友達もできます。
これは夢だ。だが何度見たかわからないいつもの夢と少し違う。
青空の下僕は只ひたすら走っていた。足の回転数は少しずつ早くなり、加速を始める。
全身に風を受けつつ加速し続け、背中にあるスラスターで重力にあらがって大地と僕を引き離してくれる。
離陸した後も加速は止まらない。背中のスラスターが忙しなく炎を吐くのを感じ、今ならどこまでも行けそうな感覚が心を満たす。
遂に加速が限界になり、周りの物が銃弾のよりも速く後ろへと流れ始める。
空気抵抗が僕を押さえ込み、体が軋み始めるのは、まるで「これ以上はダメだ」と言い聞かせているようにも感じた。
それでも高速飛行は続いた。まるで「まだ行ける」と僕をどこか分からない場所へ連れていくように。
目が覚めた。
未だに体が軋むようにも感じるが、むしろ体は絶好調で、今なら洞窟の壁を叩き破って外へ出ることもできそうである。もちろんそんな事はしないが。
今までの夢とは少し勝手が違うがそこまで不快感も無かったことだし放っていてもいいだろう。
(それよりもスキルの確認だ。解析鑑定発動!)
「放熱者」の基礎的な効果が頭の中に流れ込む。
(熱変換と魔素変換、熱操作か。かなり、と言うか死ぬほどチ-トだな!)
「放熱者」の効果はどうやら想像を絶するものだった。そして今回の一件により僕には思い当たることがあった。
(それにしてもこんなチートを実質眠るだけ作り出せるだなんて…)
そう「製作者」である。確かにこれまでの製作補助、スキル獲得補助、解析鑑定でも十分チートだ。
異世界転生で何が欲しいか聞かれたら1/2ぐらいの人はこの能力を選ぶんじゃないだろうか。
しかし、そんな基礎ですらチートなスキルに、「チートスキルの製作」などと言う応用力がついてきたとなればそれはもうチートの域すら超えている。
(えぇい!僕の「製作者」は化け物か?!)
やはり「製作者」はチートオブチートなのだと改めて理解した。
(もう「閣下」とか付けた方がいいかな…)
この場所でやるべきことは全て終わった。実験も、ヒートホークの作成も、何の問題もなかった。後は出口を探すだけである。
幸運なことにこの魔鉱石に囲まれた空間は行き止まりである。
つまり僕は、これからは途中まで一本道を辿り、そこからは迷わないように気を付けながら進まなければならない。
途中までは何も無い分、ある程度選択肢が少なくなって楽だ。
何か起こったらその時考えよう。意外とそれでも何とかなってくれるものだ。
(とりあえず、出発だ!)
少し歩いて、この世界で最初に倒れていたところを超えた辺りだろうか。威圧感を纏ったような声がどこからともなく聞こえてきた。
(聞こえるか?小さき者よ)
(な、なんだよこの声?どこから聞こえる?!)
(聞こえているだろ?小さき者よ)
(え?ぼ、僕の事?とりあえず、No、聞こえません)
(聞こえているではないか!)
(こ、心を読んだ?!ニュータイプか!)
何とこの世界にはニュータイプがいるようだ。スキルやら魔素やら小説臭い世界だと思っていたがまさかニュータイプまでいるとは驚きである。
(にゅ、にゅーたいぷ?何のことか分からんが、とりあえずそこから真っ直ぐ進んでこちらへ来い)
(アッハイ)
どうやらこの道を真っ直ぐ進んだ先に声の主がいるようだ。この世界で理性のある人?と会うのは初めてなのではっきり言って緊張する。
しばらく進むと、そこには何か薄い膜?の様な物に周りを囲まれたドラゴンが居た。
「MAか?」
「そのMAが何かは知らんが恐らく我の事では無いであろう。」
どうやらMAではないらしい。だとするとこのニュータイプさん(仮)はドラゴンなのだろうか?
「じゃあニュータイプさんは何なんですか?もしかしてドラゴン?」
「よくぞ聞いてくれた!我は4体しか存在しない竜種が一体、暴風竜ヴェルドラである!」
「うぉー!何だか分からないけど凄い人って事は分かりました!」
「そうであろうそうであろう。なんせ我は暴風竜ヴェルドラであるからな!」
どうやら竜種とかであることにヴェルドラさんは誇りを持っているようである。実際ヴェルドラさんの周りには強烈な"圧"が漂っており、そのおかげか周囲にはアーマーサウルスなどの生物は少しも見当たらない。
この態度や雰囲気にも納得ができる。
「して、貴様の言っていたニュータイプ?とは何だ?」
どうやらヴェルドラさんはニュータイプに興味があるらしい。せっかくこの世界で最初に出会えたんだからこのくらいは教えてあげよう。
「うーん…基本的には、理解力と勘が凄くてどんな時も他人と繋がれる人。ですかね?」
「何故貴様が訊ねてくるのだ…」
「いや、これは色々難しい事なんですよ。もしかしたらヴェルドラさんでも理解不能かもしれません。あ、別にヴェルドラさんが馬鹿って訳じゃないですよ?」
そう、ニュータイプとは定義もできることもかなり曖昧な存在。簡潔に言おうとしてこうなってしまうのは当然と言っても過言ではない。
「そうだ、僕もニュータイプについて教えたしヴェルドラさんもこの世界について教えてくださいよ!」
「ほほう、良いだろう。どんなことでも聞くがよい」
どうやらヴェルドラさんは意外と器の大きい人らしい。
それから僕とヴェルドラさんは会話を続け、色んな事を教わった。
魔素について、スキルについて、魔物について、俺の状況について。
この場所がどういう場所なのか、この世界の地理について。
それから、250年前のやらかしと、ヴェルドラさんを囲む膜、封印について。
「え?じゃあヴェルドラさん、250年間誰とも会ってないの?!」
「まあそうなるな。」
「まじか、待ってろよヴェルドラさん。今からその封印かち割ってやる!」
「貴様正気か!?我が100年掛けても解けなかった封印だぞ?」
「でも200年やってどうかは分からないでしょうが!それに友達が死にかけてるのに見捨てるのはいけないよ!」
「な、ななな、なんだと? ゴーレムの分際で、"暴風竜ヴェルドラ"と恐れられる、この我とトモダチだと!?」
「え、違うの?なんかショック…この世界で初めての友達だと思ったのに…」
「そ、そんなに落ち込むな!どうしても、と言うなら・・・考えてやっても・・・」
「ホント!?じゃあどうしても!お願いします!」
「仕方ないな!我が貴様の初めての友達になってやろう!」
この日、僕はこの世界で初めての友達が出来た。
ステータス
前橋 英作
種族:ゴーレムコア
所持スキル
ユニークスキル「制作者」
効果:制作補助
スキル獲得補助
解析鑑定
ユニークスキル「放熱者」
効果:熱変換
魔素変換
熱操作
エクストラスキル「採掘」
効果:物体粉砕
50年ほどしたら、また新しく友達でもできるかもですね
いや~一体どんなスライムなんだろう?