて!すみません、その……』
「呼吸が落ち着いてからでいいよ。落ち着いたら要件を言ってくれ」
『ありがとうございます。……よし、改めまして、お久しぶりです、リムル先生!!百鬼夜行のシズコです』
久しぶりで百鬼夜行のシズコ?え~と……ああ、そうだ。こっちの世界に来て、お礼で電車賃をもらった子だ。お祭りを頑張っていたっけか。
「ああ、君か、前に話したのは先生になる前だったから」
『本当に驚きましたよ?お礼で電車賃を渡した相手が、次の日に先生になったってニュースに出ていたんですから』
「まあ、そうだな」
何者ではない外の世界の大人が、翌日にはキヴォトスで強権を持つ大人になっているとなれば、この世界の住民ならば、誰だって驚くだろう。
「それで、何かあったのか?」
『あ、いえ、何かあったわけではないのですが』
どうやら何か問題が起きたのを理由で電話したわけではなさそうだ。最も、雑用系の依頼はシャーレに来ても他の所に回しているため、今更雑用系の依頼が来るわけがない。そして、大きな問題ならば、その学園の生徒会かそれに準ずる組織が依頼を出すため、個人から依頼が来ることはない。
『私達の百鬼夜行連合学院で開かれる春のお祭り、「
どうやら、百鬼夜行で行われる祭の誘いだった。
そういえば、先生に就任してからしばらくは大量の仕事の相手をして、アビドスの問題解決のためにほぼ専属でアビドスに付きっきりで、こうした、娯楽的なイベントを見ている暇がなかった。
「
『はい!お忙しいかと思うのですが、よろしければお越しいただけませんか?今回の「
渡りに船なのだろうか、百鬼夜行の話をしていたところで、百鬼夜行からお誘いが来た。
『それからちょーとだけ、大したことではないのですが、先生にご相談したいこともありまして。来てくれると、シズコとっても嬉しいです!ではでは!』
「絶対本命はそっちだよね……切れてやがる」
俺が言葉を返した時にはすでに電話が切れてしまっていた。
ピロン
あきれつつ、受話器を置いたとき開きっぱなしだったパソコンに、通知が届いたことを知らせる音が鳴り響いた。
なんだと思い、パソコンを操作してついさっき届いたメールを開く。
『会場までの案内図も兼ねているので、桜花祭のポスターをお送りします。では、シズコは先生が来てくれるのをすっごく、す~っごく楽しみにしていますね!
では、百夜堂でお待ちしておりますので!にゃんにゃん♪』
これが素なのかキャラなのか気になるところがあるうえ、こうした営業でもキャラづくりを続けているのはどうかとは思うが。
「アル」
「な、何かしら?」
「しばらく、俺は百鬼夜行に出張しているから。次の依頼はアルの回復が確認できてからだすから、それまでしっかり休養しておくんだ」
「わかった」
「まぁ、アルちゃんがこの状態だからしばらくの間はまともに依頼は受けられなさそうだからねぇ」
「便利屋68はしばらく休業だね」
アル達に、休業期間中の飯代を包んだ封筒を持たせ、彼女達を帰す。
そして、アル達が帰ったのを見て、ラミリスは飛び出してくる。
「ねぇねぇ!!早くこの世界を案内してよ!!」
「はぁ、まぁ、幸い出張が入ったからな」
こうして、俺はラミリスとベレッタを連れて百鬼夜行へと向かうことにした。