20XX年、世界の各地に古い呼び名ではダンジョンと呼ばれた構造物が超常的な自然発生によって現れた。各国の軍の兵士達が調査に赴いたが、ダンジョンには強大なモンスターが出現されたことで少なくない犠牲が出てしまった。そのような犠牲が出ながらも、ダンジョンから得られた恩恵は凄まじいものがあった。その恩恵とは、ダンジョンで出現するモンスターを倒すことでドロップされた『カードパック』であった。開封されたカードパックから出たカードはテキストに記されている効果を現実に起こすことが出来る物であった。
世界各地で回収されたカードの中には、世界のパワーバランスを崩しかねないほどの力を宿したカードも存在した。それらのカードによって世界は混乱期に入るも、世界各地から集った有志達によって収束し、危険なカードの全ては管理・収容され、生活を豊かにするカードたちは市場に流された。
現在では、ダンジョンと呼ばれた構造物は、『パラアーティ・スペース』と改名されて世界中に広がったカード達は『パラアーティ・カード』と呼ばれるようになった。パラアーティ・スペースには厳しい試験をクリアすることで『ハンター』として探索を許可されスペースに入場することができ、生還すればスペース内で手に入れたカードを売り払うことで、巨額の富を得ることが出来るのだ。
ハンターは、現在で言うところの国家公務員にあたるが、それより上の『レアハンター』と呼ばれる役職が存在する。通常のハンターよりも厳しい試験や審査をクリアできるものしかその役職になることを許されない且つ、安全を保障されないパラアーティ・スペースの最前線で活動を強制される超危険な役職なのである。しかし、レアハンターになることでしか得られない絶大なメリットも存在する。それは──
「国が管理する市場には出回らない強力なレアカードを使用する許可をもらえる。その特権を以て、お前の病気を・・・・・・治してみせるからな」
病室で寝たきりになっている自分の幼馴染であり婚約者でもある女性を看ながら青年は一人で呟く。青年は女性の手を取り自身の頬に当て想いを馳せ、青年は病院から出てバイクに乗りレアハンターになりに行くためバイクを走らせた。
着いた先は高層ビルでその周辺はレストランのような食事処や武器屋等のハンターとして必要な施設が並んでおり、非常に栄えていることがわかる。それらを見流して高層ビルに入った。
「お待ちしておりました。狩札
狩札希と呼ばれた青年が案内された先は広くて薄暗い部屋に立っていた。目の前には台座が有り、その上には石のデッキケースが鎮座している。部屋の中にあるスピーカーから声が聞こえはじめた。
『これより記念すべき受験番号100番、狩札希のレアハンター就任試験を開始する。最初のやることは簡単だ。目の前のデッキケースを開けてみろ。出来るものならな』
「これを開ければ・・・・・・か」
希は一人呟きながら石製のデッキケースを開けようとして触れた瞬間だった。
「ッ!?」
デッキケースは強く光り輝きだした。デッキケースの石で出来た外装が剥がれ落ち、メタリックなブルーとブラックのデッキケースに変身した。光が収まった直後、デッキケースからは禍々しいオーラを醸し出している。青年は、デッキケースが開けれることに気づき、中のカードを覗こうとカードを取り出そうとしたら、スピーカーの声が響いた。
『文句なしの試験突破だ、100番。それでは二次試験だ。デッキケースの中のカードのテキストを
「なんだと!?、ッ!、来る!」
試験会場内の召喚装置が起動したのを察知し、ガントレットにデッキを装填して戦闘体制に入る。召喚されたのは、ガーゴイル・ナイト*1とヴァンパイア・バロン*2であった。パラアーティ・スペースの悪魔族は下層に生息しており、下級のガーゴイル・ナイトであっても一般ハンターにはかなり危険なモンスターである。そんな危険なモンスターもカード自体は存在しており、レアハンターレベルに腕の立つハンターならば使役することが可能である。
「ドロー!鳴らせ![
『ビレッッシャアアア!!』
『ギャアアアッ!?』
希は最初に引かれた5枚のうち1枚を即時に使用する。希の手にしたデッキのカードテーマは『魔奏具』これらのカードは、殆どのカードが魔法カードである。しかし、通常の魔法カードと大きく違うところが存在する。
「鳴らし続けろ!ギャイン!」
『ビッシャアアラアア!!』
『クギイイ!?』
通常の魔法カードは一度使用すれば一定時間使用不可になり、ガントレットの
