異世界に来たら先生になった件   作:御神梓

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八話 トリニティ総合学園

 先日のミレニアムサイエンススクールに続ぎ、今日はトリニティ総合学園に足を運んでいる。

 ここトリニティはとにかくお金持ちが多い。ミレニアムも性質上物の売買が活発かつ、膨大な活動費用に加え、生徒個人が特許やライセンスなどでお金を稼いでいる生徒が多い。それに対してトリニティは家柄がお金持ちな生徒が多いのだ。

 お金持ちが多いためか、街並みはとにかく綺麗でお洒落なお店がよく目に付く。そして物価が高い。ちらっと見たお菓子屋の値段を見てみたらチョコボール一個一万円なんてものをがあったため、ここの金銭感覚には思わず驚かされてしまう。

 さて、そんなトリニティ学園を事前に調べた範囲で分かっていることはいくつかある。まず、総合学園の名の通り、元々は異なる幾つもの学園達が集まり「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」の三校を中心として、一つの学園となった。

 その影響なのか、政治的な雰囲気が強く、一つの学園でありながら内輪で対立しているような面もみられる。感覚的には貴族の為の学園に近いかもしれない。

 

「やっぱりここもでかいなぁ」

 

 キヴォトスの三大校、「トリニティ」「ゲヘナ」「ミレニアム」の一校な為、ほかにあいさつ回りしている学園よりもやはり敷地が大きなことは驚かされる。

 次にわかっていることは、ゲヘナ学園とはとにかく仲が悪い。なぜ仲が悪くなったのかの原因を記録から調べたが、もう初めから仲が悪いとしか言いようがない程仲が悪い記録しかなかった。近々「エデン条約」なるもので、お互いにいざこざを無くそうなんて話が上がっているが、そううまくいくものなのか・・・

 

「あ、もしかして連邦捜査局シャーレの先生っすか?」

 

 俺が門の方へと近づいていくと、門前で立っていた長い黒髪で黒い翼を持つ少女が話しかけてきた。あの服装は、確かハスミと同じ正義実現委員会のものかな?

 

「ああ、シャーレのリムル=テンペストだよ」

「ああよかったっす。あたしは正義実現委員会二年の仲正イチカっす。本当は面識のあるハスミ先輩が案内するって手筈だったんすが、ちょっと緊急で出動することになったので、あたしが代わりに来ました」

「そうなのか。よろしく頼むよイチカ」

「任せてくださいっす。あたしの後についてきてくださいっすね」

 

 俺はイチカに案内してもらいトリニティ総合学園の中を歩いていく。

 

「リムル先生は外の世界から来たって聞きましたけど、こっちの生活には慣れましたか?」

「全然だね。こっちの常識には驚かされてばっかりだし、仕事漬けで慣れている暇はあんまりかな」

「お、お疲れ様っす」

 

 何やら同情の目を向けられている。どう言うわけだか連邦生徒会でも十分に処理できるような仕事が回されてきているため、今朝方仕事の差し戻しをしたりもしたが、流石にそろそろ普通の人ですら処理できない量の仕事が回ってきているから苦情を入れよう。

 

「あれは、教会か?」

 

 他の建物と比べても一際大きな建物が目に付いた。そしてその建物の造りから教会なのだろうかと考え呟いた。

 

「あれはシスターフッドの大聖堂っすね」

「シスターフッド?連邦生徒会の資料に確か少しだけそんな名があったような・・・」

「シスターフッドは政治活動には不参加を宣言してるっすからねぇ。連邦生徒会が保管する資料には殆ど乗ってないと思いますよ」

「宗教の政治不干渉か・・・俺が知ってる宗教は思いっきり宗教が政治だからなぁ」

「その、大丈夫なんすか?」

「うん、まぁ」

 

 ルミナス教は魔物を許さない宗教だったけど、大分前から魔物の存在についても寛容になってきてるし。ミリムを信仰してるところも・・・まぁ、たぶん大丈夫だよね。

 

「大丈夫だよ」

「ものすごく自信が無さそうに見えるんっすけど・・・」

 

 道中イチカとの雑談を交えつつ、トリニティ総合学園の奥にある建物の中へと案内され、中庭が見える場所に案内された。

 隣に中庭が見える中、とても大きな長机にケーキ等のお茶菓子と紅茶が載せられていて、そこに二人の少女が座っている。

 

「ナギサ様、ミカ様、連邦捜査局シャーレの先生をお連れしました」

「ありがとうございます。下がってもらって構いませんは」

「わかりました」

 

 イチカは下がり、この場所から出て行った。

 

「本日はお時間を取っていただきありがとうございます。連邦捜査局シャーレのリムル=テンペストです。本日はよろしくお願いします」

「こちらこそお願いいたします。ティーパーティーのホスト桐藤ナギサと申します」

 

