ラミリスとベレッタが何処へ行ってしまったのかわからないまま、昼を過ぎたころ、俺は百夜堂に足を運んでいた。
「ここか」
シエルの道案内の元、一戸建てのカフェ、いや日本風にいうのならば喫茶店の方が正しいのかな?ともかく、目的の建物へと来た。そして、ゆっくりと扉を開けると、扉につけられていた鈴がチリンチリンと音を立てる。
「お頭ァァ!ようこそいらっしゃいマシタァ!」
扉を開いた先には、着物を着崩した少女が股を開いた立ち膝で両手を握りこぶしで頭を下げ、大きな声を出した。
「・・・」
俺は開いていた扉をそっと閉めて、二歩三歩と下がる。店に掛けられている看板を確認するが、そこにはしっかりと「百夜堂」の三文字が書かれている。
シエルさん、ここが待ち合わせの店で合っていますよね?
《合っています。間違いありません》
多分偶々何か別の件で話している所に鉢合わせてしまったのだろう。もう一度扉を開けて中の様子を見る。
「わざわざシャーレ組からいらっしゃると聞いて、このフィーナ!心よりお待ちしておりマシタァッッッ!!!」
もう一度扉を閉めて、周囲の様子を確認する。多分隣の店と間違えてしまったのかもしれない。とりあえず、ここから離れて。
「ちょちょちょ!?先生本当に待って間違ってないから!!」
俺が離れようとしたところで、扉が開きシズコが姿を見せて、そのまま俺の両腕を掴み、建物中へと引き込んだ。
「フィーナ!!言ったでしょ!!いつものしゃべり方だと絶対困惑するって!」
「エ、でも……先生が来たらビックリするくらい盛大にお出迎えの挨拶をって、さっき委員長が」
「いやいやいや、それはあくまでも百夜堂の従業員としての、第一印象的な話だから!そう、第一印象」
「確かに結構びっくりさせてもらったよ。思わず来る店を間違えたかと思ったから」
言葉通り本当にびっくりはさせられたよ。
「ああ、せっかく第一印象をとびっきり可愛くしておくことで、最初からリムル先生の好感度MAXで行こうというこの……はっ?!」
シズコは自分が言ってしまったことに気が付いた。
「え、えっと、今のはその、つまり……」
シズコは自分が言ってしまった言葉をどうにか取り繕うとするが。
「て、てへぺろ……っ!」
結局、取り繕える言葉が思いつかず、かわいさで誤魔化すのだった。俺がどんな反応を返してあげればいいのか困っていると。
「えへっ、では中へご案内いたします!」
お互いにこの空気のまま話を進めるのは地獄であるため、何事もなかったように店の中へと進んでいく。そして、店の奥のほうにある座席に座り。話始める。
「それにしてもリムル先生、本当に来てくださったんですね!」
「そりゃあ、君呼んだからね。それに、別件もあったから」
フィーナが裏のほうへと回り、お茶へと淹れる。
「リムル先生は、百鬼夜行自治区についてはお詳しいですか?」
「他の自治区よりは詳しいかな」
前世に一番似ている自治区が百鬼夜行自治区であるため、情報を集めていく中で無意識の内に百鬼夜行自治区の情報はよく入ってくる。
「そうですか。ですが、お祭り運営委員会の詳しいことについては知らないでしょう」
「まぁ、そうだな」
「私達「お祭り運営委員会」は、ここ百鬼夜行の観光業の中でも最大級の規模を誇る「お祭り」を担当しています」
「読んで字の如くか」
「いえ、企画から運営、そして全般的な管理まで、そのほとんどを担当している部活なんです!えっへん!」
胸を張るシズコ。
「それは、すごいな。俺も祭りの企画から運営、全般的な管理から宿泊施設とか、他国の来賓の対応、全般的な業務の統括をやっているが・・・その年でそれだけの業務をするなんてな」
「あの、さらっと私達を超えないでください!」
学生としてやれる規模ならば、国規模でやる祭りとは小さなものになるが、いや、ここキヴォトスならば学生規模でも馬鹿にできない祭りになっているか。
「俺の所じゃ、百鬼夜行程の頻度でお祭りはやっていないよ。国全体的な仕事が落ち着いたタイミングでようやく企画が開始できるくらいだから」
「噂程度で聞きましたけど、リムル先生って国王もしているじゃないですか。猶更話が違うじゃないですか」
純粋な仕事量が多いことは認めないが、言ってしまえば余力があるときじゃなければ、祭りを並行でやっていけるわけがないのだ。
「おっほん、まぁこの事は一旦置いておいて、今まさに、私たちが準備してきた「百夜ノ春ノ桜花祭り」が開催中!これが私たち、お祭り運営委員会の力です!」
窓から外の様子を見る。まだ祭りが始まって少しの時間しか経っていないが、この様子ならば十分な成功を収められそうだが。
「色んな方の努力や協力があって、こうして盛り上がってはいるのですが……」
「何かあったのか?」
わざわざこの話題を振ることならば、そういうことなのだろう。
「はい、最近、邪魔をしてくるやつらが現れまして……今朝もいきなりあちこち荒らされたし、ほんっとに……」
シズコが俺を祭りに誘った意図が見えた。お祭運営委員会内にも多少揉め事を解決させることができる人員が居る。けれど、それには限界がある。加えて、今の百鬼夜行の治安維持組織があれな状態だ。
「それが俺を呼んだ理由か」
「はい、リムル先生を純粋に「百夜ノ春ノ桜花祭」へご招待したかったのも本当なのですが……」
お祭り運営委員会としては、シャーレの先生、言い方は悪いが、権力者が祭りに参加して良い印象を抱いてくれれば、結果としてよい流れを作ることができる。純粋にお祭りを楽しんでもらいたいかは……置いておくとしよう。
邪魔してく人達がどんなものなのか、詳しい話を聞こうとした。
「!?」
「またぁ!?」
鳴り響く銃声と爆発音、発生源はそう離れていない。
「委員長!敵襲デス!」
「ああもうっ、言ってるそばからあいつら!ほんっとやってらんない!!・・・あっ」
「キャラづくりはいいから、フィーナ、相手の場所と数はわかるか?」
「数はわからないデス!でも場所はわかります!」
「わかった、そこまで案内してくれ」
フィーネに案内してもらい、百鬼夜行自治区内を走っていく。戦闘地が近くなり、聞こえてくる。
飛び交うグレネードとロケットランチャーの砲弾、この世界に来てだいぶ時間がたって慣れてきたとはいえ、こんな物騒なものが飛び交っている現実にはやはり目をそむけたくなる。
「ふはははっ!あたしらは、百鬼夜行の籠城に屯する魑魅魍魎」
「その名も・・・魑魅一座・路上流っす!」
「さあみんな、ご要望通りに荒らして荒らして荒らしまくりな!」
面をつけた少女たちが銃火器を振り回し、屋台や飾りを破壊している。だれの目から見ても、彼女達の活動が祭りの一環ではないことがうかがえる。
「なあ、シズコ。あれは祭りの一環じゃないよな?」
「当り前じゃないですか!こんなお祭りがあってたまるもんですか!」
「百花繚乱も来そうにないし…仕方ないか」
俺は刀を手にして走った。
「うそぉ~~?」
「先生強いデース!!」
あっという間に、魑魅一座・路上流の少女達は一か所に山積みとなっていたのだった。