魔奏具の特性を用いてガーゴイル・ナイトを一体ずつ撃破していく。しかし、敵も棒立ちでやられているわけではない。まだ撃破されていないガーゴイル・ナイトは希に接近する。ヴァンパイア・バロンも火球を作り出し希に飛ばす。希は火球を避けながら接近してくる複数のガーゴイル・ナイトを迎撃しようとカードを発動させる。
「張り裂け、[
『ザッシャアアア!!』
『───』
近づいたガーゴイル・ナイトはザクロによって悲鳴を上げぬままバラバラにされた。残っているのは、ヴァンパイア・バロンとその護衛として残された4体のガーゴイル・ナイトだった。
「ドロー、[魔力交換の取引]*5を発動」
希は魔奏具の特性で使いまわして消費した分の魔力を回復させた。魔奏具のデメリットとしては、マナ消費が激しいというところがある。そのデメリットを解消させる回復手段として[魔力交換の取引]のようなマナ回復カードが初期段階で搭載されていたのは幸運である。
マナを回復させることに成功した希だが手札は残り一枚、その一枚のカードも攻撃できるカードではなかった。しかも、すぐには使用できない。ここから始まるのは・・・・・・
『ギシャシャシャシャッ!!』
「チィッ!!?」
敵の反撃である。ガーゴイル・ナイト全員が襲いかかってくると同時にヴァンパイア・バロンが先ほどとは比べ物にならない量の火球を放ってきた。加えて連携も抜群である。
「くっ!?──グアッ!?」
『ヒャハアアアア!!』
火球を避けた先を二体のガーゴイル・ナイトが待ち伏せして一体がフェイント、もう一体が本命の攻撃を仕掛けられ命中してしまった。下層のモンスターの攻撃は脆い人間の肉体では基本致命傷である。希も例外なく瀕死の状態に追いやられてしまった。その瞬間最後の一枚が発動する
「逆転の必札技・・・・・・使用者が生死の境界に立つことで発動、山札の上から一枚ドローして、そのカードを無償で使用できる。俺が引いたのは───」
瞬間、空気が絶命する。トドメを刺そうと迫った敵性モンスターはその死の空間を作り出した存在の前に動けなくなる。その存在は龍だった。余りの強大さと逆転の必札技の無償使用の影響もあって完全に顕現は出来なかったが、その龍の眼が敵性モンスターに目を向け圧を放った。
『─────』
悪魔たちは断末魔も上げれず消滅した。
『・・・・・・・・・』
今は名も明かされぬ龍は希を幾許か見つめ、自ら逆転の必札技の効果を解除して姿を消した。試験場には傷つき朦朧とした希が残った。試験が終了したことで武装したスタッフが試験場の出入り口が蹴り破り入場してきた。
「クリア!早く彼を運んで治療を!」
安全を確認したスタッフが希を担架に乗せて治療室に運んで行った。それを見送って残ったスタッフは試験場の一面の壁の上部を睨む。
「話が違います試験官、本来の試験はデッキケースを開けれた時点で合格だった筈です。何故あのような凶行に?」
『黙れ、奴が最後に喚びだしたモンスターの召喚反応の分析で今はそれどころではない』
「何ですって!?」
スタッフの指摘を無視して分析に没頭する試験官にスタッフは怒りを露わにする。その憤りも無視されて3分が経過した。スタッフは試験場を後にして試験官の居る部屋に入る。部屋に入ったスタッフが睨んだ先には試験官が立っていた
「よし、それでは説明しよう。封印デッキケースの解放が成功した瞬間、今までに計測した事のないエネルギー反応を受信した。それに興味が湧いてああしただけさ。お陰で素晴らしいデータが取れた」
試験官・・・・・・否、研究者は分析結果を見て嗤う。最後に召喚されたレアカードのパワーを計測した結果をディスプレイに映し出す。そこに表示されたのは
【PARANOMAL RARE】
「私の突発的な研究の処罰は受けよう、彼への謝礼も約束する。丁度目を覚ましたようだし合格だと伝えに行こう」
「・・・・・・そうですか」
備え付けの治療室で治療を受け回復した希は結果を待っていた。ノックが響き入ってきたのは、二人の女性であった。研究者の女性が話し始める
「試験結果を伝える前に先ずは謝罪を、本来2次試験は存在せずあのデッキケースを開ければ即合格であった。にも関わらず予定にない2次試験で瀕死の重症を負わせた事を謝罪しよう。申し訳なかった。この後には謝礼をしよう。それでは結果を伝える。合格であるこれからはレアハンターとして励むように。以上だ」
そう言って研究者の女性は部屋から出ていった。合格した希はというと
「・・・・・・よしッ!!」
力拳を握りガッツポーズを決めた。それをスタッフの女性は微笑みを見せ自身と同じレアハンターの就任を祝福した