プロローグ
日差しの照り付ける真夏の土曜日、少年は人もまばらな田舎の駅のホームにいた。
右手にDVDショップで借りたガンダム、左手に母親のおつかいで買った食材の入った袋を携え「前橋 英作」は電車を待っていた。
(そろそろ次の電車が来るっぽいけど…)
電車の到着アナウンスが鳴り始めたため線路に目線を向けたその時、背中に押されたような力が加わる。
(え?)
なすすべもなく体は線路に飛び出し、ホームへ止まるはずだった電車がそれを吹き飛ばし、10m以上吹き飛んだところでようやく動きは落ち着いた。
英作の心は突き飛ばされ、電車に吹き飛ばされたにもかかわらず静かなものだった。
(なんだ?何が起きた!?)
(熱いような寒いような…いや、痛い…それに目が見えない。)
《確認しました、対熱耐性獲得…成功しました。対寒耐性獲得…成功しました。痛覚耐性獲得…成功しました。》
《対熱対寒耐性を獲得した事により、『熱変動耐性ex』にスキルが進化しました》
まばらとは言え人の居たホームは混乱で騒がしさが増す。
(作りかけのザク…どうしよ、完成させたかったな。)
《確認しました。ユニークスキル『
(次があったら…電車に轢かれても大丈夫な、硬い体になりたい。)
《確認しました。防御力の高い体を作成・・・成功しました》
うっすらと辛うじてあった意識が闇へと沈んでゆく。
前橋 英作…享年15歳
(ここは…?)
「目が覚めたら洞窟だった」なんて体験をしたのは多分日本でもそうにないだろう。
かく言う僕も目が覚めて洞窟にいたなんて初めての事だ。
(たしか僕は、駅のホームで誰かに押されて…)
思い出すと不快感が増し、それと共に不信感も増す。
なぜ押されたのか、押したのは誰なのか、ここはどこなのか、自分は死んだのではないのか、頭に疑問が満ちてゆく。
(一旦落ち着こう、少し周りを歩けば少しは落ち着くかもしれない)
歩き出したことが功を奏したのか思考が落ち着き、それと共に違和感に気づく。
(普段より視線が低い、まるで地面を這ってるみたいだ。)
(それに視界も少しガサガサしてて…まるでモニターを直に見てるみたいだ。)
そんな違和感を感じながらも歩いていると、前方に池が見えてきた。
(洞窟にも池ができるなんて知らなかった、どんな生き物がいるんだ?)
(へー、小魚に巻貝に…まてよ、おかしい、明らかにおかしい)
(なんで僕の姿が…ハロになってるんだ)
そこでようやく辻褄が合った。
電車に轢かれたことによる死、目覚めた場所は1ミリも知らない洞窟、自分と思しき水面に映るハロ
ここから導き出される答えは…
「まさかとは思うが、僕は駅で死んで、その後この洞窟でハロに生まれ変わった…のか?」
主人公は手足が出し入れ可能な緑のハロです。