 白い翼に少し茶色がかった灰色の髪の少女、確か彼女は「フィリウス分派」のリーダでもあったはず。

 ナギサは隣にいた、ピンクの紙で腰あたりから白い翼を持つ少女に手を向ける。

 

「そしてこちらは、同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」

 

 こちらの少女は「パテル分派」のリーダーだったか。

 

「改めてまして、お初目にかかります。私たちがトリニティの生徒会、ティーパーティーです」

 

 そこで彼女は自己紹介の話題を切ろうとしたが、一つ疑問があったため聞くことにした。

 

「早々で悪いのですが、一つ質問が」

「はい、何でしょうか?」

「もう一人のティーパーティーメンバー、「サンクトゥス分派」のリーダでもある百合園セイアさんはどちらに?」

 

 その質問をした瞬間、二人の表情が一瞬だけ変わった。けれど、まるで面を付けるかのように表情を正した。

 

「実は、セイアさんは現在療養中でして。現在は私が代理としてホストを務めております」

「ああ、そうでしたか。失礼しました」

 

 療養中ならば不在でも仕方はない。けれど、あの一瞬の表情の変化、あんまり病状はよくないのかもしれないな。

 

「もう先生、かったっ苦しいよぉ。もっとフランクに話そうよ!!」

 

 突然、ミカはそんなことを言った。

 

「ミカさん。相手にも立場があります。それにこれは正式な会談ですので、そんな友人と話すような話し方をする場ではありませんよ」

「ええ、でもぉ」

「でも、じゃありません!!先生からも何か一言いただけないでしょうか」

「俺としては、フランクに話せたほうが楽とは思うかな」

「だよねぇ!!」

「先生!?」

 

 その後、なし崩し的に俺とミカはフランクなしゃべり方をすることで決着した。それに対して、ナギサは思わずため息を漏らし、ミカの口にロールケーキをぶち込んだ。

 

「はぁ、ひとまずこれからトリニティとシャーレ、双方がこれからも友好的に協力的に事態解決に当たれるよう取り決めをします」

「ああ、そのことについてだけど、先日ミレニアムと取り決めをした際にこうした取り決めも決めるようになってさ」

 

 俺は先日ミレニアムで決めた生徒のシャーレに所属する際のシステムや条文などを纏めた書類を彼女達に渡す。そして、彼女達はすぐに書類に目を通していった。

 

「なるほど、確かにこれでしたら生徒達の保証も取れています。システムの構築にはトリニティも全面的な協力を行います」

「わかった。その時は連絡するよ」

 

 それからも、主にナギサと話をして取り決めを進めていく。途中からミカはあからさまにつまらなそうにして、お菓子と紅茶を何度も口にしていたが、すぐに彼女の前に置かれていた物はなくなった。

 

「ねぇ、いつまでつまらないお話してるのぉ」

「ミカさん?何度も言っていますがこれは重要なお話なのですよ?パテル分派であるあなたが不在の状態では進められない話なのですから」

「え~、だったらセイアちゃんが不在な状態で進めちゃダメな話じゃないのぉ?」

「それは、セイアさんは現在復帰は不可能な状態でホストの座を一時的に代理を務めている私に委託されています。それに今回の一件は緊急性もあるのですから」

 

 なんだか、ミカを見ていると自然とラミリスのことが頭に浮かんでくる。自分に力と能力があって立場もありつつ、自由奔放なところが想起させるのか。

 

「まぁ、しばらくかたっ苦しい話ばかりだったから、この辺りで息抜きをするのはありかもな」

「先生まで、はぁ、わかりました。新しいお茶とお菓子を用意させます。誰かさんが食べつくしてしまいましたか」

「え~誰のことかな?」

「あなたのことです!!」

 

 それから会議は一時中断することになった。

 

「ねぇねぇ、先生が来た外の世界ってどんなところ?」

「俺が来たところって言われても、どこから言ったものか」

「以前リムル先生と共闘したというハスミさんからの話では、リムル先生は銃が一般的ではないところかいらっしゃったとお伺いしましたが」

 

 何処まで俺がいた世界の話をするべきか。あまりにもこの世界からの常識からはかけ離れている。それに、あんまりあっちの世界の話をするわけにもいかない、どこまでを話したものか。

 

「まぁ、そうだね。まだまだ色々発展途中でね、銃よりも手軽で使い慣れている武器とかが色々あるから」

「それは、どのようなものでしょうか?」

「一応国家機密ってことで頼む」

「え~けちぃ」

 

 流石にスキルや魔法の話はしないほうがいいだろう。仮に話をしたとしても理解されない可能性はあるけれど。

 ミカのお陰で硬い雰囲気の会議も柔らかなものとなり、年頃の少女二人のやり取りをまじかでみられて思わずほほえましく思えたのは、俺も十分におっさんになってきたのだろうか・・・

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